デジカメ Watch

ハイエンドコンパクトデジカメを比較する(画質編)

Reported by 小山 安博

前回(ハードウェア編)はこちら


検証したデジタルカメラは前回と同じ。「COOLPIX P6000」(ニコン)、「LUMIX DMC-LX3」(パナソニック)、「GX200」(リコー)、「PowerShot G10」(キヤノン)の4機種
 前回の「ハードウェア編」に続き、今回は実写編をお届けする。「遠景」、「中景」、「マクロ」、「高感度」の各シーンを撮り比べ、絵作りの差を比較してみる。同一条件での撮影に留意したが、屋外での撮影の場合、時刻の変化によるわずかな光の違いなどが影響している可能性がある。ご容赦いただきたい。

 全機種RAWでの撮影を行ない、それぞれカメラに付属する純正ソフトで現像。出力はすべてデフォルト設定だが、ホワイトバランスのみその都度固定している。なお、LUMIX DMC-LX3のみは、付属ソフトが「SILKYPIX Developer Studio 3.0 SE」だが、現像には製品版のSILKYPIXを使っている。

 そのほかの3機種は、「ViewNX」(ニコン)、「Irodio Photo & Video Studio」(リコー)、「Digital Photo Professional」(キヤノン)、いずれもホワイトバランス以外の設定はデフォルトのままだ。

  • サムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。


遠景

 まずは遠景での撮影から。すべてワイド端での撮影となっている。COOLPIX P6000とPowerShot G10はワイド端が35mm判換算で28mm、DMC-LX3とGX200は同24mmからとなっており、写る範囲は異なっている。ホワイトバランスは、色温度5,200Kで固定している。


COOLPIX P6000 / 約5.4MB / 4,224×3,168 / 1/553秒 / DMC-LX3 / 約3.1MB / 3,648×2,736 / 1/1,000秒 / F2 / -0.7EV / ISO80

GX200 / 約8.0MB / 4,000×3,000 / 1/620秒 / F2.5 / -0.7EV / ISO64 PowerShot G10 / 約9.9MB / 4,416×3,312 / 1/500秒 / F2.8 / -0.7EV / ISO80

 青空や緑の色が最も派手に出ているのがDMC-LX3。実際よりも濃い色彩で表現されているが、見栄えはいい。見た目に近い自然な色はPowerShot G10。COOLPIX P6000はグリーン、レッドの再現が派手め。細かい部分を見ると、有効画素数が1,470万画素ともっとも多いPowerShot G10は背景の木々も描写されていて、高画素のメリットが出ている。かなり優秀なレベルだ。最も有効画素数の少ないDMC-LX3(1,010万画素)も、意外に細部表現でがんばっている。

 COOLPIX P6000も1,350万画素あるだけあって、細部までくっきり写る。ただ、PowerShot G10と比べてみても少々シャープネスが強めの仕上がりのようだ。

 逆に、PowerShot G10の高画素の弊害を感じる場合もある。この被写体では明確には出ていないが、手前の池の部分にノイズ低減の影響らしいブツブツが出ているのがPowerShot G10。DMC-LX3はそれが少ないようだ。参考程度に以下の画像も見て欲しい。空の部分を見てみると描写に差があることが分かる。


COOLPIX P6000 / 約6.5MB / 4,224×3,168 / 1/833秒 / F5.7 / 0EV / ISO100 DMC-LX3 / 約2.6MB / 3,776×2,520 / 1/640秒 / F6.3 / 0EV / ISO100

GX200 / 約7.7MB / 4,000×3,000 / 1/660秒 / F5.1 / 0EV / ISO64 PowerShot G10 / 約10.8MB / 4,416×3,312 / 1/500秒 / F5.6 / 0EV / ISO80 / 6.1mm

中景

 続いては望遠端での作例。こちらも各機種によって焦点距離が異なっており、もっとも焦点距離が短いのがDMC-LX3の60mm、最も長いのがPowerShot G10の140mmだ。


COOLPIX P6000 / 約7.2MB / 4,224×3,168 / 1/94秒 / F5.9 / -0.3EV / ISO64 DMC-LX3 / 約4.1MB / 3,648×2,736 / 1/640秒 / F2.8 / -0.3EV / ISO80

GX200 / 約8.4MB / 4,000×3,000 / 1/217秒 / F4.4 / -0.3EV / ISO64 / 15.3mm / 15.3mm(35mm判換算) PowerShot G10 / 約10.1MB / 4,416×3,312 / 1/200秒 / F4.5 / -0.3EV / ISO80

マクロ(ワイド端、背景ボケ)

 マクロの作例。マクロモードに設定することで、いずれもワイド端でCOOLPIX P6000はレンズ前2cmまで、それ以外の3モデルは同1cmまで近寄れる。


COOLPIX P6000 / 約4.8MB / 4,224×3,168 / 1/164秒 / F2.7 / 0EV / ISO64 DMC-LX3 / 約2.2MB / 3,648×2,736 / 1/250秒 / F2 / 0EV / ISO80

GX200 / 約7.0MB / 4,000×3,000 / 1/217秒 / F2.5 / 0EV / ISO64 PowerShot G10 / 約9.3MB / 4,416×3,312 / 1/200秒 / F2.8 / 0EV

 色がきれいに出ているのはCOOLPIX P6000。ピントが合った部分はシャープだが、花弁のボケが溶けるようになっていてあまりきれいではない。DMC-LX3とPowerShot G10は緑の色かぶりがあり、PowerShot G10の方がややかぶりが大きい。

 最も背景がなめらかなのはDMC-LX3。PowerShot G10はCOOLPIX P6000に近く、やや塗り絵っぽい表現になってしまっている感はある。GX200はボケもきれいだし色再現もいい。


高感度

 高感度の画質も比較してみる。ISO感度は全モデルでISO800とISO1600の設定が可能。COOLPIX P6000はISO2000、DMC-LX3はISO3200の設定にも対応する。PowerShot G10はISO3200の設定が可能だが、RAWでの撮影は行えず、記録画素数は200万画素相当になる。COOLPIX P6000も、300万画素相当になるがISO3200/6400での撮影に対応している。なお、今回の作例では、ホワイトバランスは蛍光灯(白色)に固定した。

・ISO800


COOLPIX P6000 / 約7.5MB / 4,224×3,168 / 1/175秒 / F4.1 / 0EV DMC-LX3 / 約6.5MB / 3,648×2,736 / 1/80秒 / F4 / 0EV

GX200 / 約12.9MB / 4,000×3,000 / 1/143秒 / F4 / 0EV PowerShot G10 / 約13.8MB / 4,416×3,312 / 1/50秒 / F4 / 0EV

 COOLPIX P6000はノイズ低減が強力だが、その分解像感も犠牲になっている。逆に解像感を残してノイズ低減を抑えめなのがDMC-LX3。好みの分かれるところだが、ViewNXには詳細なノイズ処理の項目がなく、DMC-LX3の方が現像ソフトSILKYPIX Developer Studio 3.0 SEで追い込みをしやすい。

 ISO800からかなりの量のノイズが残っているのがGX200。正直、この段階ですでに非常用といった感じがある。PowerShot G10はノイズと解像感のバランスは悪くはないが、ややコントラストは弱め。PowerShot G10の現像ソフトDigital Photo Professionalも現像処理には多彩なオプションがあるので、追い込みはしやすい。

・ISO1600


COOLPIX P6000 / 約8.7MB / 4,224×3,168 / 1/326秒 / F4.1 / 0EV DMC-LX3 / 約8.3MB / 3,648×2,736 / 1/160秒 / F4 / 0EV

GX200 / 約15.7MB / 4,000×3,000 / 1/270秒 / F4 / 0EV PowerShot G10 / 約13.3MB / 4,416×3,312 / 1/100秒 / F4 / 0EV

 COOLPIX P6000はますます解像度が減少している。かなり強力なノイズ低減をしているため、全体的にのっぺりとした感じになっている。DMC-LX3の傾向も変わらず、ノイズを残して解像感を残すタイプ。

 GX200はかなりのノイズ量で、カラーノイズもさらに増えた。PowerShot G10のカラーノイズの少なさとコントラストの低下はトレードオフなのだろう。ノイズ自体は比較的うまく処理しており、それほど悪くはないと思う。

 実際の撮影状況でも比べてみた。ホワイトバランスは雰囲気を出そうと曇り(曇天)に設定した。

・ISO800


COOLPIX P6000 / 約10.9MB / 4,224×3,168 / 1/7秒 / F3.1 / 0EV DMC-LX3 / 約7.6MB / 3,776×2,520 / 1/15秒 / F2.5 / 0EV

GX200 / 約14.0MB / 4,000×3,000 / 1/6秒 / F4.4 / 0EV PowerShot G10 / 約16.7MB / 4,416×3,312 / 1/13秒 / F3.2 / 0EV

・ISO1600


COOLPIX P6000 / 約10.1MB / 4,224×3,168 / 1/18秒 / F3.2 / 0EV DMC-LX3 / 約8.4MB / 3,776×2,520 / 1/40秒 / F3.2 / 0EV

GX200 / 約17.5MB / 4,000×3,000 / 1/7秒 / F4.6 / 0EV PowerShot G10 / 約14.5MB / 4,416×3,312 / 1/25秒 / F3.2 / 0EV

まとめ

 実写編をまとめてみて、全体的に画質が良かったのはPowerShot G10だったように思う。最も高画素のモデルだが、細部の表現力が優れていて、色再現にも安定感がある。光学倍率が5倍で最も長く、28mmから140mmまで幅広い焦点距離をカバーしているのも便利。

 高感度画質に関してもPowerShot G10の画質が良かった。彩度が低くなるため、このままでは出力しづらいが、Digital Photo Professionalなどの現像ソフトで現像する際にパラメーターを操作すれば見栄えのする画像にもなるだろう。

 特に、きれいに光の回った時間帯であれば高画質の写真が撮影できる場合が多い。暗くなってくると低感度でもノイズが増え、空のような均一な空間にもノイズが出てくるので、やはり明るい昼間の屋外で使うと良さそうだ。

 解像度に関しては劣るものの、DMC-LX3も健闘している。細部の表現も良く、画素数も無理していないため扱いやすさがある。低感度で暗部にノイズが乗ることもなく、白トビ、黒つブレもしにくいようだ。

 今回、実写編ではRAWで撮影したものを使った。それぞれ純正ソフトで現像したが、付属の現像ソフトによってそれぞれ性格が異なり、高度な編集まで対応するものから、基本的な機能のみを搭載するものもある。

 いずれにしても、RAWで撮影したときのメリットはPCでの後処理の自由度の高さだ。パラメーターをいろいろいじれば、ガラリと異なる画像を出力できる。特にホワイトバランスが自由に変更できるし、露出や彩度なども補正できる範囲が広い。

 そのため、今回の画像も現像ソフトで追い込むことでより高画質のJPEGを出力することが可能だ。


計2回を振り返って

 前回の機能編と今回の実写編を見てみて、ハイエンドコンデジの四者四様の特徴が見えてきた。

 24mmという広角レンズに、コンパクトなボディを実現したGX200とDMC-LX3は、とにかく24mmという広角撮影が楽しい。おまかせiAや追っかけフォーカス、HD動画の撮影機能など、簡単に広角が楽しめるDMC-LX3に、電子水準器や自動レベル補正、ディストーション補正などの機能に加え、2つのダイヤルとレバーで露出制御が素早く行なえるといった、質実剛健に撮影に便利な機能を搭載し、よりこだわった撮影ができるGX200という区別ができるだろう。

 COOLPIX P6000は、特にGPSの搭載がうれしい。純粋なカメラとしての機能ではないが、こうした新機能を搭載しているニコンの積極性は買いたい。カメラ内でのRAW現像機能も豊富で、ホワイトバランスや露出補正、COOLPIXピクチャーコントロールなどの調整が可能。

 相変わらず優等生的なPowerShot G10だが、画質は優秀。良く光の回った状況であれば安定して高い画質を実現。高感度画質も健闘しており、ハイエンドコンデジにふさわしい画質だ。ダイヤルによるISO感度、露出補正の操作性は慣れが必要だが、慣れると便利に使える。

 広角を楽しみたい人はDMC-LX3かGX200の選択になるだろう。気軽に撮影する分にはどちらでもいいが、本格的な撮影よりも簡単さを重視する人はDMC-LX3を、本格的な撮影を重視する人はGX200を選ぶといい。マニュアル撮影に関してはGX200の方がやりやすい。

 GPSとLANに魅力を感じるならCOOLPIX P6000を選ぶといい。確かにGPSの現在地取得には時間がかかるが、GPS情報(ジオタグ)を画像に埋め込むと、あとから画像を見る場合の楽しみが増える。画像共有サイトの多くはジオタグに対応して撮影場所を地図上に表示してくれるし、Google Earthのようなツールで撮影場所をあとから確認するのも面白い。

 本体サイズの大きさが許容できるなら、PowerShot G10は画質も良くて安定感がある。むしろ大きいからこそ画質がいいのかもしれないが、とにかくいつでもどこでも持ち歩く、というサイズではない。また、2つのダイヤルやコントローラーホイールは独特な操作性であるため、好みが分かれるかもしれない。

 いずれも、ハイエンドコンデジとして独自の個性を備えたモデルばかりだ。オプションでCOOLPIX P6000とDMC-LX3はワイコン、GX200はワイコンとテレコン、PowerShot G10はテレコンが用意されるなど、拡張性もあって撮影が楽しくなる。

 いずれにしても、どんなシーンにも対応できて高画質を求めるならばデジタル一眼レフを使い、サブカメラとしてどのような用途で持ち歩くかを考えて選択するといいだろう。

【2008年12月5日】「LX200」との誤記を「DMC-LX3」に改めました。



URL
  COOLPIX P6000
  http://www.nikon-image.com/jpn/products/camera/compact/coolpix/p6000/
  LUMIX DMC-LX3
  http://panasonic.jp/dc/lx3/
  GX200
  http://www.ricoh.co.jp/dc/gx/gx200/
  PowerShot
  http://cweb.canon.jp/camera/powershot/g10/

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小山 安博
某インターネット媒体の編集者からライターに転身。無節操な興味に従ってデジカメ、ケータイ、音楽プレーヤー、コンピュータセキュリティなどといったジャンルをつまみ食い。軽くて小さいものにむやみに愛情を感じるタイプ。デジカメ、音楽プレーヤー、PC……たいてい何か新しいものを欲しがっている。

2008/12/04 00:50
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