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μTOUGH-8000
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オリンパスのタフネスモデル「μTOUGH-8000」が登場した。新たにシリーズ名が「μTOUGH」に代わって2つのモデルが用意されているが、今回は上位モデルのμTOUGH-8000をテストした。
1月に発売した下位モデル「μTOUGH-6000」が4色のカラーバリエーションを用意していたのに比べ、シルバーとブラックの2色展開のμTOUGH-8000は、遊び心はあまりないが、質実剛健でタフネスの印象がより強い。執筆時点での実勢価格は4万6,800円前後だ。
■ “最強”のタフネスカメラ
がっしりとした頑丈なボディデザインは健在。ひんやりとした金属の感触はよく、質感が高い。方向性としては従来機「μ1030SW」の位置づけで、独特のスタイルは継承されている。
肝心のタフネス性能は、JIS/IEC保護等級8級(IPX8)相当で、μ1030SWと同じく水深10mまでの防水機能を搭載。海水浴はもちろん、スノーケリングやダイビングにも対応できる。圧力センサーを搭載し、水深10mが近づくとアラームが鳴るのも安心。
防塵性能はIP6X相当で、このレベルだとカメラ内部にちりやほこりが全く入り込まないレベルなので、砂や泥といった汚れは全く気にする必要がなく、汚れても水洗いすればいい。
耐衝撃性能は、高さ2mの落下テストをクリア。さらにカメラに100kgの荷重がかかっても耐えられる堅牢性を備えている。前面には、通常の表面処理であるアルマイトと比べて約2倍という高度を実現するハイブリッドチタンコーティングを施し、傷にも強くなっているそうだ。
さらに-10度まで動作できる耐寒性能も特徴。一般的にデジカメは0度までの動作しか推奨していないが、μTOUGH-8000であればたとえ雪山であっても十分動作可能。
液晶は新たに2.7型23万ドットのハイパークリスタルIII液晶を搭載。とにかく明るく広い視野角であることもメリットだが、液晶前面にあるアクリル窓に反射を抑える特殊コート、傷がつきにくいハードコート、水をはじく撥水コートを施してあるので、このあたりも安心感につながっている。
このあたりのタフネス性能は、μ1030SWと違いはないが、このクラスのコンパクトデジカメ界では現時点で“最強”のタフネスカメラであることは間違いない。あらゆるシーンに対応できるカメラだろう。
■ 本体を叩いて操作できる「タップコントロール」を採用
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撮影中のタップコントロール。設定画面からタップコントロールの「アジャスト」を選ぶとタップの設定ができる。特に本体上部をタップする動作は、「弱」、「速い」を選ぶと反応が良くなる
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スキーなどのウィンタースポーツやダイビングでは分厚いグローブを付けることになるが、そんなときの操作性でも面白い試みを採用。それが内部の3軸加速度センサーを活用したタップコントロールで、本体をたたくことでカメラを操作するという機能だ。
たとえば撮影中に画面をたたくと再生モードになり、本体側面をたたくと画像送りができる。さらに本体上部を2回たたくとスライドショーが行なわれ、スライドショー中にカメラを傾けると次々と画像送りが行なえる。
撮影中では、十字キー左右の代わりとしても使え、右側面をタップするとストロボの設定、左側面をタップするとマクロ設定がそれぞれ表示され、さらにタップすることで設定を変更できる。上部をタップするとOK動作になる。
そのほかに、シーンモード「スノー」を設定していると、モニターを2回たたくことでシャッターボタンを押さずに撮影が行えるようになる。2秒セルフタイマーが動作するようで、画面をタップしてから構えて撮ることができる。
反応自体はそれほど機敏ではないが、グローブを付けてボタン操作がしづらい場合には有効だろう。あまり普段から使い込むような機能ではないような印象だったが、シーンによっては活躍しそうだ。
■ 夏も冬もアクティブに使える
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レンズバリア内蔵で屈曲光学式。28mm相当の広角レンズ、3.6倍のズーム倍率を備える
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レンズはμ1030SWと同様に35mm判換算28mmスタートの光学3.6倍屈曲光学ズームレンズを搭載する。水中では焦点距離が地上に比べて1.33倍になるといわれており、水中でワイド感のある撮影をしようと思ったら広角レンズが必要になる。
28mmだと焦点距離は約37mm相当であまり広角とは言えなくなるが、35mmのレンズだったら46mm強で標準レンズ並みになってしまうので十分価値がある。
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背面のボタン。モードダイヤルの「BEAUTY」や一部のボタン割り当てが変更になっている
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μTOUGH(μSW)シリーズは、タフネス性能がウリだったが、耐衝撃性能との両立が難しかったというのが手ブレ補正機能だ。今回、オリンパスでは新たな衝撃吸収機構を採用したことで、CCDシフト式手ブレ補正機構を搭載した。
この後に続くパナソニックやキヤノンが防水モデルに光学式の手ブレ補正機能を導入してきたが、CCDシフト方式としてはμTOUGH-8000(とμTOUGH-6000)がタフネスモデルで世界初の搭載だという。機能自体はあまり強力という感じではなかったが、これが搭載されたことで手ブレの不安が減少したのは大きなポイントだ。
撮像素子には有効1,200万画素の1/2.33型CCDを搭載。下位モデルのμTOUGH-6000よりも同サイズの撮像素子で高画素になっている。画像処理エンジンは従来通り「TruePic III」を採用する。
背面のデザインはμ1030SWとほとんど変わらない。背面右上にズームボタン、その下にモードダイヤル、十字キーと4つのボタンという配置で、ボタン割り当てもほとんど変更はないが、十字キー左下のボタンにワンタッチライトのON/OFFが割り当てられた。
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オリンパスレコメンド。項目を選んでOKボタンを押すと設定画面に入る。とはいえ、顔検出パーフェクトショットとタップコントロールはON/OFFしか設定がないので、この状態でOKを押せば設定がトグルすると便利だと思う
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また、右下にあるボタンが、μ1030SWではフェイス&バックコントロールボタンだったが、これが「OR」ボタンに変更されている。
このORは「オリンパスリコメンド」の略で、オリンパスがお勧めする撮影機能を素早く呼び出すためのボタン、といったところ。あくまでオリンパスのお勧めなのでユーザーがカスタマイズすることはできないが、ショートカットキーとして利用できる。
用意されているのは「パノラマ」、「タップコントロール」、「顔検出パーフェクトショット」、「比較ウィンドウ」の4種類。
顔検出パーフェクトショットは、人の顔を検出して露出を合わせるとともに、背景の白トビも防いで撮影してくれる。人物撮影に関してはこの機能を常時オンにしておいてもいいだろう。
比較ウィンドウは、ズーム、露出補正、ホワイトバランス、測光の4機能に関して、設定ごとの違いを、4画面を1度に表示して比較できるというもの。たとえばズームならワイド端からテレ端までの4段階といった具合に、設定を変えると写真がどのように変わるかを1画面で示してくれて分かりやすい。
カーソルを合わせてOKボタンを押すか、そのままシャッターボタン半押しでも決定される。
撮影設定は、ホワイトバランス、ISO感度、連写、測光、画像サイズ、画質の各項目は撮影中にOKボタンを押すとファンクションメニューが表示され、素早く設定が変更できる。
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比較ウィンドウは、4つの子画面を表示して、撮影設定を変更した場合の効果が一目で分かる。このままOKを押せばその設定が適用される。ズームも設定できるのは便利だが、十字キー上の露出補正を選ぶと常に比較ウィンドウになるのは過剰な気もする
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ファンクションメニューにはよく使う項目が割り当てられている。十字キーとファンクションメニューでだいたい事足りるが、顔検出パーフェクトショットがオリンパスレコメンドに分離しているのがちょっと気になる
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十字キーには露出補正、フラッシュ、セルフタイマー、マクロが割り当てられており、それ以外の設定はメニュー画面から行う。頻繁に使いそうな顔検出パーフェクトショットはORボタンに割り当てられているとはいえ、少し手間は感じる。
より簡単に撮影する場合は、モードダイヤルをiAUTO(おまかせ♪iAUTO)に設定すれば、カメラを向けるだけでシーンが自動認識され、最適な設定で撮影される。認識されるのはポートレートモード、風景モード、夜景&人物モード、スポーツモード、マクロモードの5種類。
iAUTO時は画像サイズと画質以外の設定はほとんどできず、フラッシュの設定もできない点はちょっと気になった部分。また、マクロモードへの切り替えがあまり敏感ではない点、縦持ちすると顔検出はされてもポートレートモードにはならない点など、いくつか気になる部分はあった。
モードダイヤルをシーンモードに合わせると、屋内撮影やキャンドル、花火、夕焼け、ビーチ&スノー、水中スナップ、水中ワイド1/2、水中マクロなどの設定が可能。スノー単独のシーンモードも用意され、こちらはタップコントロールが自動オンになる。
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おまかせ♪iAUTO時のファンクションメニュー。もう少し設定できると良かったのだが、初心者向けの機能という割り切りかもしれない
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たくさんのシーンモードが用意されている。水中向けに4つもあるのが独特。説明文も表示されるので分かりやすい
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グラフィカルな撮影メニュー。ただ、たとえば十字キーで一度右にカーソルを動かしてから一番左に移動したい場合、さらに右に押してもカーソルが循環せず、左を2回押す必要がある。オリンパスレコメンドの画面もそうだが、逆にファンクションメニューなどでは循環するので、どうもインタフェースに統一性がない
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カメラ内の圧力センサーが感知し、水の中にいると判断されると、水中用のシーンモードが1番上に並ぶのは便利なところだ。
ほかにモードダイヤルに割り当てられた「ビューティーモード」に関しては、すでにμTOUGH-6000のレビューで解説されているので特にここでは触れない。iAUTOでは縦持ちでポートレートモードにならなかったが、ビューティーモードでは縦持ちでも動作する。
単にタフネス性能だけでなく、日常生活の撮影でも便利に使える機能を搭載したのがこのμTOUGH-8000だ。ビューティーモードのようなエンターテインメント機能もあるが、せっかくの最強カメラ。海に山に、アクティブシーンに持ち歩きたい。CCDシフト方式の手ブレ補正の搭載でさらに扱いやすくなったμTOUGH-8000は、タフに使うのが似合いそうだ。
●作例
※作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。
■ ISO感度
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ISO64
3,968×2,976 / 1/8秒 / F4.4 / 0EV / プログラム / WB:オート / 8.9mm
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ISO100
3,968×2,976 / 1/15秒 / F4.4 / 0EV / プログラム / WB:オート / 8.9mm
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ISO200
3,968×2,976 / 1/25秒 / F4.4 / 0EV / プログラム / WB:オート / 8.9mm
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ISO400
3,968×2,976 / 1/60秒 / F4.4 / 0EV / プログラム / WB:オート / 8.9mm
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ISO800
3,968×2,976 / 1/100秒 / F4.4 / 0EV / プログラム / WB:オート / 8.9mm
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ISO1600
3,968×2,976 / 1/125秒 / F5 / 0EV / プログラム / WB:オート / 8.9mm
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■ 一般作例
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3,968×2,976 / 1/30秒 / F3.5 / 0EV / ISO80 / プログラム / WB:オート / 5mm
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3,968×2,976 / 1/30秒 / F3.5 / 0EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 5mm
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3,968×2,976 / 1/30秒 / F3.5 / -0.7EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 5mm
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3,968×2,976 / 1/60秒 / F3.5 / -0.7EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 5mm
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3,968×2,976 / 1/20秒 / F3.5 / -1EV / ISO200 / プログラム / WB:オート / 5mm
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3,968×2,976 / 1/160秒 / F3.5 / 0EV / ISO64 / 水中ワイド1 / WB:オート / 5mm
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3,968×2,976 / 1/40秒 / F3.5 / -0.7EV / ISO800 / プログラム / WB:オート / 5mm
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3,968×2,976 / 1/200秒 / F3.5 / -0.3EV / ISO800 / プログラム / WB:オート / 5mm
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3,968×2,976 / 1/125秒 / F3.5 / -0.7EV / ISO800 / プログラム / WB:オート / 5mm
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3,968×2,976 / 1/25秒 / F3.5 / 0EV / ISO200 / プログラム / WB:オート / 5mm
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3,968×2,976 / 1/30秒 / F3.5 / 0EV / ISO100 / プログラム / WB:オート / 5mm
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3,968×2,976 / 1/250秒 / F4 / +1EV / ISO400 / プログラム / WB:オート / 6.5mm
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3,968×2,976 / 1/40秒 / F4.3 / 0EV / ISO200 / プログラム / WB:オート / 7.6mm
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3,968×2,976 / 1/30秒 / F3.5 / 0EV / ISO400 / プログラム / WB:オート / 5mm
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3,968×2,976 / 1/100秒 / F7 / 0EV / ISO400 / マクロ / WB:オート / 18.2mm
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3,968×2,976 / 1/15秒 / F3.5 / 0EV / ISO200 / プログラム / WB:オート / 5mm
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3,968×2,976 / 1/30秒 / F3.5 / 0EV / ISO80 / プログラム / WB:オート / 5mm
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3,968×2,976 / 1/5秒 / F3.5 / 0EV / ISO100 / 風景 / WB:オート / 5mm
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3,968×2,976 / 1/60秒 / F3.5 / 0EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 5mm
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3,968×2,976 / 1/50秒 / F5 / -0.3EV / ISO200 / プログラム / WB:オート / 18.2mm
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3,968×2,976 / 1/30秒 / F3.5 / +0.3EV / ISO100 / プログラム / WB:オート / 5mm
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3,968×2,976 / 1/50秒 / F4 / 0EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 6.5mm
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3,968×2,976 / 1/40秒 / F3.5 / 0EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 5mm
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3,968×2,976 / 1/80秒 / F5 / 0EV / ISO64 / 風景 / WB:オート / 5mm
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■ URL
オリンパス
http://www.olympus.co.jp/
製品情報
http://olympus-imaging.jp/product/compact/mjutough8000/
■ 関連記事
・ オリンパス、防水デジカメ「μTOUGH」上位モデル(2009/01/13)
・ 【新製品レビュー】オリンパス「μ1030SW」(2008/05/13)
小山 安博 某インターネット媒体の編集者からライターに転身。無節操な興味に従ってデジカメ、ケータイ、音楽プレーヤー、コンピュータセキュリティなどといったジャンルをつまみ食い。軽くて小さいものにむやみに愛情を感じるタイプ。デジカメ、音楽プレーヤー、PC……たいてい何か新しいものを欲しがっている。 |
2009/03/09 00:02
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