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タムロンの最新ズームレンズをフォーサーズで試す
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[2009/01/26]


2008年

タムロンの最新ズームレンズをフォーサーズで試す


E-3
 ぼくはデジタル一眼レフカメラはフォーサーズシステムを使用しているが、それは当初から撮像素子に付着したゴミを除去するための「ダストリダクションシステム」が搭載され、それが非常に理にかなっていると思ったからだ。

 さらに現在メインで使用しているオリンパスの「E-3」は手ブレ補正機構のほか、大きく見やすい光学ファインダーも搭載され、さらに利便性が増した。また発売当初は必要最小限だったレンズラインナップも次第に充実し、現在ではバラエティに富んだシステムにまで拡大した。

 ただちょっとさびしいのは、使えるレンズがオリンパス、シグマ、パナソニックの3社製に限られている点である。ぼくはフィルム一眼レフカメラはニコンを使っていたが、レンズは高価な純正品よりも、安価で高性能なサードパーティー製のレンズを好んで使っていた。

 中でもタムロン製の「SP 20-40mm F2.8-3.2」と「XR 28-200mm 3.5-5.6」がお気に入りで、この2本で超広角から望遠までがカバーできるので、いつも持ち歩いていた。
その思い入れのあるタムロンレンズが、フォーサーズで使えないのがちょっと残念なのだ。

 いや、実際はフォーサーズのシステムはかなり充実しており、タムロンがラインナップする同等のスペックのレンズは、十分にカバーされているといえる。しかし、タムロンは他メーカーにはないユニークなレンズをラインナップしており、非常に気になる存在だ。

 特に、APS-Cサイズ専用の最新モデル「SP AF 10-24mm F3.5-4.5 Di II LD Aspherical (IF) Macro」(Model B001)と「AF 18-270mm F3.5-6.3 Di II VC LD Aspherical (IF) Macro」(Model B003)は、非常に意欲的なスペックで魅力的だ。


SP AF 10-24mm F3.5-4.5 Di II LD Aspherical (IF) Macro(Model B001) AF 18-270mm F3.5-6.3 Di II VC LD Aspherical (IF) Macro(Model B003)

 だったらニコンでもペンタックスでも、タムロンレンズが使えるシステムを導入すればいいのだが、一眼レフカメラのシステムを複数導入するのはちょっと躊躇してしまう。そこで今回は、タムロンの最新ズームレンズを、E-3に装着する“実験”を行なうことにした。

 幸いなことに、発売されたばかりのニコンFマウント用の「SP 10-24mm F3.5-4.5」と「18-270mm F3.5-6.3」を友人からちょっとの間だけ借してもらえることになった。

 ぼくはすでに「ニコン-フォーサーズ マウントアダプター」(近代インターナショナル製)を持っていたから、これでタムロンレンズをフォーサーズ一眼レフに装着できる。しかし、ご存知のように最新のニコン用APS-C専用レンズには絞りリングが存在しない。だから、マウントアダプターでフォーサーズカメラに装着しても、レンズは最小絞りに固定されたままで、光学ファインダーも真っ暗である。

 このままでは撮影に支障をきたすので、何らかの工夫が必要となる。そこで、絞りを任意の位置に固定するための“絞りストッパー”を製作することにした。

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“絞りストッパー”の製作

まずは、10-24mm F3.5-4.5用の“絞りストッパー”を作ってみる。レンズマウントをじっくり観察すると、機械連動式の絞りレバーが確認できる。これを指などでで動かすと、レンズ内の絞りが開閉するのがわかる。カメラに未装着のレンズの絞りレバーは、スプリングのテンションで最小絞りの位置に固定されている。だから絞り連動レバーが移動する溝に、適当な形状の絞りストッパーを挟めば、絞りを任意の位置に固定できる。この方式だと、絞りを自由に変更することはできないが、とりあえずは撮影可能になるはずだ 絞りストッパーを作る前に、まずその形状や寸法を決めるためのダミーを作る。といっても簡単なもので、単にコピー用紙を適当な大きさにカットし、丸めるだけである。これを絞りレバーの溝に差込み、絞りストッパーの形状を確認するのだ。気をつけなければならないのが溝の深さで、ダミーが小さすぎると、溝からレンズ内へと落ち込み、故障することも考えられる。だからダミーは長めにつくり、斜めにしても溝の奥にパーツが落ち込まないか、慎重に確認する必要がある

ダミーが安定して固定されることを確認したら、レンズにマウントアダプターを装着する。そして、ダミーがアダプターの縁に接触する部分に、シャープペンで印をつける。これで製作する「絞りストッパー」の長さや幅が決定する ダミー(上)をもとに、このような2種類の絞りストッパーを作った。素材は東急ハンズで購入した、2mm厚のABS板である。手前の幅の広いのが「絞り開放」用で、真ん中が「中間絞り」用だ

絞りストッパーはこのように絞りレバーの溝に差し込む。
これは開放絞り用
こちらは中間絞り用を差し込んだところ

絞りストッパーを付けたレンズに、マウントアダプターを装着すると、このようになる こちらはE-3側のマウント。ちょうどレンズ装着指標の赤点の内側あたりに、二コンマウントレンズの絞りレバーが重なる。この部分はカメラのミラーボックスの外側なので、絞りストッパーがカメラ内部に落ち込む心配がない

10-24mm F3.5-4.5をE-3に装着するとこんな感じ。違和感なく似合っているように思える SP 10-24mm F3.5-4.5」用に作ったこの「絞りストッパー」は、「18-270mm F3.5-6.3」の2本で共用できることが分かった。これは開放絞り用

中間絞り用も装着できた。しかしこの絞りストッパーは、ニコンマウントならどのレンズにも使えるとは限らないから、注意が必要だ。同じニコンマウントでも、レンズによって絞り連動レバーや溝の形状や内部構造が異なる可能性もある。だからこの絞りストッパーを、ほかのニコンマウントレンズに装着した場合、思わぬ故障が起きることも考えられる。ストッパーを装着する際は、事前にダミーを作り、安全性を確認することが重要だ E-3に装着した18-270mm F3.5-6.3」。なかなか似合っているといえる

・絞りストッパーによる絞りの変化

 スペーサーの交換で、絞りはご覧の通り三段階に変化する。


絞り開放 中間絞り 最小絞り(絞りストッパーなし)

「絞りストッパー」の収納スペース

 以上のように絞りストッパーを交換することによって、絞りリングのないニコンマウントレンズの絞り調節が可能となった。不完全な方式ではあるけれど、これで一応タムロンレンズがフォーサーズボディで使えるようになった。

 さて問題は、交換式の絞りストッパーをどうやって収納し、持ち歩くかである。このパーツは、まさに“microSDカード並み”の小ささで、ポケットやバックに収納したら、すぐどこかへ無くしてしまいそうだ。そう思っていたところフト、すばらしく合理的な“収納スペース”の存在を、発見してしまったのである。


まずはココ(笑)。E-3の内蔵ストロボを跳ね上げたこのスペースに、「絞りストッパー」を2個並べることができる。もちろん、この状態でストロボを閉じることができる。つまりE-3のボディ内に、期せずして“便利な小物入れ”を発見してしまったのだ。しかし、ここを収納スペースにすると、ストロボ撮影ができなくなってしまう。 そこで、ほかの収納スペースを探して見つけたのがここ。記録メディアスロットの横である。CFスロットの横に絞りストッパーを2個並べることが可能で、このままちゃんと蓋を閉じることもできる。ここならストロボ撮影にも支障をきたさず、便利である。これはまさに、E-3の余裕のある設計の副産物といえよう。ちなみに「E-420」には、同様の小物を収納するようなスペースは存在せず、無駄を排したタイトな設計であることがわかった




撮影編((SP AF 10-24mm F3.5-4.5)

E-3にSP 10-24mm F3.5-5.6を装着したところ
 E-3に装着した10-24mm F3.5-5.6は、まったく違和感がないといって良いくらいに似合っている。

 本来のニコン製APS-Cサイズ一眼レフに装着すると、ライカ判(35mm判フルサイズ)換算で15~36mm相当の画角となる。フォーサーズに装着すると、ライカ判換算20~48mm相当へと、ちょっと望遠よりにシフトする。

 フォーサーズには、似たスペックのレンズとしてオリンパスの「ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6」(ライカ判換算18mm-36mm相当)と、シグマの「10-20mm F4-5.6 EX DC HSM」(同20-40mm相当)があるが、いずれも望遠側は準標準止まりである。

 しかし、フォーサーズカメラに装着した10-24mm F3.5-5.6の画角は、超広角から標準までをカバーする。これはほかのフォーマットの一眼レフシステムにもない唯一のスペックで、かなり使い勝手が良さそうだ。

 そこで、京王線の調布駅前をぶらぶら歩きながら、いろいろな“発見”を撮影してみた。

 実際、20~48mm相当の画角は使いやすく、応用範囲が広い。しかもこのレンズは一般的な普及タイプの超広角ズームよりも半絞り明るく、開放でもなかなかの描写をする。最小絞りはテストの結果、被写界深度は深くなるが、回折現象のため全体にピントが悪くなるので、今回は使用していない。

 絞りは、日なたは中間絞りで、日陰は開放絞りにセットし撮影した。構図の確認とピント合わせは、ほとんどライブビューモードを使用した。光学ファインダーは中間絞りでは暗くなり、開放でも超広角ゆえピントの山がつかめない。しかし、ライブビューの拡大機能でピント合わせをし、撮影するのは結構大変で疲れる。

 E-3は大きく重いカメラなので、コンパクトデジカメのように背面液晶を見ながら構えると、不安定で持ちにくいのだ。また、E-3はライブビューで撮影するとシャッタータイムラグがあり、どうもスナップ用には向かないようだ。

 もしかすると、マイクロフォーサーズを採用しているパナソニック「LUMIX DMC-G1」の高精細EVFを使うと、もっと快適に撮影できたかもしれないが、こちらはE-3と異なりボディ内手ブレ補正機能が利用できない。

 ともかく、今回の撮影は意外に苦労が多く、一般にはあまり薦められない結果となった。しかし、ライカ判換算20~48mm相当のスペックが、実際にかなり便利で実用的なことも判明し、実験としてはなかなか楽しいものであった。


※サムネイルをクリックすると、長辺1,024ピクセルにリサイズした画像を表示します


プランターの注意書きは良く見かけるが、透明素材なのは珍しい(24mm、開放絞り) 面白いので、裏から向こうの風景を透かして撮ってみた(24mm、開放絞り)

自販機の横に置かれた、手作りの空き缶入れ。発泡スチロールの空き箱が利用されている(24mm、中間絞り) 中をのぞくと、ほかのものも捨てられている。カセットコンロの缶? とか……(10mm、中間絞り)

標識の土台と、植物を植えたプランターの素材が同じなのがポイント。まさに前衛的生け花である(24mm、中間絞り) 全体のたたずまいも、また味わい深い(10mm、中間絞り)

ポリバケツとその蓋が、ゴムひもで縛られている。これならどこかへ行くことがなく、安心だろう(10mm、開放絞り) 裏を見ると、別なものも縛られていた(10mm、開放絞り)

ガシャポンの自販機に、なぜか「振り込め詐欺」の張り紙が……?(10mm、開放絞り) 横から見ると、ガシャポンの中は空っぽ。やっぱり「振り込め詐欺」だった(笑)(10mm/開放絞り)

撮影編(AF 18-270mm F3.5-6.3)

E-3に18-270mm F3.5-6.3を装着したところ
 本来のニコン製APS-Cサイズデジタル一眼レフカメラに装着すると、ライカ判換算27~405mm相当になる超高倍率ズームで、独自方式の手ブレ補正機能「VC」も内蔵している。

 これをE-3に装着すると、ライカ判換算36~540mm相当という超高倍率・超望遠ズームになるから面白い。もちろん、レンズ本体手ブレ補正機能は作動しないが、E-3は本体内に手ブレ補正機能を内蔵しているから、まったく問題ない。

 フォーサーズマウントとしては、似たようなスペックのレンズとして、「ZUIKO DIGITAL ED 18-180mm F3.5-6.3」(ライカ判換算36~360mm相当)があるが、望遠端のスケールはだいぶ劣ってしまう。

 ほかのマウントでは、ライカ判フルサイズ用としてのシグマ「APO 50-500mm F4-6.3 EX DG HSM」が近いといえる。ただし、18-270mm F3.5-6.3は50-500mm F4-6.3よりズーム倍率が高いうえに、圧倒的に軽量コンパクトである。

 E-3に装着した18-270mm F3.5-6.3は数値上、一眼レフカメラとしてもっとも気軽に超望遠撮影ができるシステムだといえるかもしれない。

 そこで小平市の玉川上水沿いの遊歩道で、鳥を中心としたネイチャーフォトにチャレンジしてみた。

 まず、絞りは基本的に開放のままにし、ピントは光学ファインダーを使うことにした。動き回る鳥を追いながら、E-3のライブビュー機能で撮影するのは不可能と判断したからだ。

 幸いにも、18-270mm F3.5-6.3は絞り開放からなかなかの描写で、望遠側ではE-3の光学ファインダーでピントの山も確認できる。しかし、このレンズのピントリングは回転角が小さく、MFでの微妙なピント合わせに向いていない。この種のレンズの例に漏れず、AF撮影が前提の設計なのだろう。

 それと、ズームが高倍率なのはいいけれど、ボディ内手ブレ補正機能「IS」の焦点距離を手動で切り替えなければならないのが、意外と面倒であった。このあたりは、自動切換えの純正品の利便性には遠く及ばない。しかしISの焦点距離の設定を間違えると広角でも激しくブレたりして、その過剰補正の効果が確認できたのは面白かった。

 ただ、“540mm相当”という超望遠撮影が、このサイズのレンズで撮影できるのは驚きであり、さらに36mm相当の広角撮影までできるのは非常に便利である。今回は鳥のアップと、その生息環境を撮ってみたが、このような“記録的ネイチャーフォト”には最適なレンズだといえる。

 また、マクロ撮影の性能もなかなかのものであった。しかしこのレンズもまた、アダプターを介しての使用は実用的ではなく、「こういうレンズがフォーサーズで使えたら面白いだろうな」という提言だと捉えて欲しい。

※サムネイルをクリックすると、長辺1,024ピクセルにリサイズした画像を表示します



早咲きのウメの花の蜜を吸うメジロ。ちょこまか飛び回るところを追いかけたが、手前にボケた花が写ったりして、なかなか“らしい”写真になった(270mm、絞り開放) 同じメジロだが、こちらの方がブレも無く、なかなかシャープに撮れている(270mm、絞り開放)

エナガは高いこずえにいたので、540mm相当でもあまり大きく写らなかった。正直、鳥の撮影は慣れてないので、難しい……(270mm、絞り開放) このヒヨドリは割と近くに止まって、しばらくこちらを見つめていた。住宅地などでも割とよく見かける鳥である(270mm、絞り開放)

小平市の玉川上水沿いの遊歩道はこんな風景。自然物と人口の街並みが入り混じる、まさに“路上ネイチャー”と呼ぶに相応しい環境である(18mm、中間絞り) これは同じ場面だが、「手振れ補正焦点距離」を間違って250mmに設定したまま18mmで撮影したところ、過剰補正のためかブレてしまっている。こういう効果が確認できるのも、改造レンズの楽しさである。もちろん純正のレンズは、焦点距離が自動で補正される(18mm、中間絞り)

ぼくは鳥よりも虫が得意なので、虫……というかアブラゼミの抜け殻を撮ってみた。望遠端の最短撮影距離だが、なかなかの倍率である。マクロで開放絞りはソフトな描写だったので、中間絞りにしたら、なかなかシャープになった。ピントはライブビューで合わせ、内蔵ストロボを使用している(270mm、中間絞り) 同じ被写体を広角端の最短距離でも撮影してみた。あまり近づけないので広角マクロという感じではないが、その場の雰囲気は表現できると思う(18mm、中間絞り)


【告知】

 (いずれも展覧会です)

 ●糸崎公朗展「ブリコラージュで考える」
   2月14日~3月22日
   gallery ARTE(香川県丸亀市浜町115-9)

 ●フォトモで甦る金山の記憶と風景
   3月17日~5月17日
   名古屋都市センター まちづくり広場(名古屋市中区金山町1-1-1 金山南ビル11階)

 ●アートフェア東京2009
   4月3日~4月5日
   東京国際フォーラム 地下2階 展示ホール1 gallery ARTEブース内



URL
  バックナンバー
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/labo_backnumber/
  オリンパスE-3関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2007/10/18/7222.html

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糸崎公朗
1965年生まれ。東京造形大学卒業。美術家・写真家。「非人称芸術」というコンセプトのもと、独自の写真技法により作品制作する。主な受賞にキリンアートア ワード1999優秀賞、2000年度コニカ ミノルタフォト・プレミオ大賞、第19回東川賞新人作家賞など。主な著作に「フォトモの街角」「東京昆虫デジワイド」 (共にアートン)など。 ホームページはhttp://www.itozaki.com/

2009/02/20 13:04
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