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キヤノンの“モードダイヤル改造サービス”を体験

〜修理センターで改造工程を見る
Reported by 本誌:武石修

 キヤノンがこのほど、「EOS 5D Mark II」と「EOS 7D」のモードダイヤルを“ロック付き”に改造するサービスを開始した。そこで、かねてから「モードダイヤルにロックが欲しい」と思っていた筆者は早速、自前のEOS 5D Mark IIを改造サービスに出してみた。

今回改造を行なっていただいたのは、入社3年目の若手女性スタッフ。修理技術者というと男の世界なのでは? と思われがちだが、ここでは数名の女性技術者も在籍している キヤノン東日本修理センターは、キヤノンマーケティングジャパン幕張事業所(千葉県千葉市美浜区)のビル内にある
改造を終えたEOS 5D Mark II。外装のクリーニングも行なってもらえるので、すっかり綺麗になった

 今回は特別に、キヤノン東日本修理センターで改造の様子を見せてもらうことができたのでレポートしたい。モードダイヤルの交換は簡単な作業なのかと考えていたが、実際には前/後/上カバーを外して行なわねばならず、それなりの工程が必要だった。

 このサービスは2010年12月8日から全国のサービス拠点で受付を開始しており、料金は1万500円となっている。サービスの詳細についてはキヤノン、「EOS 5D Mark II」「EOS 7D」のモードダイヤルをロック付きに改造するサービスを参照いただきたい。現在、預かり期間は2週間程度となっている。東日本修理センターだけでも、1月12日の時点で2機種合わせて700台が持ち込まれている。「想定していたよりもだいぶ多い」(キヤノン)。

 なお、各サービス拠点では上カバーだけの改造サンプルを用意しており、申し出れば操作を試すことができるので利用したい。

各サービスセンターに用意されている改造後のサンプル

ユーザーの要望により実現

 これまで、キヤノンの一眼レフカメラはモードダイヤルにロック機構を備えていなかった(銀塩一眼レフカメラの「EOS 7s」などはモードダイヤルロックを備えていたが、電源OFF時のみロックするタイプだった)。同社によれば、モードダイヤルの軽快な操作性を優先させることがユーザーのメリットになると考えてのことだったという。ただ、昨今ユーザーからの要望が多かったため改造サービスの実施を決めた。

 モードダイヤルのロックといえば、9月に発売した「EOS 60D」で初めてモードダイヤルのロック機構を搭載した。それまでの同社中級機に比べて小型のため、モードダイヤルとストラップの位置が近く、持ち歩くときにダイヤルが動いてしまう恐れがあったためだという。

 EOS 60D以外のEOS Digitalも軽快さを優先してモードダイヤルロックは省いた設計としていたが、なかでも相対的に要望の多かったことからEOS 5D Mark IIとEOS 7Dで改造サービスを行なうことになった。なお、EOS 50D、EOS 40DやエントリークラスのEOS Kiss X4などで改造サービスを実施する予定は今のところないという。

EOS 5D Mark II(2008年11月発売) EOS 7D(2009年10月発売)

 「普段の撮影中にモードダイヤルの位置が変わることはまず無いと思います。しかし例えば、バッグから出したときなどに変わってしまうことが考えられます。そうしたときに、すぐに撮影をしたい場合にはダイヤルロックがあると安心という人もいると思いますので、撮る対象によってもロックの必要性は変わってくると思います」(キヤノン)。このサービスは不要なユーザーも多いと思うが、筆者のようにモードダイヤルがいつの間にか変わっていて慌てた経験を持つユーザーには朗報だろう。

 2010年末には改造の預かり期間を当初の10日前後から約2週間に延長したほどで、ダイヤルのロックを必要としているユーザーは少なくないようだ。

3つのカバーを取外して改造を行なう

 修理センターに届いたカメラは、まず外観や機能に異常がないかをチェックする。その際に総ショット数も調べ、規定の回数(両機とも15万回)に迫っていたり超えている場合は有料のメンテナンスをユーザーに案内している。このメンテナンスを受けると、摩耗している部品などを交換してもらえるため故障を未然に防げる。

外観と機能のチェックを終えたEOS 5D Mark II。これから改造作業に入る 改造に使用するパーツは全部で8点。この部品代は3,000円という(部品単体で販売はしていない)

 チェックで異常が無ければ改造の作業に入る。改造サービス専任の担当者がいるわけではなく、基本的に修理技術者が一般の修理業務と同じ流れで改造を行なっている。

 今回交換するのはモードダイヤル部分のみで、カメラ本体側には手を加えない。交換作業は基本的に上カバーユニットの裏側から行なうが、そのために前および後のカバーも取外す必要がある。

 ロック付きのダイヤル本体やダイヤルベースなどは、EOS 60D用とは別で新規に金型から起こして作ったパーツ。「それなりにお金はかかっています」(キヤノン)。ダイヤル本体もEOS 5D Mark II用とEOS 7D用では一見似ているが、別のパーツだ。文字盤やバネなどは両機で共通となっている。

 1万500円という改造料金だが、うち部品代が3,000円。残りは工賃となっている。特別な改造メニューとあって、同程度の工程を踏む修理に比べると安めの価格設定になっているとのことだ。

カバーを外すために、ラバーを剥がしていく
ビスを外す。ビスは各部で異なるタイプを使用しているが、すべて頭に入っているとのこと。レンズを付けるのは、カメラを安定させるためだ 後カバーが外れた
続いて前カバーを外す
さらにビスを廻して…… やっと上カバーが外れる
改造するのは、上カバーの(向かって)左側の部分 クリックを生み出す金属球とスプリングを外したところ
裏側からモードダイヤルを止めているビスを外すと、ダイヤルが外れる モードダイヤルは、円周状にパターンのある位相盤(左)をブラシが動いてモードが設定される仕組みだ
モードダイヤルのベースも取外したところ モードダイヤルベースの違い。左はロック付き、右はロック無し
新しいモードダイヤルベースを取り付ける 表から見たところ
位相盤の接触を良くするためにクリーニングする。クリーニング液は独自のブレンドで、作り方は企業秘密。この液でセンサーのクリーニングなども行なっている
モードダイヤル裏側は形状が異なる。左はロック付き、右はロック無し ダイヤルの内側にグリスを塗る。これは回転を滑らかにするほか、防塵防滴の役割もある
ロックボタンのためのスプリングを入れる この歯車状の円盤が押されることで、モードダイヤルのロックが外れる
新しいモードダイヤルを組み込む 裏側からビスで締める。このビス自体にネジ止めの効果があり、一度締めると固着する
クリックストップを得るための擦り割り状の円盤まで取り付けた上カバーユニットの内側 EOS 5D Mark IIは内蔵ストロボがないため、EOS 7Dの上カバーユニット(左)と比べると内部がシンプルだ
金属球とスプリングを入れてフタをする グリスを塗布する
これで、内部からの作業はここまで ロックボタンも付いた
文字盤を付けるために接着剤を塗布する。接着剤を円周にそって塗る作業は、今回の改造でもっとも難しい工程。多すぎても少なすぎてもだめだ。しっかり2周塗る 文字盤を貼付けて改造自体は終了。このときピンセットを使うとキズが付くため手で行なう
最初と逆にカバーなどを付けていく。外した接点はクリーニングする ビスは締めていく順番も決まっている
今回は日付保持用のリチウム電池も取外したので、新たに日時を設定する。カメラの設定などは別の場所で記憶しているため、リセットされることはない
最後にラバーを張り直して完成だ。この後、外装、ファインダー(目立ったゴミがあった場合)、ローパスフィルターのクリーニングも行なう。(ファインダーとローパスフィルターのクリーニングは、保証期間経過後は有償)

今後の新機種がダイヤルロック付きになるかは未定

 一度改造したボディをロック無しに戻すことも有償で可能。ただし、戻すためには上カバーユニットごと交換することになるため、料金はロック付きに改造する場合より高くなる。キヤノンでは、基本的に上カバーのどこかに故障や損傷が発生した場合は、上カバーユニットごと交換して修理する。品質を維持するために個々のパーツごとの入れ替えは原則として行なっていないためだ。

 「モードダイヤルで言えば位相盤には電気接点もあるため、何度も分解して良いものではありません」(キヤノン)。ノーマル品のモードダイヤル単品は交換部品としての設定がそもそも無いとのこと。今回の交換するサービスは、特別に改造メニューとして専用部品を用意することで実現している。

 今後出荷するEOS 5D Mark IIおよびEOS 7Dがロック付仕様になるかは気になるところ。「今回のサービスは、あくまで改造サービスという特殊な位置づけです。EOS 5D Mark IIやEOS 7Dが標準でロック付きになることはありません」(キヤノン)。なお、今後登場する新機種がロック付きになるのかは未定とのことだ。

 気になると言えば、防塵防滴性能もそれぞれ改造前と変わることはないそうだ。耐久性も落ちることはなく、「むしろ新品に交換するので、その意味では耐久性は上がっているのではないでしょうか」(キヤノン)。今回の改造はCPS(キヤノンプロサービス)で先行して行なっていたわけではなく、CPS会員も一般ユーザーと同時に受付を開始している。

 なお、交換した古い部品は再利用できないので基本的には回収する。記念に取っておきたいなど、申込み時に返して欲しい旨を申し込めば修理品と一緒に戻ってくる。ただし交換したパーツは産業廃棄物の扱いになるため、家庭ゴミとしては捨てられないので注意したい。

改造前と改造後の比較(EOS 5D Mark II)

改造前
改造後
ロックボタンを押したところ。押し量は目測で1mm程度だ
改造後のEOS 7D(上カバーユニットのサンプル)
こちらはEOS 60Dのモードダイヤル

 モードダイヤルの回転フィーリングは、改造前と変化はないという。クリックストップに関わるバネ、ボール、擦り割り状の円盤はそのまま使用しているためだ。「ただ、押しながら回すという動作になるため、体感的には異なって感じるかもしれません」(キヤノン)とのこと。

 ロック解除ボタンの押し込み量は1mm程(筆者目測)。実際に操作してみると爪で押したときも指の腹で押したときも軽快に動かすことができた。ロックがなかったころのように、「C3」ポジションから「全自動」まで一気に回すことは流石にできないが、ロック解除ボタンを押しながらでも4〜5つ離れたポジションには一気に回すことができたので、筆者的には問題はない。

 キヤノンによれば、こうしたロックは必要というユーザーと不必要というユーザーにはっきり分かれるという。ユーザーによっては、ロックがあることでかえって回しづらさを感じるケースもあるからだ。ダイヤルロック機構の必要性を感じていたユーザーはこの機会に検討してみるのもいいだろう。

 さて、せっかくなので外装を外した際のEOS 5D Mark IIを撮影した。こうした姿は、普段なかなか見る機会のないものだ。






本誌:武石修

2011/1/21 00:00