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キヤノンPowerShot G10【第1回】
ピクチャースタイルを試してみた

Reported by 本誌:武石 修


PowerShot G10
 PowerShot G10を購入した経緯は以前の記事で書いたので省略するが、この年末年始で2,000ショット近くを撮影した。さまざまな特徴のある機種だが、第1回目は「ピクチャースタイル」をテーマに選んでみた。PowerShot G10が、キヤノンのコンパクトデジタルカメラとして初めピクチャースタイルを適用できるようになった機種だからだ。

 ピクチャースタイルは、キヤノンデジタル一眼レフカメラの現像パラメーターとして用意されているプリセットで、絵作りの変更が簡単にできるため愛用している人も多いと思う。便利な機能だが、キヤノンのコンパクトデジタルカメラには搭載されていないのが現状だ。しかしRAWで撮影して、カメラ付属のRAW現像ソフト「Digital Photo Professional」(DPP)を使用すれば、EOS Digitalシリーズと同じようにピクチャースタイルを適用できる。

 DPPで現像可能なRAW形式で撮影可能なコンパクトデジタルカメラは、近年ではPowerShot G10だけ。DPPを経由するとはいえ、やっとコンパクトデジタルカメラのRAW画像にピクチャースタイルを適用することができるようになったわけだ。(前モデルの「PowerShot G9」でもRAW記録自体は可能だったのだが、現像はピクチャースタイル非対応の「Raw Image Task」というソフトで行なわねばならず、DPPは使えなかった。)

 なお、PowerShot G10には、本体で設定できる「マイカラー」という画質プリセットがあるが、JPEG撮影時のみしか使えないため、後からPCでプリセットを変更することはできない。マイカラーは、より手軽な画質設定機能といえそうだ。(マイカラーについては、後の回で詳しく試す予定)。


Digital Photo Professionalでピクチャースタイルを適用しているところ
 DPPでの操作はピクチャースタイルを適用したい画像を表示させて、プルダウンからプリセットを選ぶだけ。プリセットは現在、スタンダード、ポートレート、風景、ニュートラル、忠実設定、モノクロが用意されている。さらに、Webサイトからダウンロードすることで、スタジオポートレート、スナップショットポートレート、ノスタルジア、クリア、トワイライト、エメラルド、紅葉の7種類を追加することが可能。

 ピクチャースタイルは、シャープネス、コントラスト、色の濃さ、色合いの4つのパラメーターの組み合わせを変更できるもの。一般的に、コンパクトデジタルカメラはデジタル一眼レフカメラに比べてシャープネスが強めといわれているが、PowerShot G10もややそうした傾向が見られる。ピクチャースタイルにははシャープネスの項目も含まれているので、どのように変化するのかも気になるところ。現像結果を見ると、カメラのJPEG画像に比べて、[スタンダード]で現像したものは、色調はほぼ同じだったが、シャープネスは若干弱くなっていた。

 ところで、EOS Digitalには、「Picture Style Editor」というソフトが付属する。各パラメーターを変えてオリジナルのピクチャースタイルファイルを保存できるソフトなのだが、なぜかPowerShot G10のRAWには対応していない。せっかく「.CR2」のRAW形式で記録できるようになったのだから、是非対応して欲しいものだ。だが、EOS Digital用ではあるが、Webには自作のピクチャースタイルファイルを公開している人も多いので、試してみるのもありだろう。

 いろいろ試してみたが、ピクチャースタイルを適用することで写真の印象を大きく変えることができた。画像によって、適しているものやちょっと“やりすぎ”た感じになるものなどさまざまだ。まだ試していないユーザーは是非トライして欲しい。

 今回は、カメラの話しというよりピクチャースタイルの話しになってしまったが、カメラ撮って出しのJPEG画像も掲載しているので、ご覧いただきたい。

 作例は、1月8日から米ラスベガスで開催していたイベント取材の際に撮影した。ラスベガスは砂漠地帯とあって乾燥しており、日本に比べてかなり空気が澄んでいる。そのため屋外の写真は、国内で撮影した写真よりくっきりと写る点をご承知置き頂きたい。

●作例

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。
  • 「JPEG撮影」はカメラで撮影したJPEG画像です。また、現像した画像はDPPでピクチャースタイルのみ変えて現像しています。


JPEG撮影
4,416×3,312 / 1/4秒 / F5.6 / 0EV / ISO80 / マニュアル露出 / WB:太陽光 / 6mm
 ホテルの窓から朝焼けを撮影。オリジナルに比べて[風景]ではほぼ色調は同じ。[クリア]はかなり色調を変化させており、記憶色に近い。[トワイライト]は、このシーンには合わなかったのか、やや不自然なグラデーションになった。


[スタンダード] [風景] [クリア]

[トワイライト]

JPEG撮影
3,312×4,416 / 1/250秒 / F4.5 / 0EV / ISO80 / 絞り優先AE / WB:オート / 30.5mm

 横断歩道の標識を入れて撮影。彩度を抑えたアンバーな色調という[ノスタルジア]を試してみた。ただ、このシーンでは変化は少なかった。[ニュートラル]にしたところ、さらに落ち着いたイメージになった。


[スタンダード] [ノスタルジア] [ニュートラル]

3,312×4,416 / 1/1,250秒 / F4.5 / -0.7EV / ISO80 / 絞り優先AE / WB:オート / 30.5mm
 消火栓をメインにした街角の景色。[風景]では、背景の看板の彩度が上がるのに加えて、遠景がくっきりする。[ノスタルジア]では、逆に全体の彩度とコントラストが落ちて、おとなしい印象に。


[スタンダード] [風景] [ノスタルジア]

JPEG撮影
4,416×3,312 / 1/1,000秒 / F5.6 / -0.7EV / ISO80 / 絞り優先AE / WB:オート / 30.5mm

 ストラトスフィアタワーの展望台から。空気が澄んでいるといってもかなりの遠景なので、コントラストのやや低い描写になっている。[風景]の適用でくっきり感が上がり、空の色も自然になった。[クリア]を使用すると、かなりハイコントラストになる。またシャープネスも強めにかかることから、建物の描写もしっかりしてくる。


[スタンダード] [風景] [クリア]

JPEG撮影
3,312×4,416 / 1/400秒 / F4 / 0EV / ISO80 / 絞り優先AE / WB:オート / 6mm
 椰子の木と飛行機雲。撮って出しでも十分綺麗な色調だ。飛行機の形が判別できるのは、1,470万画素の面目如何といったところか。[風景]にすると空の青さが一段と増し、飛行機雲とのコントラストが気持ちいい、いわゆる記憶色の画になる。[クリア]ではいっそうコントラストと彩度が増す。[クリア]はややノイズ感が増えるようだ。


[スタンダード] [風景] [クリア]

JPEG撮影
3,312×4,416 / 1/200秒 / F4 / +0.7EV / ISO80 / 絞り優先AE / WB:オート / 6mm

 青空をバックにした看板で、半逆光になっている。[風景]だと空がやや紫色を帯びる。人によっては不自然に感じるかもしれない。[クリア]は空が深い青になる。看板自体もくっきりし、印象的な画になった。[ノスタルジア]を試したところ、空が薄い紫色の不思議な仕上がりに。


[スタンダード] [風景] [クリア]

[ノスタルジア]

JPEG撮影
4,416×3,312 / 1/125秒 / F8 / 0EV / ISO80 / マニュアル露出 / WB:オート / 6mm
 全面に日が当たるホテルを撮影。[風景]では、空の青さが増し好ましい結果になった。一方[クリア]は、かなりコントラストと彩度が上がってしまい不自然に。


[スタンダード] [風景] [クリア]

JPEG撮影
4,416×3,312 / 1/250秒 / F5.6 / -0.3EV / ISO80 / 絞り優先AE / WB:オート / 13.8mm

 夕方に撮影したホテルの門。オリジナルでは、細部までよく描写できている印象。[ノスタルジア]で落ち着いた印象を狙ってみた。ピクチャースタイルには[モノクロ]もあるので、気軽に試してみたい。


[スタンダード] [風景] [ノスタルジア]

[モノクロ]

JPEG撮影
3,312×4,416 / 1/125秒 / F5 / 0EV / ISO80 / 絞り優先AE / WB:オート / 30.5mm

 人工池にゴンドラが浮かぶシーン。スタンダードでも綺麗だが、[エメラルド]を適用することで、池がより瑞々しくなった。このシーンでの[風景]はやや落ち着いた感じだ。


[スタンダード] [エメラルド] [風景]

JPEG撮影
4,416×3,312 / 4秒 / F5.6 / 0EV / ISO80 / マニュアル露出 / WB:オート / 30.5mm

 夕暮れに撮影した建設中のビル。[風景]では、空が紫がかり雰囲気としては悪くない。[トワイライト]では、空がかなり紫色になってしまい、不自然な仕上がりに。[クリア]はかなりコントラストが強調された。作品表現上こういうのもありかもしれない。


[スタンダード] [風景] [トワイライト]

[クリア]

JPEG撮影
4,416×3,312 / 3秒 / F4 / 0EV / ISO80 / マニュアル露出 / WB:オート / 10.8mm

 ホテルをバックに展示してあった自動車を撮影。撮影時は日没直後だった。まさにトワイライトの時刻。[トワイライト]を適用すると空に紫色のグラデーションが現れた。[ノスタルジア]だと車に反射していた色がほとんど消え、かなり落ち着いた印象に。[ニュートラル]では、車のボンネットの青みが残った上で、自然な仕上がりになった。


[スタンダード] [ノスタルジア] [ニュートラル]

[トワイライト]

JPEG撮影
4,416×3,312 / 1/250秒 / F4.5 / -1.3EV / ISO80 / 絞り優先AE / WB:オート / 30.5mm

 空港のゲートからホテル群をバックに撮影。[風景]では標識などがより青くなり、遠景もややくっきりする。[ノスタルジア]は落ち着いていて、こういったシーンにもなかなか合うように思う。[クリア]は、背景の黄色みがかなり強く、ややポップな仕上がりになった。


[スタンダード] [風景] [ノスタルジア]

[クリア]


URL
  キヤノン
  http://canon.jp/
  製品情報
  http://cweb.canon.jp/camera/powershot/g10/
  バックナンバー
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm2009.htm#powershot_g10

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本誌:武石 修

2009/01/19 18:29
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