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【新製品レビュー】ニコン COOLPIX S50/S50c

~簡単操作になった無線LAN転送
Reported by 本誌:武石 修

COOLPIX S50
 「COOLPIX S50」と「同S50c」は、ニコンのスタイリッシュラインの新モデルだ。両機の違いは無線LAN機能の有無。S50cは、IEEE 802.11b/g準拠の無線LANで画像をWeb上のサーバーに転送する機能を搭載している。

 式手ブレ補正機構が電子式からレンズシフト式に変わるなど、前モデルからカメラとしての機能ももちろん進化している。一方で、S50cの無線LAN機能にもいくつかの新機能が加わった。そこで今回は、S50cの無線LAN機能を中心にレポートしたい。


S50(左)とS50c S50c(右)は、レンズの脇にアンテナを備えている

レンズは35mm判換算38~114mmの光学3倍ズーム。屈曲光学系の採用でレンズが飛び出さない。手ブレ補正はレンズシフト式だ 液晶モニターは3型と大きい。ズームレバーは背面に配置

なめらかな曲線をとりいれたボディ。背面部分が黒なのでより薄く感じる 背面は右側にボタン類を集めた。ロータリーマルチセレクターが付いており、メニュー操作などはしやすい

ロータリーマルチセレクターの右側を押すと露出補正ができるが、その表示が側面に書いてあるため、一瞬迷うことがある

今回からホットスポットに対応。主要な空港、駅、ホテルなどで利用可能
 S50cは公衆無線LANを経由しての画像転送が特徴だが、この機能を同社で最初に搭載したのが先代モデルの「COOLPIX S7c」だ。S7cでは、無線LANによるPCへの直接転送(アドホックモード)とBBモバイルポイントを利用しサーバー(ニコンオンラインアルバム)への画像転送が可能だった。

 今回、S50cでは新たに、ピクチャーバンクと呼ばれるオンラインストレージと、写真をアップロードしたことをあらかじめ登録したメールアドレスに通知するピクチャーメールが加わった。ニコンオンラインアルバムへの転送も引き続き利用できる。なお、S7cで利用できたPCへの直接転送機能はS50cでは省略している。

 また、公衆無線LANのアクセスポイントとして、新たにNTTコミュニケーションズが提供しているホットスポットに対応した。ホットスポットは全国に約3,500カ所あり、BBモバイルポイントと合わせると、約7,000カ所となり、使える場所は大幅に増えたことになる。加えて、BBモバイルポイントが最大1年間無料で使用できるサービス「フリープラン」が付属する。S7cでは無料試用期間が2週間だったのでうれしい点だ。

 今回はフリープランを使ってマクドナルドから転送を試した。


ピクチャーバンク

 ピクチャーバンクは、「COOLPIX CONNECT」というサービスを利用したオンラインストレージだ。撮影した画像をそのまま転送して、後からPCで閲覧することができる。ストレージという性格上、転送時に画像をリサイズすることはできない。

 転送はすこぶる簡単だ。というのも、S50cにはフリープラン用の接続設定があらかじめ組み込んであるからだ。S7cでは、PCへの直接転送機能があったために、公衆無線LANでの転送時にSSID、WEPキー、ユーザー名、パスワードといったパラメーターを入力しなければならなかった。S50cでは、無線LANの面倒な設定なしで転送できるのが良い。まず操作に迷うことはないだろう。

 具体的な手順は、初回のみ自分のニックネームとメールアドレスの2つをカメラに入力しておく。カメラのCOOLPIX CONNECTモードに入ると、サービスの選択画面が出るので、ピクチャーバンクを選択。そして、転送する画像の選択画面に移る。画像は任意に選択できるほか、撮影日ごとに送信することもできる。その後、送信の確認を経て送信が行なわれる。


転送を開始するには再生モードで、アンテナのアイコンを選択 3つのサービスを選択できる。なお、ニコンイメージング会員に登録しないと、“オンラインアルバム”は表示されない

SSIDははじめから登録してあるので、そのままmobilepointを選択する すぐに接続が始まる

1枚づつ選ぶほかに、撮影日ごとにまとめて転送することもできる

選択画面 撮影日で選択することもできる

送信確認で“はい”を選択すると送信が始まる 初回の転送時は、空き容量が最大200MBになっている。この後、利用者登録を行なうことで容量が2GBとなる

 早速PCで画像を確認したいところだが、初回送信の後に、COOLPIX CONNECTサーバーにユーザー情報を登録をしなければならない。この登録はもちろん無料。初回の転送直後に登録のためのメールが届くので、そのメールにあるURLに移動し、COOLPIX CONNECTのログインに使用するパスワードなどを決める。このときS50cのキー情報も登録する。するとCOOLPIX CONNECTのURLが記載されたメールが届く。そしてCOOLPIX CONNECTにログインすれば転送した写真を見ることができる。


初めて転送を行なうと、カメラに入力したメールアドレス宛に、利用者登録のメールが来る COOLPIX CONNECTにログインするためのパスワードなどを決めるほか、カメラ固有のキー情報を入力する

キー情報は、カメラの「ワイヤレス設定」の「キー情報」から見ることができる キー情報が表示される

 COOLPIX CONNECTでは、アップロードした写真は撮影日別のフォルダに保存され、大量に送信しても自動的に整理される仕組みになっている。ユーザーがフォルダを作成して整理することも可能だ。画像にはタグを付けることができ、それをもとに検索もできる。サイトへは手動でのアップロードとダウンロードが可能なので、プリントなどで必要になった画像はそのつどダウンロードする、といった使い方もできる。

 また、作成したアルバムを他の会員と共有する機能が備わっており、単なるストレージ以上に活用できそうだ。アルバムを選択して共有したい人のメールアドレスを入力することで、相手に知らせることができるようになっている。


COOLPIX CONNECTのログインページ ログインすると、転送した写真が表示される

写真は焦点距離や、露出情報を見ることができる。検索用のタグも入力できる アルバムをほかの会員と共有することも可能

 ピクチャーバンクを利用したもう一つの機能として、電源ケーブルを接続すると自動的に転送を開始する、というものがある。これは、自宅で無線LANを使用していることが前提だが、充電と同時に写真を自動的に保存してくれるわけだ。このとき、既に送信済みの画像がメモリカードに入っていても、2重に送ってしまわないようになっており、その日撮ってきた写真をケーブルを差すだけで保存してしまう。

 COOLPIX CONNECTの容量は2GB。実際に撮影したS50cの画像サイズは最も高画質なモードの場合、平均すると1枚当たり2.7MB前後。単純計算で740枚程度を保存できることになる。これを多いと見るか少ないと見るかはそれぞれあると思うが、デジタル時代になってショット数が格段に増えていることを考えると、ストレージとして十分とはいえない感もある。加えて、メモリカードの値下がりが続いており、2GBのSDメモリーカードは安いものだど2,000円台で買えてしまうのだ。ここはさらなる容量アップに期待したいところである。


ストレージの空き容量は、「設定」の「マイフォト」から確認できる 電源ケーブルをつなぐだけで自動的に画像の送信を行なう

ピクチャーメール

 今回追加された機能のうち、最も大きなものがピクチャーメールだろう。これは、あらかじめ登録した知人などメールアドレスに画像入りのメールを送信し、写真をアップロードしたことを知らせる機能だ。海外ではS7cで既に実現していた機能で、ようやく国内でも利用できるようになった。

 操作は、基本的にピクチャーバンクのときと同様。途中で知らせたいメールアドレスと画像サイズを設定する。送信先メールアドレスの登録は、カメラ本体とPCのどちらからでも入力できるので、あらかじめメールアドレスがわかっている場合には、PCで入力した方が楽だ。というのも、カメラからの入力は、背面のダイヤル(ロータリーマルチセレクター)を回して行なうのだが、これが結構面倒なのだ。1文字づつ入力しなければならないので、沢山登録したい場合はやや大変だ。


送信時にリサイズができる 宛先はカメラで入力するほか、PCでも入力できる

メールアドレスを登録したところ、その都度送信するかを選択できる メールアドレスには、ニックネームも設定可能。アドレスより、ニックネームの表示を領した方が、わかりやすいだろう

 メールアドレスに対応するニックネームも設定できるので、宛先を選ぶ際にわかりやすくなっている。登録できるメールアドレスは30件までだが、個人的な利用では十分と思う。

 ピクチャーバンクはオリジナルサイズの転送のみだったが、ピクチャーメールでは送信時にリサイズすることができる。サイズはオリジナル以外に3種類あり、1,600×1,200ピクセルの「プリントサイズ」、1,024×768ピクセルの「PCサイズ」、400×480ピクセルの「TVサイズ」が利用できる。

 ピクチャーバンクでは一度に30枚まで写真を送信できる。メールは、容量の制限があり、あまり多くの枚数を1通で送ることはできないが、30枚は十分な枚数だろう。


転送中の画面。先ほど利用者登録を済ませたため、容量が本来の2GBになった 実際に送られてきたピクチャーメール。サムネイルは最大3枚まで表示され、いずれかをクリックすると共有サイトが開く

 お知らせメールには、最大3枚のサムネイルが表示され、それをクリックすると、共有サイトが開くようになっている。共有サイトには、ダウンロード機能が備わっていて、選択した写真を簡単に自分のPCに保存もできるようになっている。

 ピクチャーメールを受け取ることができるのは、現状ではPCのみだが、携帯電話にも送信できると面白いのではないだろうか。もちろん携帯電話のディスプレイに合わせてリサイズする必要はあるが、すぐに見てもらえるという利点がある。


まとめ

 ニコンは2005年に初めて無線LAN機能を搭載したコンパクトデジカメ「COOLPIX P1/P2」を投入。そのときはPCに直接転送するローカル接続で出発した。その後S7cでインターネット経由でオンラインアルバムに転送する機能が加わった。そしてS50cではオンラインストレージとメール通知サービスに対応したわけだが、ローカル接続機能を省略した。

 こうした流れを振り返ると、撮影した写真はPCではなくオンラインストレージに保管する、という方向性が見えてくる。S50cは充電のついでに自動転送してくれるのは非常に便利。オンラインストレージは、ネットワークの繋がるところならどこでもPCで写真を見ることができるのもメリットだ。ローカルのPCで必要になったらダウンロードして使えばよい。ただし、本格的にオンラインストレージとして使用するには、容量アップが不可欠だろう。

 ピクチャーメールも以前にS7cを試用したときから「あればいいな」と思っていた機能。ニコンでは主なターゲットをメールでの写真送付に不満を持つ女性としているが、そうしたユーザーにどうやって便利さをアピールしていくかが普及の鍵だろう。


作例(COOLPIX S50cで撮影)


  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです

  • 作例下の撮影データは、記録解像度(ピクセル)/露出モード/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します



  • 3,072×2,304 / オート / 1/160秒 / F3.3 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 6.3mm
    3,072×2,304 / オート / 1/500秒 / F6.6 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 6.3mm

    3,072×2,304 / オート / 1/800秒 / F4 / -0.7EV / ISO100 / WB:オート / 14.1mm
    3,072×2,304 / オート / 1/320秒 / F4.1 / -1EV / ISO100 / WB:オート / 17.3mm

    3,072×2,304 / オート / 1/500秒 / F3.6 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 9.4mm
    3,072×2,304 / オート / 1/400秒 / F7.2 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 9.4mm

    3,072×2,304 / オート / 1/80秒 / F4.1 / -0.7EV / ISO100 / WB:オート / 17.3mm
    3,072×2,304 / オート / 1/320秒 / F7.7 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 12.6mm

    3,072×2,304 / オート / 1/250秒 / F4.2 / -0.7EV / ISO100 / WB:オート / 18.9mm
    3,072×2,304 / オート / 1/320秒 / F6.6 / -0.7EV / ISO100 / WB:オート / 6.3mm

    3,072×2,304 / オート / 1/500秒 / F6.6 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 6.3mm
    3,072×2,304 / オート / 1/800秒 / F4.2 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 18.9mm

    3,072×2,304 / オート / 1/500秒 / F4.1 / 1.3EV / ISO100 / WB:オート / 15.7mm
    3,072×2,304 / オート / 1/800秒 / F4.1 / 1.3EV / ISO100 / WB:オート / 15.7mm

    シャッタースピードは1/10だが、ブレずれ撮れた。手ブレ補正のおかげだ
    3,072×2,304 / オート / 1/10秒 / F3.3 / 0EV / ISO200 / WB:マニュアル / 6.3mm
    こちらも1/10秒。かなりのマクロ域だが、手ブレ補正ONのため、なんとかブレなかった
    3,072×2,304 / オート / 1/10秒 / F4.2 / 0EV / ISO400 / WB:マニュアル / 18.9mm

    3,072×2,304 / オート / 1/80秒 / F3.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 12.6mm
    3,072×2,304 / オート / 1/320秒 / F4.1 / -0.7EV / ISO100 / WB:オート / 15.7mm

    3,072×2,304 / オート / 1/320秒 / F3.3 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 6.3mm
    3,072×2,304 / オート / 1/500秒 / F4.2 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 18.9mm

    3,072×2,304 / オート / 1/400秒 / F6.6 / -0.7EV / ISO100 / WB:オート / 6.3mm
    3,072×2,304 / オート / 1/250秒 / F4.2 / -0.7EV / ISO100 / WB:オート / 18.9mm

    3,072×2,304 / オート / 1/400秒 / F6.6 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 6.3mm レンズが出ないため、カメラを持つ指がレンズに近すぎると、広角側で指が写ってしまうことがある。気をつけたい
    3,072×2,304 / オート / 1/320秒 / F6.6 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 6.3mm


    URL
      ニコン
      http://www.nikon.co.jp/
      製品情報(製品情報(COOLPIX S50)
      http://www.nikon-image.com/jpn/products/camera/compact/coolpix/s50/
      製品情報(COOLPIX S50c)
      http://www.nikon-image.com/jpn/products/camera/compact/coolpix/s50c/

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    本誌:武石 修

    2007/05/18 00:34
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