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ニコンCOOLPIX P5100【第4回】
白黒とカラーを同時に楽しむ

Reported by 本誌:折本 幸治


 今週はCOOLPIX P5100とともに、東京都の青梅市に出かけた。青梅市といえば、雰囲気満点の町並みと、レトロな映画看板が有名だ。さらに多摩川上流にも近く、釜の淵公園まで足を伸ばせば、紅葉に出会えるかもしれない。折しもJR青梅駅周辺では、年1回のアートフェスティバルが開催中(11月23~25日)。催し物に参加しながら、のんびり休日を過ごすつもりでJR中央線の青梅特快に乗った。

 当日は雲ひとつない日本晴れ。両吊りのCOOLPIX P5100を首からぶら下げ、各所で行なわれているイベントを渡り歩く。その途中に仕上がり設定「白黒」で、昭和レトロな町並みを撮ることにした。

 COOLPIX P5100での白黒設定は、コンパクトデジタルカメラとしては多機能な方だ。まず、「スタンダード」と「カスタマイズ」を選択する。スタンダードは、カラーにおける仕上がり設定「標準」に近いもので、コントラストなど主要なパラメータがオートになる。最も無難な設定だろう。

 一方カスタマイズを選ぶと、コントラストを-2から+2まで、輪郭強調を-2から+2の範囲で設定できる。さらに輪郭強調には「OFF」もあり、カラーの仕上がり設定「カスタマイズ」とほぼ同じ内容だ。明らかに違うのは、彩度調整がないことぐらいだろう。


「白黒」は仕上がり設定のひとつとして選べる
「カスタマイズ」で3項目の指定が可能

「コントラスト」と「輪郭調整」はカラーと同じ調整内容だ マニアックな「モノクロフィルター」も完備

 さらに白黒のカスタマイズでは、「モノクロフィルター」という項目を設定できる。白黒写真での撮影用フィルターをシミュレートしたもので、「OFF」、「黄」、「オレンジ」、「赤」、「緑」(黄緑)の5種類から選択可能だ。ご存知の方も多いと思うが、一般的なシーンにおいては、黄→オレンジ→赤の順にコントラストが高くなり、特に青空を濃くしてインパクトを強めた作品が知られる。緑は肌色が白くなるので、ポートレート向きとされている。

 フィルター効果はD80などのデジタル一眼レフカメラにもあるので、常用している人もいるだろう。メニュー設定の手間はあるが、本物のフィルターを持ち歩かなくても良いのはとても気楽。撮影前に液晶モニターに効果が反映されるのもデジタルらしくて面白い。もちろん後処理で似たことはできるのの、そこは気分の問題。現場で色々悩むのも楽しいものだ。

  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 撮影データは、記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/35mm判換算での焦点距離を表します。


共通データ:4,000×3,000 / 1/30秒 / F4.8 / ±0EV / ISO64 / 87mm


仕上がり設定:標準、コントラスト:オート 仕上がり設定:白黒、コントラスト:±0(標準)、モノクロフィルター:OFF

仕上がり設定:白黒、コントラスト:-2(弱め)、モノクロフィルター:OFF 仕上がり設定:白黒、コントラスト:-1(やや弱め)、、モノクロフィルター:OFF

仕上がり設定:白黒、コントラスト:+1(やや強め)、、モノクロフィルター:OFF
仕上がり設定:白黒、コントラスト:+2(強め)、、モノクロフィルター:OFF

仕上がり設定:白黒、コントラスト:±0(標準)、モノクロフィルター:黄
仕上がり設定:白黒、コントラスト:±0(標準)、モノクロフィルター:オレンジ

仕上がり設定:白黒、コントラスト:±0(標準)、モノクロフィルター:赤
仕上がり設定:白黒、コントラスト:±0(標準)、モノクロフィルター:緑

共通データ:4,000×3,000 / 1/328~1/355秒 / F5.4 / -0.7EV / ISO64 / 35mm


仕上がり設定:標準、コントラスト:オート
仕上がり設定:白黒、コントラスト:±0(標準)、モノクロフィルター:OFF

仕上がり設定:白黒、コントラスト:-2(弱め)、モノクロフィルター:OFF 仕上がり設定:白黒、コントラスト:-1(やや弱め)、モノクロフィルター:OFF

仕上がり設定:白黒、コントラスト:+1(やや強め)、モノクロフィルター:OFF 仕上がり設定:白黒、コントラスト:+2(強め)、モノクロフィルター:OFF

仕上がり設定:白黒、コントラスト:±0(標準)、モノクロフィルター:黄
仕上がり設定:白黒、コントラスト:±0(標準)、モノクロフィルター:オレンジ

仕上がり設定:白黒、コントラスト:±0(標準)、モノクロフィルター:赤
仕上がり設定:白黒、コントラスト:±0(標準)、モノクロフィルター:緑

 やってみると、デジタルでの疑似フィルターワークはかなり面白い。銀塩モノクロのフィルターワークに比べると、思ったほど派手な効果になっていないように思うが、これをもとにPhotoshopで調整すれば劣化も少なく、JPEGオンリーであるCOOLPIX P5100の弱点を補えそうだ。もっとも、最近はJPEGをRAWのように補正し、劣化を最小限に留めるソフトが普及している。ニコンではCapture NXがそうだ。それらを使いこなせば、コンパクトデジタルカメラはJPEGで充分な気がする。なお、白黒で撮影したJPEGのカラーモードは、グレースケールではなくRGBになる。

 ただしフィルター設定はメニュー階層の奥にあるため、切替はそれなりに面倒。カスタムNo.1に赤、カスタムNo.2に緑を割りあて、Fn(ファンクション)ボタンでカスタムNo.を切り替える方法を考えたが、黄色やオレンジといったほかのフィルターを使う場合は、結局メニュー操作になってしまう。もちろん本物のフィルターを取り替えることを考えると、圧倒的に手間は少ないのだが……。

 ところで、デジタルカメラで白黒を楽しんでいると、「ここは白黒にすべきか、カラーにすべきか」と悩むことが良くある。「きょうは白黒のみ」と決めて家を出るのだが、いかんせん被写体の魅力を色で判断してしまう、情けない自分がそこにいる。そんなとき、デジタル一眼レフカメラならRAW撮影で問題解決だが、JPEGでしか撮れないコンパクトデジタルカメラでは、つい躊躇するわけだ。


「カラー同時記録」をチェックすると、カラー画像を同時に記録できる
 そんな凡人の悩みを見越してか、COOLPIX P5100には「カラー同時記録」という機能がある。1シャッターで撮影したデータを、白黒とカラーで別保存するのだ。ファイル名は「DSCN1841」が白黒、続く「DSCN1842」がカラーという具合になり、Exifなどの主要なメタデータは両ファイルでほぼ共通。とりあえず同時記録しておけば、気に入った方を残せる。

 もちろんこの機能、真剣にモノクロに取り組んでいる人からの嘲笑は免れないだろう。しかし、これで白黒とカラーで迷うことはなくなるはず。ありがたいものを作ってくれたと思う。

 ただし欠点がある。まず画像処理が加わるため、次の撮影が可能になるまでタイムラグが生じることだ。同じく記録時に画像処理を施す「ゆがみ補正」を併用すると、体感的に結構待たされる印象を受ける。第2回で行なった計測では、ゆがみ補正なし=2秒535、ゆがみ補正あり=4秒324だった。これらはいずれもカラー画像のみを記録している。同じようにカラー同時記録を計ったところ、ゆがみ補正ONで5秒623となった(いずれも5回撮影した平均値)。

 また同時記録すると、カラー画像は仕上がり設定「標準」、ホワイトバランス「オート」に固定される。逆に、同時記録の白黒には、コントラスト、輪郭強調、モノクロフィルターのすべてが施せるので、あくまでも白黒が主体でカラーはおまけ、という考えなのだろう。

 以上の制限はあるものの、白黒を気軽に体験するにはぴったりの機能だと思う。大容量の記録メディアが安くなった今、2枚同時記録で困ることも少ない。タイムラグを解消した暁には、ほかの機種にも普及して欲しい機能だ。

 街撮りに挑戦して思ったのは、ゆがみ補正の素晴らしさだ。第2回の繰り返しになるが、被写体が真っ直ぐに写ることは、改めて気持ちが良い。逆に不満を覚えたのは、晴天下での液晶モニターの見辛さ。色情報のあるカラーならそれほどでもないが、白黒だとフレーミングが不安になるほど見た目が暗い。もう少し電池の持ちが良くなるのなら、液晶モニタ―の輝度を上げたいところだが……。あとは広角側の不足。これについてはいずれワイドコンバージョンレンズを試したい。

 おかげで、光学ファインダーのありがたさが身にしみた。今回の撮影ではパララックスは無視できる範囲。両吊りのストラップも安心感が高かった。白黒を撮りながら「昔ながらの工夫は、デジタル時代にも意義あるのものだなあ」とちょっと思った。

※以下はいずれもカラー同時記録で撮影。


仕上がり設定:白黒(スタンダード)
4,000×3,000 / 1/268秒 / F6.1 / 0EV / ISO64 / 60mm
仕上がり設定:標準
4,000×3,000 / 1/268秒 / F6.1 / 0EV / ISO64 / 60mm

仕上がり設定:白黒(スタンダード)
4,000×3,000 / 1/300秒 / F6.1 / 0EV / ISO64 / 35mm
仕上がり設定:標準
4,000×3,000 / 1/300秒 / F6.1 / 0EV / ISO64 / 35mm

仕上がり設定:白黒(スタンダード)
4,000×3,000 / 1/286秒 / F6.1 / 0EV / ISO64 / 35mm
仕上がり設定:標準
4,000×3,000 / 1/286秒 / F6.1 / 0EV / ISO64 / 35mm

仕上がり設定:白黒(スタンダード)
4,000×3,000 / 1/324秒 / F6.1 / 0EV / ISO64 / 74mm
仕上がり設定:標準
4,000×3,000 / 1/324秒 / F6.1 / 0EV / ISO64 / 74mm

仕上がり設定:白黒(スタンダード)
4,000×3,000 / 1/61秒 / F2.7 / 0EV / ISO188 / 35mm
仕上がり設定:標準
4,000×3,000 / 1/61秒 / F2.7 / 0EV / ISO188 / 35mm

仕上がり設定:白黒(スタンダード)
4,000×3,000 / 1/393秒 / F6.1 / 0EV / ISO64 / 35mm
仕上がり設定:標準
4,000×3,000 / 1/393秒 / F6.1 / 0EV / ISO64 / 35mm

仕上がり設定:白黒(スタンダード)
4,000×3,000 / 1/71秒 / F5.1 / -1EV / ISO269 / 115mm
仕上がり設定:標準
4,000×3,000 / 1/71秒 / F5.1 / -1EV / ISO269 / 115mm

仕上がり設定:白黒(スタンダード)
4,000×3,000 / 1/305秒 / F6.1 / 0EV / ISO64 / 35mm
仕上がり設定:標準
4,000×3,000 / 1/305秒 / F6.1 / 0EV / ISO64 / 35mm

仕上がり設定:白黒(スタンダード)
4,000×3,000 / 1/164秒 / F4.8 / -0.7EV / ISO64 / 35mm
仕上がり設定:標準
4,000×3,000 / 1/164秒 / F4.8 / -0.7EV / ISO64 / 35mm

仕上がり設定:白黒(スタンダード)
4,000×3,000 / 1/60秒 / F3.9 / -1EV / ISO109 / 74mm
仕上がり設定:標準
4,000×3,000 / 1/60秒 / F3.9 / -1EV / ISO109 / 74mm

仕上がり設定:白黒(スタンダード)
4,000×3,000 / 1/127秒 / F4.7 / -1EV / ISO228 / 101mm
仕上がり設定:標準
4,000×3,000 / 1/127秒 / F4.7 / -1EV / ISO228 / 101mm

仕上がり設定:白黒(スタンダード)
4,000×3,000 / 1/95秒 / F3.4 / 0EV / ISO64 / 35mm
仕上がり設定:標準
4,000×3,000 / 1/95秒 / F3.4 / 0EV / ISO64 / 35mm


URL
  ニコン
  http://www.nikon.co.jp/
  製品情報
  http://www.nikon-image.com/jpn/products/camera/compact/coolpix/p5100/
  気になるデジカメ長期リアルタイムレポートバックナンバー(2007年)
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm2007.htm

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本誌:折本 幸治

2007/12/03 00:00
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