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【新製品レビュー】オリンパス μ780

~リニューアルした手ブレ補正搭載の5倍ズームモデル
Reported by 吉住 志穂

 すでに見慣れた感のある楔形ボディの「μ」(ミュー)ですが、このかたちになったのは2006年2月の「μ710」が最初。このとき以来、「μ DIGITAL」または「μ-mini DIGITAL」だった名称が、銀塩コンパクトカメラと同じ「μ」に改められました。

 その後、電子式手ブレ補正の「μ810」、5倍ズームでCCDシフト式手ブレ補正を搭載した「μ750」、1,000万画素の「μ1000」と進化を繰り返し、現行機種では3倍ズームの「μ760」と5倍ズームの「μ780」に落ち着いています。

 2007年春モデルの先陣としてμ760が登場したとき、「μ750の5倍ズームはなくなっちゃうの?」と思ったものです。小さなボディに5倍ズームを搭載したμ750の先進性を考えると、μ760の存在はいかにも平凡。しかしオリンパスは、μ750の後継機種をちゃんと用意してくれました。それが今回紹介するμ780です。


 

●光るボタンで視認性がアップ!!
 μ750との外観上の違いは、メッキパーツが増えてきらびやかな印象になったこと。その代わり、パーツによる継ぎ目が増えたためでしょうか。金属の固まりを削り出したかのような、μ710から続く独特の高級感が薄れた気がします。しかし、前から見ると、μ750からほとんど変化が見られません。ただし、録音マイクの位置が、向かって右上から中央上側に移動しました。左手でふさがないようにとの配慮でしょう。

 背面はかなり変化しています。液晶モニターが左端に寄ったことで、十字ボタンなど親指で操作するボタン類が大型化しています。形状もより押しやすくなり、使い勝手が向上しました。さらにボタン上の文字が光るので、屋内や夜景の撮影で大変便利です。

 よく使うモードダイヤルの位置が移動したのも改良点です。μ750では背面の右端中央付近の少し上でしたが、μ780では背面の右上端になりました。このため、人差し指での操作が容易になっています。μ780は再生モードへの切替など、モードダイヤルを頻繁に操作するので、この改良は助かります。

 撮影時の持ちやすさは、若干μ780が良い印象を受けます。OLYMPUSのロゴ部分を指がかりとして利用できるようになったためです。ただし、カメラの持ち方には個人差があるので、店頭で自分に合うか確認した方が良いでしょう。

 もちろんμ750に引き続き、JIS保護等級4相当の生活防水機能を採用。突然雨が降ったり、ちょっとした波しぶきを受けても大丈夫なので、屋外での撮影で大変重宝します。ただし防水機能は、非動作時に限定されるので注意してください。




大きくなって使いやすいボタン。文字が光るようになった 若干右上に移動したモードダイヤル

バッテリーはFEシリーズなどと同じ形状の小型タイプ。CIPA準拠の撮影可能枚数は250枚。記録メディアはxDピクチャ―カード
大きめの充電器(左)とバッテリー(右下)。オリンパスの充電器は国内・海外共通仕様なので、ACケーブルが240Vに対応。太くてかさばるのが難点

 

●「TruePic III」でノイズが減少、歪曲収差もほとんどなし
 CCDはμ750と同じ仕様の1/2.33型有効710万画素。感度は、ISO AUTOで80~400、マニュアル設定で最高ISO1600、シーンモードの「キャンドル」と「寝顔」でISO2500。キャンドルと寝顔は、記録解像度が2,048×1,536ピクセルになります。

 増感によるノイズについては、ISO80~200はほとんど変化がなく、ISO400から大幅にノイズが目立ち始める印象です。しかし、ISO1600まで増感したとしても、ディテールをなるべく残した上で、良く抑えています。新搭載の画像処理エンジン「TruePic III」によるものでしょう。さすがにISO2500は輪郭が曖昧になり、ハイライト以外はカラーノイズに覆われますが、それでも従来機の画素混合による高感度よりも、ディテールの喪失が抑えられている印象です。

 光学5倍ズームレンズの仕様も、μ750から変わっていませんん。焦点距離36~180mm(35mm判換算)、開放F3.3~5で、最短撮影距離は70cm。マクロモードにすると、広角端で20cm、望遠端で60cmまで被写体によることができます。広角端限定のスーパーマクロモードなら、レンズ前2cm出の近接撮影が可能です。

 レンズ性能で特筆すべきは、中心部の解像感が素晴らしくシャープなこと。また広角端での歪曲収差がほとんど見られないことです。μ750ではタル型の収差が残っていましたが、今回は歪みが大幅に低減。おそらく、画像処理で補正しているのでしょう。建物を撮るとはっきりわかります。

 その弊害かどうかは断定できませんが、画像の四隅が若干ぼやけた描写になるケースがあります。像がわからなくなるほど描写が流れたようになるわけではありませんが、四隅にうっすらとボケた範囲が広がった写真を何度か確認しました。

 液晶モニターは約23万画素の2.5型「ハイパークリスタル液晶モニタ―」。高精細で、これまでの機種より明るさが上がりました。屋外での見えも悪くありません。暗いシーンをフレーミングすると、表示がパッと明るくなる「ブライトキャプチャー」も実用的です。屋内での撮影が多い人には重宝すると思います。ただ、実際に撮影された写真よりも、表示にわずかな黄色の濁りが目立つのが気になります。

撮影時の表示例
主な設定項目はファンクションメニューから設定できる

MENUボタンを押すと、消音メニューなどのメニューパレットを表示 撮影メニューからも撮影設定が行なえる

上ボタンを押すことで、露出補正メニューをダイレクトに呼び出せる
シーンモードの選択画面は従来通りだ

 

●顔検出と同時に逆光を補正
 μ780からの新機能として、「顔検出逆光補正機能」があります。オリンパス初の顔検出機能ですが、顔にフォーカスを合わせると同時に、被写体の明るさに合わせて、部分ごとに適正な露出を行ないます。特に逆光での人物撮影に有利な機能といえます。

 自分撮りで試したところ、確かに顔を目指してフォーカス枠が移動します。しかし、顔全体を枠で囲う他社の顔検出機能と違い、枠の大きさも、位置も、顔とぴったり合いません。頬や髪などを中心に枠が重なるので、その効果が不安になります。おそらく、表示位置と大きさに制限のあるiESP測距のフレーム枠表示を流用しているためでしょう。

 このとき、自動的に逆光を補正しますが、その効果は確かです。通常、黒くなる顔部分が、見事に明るく補正されます。逆光かどうかよくわからないときでも、人物を撮るときは念のためONにするのも良いでしょう。

 顔検出自体の精度は、他社の同様の機能より若干低く感じました。顔ではなく、背景にピントが合うケースが何度か見られます。あえて逆光で試したせいもありますが、もう少し精度が上がれば、誰でも気楽に使える機能になると思います。

背面右下の専用ボタンを押すと現れるON/OFFメニュー。どの撮影モードでも使用できます
この機能の作動中は、顔にフォーカスが合います。ただし専用の枠が出る訳ではなく、iESPのAF枠を利用しているようです

 もうひとつの新機能は、ガイド撮影の1項目として新設された「パーフェクトショットプレビュー」です。ガイド撮影は、「被写体を明るく撮影したい」など、目的の項目をメニューから選ぶと、それにあった機能をカメラが提示し、操作をアシストするという機能です。

 ここまではμ750と同じですが、μ780ではガイド撮影の一番上に、「撮影効果を比較して設定する」という項目が追加されました。これは露出補正、色合い、測光方式など、6種類の機能のそれぞれの効果を、4分割の画面でリアルタイムに表示する機能です。特に、露出補正や色合いを比較しながら決定できるのは便利。2.5型の大型液晶モニターを活かした機能といえるでしょう。

 なお、アスペクト比16:9での撮影モードも、μ750になかった機能です。記録解像度はフルHDと同じ1,920×1,080ピクセルになります。

 ほかにも、カレンダー合成などが可能な「フォトデコ」をはじめ、BGM付きのスライドショウ再生や、内蔵メモリに9枚まで縮小画像を保存できる「ポケット写真」機能など、遊べる機能が多くあります。


ガイド撮影のトップメニュー。一番上を選ぶと「パーフェクトショットプレビュー」が作動する
画面を4分割し、露出補正の状態をシミュレート。右ボタンで後2枚の比較写真も表示される

内蔵メモリに9枚まで登録できる「ポケット写真」。内蔵メモリは約18MB ポケット写真を表示。モードダイヤルに専用ポジションがあるので、すぐ呼び出せる

メニューのカラーを変更する機能もある

 

●まとめ
 操作面での不満はほとんどありませんが、気になる点が1つあります。それはμ750と同じく、シャッターボタンが硬いこと。生活防水機能のため仕方がない部分もありますが、ここまで硬いと手ブレの原因になりそう

 コンパクトなボディと光学5倍ズームレンズの組み合わせはそのままに、TruePic IIIによる高画質化や、顔検出逆光補正など新機能を採り入れたμ780。手ブレ補正も抜かりなく搭載するなど、常時携帯するための小型モデルとしては機能のバランスも良く、「手軽に携帯したいけど、機能も欲しい」という人には検討する価値のある機種です。

 私の勝手な要望としては、もっとカラフルなボディカラーを用意して欲しいです。シルバーはともかく、ディープブルーとモカブラウンは渋すぎて、若い女性が喜ぶ色とはちょっと違うような気がします。下位モデルのμ760ではアクアブルーやラベンダーピンクを選べるので、女性向けはμ760、男性向けはμ780、という位置付けなのかもしれません。しかし、顔検出を搭載したμ780こそ、女性を意識してもいいのでは? 個人的にはぜひ、μ750にあったライムグリーンやサンセットレッドを復活して欲しいのですが……。

μ780(ディープブルー) μ780(モカブラウン)

μ750にはこんなに明るくてきれいな色がありました。写真はライムグリーン 限定モデルのμ750アイスピンクも。この系統の色は下位モデルμ760に引き継がれたようです

 

●作例

  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 作例下の撮影データは、記録解像度(ピクセル)/撮影モード/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。
  • 強調のため一部の項目を1行目に抜粋した場合もあります。


ISO感度

ISO80
3,072×2,304 / プログラム / 1/40秒 / F4.7 / -0.3EV / WB:晴れ / 18.27mm
ISO100
3,072×2,304 / プログラム / 1/50秒 / F4.7 / -0.3EV / WB:晴れ / 18.27mm

ISO200
3,072×2,304 / プログラム / 1/80秒 / F4.7 / -0.3EV / WB:晴れ / 18.27mm
ISO400
3,072×2,304 / プログラム / 1/160秒 / F4.7 / -0.3EV / WB:晴れ / 18.27mm

ISO800
3,072×2,304 / プログラム / 1/320秒 / F4.7 / -0.3EV / WB:晴れ / 18.27mm
ISO1600
3,072×2,304 / プログラム / 1/800秒 / F4.7 / -0.3EV / WB:晴れ / 18.27mm

 


ISO2500
2,048×1,536 / キャンドル / 1/40秒 / F3.3 / 0EV / WB:オート / 6.4mm
ISO2500
2,048×1,536 / キャンドル / 1/10秒 / F3.8 / -0.7EV / WB:タングステン / 8.86mm

画角

広角端
3,072×2,304 / 夜景 / 2.5秒 / F3.3 / -1EV / ISO100 / WB:タングステン / 6.4mm
望遠端
3,072×2,304 / 夜景 / 3.2秒 / F5 / -0.3EV / ISO100 / WB:タングステン / 32mm

歪曲収差

広角端
3,072×2,304 / プログラム / 1/60秒 / F3.3 / 0.7EV / ISO80 / WB:曇り / 6.4mm
望遠端
3,072×2,304 / プログラム / 1/40秒 / F5 / 0.7EV / ISO80 / WB:曇り / 32mm

マクロモード(最短距離)

マクロ広角端
3,072×2,304 / プログラム / 1/500秒 / F5 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 6.4mm
スーパーマクロ
3,072×2,304 / プログラム / 1/500秒 / F5 / 0.7EV / ISO80 / WB:オート / 6.4mm

顔検出逆光補正機能

 OFFだとピントは奥に合いましたが、ONにすると顔にピントが来ました。同時に顔も明るくなっています。露出補正と同じような効果が得られるようです。今回の場合、およそ0.7EVの+補正と同じ状態になりました。


OFF
3,072×2,304 / プログラム / 1/500秒 / F3.3 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 6.4mm
ON
3,072×2,304 / プログラム / 1/400秒 / F3.3 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 6.4mm

OFF/手動で+0.7EVに補正
3,072×2,304 / プログラム / 1/250秒 / F3.3 / 0.7EV / ISO80 / WB:オート / 6.4mm

16:9

16:9
1,920×1,080 / 風景 / 1/125秒 / F4 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 10.05mm

作品

3,072×2,304 / プログラム / 1/800秒 / F4.4 / 0.7EV / ISO80 / WB:晴れ / 13.54mm 3,072×2,304 / プログラム / 1/30秒 / F5 / 1EV / ISO100 / WB:オート / 32mm

3,072×2,304 / プログラム / 1/320秒 / F5 / 0.7EV / ISO80 / WB:晴れ / 32mm 3,072×2,304 / プログラム / 1/100秒 / F4.8 / 0EV / ISO80 / WB:曇り / 20.84mm

3,072×2,304 / プログラム / 1/800秒 / F4 / 0.7EV / ISO80 / WB:晴れ / 10.05mm
3,072×2,304 / プログラム / 1/400秒 / F5 / 0.3EV / ISO80 / WB:晴れ / 32mm

3,072×2,304 / プログラム / 1/30秒 / F4.5 / 0.3EV / ISO80 / WB:曇り / 15.81mm
3,072×2,304 / プログラム / 1/30秒 / F3.3 / 0.3EV / ISO80 / WB:曇り / 6.4mm

3,072×2,304 / プログラム / 1/60秒 / F4.8 / 1EV / ISO80 / WB:曇り / 20.84mm
3,072×2,304 / プログラム / 1/800秒 / F5 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 6.4mm

3,072×2,304 / 夜景 / 2 秒 / F3.8 / 0.3EV / ISO100 / WB:晴れ / 8.86mm 3,072×2,304 / プログラム / 1/50秒 / F5 / -1EV / ISO80 / WB:晴れ / 32mm


URL
  オリンパス
  http://www.olympus.co.jp/
  製品情報
  http://olympus-imaging.jp/digitalcamera/mju780/

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吉住 志穂
(よしずみ しほ)1979年東京生まれ。日本写真芸術専門学校卒業後、竹内敏信事務所に入社。 2005年4月に独立。自然の「こころ」をテーマに、花や風景の作品を撮り続けている。「デジタルフォト」や「日本フォトコンテスト」で連載中。日本自然科学写真協会(SSP)会員。http://www.geocities.jp/shihoyoshizumi/

2007/05/14 00:00
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