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【新製品レビュー】オリンパス「μ-9000」

~薄型ボディに10倍ズームレンズを搭載
Reported by 北村智史

 μシリーズ初の高倍率ズーム機で、28mm相当からの光学10倍ズームを搭載しながら普通のコンパクト機並みの薄型ボディを実現しているのが最大の特徴だ。センサーシフト式の手ブレ補正機能、人物撮影をきれいに仕上げるビューティーモードなどを備える。

 大手量販店の実勢価格は4万4,800円程度(+ポイント10%還元)。ブラック、ゴールド、ブルーの3色のカラーバリエーションが用意されている。


日中でも見やすい「ハイパークリスタルIII液晶」

 普通サイズのコンパクト機で28mm相当からの光学10倍ズームと言えば、パナソニックのLUMIX DMC-TZ5を思い出す人も多いだろうが、本機のコンセプトも似たようなところにあると言える。DMC-TZ5は奥行きが36.5mmとやや厚めだが(3月発売のDMC-TZ7は25~300mm相当の光学12倍ズーム搭載で、32.8mmの薄さになってる)、本機は奥行き31.8mmとスリムなので、シャツの胸ポケットにもすんなり収まってくれる。

 幅96mm、高さ60mmとコンパクトサイズで、光学10倍ズーム機としては世界最小、最薄なのだという。ちなみに筆者の手もとにあるデータでは、歴代の光学10倍以上のズームを搭載したコンパクト機は原稿執筆時点で77機種(古い機種は漏れてるかもしれないが)あって、その中では最軽量となる。





 レンズは焦点距離が5~50mm、開放F値はF3.2~5.9。10倍ズーム機としてはかなり暗い部類に入る。レンズ構成は6群9枚で、大偏肉両面非球面(DSA)レンズ×1枚、高屈折率(HR)レンズ×2枚を採用。DMC-TZ5のDCバリオ・エルマー(28~280mm F3.3~4.9)が9群11枚構成(うち非球面レンズが4面3枚、EDレンズが1枚)なのに対してシンプルに仕上がっている。手ブレ補正がセンサーシフト式だからというのもあるだろうが、光学系がコンパクトに仕上がったおかげでボディ全体のスリム化も達成できているわけだ。

 望遠端にズームすると、それなりに鏡筒は伸びるものの、いかにも高倍率という感じにはならない。起動やズーム動作もストレスを感じるようなことはなかった。ただ、望遠端は開放F値が暗めなせいか、遠距離でAFが迷うことがあった。また、合焦マークが表示されたのを確認してから撮っているにもかかわらず、ピントがアマいカットがいくつかあったのは気になった点だ。

 最短撮影距離は広角端で50cm、望遠端で100cm。高倍率ズーム気としては一般的な数字と言える。マクロ時には広角端10cm、望遠端90cmになり、ズーム位置が固定となるスーパーマクロ時にはレンズ前1cmまで寄れる。広角はそれなりなのだが、望遠は寄り足りない感が強い。めいっぱい寄ってもそれほどアップになってくれないし、背景もあまりボケてくれない。構造上難しいのかもしれないが、できればリコーのR10とかくらいに寄れるようだとうれしい。

 液晶モニターは2.7型で23万ドット。わりとありきたりなスペックだが、最新のハイパークリスタルIII液晶を採用。従来の最大2倍の明るさに加えて、反射を抑える特殊コートの効果もあいまって、直射日光が当たっていてもほとんど苦にならないほどの見やすさを実現している。夕陽きらきらの水面をマイナス補正で、なんていう条件でも、そこそこ画を見ながら撮れたと言えばご理解いただけるかもしれない。まじめな話、かなり感動的な液晶モニターだと思う。

 記録メディアは例によってxDピクチャーカード。内蔵メモリーも45MBある。microSDカードが使えるアダプターが付属している。どうせならフジフイルムのようにxDピクチャーカードとSDメモリーカードの両方が使えればいいのにと思うのは筆者だけではないだろう。

 電源は容量880mAhのリチウムイオン充電池。μTOUGH-8000、同6000などと共用のタイプで、CIPA準拠の撮影可能コマ数は250コマとなっている。


レンズは35mmフィルムカメラ換算で28~280mm相当の光学10倍ズーム。開放F値はF3.2-5.9で望遠端がけっこう暗めだ 上面の操作部。右手側端からズームレバー、シャッターボタン、POWER(電源)ボタン

ズームの広角端

こちらはズームの望遠端。10倍ズームの割にあまり伸びない

液晶モニター下部に「HyperCrystal View」と書かれている。反射を抑える特殊コートが施されているほか、バックライトの輝度もアップしている 十字キーまわりのボタン類はバックライト内蔵。暗い場所でもボタンの位置がすぐわかって便利だ

バッテリーは薄型ながらCIPA準拠で250コマ撮れる。記録メディアはxDピクチャーカード(ほんとは裏向きにする)と内蔵45MBメモリー。microSDメモリーカード用のアダプターが付属している

特殊機能を「OR」ボタンに集約

 μ=防水(生活防水も含む)だと思い込んでいたら、いつのまにやら防水じゃなくなっていたりして、びっくりさせられた。そちらのほうは「TOUGH」シリーズ(今までの「SW」シリーズ)におまかせにして、「TOUGH」以外は普通のスタイリッシュコンパクト路線に徹するということなのだろう。そのせいか、ややこしい機能もほとんどない。

 モードダイヤルの「BEAUTY」ポジションとか、再生時に適用できる「ビューティーメイク」機能とかは、個人的には使い道がないものの、肌をきれいにできたり、目をぱっちりにできたりするのは女性にはうれしいものであるらしい。ただ、これは吉住志穂氏によるμTOUGH-6000のレビューにもあったとおりだが、筆者の感覚ではかなり「うへぇ」な演出はいかがなものかと思う。そういうのも含めて楽しむのが正しいのかもしれないが。

 新しいところでは「OR」ボタンの装備があげられる。「オリンパスリコメンド」の略で、平たく言えば「オリンパスのおすすめ」である。どんな機能が飛び出すのかと思えば、「パノラマ」、「顔検出パーフェクトショット」、「比較ウィンドウ」の3つ。撮影シーンを自動判別して、それに合わせて「こんな機能を使ってみては?」とか「こういう撮り方すると面白いですよ」的なものを勝手に期待していたせいで、思いっきり肩すかしを食らってしまった。

 まあ、ちょっと特殊な機能が「OR」ボタンにまとめられていると考えればいいわけで、いちいちメニューの中を探し回ったりしなくてすむのはいいところだ。「比較ウィンドウ」はひとつひとつの画面が小さくなって見づらくなる面もあるが、露出補正値の違いなどが一覧できたりするのは便利だと思う。


モードダイヤルを「BEAUTY」に合わせると、美しい人がより美しく写せる。ちょっと宝塚っぽい演出も楽しい 再生時の「ビューティーメイク」機能の画面。「すべて」を選ぶと、下の3項目の効果が全部適用される

背面右手側下隅にある「OR」(オリンパスリコメンド)ボタン 機能は「パノラマ」、「顔検出パーフェクトショット」、「比較ウィンドウ」の3つ


「比較ウィンドウ」は「ズーム」、「露出補正」、「ホワイトバランス」、「測光」が選べる


十字キーの上キーで露出補正にしたときもこの画面が表示される。画が小さくなってしまうので、できれば普通モードと切り替えができるといいと思う こちらはホワイトバランスバージョン。設定を変えると写りがこんなふうに変わりますよというのが比較できるのは便利な点だ

メニューの「手ブレ補正」の画面。静止画撮影時はセンサーシフト式の手ブレ補正が働く こちらは動画時の画面。静止画と違って「電子手ブレ補正」に切り替わるようになっている

まとめ

 シャツの胸ポケットにすんなり入るスリムさで、28mm相当からの光学10倍ズームというところが本機のいちばんの売りと言える。一眼レフ用のレンズでも28~300mmやAPS-Cサイズ機向けの18~200mmもそうだが、広角から望遠までを1本(1台)でカバーできるというのは便利なのだ。

 いくら便利でも大柄だと常時持ち歩く気にはなれないが、本機くらいに小さいと普段使いのカメラにも向いている。姉妹機のμ-7000のほうがスリムで軽いし、液晶モニターも3型と大きいが、広角側が物足りない(光学7倍ズームだが、画角レンジは37~260mm相当なので望遠端はあまり差がない)ところは要チェック。実売価格も5,000円ほどしか違わないのだから、筆者としては本機のほうがお得だと思う。


 

●作例

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。


画角

広角端
μ-9000 / 3,968×2,976 / 4.5MB / 1/250秒 / F8 / -0.7EV / ISO64 / WB:オート / 5mm(28mm相当)
望遠端
μ-9000 / 3,968×2,976 / 4.8MB / 1/800秒 / F5.9 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 50mm(280mm相当)

感度

 ベース感度がISO64と低く、最高感度もISO1600止まり。画質的にまずまずと言えるのはISO200までで、ISO400以上はノイズが増えていきつつ彩度も下がっていく。が、ノイズ処理がうまいので、感度を上げてもディテールがつぶれずに残ってくれるのはいいところだ。


感度の設定範囲はISO64~1600まで。ベース感度が低いので、画質重視の場合は手ブレ補正をオンにしていてもシャッター速度の表示に注意すること


ISO64
μ-9000 / 3,968×2,976 / 4.7MB / 1/125秒 / F5.9 / 0EV / WB:太陽光 / 50mm(280mm相当)
ISO100
μ-9000 / 3,968×2,976 / 5.0MB / 1/200秒 / F5.9 / 0EV / WB:太陽光 / 50mm(280mm相当)

ISO200
μ-9000 / 3,968×2,976 / 5.2MB / 1/400秒 / F5.9 / 0EV / WB:太陽光 / 50mm(280mm相当)
ISO400
μ-9000 / 3,968×2,976 / 5MB / 1/800秒 / F5.9 / 0EV / WB:太陽光 / 50mm(280mm相当)

ISO800
μ-9000 / 3,968×2,976 / 4.2MB / 1/200秒 / F14 / 0EV / WB:太陽光 / 50mm(280mm相当)
ISO1600
μ-9000 / 3,968×2,976 / 3.5MB / 1/400秒 / F14 / 0EV / WB:太陽光 / 50mm(280mm相当)

自由作例

μ-9000 / 3,968×2,976 / 3.8MB / 1/15秒 / F3.9 / -0.7EV / ISO64 / WB:オート / 7.2mm(40mm相当) μ-9000 / 3,968×2,976 / 4.4MB / 1/60秒 / F3.9 / -1EV / ISO64 / WB:オート / 7.2mm(40mm相当)

μ-9000 / 3,968×2,976 / 3.8MB / 1/250秒 / F5.9 / -1.3EV / ISO64 / WB:オート / 50mm(280mm相当) μ-9000 / 3,968×2,976 / 4.8MB / 1/160秒 / F8 / -0.3EV / ISO64 / WB:オート / 5mm(28mm相当)

μ-9000 / 3,968×2,976 / 4.8MB / 1/160秒 / F8 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 5mm(28mm相当) μ-9000 / 3,968×2,976 / 4.4MB / 1/60秒 / F3.2 / +0.3EV / ISO64 / WB:オート / 5mm(28mm相当)

μ-9000 / 3,968×2,976 / 4.4MB / 1/25秒 / F5.9 / +0.7EV / ISO64 / WB:オート / 50mm(280mm相当) μ-9000 / 3,968×2,976 / 3.4MB / 1/25秒 / F5.9 / -1.3EV / ISO64 / WB:オート / 50mm(280mm相当)

μ-9000 / 3,968×2,976 / 4.3MB / 1/125秒 / F3.9 / +0.3EV / ISO64 / WB:オート / 7.2mm(40mm相当) μ-9000 / 3,968×2,976 / 3.8MB / 1/100秒 / F5.9 / -0.3EV / ISO64 / WB:オート / 50mm(280mm相当)

μ-9000 / 3,968×2,976 / 3.6MB / 1/500秒 / F5.9 / -1EV / ISO64 / WB:太陽光 / 50mm(280mm相当) μ-9000 / 3,968×2,976 / 3.8MB / 1/100秒 / F8 / -1EV / ISO64 / WB:オート / 5mm(28mm相当)

μ-9000 / 3,968×2,976 / 3.7MB / 1/160秒 / F8 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 5mm(28mm相当) μ-9000 / 3,968×2,976 / 4.4MB / 1/125秒 / F8 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 5mm(28mm相当)

μ-9000 / 3,968×2,976 / 5.2MB / 1/320秒 / F5.3 / -1EV / ISO64 / WB:オート / 17.9mm(100mm相当) μ-9000 / 3,968×2,976 / 5.5MB / 1/125秒 / F5.9 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 50mm(280mm相当)

μ-9000 / 3,968×2,976 / 4.3MB / 1/320秒 / F4.5 / -1EV / ISO64 / WB:オート / 10.4mm(58mm相当) μ-9000 / 3,968×2,976 / 4.5MB / 1/500秒 / F5.9 / -0.3EV / ISO64 / WB:オート / 50mm(280mm相当)

μ-9000 / 3,968×2,976 / 4.0MB / 1/500秒 / F5.7 / -0.3EV / ISO64 / WB:オート / 31.6mm(177mm相当) μ-9000 / 3,968×2,976 / 3.8MB / 1/500秒 / F8 / -0.7EV / ISO64 / WB:オート / 5mm(28mm相当)

μ-9000 / 3,968×2,976 / 3.7MB / 1/500秒 / F8 / -0.7EV / ISO64 / WB:オート / 5mm(28mm相当) μ-9000 / 3,968×2,976 / 4.3MB / 1/320秒 / F8 / -0.3EV / ISO64 / WB:オート / 5mm(28mm相当)

μ-9000 / 3,968×2,976 / 3.8MB / 1/1,000秒 / F14 / 0EV / ISO64 / WB:太陽光 / 50mm(280mm相当) μ-9000 / 3,968×2,976 / 4.9MB / 1/1600秒 / F14 / -0.3EV / ISO64 / WB:太陽光 / 26.2mm(147mm相当)


URL
  オリンパス
  http://www.olympus.co.jp/
  製品情報
  http://olympus-imaging.jp/product/compact/mju9000/

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北村智史
(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。最初に買ったデジタルカメラはキヤノンPowerShot S10。 ブログ:http://ketamura08.blog18.fc2.com/

2009/02/23 00:07
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