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オリンパスE-3【第2回】
手ブレ補正はくたびれる機能である

Reported by 北村 智史


E-3と今回使用したレンズ。左からZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4 SWD、ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8-3.5 SWD、ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2 Macro
 手ブレ補正はくたびれる機能である。なぜかというと、どれくらいの効き目があるのかをチェックするのにかなりの枚数を撮らなくてはならないからだ。

 E-3に搭載されたセンサーシフト方式の手ブレ補正は、シャッター速度で最高約5段分の補正効果があるという。シャッター速度で5段分といったら、50mmレンズで1/3秒まで、12mmなら1.3秒まで大丈夫という意味である。もちろん、ありとあらゆる条件で5段分の補正効果が得られるわけではない。だから「最大」と書かれているのだが、それにしたってものすごくインパクトのある数字なのである。

 で、やっぱりテストである。最大5段分とやらの実力を見せてもらわねばなるまい。テストと言っても方法はいたってシンプル。以前にE-510の長期レポートでやったのと同じで、シャッター速度を何段階か変えながら撮った画像をチェックして、ブレていないカットの率を集計する。と書くと簡単そうに思えるかもしれないが、実際はけっこうつらい。

 というのは、それなりのデータを得るには、それなりの枚数を撮らないといけないからで、しかも今回は担当編集者からE-510と比較して欲しいとのお達しである。そのうえレンズは新製品のED 50-200mm F2.8-3.5 SWDでと指定までされてしまった。

 E-510のときはカメラも軽かった上にレンズも超軽量なZUIKO DIGITAL ED40-150mm F4-5.6だったから撮影自体は楽勝だったが、今度のは重量級。ボディも重いし、レンズも1kgを超える(三脚座別で995g)。考えただけで肩が凝りそうだ。

 まあ、それはさておき、焦点距離は望遠端の200mmに固定。35mmフィルムカメラ換算400mm相当なので、いわゆる手持ち限界は1/400秒。シャッター速度は1/200秒、1/100秒、1/50秒、1/25秒、1/13秒の5段階。で、各シャッター速度ごとに50枚ずつ撮る。ほんとは1/400秒のも撮ったのだが、E-3で撮ったのがピント合わせをしくじってアマアマ画像が多発して、撮り直そうとしたときには日が傾きかけていて1/200秒までしか切れなかったため、1/200秒から1/13秒までをチェック対象にした。


E-510。11月20日公開のファームウェア1.2で、手ブレ補正の性能が向上した
 E-510はファームウェアのバージョンが1.1で、これを1.2にアップすると手ブレ補正の性能がよくなるらしい。なので、その前後でどう変わったかもちょこっと触れて欲しいとのお達しである。

 もちろん、比較のために手ブレ補正オフでも撮影している。なので、E-3は1回目が1/400秒から1/13秒までの6段階×50枚×手ブレ補正のオンとオフ、2回目が1/200秒から1/13秒までの5段階×50枚×手ブレ補正のオンとオフで計1,100枚。E-510は1/400秒から1/13秒までの6段階×50枚×ファームウェアバージョン1.1と1.2の手ブレ補正のオンとオフで計900枚。さらに比較用に三脚に載せて撮ったのが6枚の合計2006枚というのが火曜日の撮影である。

 水曜日に作例写真を撮りに行ったのだが、曇り+若干晴れ間ありという、これまた手ブレ補正のチェックには持ってこいの条件。昼前から撮りはじめてED 12-60mm F2.8-4 SWD、ED 50-200mm F2.8-3.5 SWD、ED 50mm F2 Macroの3本のレンズで合計264枚。2日間で2,270枚撮ったわけである。

 問題は、画像のチェックである。1/400秒はパスしたものの、それでも対象は1,250枚もある。それをまず50%縮小表示で「ブレてる」、「ブレてない」と分類して、そこからさらに、ピクセル等倍で「OKカットをピックアップするのである。

 で、集計した結果がこれだ。

50枚のうち手ブレしていなかったカット数
機種名 Ver. IS 1/200秒 1/100秒 1/50秒 1/25秒 1/13秒
○+△ ○+△ ○+△ ○+△ ○+△
枚数 比率
(%)
枚数 比率
(%)
枚数 比率
(%)
枚数 比率
(%)
枚数 比率
(%)
枚数 比率
(%)
枚数 比率
(%)
枚数 比率
(%)
枚数 比率
(%)
枚数 比率
(%)
E-3 1.0 ON 4590 50100 3060 3468 714 1020 24 24 00 00
OFF 1224 1734 36 48 12 24 00 00 00 12
E-510 1.2 ON 3672 4794 3366 4386 1938 3774 1428 2040 612 918
1.1 ON 2958 4080 2448 3774 1326 1632 1428 2346 612 714
OFF 1020 1224 24 510 00 12 00 00 00 00

「○」はピクセル等倍で見てもブレていないと認められるカット、「○+△」は50%縮小表示で見てブレていなさそうに見えるカット。あまり大きくプリントしないのであれば「○+△」のカットの率を成功率と言ってもいいが、シビアに見るなら「○」のカットの率が成功率となる。

  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 作例下の撮影データは、使用レンズ/記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。
  • 仕上がり設定はすべてNATURAL、ノイズフィルタは標準で撮影しています。


比較のために三脚を使って撮ったカット。手持ちのとは撮った時間が違うので色も露出も違う
ED 50-200mm F2.8-3.5 SWD / 3,648×2,736 / 1/400秒 / F4 / ISO100 / WB:晴天 / 200mm
「○」の画像=ピクセル等倍で見てもブレていないと認められるカット
ED 50-200mm F2.8-3.5 SWD / 3,648×2,736 / 1/200秒 / F4 / ISO100 / WB:晴天 / 200mm

「△」の画像=50%縮小表示ならOKそうだが、ピクセル等倍で見るとブレているカット
ED 50-200mm F2.8-3.5 SWD / 3,648×2,736 / 1/100秒 / F5.6 / ISO100 / WB:晴天 / 200mm
「×」の画像=50%縮小表示でもちょっとなぁと思える手ブレカット
ED 50-200mm F2.8-3.5 SWD / 3,648×2,736 / 1/50秒 / F8 / ISO100 / WB:晴天 / 200mm

 さて、結果を見るとちょっと微妙である。1/200秒ではE-3の方がブレが少ないが、1/100秒以下ではE-510の方がよかったりする。ひとつの読み方としては、1/200秒でブレが少ないE-3の方が手ブレ補正の性能は上、遅いシャッター速度でE-510の方がいいのは筆者の腕力が足りないせいで(手ブレ補正オフでの成績がひどく悪いのはそのためと考えられる)、だからより軽量なE-510が好成績となった、というものだ。

 もうひとつおもしろいのが、E-510のファームウェアのバージョンの違いによる成績の差。1/50秒以上の条件では、新ファームの方が10%ちょっと成績がいい。聞くところによると、新ファームはE-3のデータを利用して再チューニングしたものらしい。このこともE-3の方が手ブレ補正の性能が上であると読む理由である。

 もっとも、データの読み取り方はいろいろなので、見る人によっては違う結果が出るかもしれないし、もっと軽いレンズを使っていればとか、もっと体格のいい人がテストしていたらとか、脇が締まりにくいダウンジャケットの影響もあるかもとか、考え出せばキリはない。今回のテスト条件ではこういう結果が出たということである。

 ちなみに、作例用で撮った画像のうち、手ブレで使い物にならないとゴミ箱行きになったのは約1/3程度。今回は手ブレ補正の性能を見たかったので、感度はISO100固定、いいなと思ったものはとりあえずシャッター速度を気にせずに何が何でも手持ち、ブレが心配なときは3~10枚撮って、というやり方だったから、筆者個人としてはブレてないのが2/3残ったのは上出来だと考えている。


5枚撮った中の、もっともブレの少ないカット。ピクセル等倍で見るとわずかにブレているが、184mm相当で1/10秒だと思えば上等だ
ED 50-200mm F2.8-3.5 SWD / 3,648×2,736 / 1/10秒 / F5 / 0EV / ISO100 / WB:晴天 / 92mm
3枚撮って3枚ともOKだった。画角と筆者の腕力を考えれば、かなり珍しい
ED 50-200mm F2.8-3.5 SWD / 3,648×2,736 / 1/50秒 / F8 / +0.7EV / ISO100 / WB:晴天 / 147mm

50-200mmの望遠端でめいっぱい寄ったあたりで撮影。これは1枚しか撮ってなかったけどブレてなかった
ED 50-200mm F2.8-3.5 SWD / 3,648×2,736 / 1/125秒 / F5.6 / +0.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 200mm
ライブビューで低いアングルから狙ってみた。ピントと被写体ブレも心配だったので7枚撮って、5枚はボツである
ED 50mm F2 Macro / 3,648×2,736 / 1/60秒 / F4 / -0.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 50mm

24mm相当で1/20秒なら手ブレ補正なしでもいけそうだが、安心感があるかどうかの違いは大きい
ED 12-60mm F2.8-4 SWD / 12mm / 3,648×2,736 / 1/20秒 / F3.5 / 0EV / ISO100 / WB:晴天
当たり前だが、センサーシフト方式の手ブレ補正は露光中しかはたらかない(ライブビュー時は時間制限付きで動かせるけど)。なので、ぷるぷる震えるファインダー像を見ながら撮ることになる。こういうときはレンズシフト式がうらやましい
ED 50-200mm F2.8-3.5 SWD / 200mm / 3,648×2,736 / 1/160秒 / F5.6 / +0.3EV / ISO100 / WB:晴天

光量が足りないシーンでは、ズームの広角端がブレを抑えやすいが、反面歪曲収差が気になることになる。手ブレ補正があれば、歪曲が目立ちにくい画角が選べるし、多少なりとも絞れる。これも手ブレ補正のメリット
ED 12-60mm F2.8-4 SWD / 3,648×2,736 / 1/8秒 / F5.6 / -1EV / ISO100 / WB:晴天 / 23mm
カメラを上向きにしてライブビューで、液晶モニターだけ自分の方に向けるという、およそ一眼レフらしからぬ構え方で撮ったカット。手を伸ばした状態で撮ったわりに3枚中3枚ともOKだった
ED 12-60mm F2.8-4 SWD / 3,648×2,736 / 1/13秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:晴天 / 27mm

公称値どおりの性能なら1/4秒は楽勝範囲だが、カメラを構えた人間が身体ごと動いてしまうと厳しいということだろうか。この場所では1/8秒から1/4秒で20枚くらい撮ったが、まあ許せるかなぁというのは4枚だけ
ED 12-60mm F2.8-4 SWD / 3,648×2,736 / 1/4秒 / F8 / -1EV / ISO100 / WB:晴天 / 21mm
近くにあった岩にヒジを乗せて撮ったカット。400mm相当で1/25秒で手ブレ補正なしだったら何をやっても全滅間違いなしのところを、5枚撮って2枚OKという結果。偉いぞE-3
ED 50-200mm F2.8-3.5 SWD / 3,648×2,736 / 1/25秒 / F3.5 / 0EV / ISO100 / WB:晴天 / 200mm

暮れる少し前、短い時間だけだったが日が射してくれた。手前の木が邪魔だったが、逃げられるだけの余裕はなかった。4枚撮って手ブレはなし
ED 50-200mm F2.8-3.5 SWD / 3,648×2,736 / 1/80秒 / F5.6 / -0.7EV / ISO100 / WB:晴天 / 200mm
ツリートップが六芒星というのは珍しい気がする。4枚撮ったうちのいちばんマシなカット
ED 50-200mm F2.8-3.5 SWD / 3,648×2,736 / 1/30秒 / F3.5 / -0.7EV / ISO100 / WB:晴天 / 200mm

真上に近い角度で見上げた東京タワー。首や腰に負担がかかる姿勢なので1枚撮るごとに息をつくことになる。で、3枚撮って2枚OK
ED 50-200mm F2.8-3.5 SWD / 3,648×2,736 / 1/100秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:晴天 / 200mm
工事の荷揚げ用のケーブルがつながっていた。タワー自体もクリスマスの飾り付きである
ED 12-60mm F2.8-4 SWD / 3,648×2,736 / 1/160秒 / F8 / +0.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 12mm

タワーの脚部。ほんとは右下に向かってすぼまっているのだが、鉄骨同士の角度とパースペクティブがうまくはまって平行なように見えたのが面白かった
ED 12-60mm F2.8-4 SWD / 12mm / 3,648×2,736 / 1/400秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:晴天


URL
  オリンパス
  http://www.olympus.co.jp/
  製品情報
  http://olympus-imaging.jp/product/dslr/e3/
  オリンパスE-3関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2007/10/18/7222.html
  気になるデジカメ長期リアルタイムレポート(2007年)
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm2007.htm



北村 智史
(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。最初に買ったデジタルカメラはキヤノンPowerShot S10。 ブログ:http://ketamura08.blog18.fc2.com/

2007/12/21 00:04
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