私がOM-Dを使う理由。- My Style, My Olympus -

Vol.04:旅に出ることで未知の自分に出会う〜伊勢谷浩一さん

旅先では写真が第一 撮ったことのない世界を求めて

メキシコのユカタン半島を東へ進む。熱帯雨林を抜けると、海が見渡せる高台にたどり着いた。見下ろした海の淡い色に驚き、感動を心に刻むように静かにシャッターを切った。
オリンパスOM-D E-M1 / M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8 / 25mm(50mm相当)/マニュアル露出(F7.1、1/125秒) / ISO200

活躍中の若手写真家に、自らの写真の成り立ちや写真についての考え方を聞く連載「私がOM-Dを使う理由。」。現場でのパートナーであるOM-Dについても、その想いを語ってもらいました。

今回登場するのは、旅写真で知られる伊勢谷浩一さんです。世界中を旅する伊勢谷さんは、写真とどう向き合い、カメラとどう付き合っているのでしょうか。(編集部)

写真・キャプション:伊勢谷浩一

伊勢谷浩一さん。埼玉県出身。アジアや離島を巡る放浪生活の後、自然と人、また人と人の心が繋がるための写真教室「PACHIRI」主宰。独特の淡いトーンで切り取る「ゆるかわ写真」を得意とし、雑誌の原稿執筆や広告などで活躍の場を広げている。

現在、どのような写真関連の仕事をされていますか?

カメラ雑誌などで撮影テクニックの解説や新製品レビュー、旅行誌などへの写真提供、WEBカタログやブライダル撮影、一般の方を対象とした写真教室など、幅広い活動をしています。

写真を撮るようになったきっかけは?

中学時代はまわりにいじめっこが多く、なるべく目立たないような生活を送っていました。そんな中学時代を終え、進学した高校は、インターナショナルな高校だったこともありとにかく自由で毎日が楽しくて。そんな生活が3年で終わってしまうことに寂しさを覚え、写真で楽しい学生生活を後からいつでも見返すことのできるようにしておこうと思いました。

初めは使い捨てカメラで記録を残していましたが、そのうち物足りなくなり、父親がかつて使っていた一眼レフカメラを借りて写真を撮り始めました。あれこれ触ってみるものの、使い方がよくわからず本格的に写真を学ぼうと渋谷にある日本写真芸術専門学校へ入学しました。

新しい街を訪れるとまず市場に行き、その街に住む人々の雰囲気や食べているもの、暮らしぶりを観察するようにしている。NDフィルターを使って減光し、15秒の長時間露光を使ったブレで市場の活気を表現した。E-M1での長時間露光は、シャッターを開けてからの途中経過が設定した一定時間ごとにモニターに表示されていくライブタイムという機能が搭載されており、長時間露光が格段に撮影しやすくなった。
オリンパス OM-D E-M1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO / 17mm(34mm相当)/マニュアル露出(F20、15秒)/ ISO 200 NDフィルター使用

影響を受けた写真家は?

マイケル・ケンナと竹沢うるまさんです。

マイケル・ケンナは、1974年から1994年までの20年間の作品を収録した写真集「A TWENTY YEAR RETROSPECTIVE」に写真専門学生の頃に出会うのですが、完璧な構図、バランス感覚、幻想的で静寂に満ちたモノクローム作品に一瞬で心奪われました。そんな写真を自分でも撮ってみたくなり、それからは取り憑かれたように毎晩カメラと三脚を持って夜の河川敷や工場へ出掛け、マイケル・ケンナが多用する長時間露光を使って作品を撮るようになりました。今でも憧れの写真家です。

竹沢うるまさんは、写真展に通い続けているうちに声をかけてもらい、海外での撮影の手伝いをさせてもらえるようになりました。旅を通して写真家として生きていく覚悟、旅する方法、写真の撮り方など、写真家に必要なことのすべてを教えていただきました。海外や沖縄の離島に撮影に出るようになったのも、南の島や海外をメインに撮影をされる竹沢さんの作品に大きな影響を受けたためです。

夕暮れ時の空と海。空が映り込んだ水面は黄金色に染まり、ゆらゆらと揺らいでいた。防塵・防滴のカメラならば水面ぎりぎりのローアングルでも安心して撮影できる。
オリンパス OM-D E-M1/ M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO /73mm(146mm相当) /マニュアル露出 (F2.8、1/1,600秒) / ISO200

その影響は自分の作品のどんなところに現れていますか?

風景を撮る時にメインとなる被写体が画面のどの部分にあれば一番気持ちがいいかなど、構図やバランス感覚に特に気を使って撮影をするところ、今でも続けている夜の長時間露光での作品制作などはマイケル・ケンナの影響が大きいです。

竹沢さんは逆にそういったことを考えずに心が動いた瞬間を記録する方なので、旅先でのスナップはあまり考えずに心がわくわくした瞬間にありのままシャッターを切るように心がけています。

旅先では風光明媚な観光スポットよりも、そこに住む人々の暮らしを取材する方が楽しい。この日は立て替え真っ最中の美術館にペンキを塗る若い職人を追った。脚立に乗って作業していたが、相手と同じ目線で撮影したかったので、液晶を斜め下にチルトし両手を上げて見上げるように撮影をしたため、何とか同じ目線で撮影することができた。こういう時にチルトできる液晶モニターは重宝する。
オリンパス OM-D E-M1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO / 14mm(28mm相当)/マニュアル露出(F8、1/125秒)/ ISO 1600

今回使った機材の印象は?

E-M1は性能と携帯性のバランスがとれたカメラで、旅で持ち歩くのに最適のカメラです。高機能なカメラは他にもあるのですが、高機能になればなるほど重さも比例していきます。

マイクロフォーサーズはボディからレンズまでシステム全体が小型軽量なので、お気に入りのレンズを何本もストレスなく持ち運ぶことができます。そして、長時間露光に強いことも見逃せないポイントです。

カモメが飛び立つ瞬間を流し撮りモードで追った。EVFで確認しながら動きのある絵を狙った。
オリンパス OM-D E-M1/ M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO / 140mm(280mm相当) / マニュアル露出(F5.6、1/10秒) / ISO 200

E-M1に装着して使っているレンズは標準ズームレンズのM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROがほとんどですが、旅に1本だけレンズを持っていくとしたら迷わずこのレンズを選びます。ズーム全域で解放値からシャープな描写が得られるのはさすがPROレンズといったところですが、マニュアルフォーカスクラッチ機構が搭載されていることは特筆すべきポイントです。

これは、フォーカスリングを手前に引くことでAFからMFに素早く移行できる仕掛けなのですが、露出やピントまで全てをマニュアルで撮影することが多く、夜の撮影ではAFを使用しない私にとってこの機能は欠かすことができないものです。

この日は花火大会で、海の家にはたくさんの人々が集った。シャッタースピード4段分の5軸手ブレ補正のおかげで、1.5秒のシャッター速度でも手ブレのない、シャープな描写が得られた。
オリンパス OM-D E-M1/ M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO / 40mm(80mm相当) /マニュアル露出(F2.8、1.5秒) / ISO 1600

伊勢谷さんにとって旅とは?

旅とは、新しい自分に出会うための修行の場だと思っています。旅先ではさまざまなことが次から次へと起こりますが、中には今の自分では対処できないことが必ず来る起こる。そんな時に自分はここまでしかできないと線引きしていた限界を超えて起こり来る出来事に対処していかないといけない。その時はとてもつらいですが、未知の自分に出会える瞬間が好きで、いつもその瞬間が来るのを楽しみにしながら旅をしています。

夏の海を楽しむサーファーをガラス越しに撮影。M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8の柔らかい描写は自分の作風に合って気に入っている。
オリンパス OM-D E-M1/ M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8/25mm(50mm相当) /マニュアル露出(F2、1/4,000秒) / ISO 200

旅と写真の関係性について

単純に旅がしたくて旅に出るということは今まで一度も無くて、自分が撮ったこともないような写真を撮るために旅に出ます。旅では常に写真を撮ることが第一優先。写真を撮りたいという欲求が私を見たこともないような場所へ連れていってくれます。

昼は多くの観光客で賑わう街の中心部も、夜になると家路に向かう地元の人が時折通るくらいで人影もまばら。誰に邪魔されることもなくじっくり風景と向き合うことができる。普段は夜の撮影でもモノクロで撮影することは少ないのだが、この街は壁の色が家ごとに赤や黄色の原色で鮮やかに塗られていたため、モードをモノクロに切り替えて撮影。モノクロでもどんな仕上がりにするかはカメラの設定で変更することが可能だ。
オリンパス OM-D E-M1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO / 28mm(56mm相当)/マニュアル露出(F8、0.5秒)/ ISO 3200

今後取り組みたいシリーズやテーマは?

以前撮っていたメキシコの銀鉱山をテーマにした撮影を今年再開させるのと、海が好きなので、今回掲載させて頂いた作品のような海をテーマにした写真展を開催したいと思っていて、一昨年から繰り返し関東近郊の海へ撮影に出ています。

日本から持ってきた価値観で街の風景を見ると全てが撮影すべき被写体に見えてくるから、ひとときも気が抜けない。この建物は表から見ると普通の住居だったのだが、裏から見ると窓の位置がなぜこんなにバラバラなのだろうと微笑ましく感じて思わずシャッターを切った。
オリンパス OM-D E-M1 /M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO / 25mm(50mm相当)/マニュアル露出(F8、5秒)/ ISO 500

写真展の開催や写真集の発売など、告知があればぜひ!

「写真に対して、もっと気軽に何でも聞ける写真教室のような場所が身近な場所にあればいいのに……」という周りの方からの声を受け、初心者の方向けの写真教室を定期的に開催しています。コンパクトデジタルカメラやスマートフォンのカメラでの参加も歓迎しています。開催の日程は希望者に合わせて決めているのでホームページからお気軽にメールを頂ければと思います。

さまざまな楽器を持った音楽隊が夜中になるとどこからかやって来て、魅惑的な音楽を奏でながら街の裏路地を歩き回る。魅惑的なメロディーにつられてひとり、またひとりと観光客が集まり音楽隊の列に加わってゆく。
オリンパス OM-D E-M1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO / 14mm(28mm相当)/絞り優先AE(F8、1.6秒)/ ISO 1600

(デジカメWatch編集部)