新製品レビュー

キヤノンEOS 5Ds・EOS 5Ds R(外観・機能編)

5,000万画素にふさわしい風格と意外に機敏なレスポンス

EF24-70mm F2.8L II USMを装着したEOS 5Ds(右)と、EF24-70mm F4L IS USMを装着したEOS 5Ds R。

今年2月の「CP+2015」開催直前に発表され、同イベントにおける大きな話題のひとつであったキヤノン「EOS 5Ds」と「EOS 5Ds R」。その2機種が6月18日、遂に発売開始された。

ともに、市販される35mm一眼レフタイプのデジタルカメラとしては圧倒的な画素数である有効5,060画素フルサイズCMOSセンサーを搭載。いずれもローパスフィルターを搭載するが、EOS 5Ds Rはその効果をキャンセルしたモデルだ。今回のレビューでは両モデルの外観および機能の詳細をお伝えしたい。

なお、いずれの価格もオープン。本稿執筆時点での実勢価格は、EOS 5Dsが税込50万5,440円前後、EOS 5Ds Rが同じく税込53万7,840円前後(いずれもボディ単体)。

変わらないようで少し変わったボディデザイン

外観はEOS 5Ds、EOS 5Ds Rで共通。一見「EOS 5D Mark III」と全く同じボディのように思えるが、いくつか細かなところに違いがある。代表的な部分としては、まずペンタカバーだ。ホットシューから前方にかけていずれも大きな曲線を描きながらスラントしているが、メーカーロゴの部分がEOS 5D Mark IIIと異なりEOS 5Ds/EOS 5Ds Rでは切り立ったものになる。造形的にはニコンのD3系やD700に似てなくもないが、見た目の押しがこれまでより強くなったように感じられる。

EOS 5Ds
斜め前、斜め後から見たEOS 5Ds。ボタン・レバー等のレイアウトはEOS 5D Mark IIIから変化はない。
EOS 5Ds R
こちらは同様に見たEOS 5Ds R。モデル名の“R”がよく目立つ。なお、EOS 5DsとEOS 5Ds Rのボディ外観は、バッジ以外全て同じ。
EOS 5Ds(左)とEOS 5D Mark IIIとでは、ペンタ部前面のシェイプが異なる。EOS 5Dsのほうが見た目の押しが強くなったように思える。

また、メイン電子ダイヤル近くにあるM-Fnボタン周辺のシェイプも、よりエッジの立ったものとなり、モードダイヤル上面にある各モードのアイコンは浮き出し加工が施された。さらにボタン・レバーなどに添えられる文字は、大きさ自体は変わらないもののより線の細いものとなり、少し洗練されたように思える。

右がEOS 5Ds、左がEOS 5D Mark III。M-Fnボタン周辺のシェイプが異なる。EOS 5Dsのほうがエッジはシャープ。ボタン等に添えられる文字は、EOS 5Dsのほうが細めの書体を用いる。

塗装も“Black Titanium”仕上げとし、より高級感あるものとしている。ちなみにボディサイズは、幅152.0×高さ116.4×奥行き76.4mm・質量930g(バッテリー、メディア込み)。大きさはEOS 5D Mark IIIと同じとするものの、重さは20g軽量に仕上がっている。

EOS 5DsとEOS 5Ds Rの外観上の違いは、機種名の書かれたバッジのみだ。前者は機種名全てを金色とし、高価なカメラだといわんばかりに見る者にアピールする。一方後者はEOS 5D Mark IIIと同様シルバーを基調としたもの。ただし、“R”のみ赤色とし、こちらもよく目立つ。付属のストラップについても、同じ違いがある。なお、この“R”はResolution(=解像)の頭文字である。

付属するストラップは、EOS 5Dsはロゴが金色に、EOS 5Ds Rは“R”をのぞき白色とする。後者のほうが高価だが、前者のストラップのほうが高そうに見える。
奥のEOS 5D Mark IIIではクリエイティブフォトボタンは、イージーダイレクトボタンとしての役割も持つが、EOS 5Dsではその機能は省略されているようである。
モードダイヤル上面の各モードのアイコンは、EOS 5D Mark IIIではプリントだが、EOS 5Dsでは浮き出し加工の施された高級感あるものとする。
使用説明書はEOS 5Ds/EOS 5Ds R共通。実際、両モデルの名称以外の違いはローパスフィルターの効果だけである。

フルサイズ・有効約5,060万画素のセンサーとは

イメージセンサーはEOS 5Ds/EOS 5Ds Rとも、冒頭に記したように有効5,060画素の35mm判フルサイズCMOSを採用。キヤノンの自社開発・自社生産だ。EOS 5D Mark IIIが有効2,230万画素なので一挙に倍以上になり、また有効約3,600万画素のライバル機、ニコン「D810」をも大きく凌ぐ。

風景のように解像感と解像度を大切にしたい被写体の撮影のほか、物撮影などこれまで中判デジタルカメラが独占していたような領域にも活躍の場が広がることはいうまでもない。画素ピッチは4.14μm。これは「EOS 7D Mark II」や「EOS 70D」に準じたもので、参考までにEOS 5D Mark IIIの画素ピッチは6.52μmとする。

現在のEOS 5Dシリーズ、3モデル

EOS 5Ds/EOS 5Ds R、両者の性能的な違いについても前述したとおりである。前者はローパスフィルターを有効にし、後者は同フィルターを搭載しながらもその効果を打ち消したものとする。これはニコン「D800」と「D800E」の違いとまったく同じで、ローパスフィルターの効果を無効としたものほうが販売価格が高いのも同様である。

なお、EOS 5Dsのローパスフィルターは、その効果が従来よりも若干弱めとのこと。また、同社ではあくまでもローパスフィルターは必要と考えるスタンスに変更は無く、従ってEOS 5Dsが本流だという。バッジの文字をEOS-1Dsシリーズを彷彿させる金色としたことは、その証と考えてよいものだろう。

高画素をサクサク扱う高速処理。クロップも

映像エンジンはDIGIC 6を2基搭載。CMOSセンサーから16チャンネルで読み出した信号を並列で、しかも高速で画像処理を行う。連続撮影コマ速は5コマ/秒を実現。半分に満たない画素数のEOS 5D Mark IIIが6コマ/秒であることを考えると、その処理速度の速さが分かるかと思う。さらに3コマ/秒でも速い部類に入る中判デジタルとくらべた場合、圧倒的なコマ速といってよい。超高画素のデジタル一眼レフだが、従来モデルと変わらないストレスのない撮影が楽しめる。

感度域は通常設定でISO100からISO6400まで。拡張時ではL:ISO50相当とH:ISO12800相当での撮影も可能とする。同等の画素ピッチを持つEOS 7D Mark IIの通常時の最高感度はISO16000のため、敢えてそこまでの感度としなかったことが不可解に思わなくもないが、本モデルの想定される用途を考えれば十分なものであろう。

常用感度はISO100からISO6400まで。拡張によってL:ISO50相当とH:ISO12800相当の選択を可能とするほか、オートも設定できる。
RAWは、フル画素のほか2,800万画素のM-RAW、1,200万画素のS-RAWから選択が可能。JPEGでは、M1が3,900万画素、M2が2,200万画素、S1が1,200万画素、S2が250万画素、S3が30万画素とする。

また、クロップ機能は同社のデジタル一眼レフとしては目新しい機能である。これも高画素ゆえに実現できたもので、APS-Hサイズ(1.3)とAPS-Cサイズ(1.6)のクロップが選択できる。いずれも余裕ある画素数を誇り、前者の場合では有効3,050万画素、後者は有効1,960万画素とする。特に1.6クロップの場合、後述する61点高密度レティクルAFのフォーカスエリアが画面のほぼ全域をカバーするので、スポーツをはじめとする動体撮影では焦点距離の1.6倍相当になる画角とともに重宝するはずだ。

クロップ機能を搭載する。1.3はAPS-Hサイズで有効3,050万画素、1.6はAPS-Cサイズで有効1,960万画素とする。

解像力を活かす、振動抑制機能

5,060万画素となるとミラーアップ時の振動なども描写に簡単に影響してしまいそうだが、EOS 5Ds/EOS 5Ds Rでは新たにミラー振動制御システムを採用する。防振対策の施されたモーターとカムで制御を行うことで、ミラーのアップ時およびダウン時の振動を、従来のバネによるものにくらべ大幅に抑えるという。実際、手持ち撮影ではシャッターボタンを切ったときの振動は少なく感じられ、シャッターのキレもEOS 5D Mark IIIにくらべ増したように思える。

さらにミラーアップ撮影機能では、シャッターボタンを押しミラーがアップしてから実際にシャッターが切れるまでのレリーズタイムラグの時間もコントロールが可能。レリーズタイムラグは1/8秒から2秒まで5段階の設定ができ、三脚を使用した場合など積極的に活用したい機能といえる。

ミラーアップでは、ミラーがアップしてから実際にシャッターが切れるまでのレリーズタイムラグの時間をコントロールできる。レリーズタイムラグは1/8秒から2秒まで5段階の設定が可能。

61点AF。ライブビュー拡大も16倍までに

AFはEOS 5D Mark IIIで定評のある61点高密度レティクルAFを採用。さらに動く被写体に対しより捕捉効果の高いAIサーボIIIの搭載も継承する。高画素ゆえにEOS 5Ds/EOS 5Ds Rではこれまで以上にシビアなピントが要求されるが、十分その期待に応えられるものといってよい。

光学ファインダーの表示は「EOS 7D Mark II」と同様のインテリジェントビューファインダーIIとする。透過液晶を用い、フォーカスエリアや水準器、格子線、AIサーボAF照明などのほかミラーレスのEVFのように機能設定情報もファインダー画面内に表示する。ピントのピークも同社デジタル一眼レフのなかでは、掴みやすいほうに思える。

インテリジェントビューファインダーIIを採用。透過液晶を用い、水準器や格子線の表示のほかミラーレスのEVFのように機能設定情報もファインダー画面内に表示できる。

ただ、風景撮影などでは、マニュアルでのピント合わせに光学ファインダーではなく、スルー画の拡大できるライブビュー撮影を用いる人も少なくないだろう。EOS 5D Mark IIIでは最大10倍であったライブビュー画像の拡大機能だが、EOS 5Ds/EOS 5Ds Rでは16倍まで可能。より正確なピント合わせを可能としている。

余談とはなるが、現在EOS 5Ds/EOS 5Ds Rの発売に合わせて、購入者にオリジナル冠布がプレゼントされるキャンペーンが実施されている。ライブビューでピント合わせを行うとき外光をカットする有効で実用的なアクセサリーなので、同モデルのユーザーになった暁にはぜひ手に入れてほしい。

細かな新機能。ストレスのない撮影

絵づくりの部分では、まずピクチャースタイルに新たに「ディテール重視」が搭載された。その名のとおりディテールや質感の描写に優れたスタイルである。デフォルトの「スタンダード」とくらべた場合、コントラストはやや低く、彩度は同等のようであるが、細部の描写はエッジがより強めに立ち、細部の表現力を重視した仕上がりとなる。より繊細な描写を必要とするときなど応用できそうだ。

新たにピクチャースタイルには「ディテール重視」が追加された。高画素センサーの解像力を活かすため、より細部の表現力を重視したシャープネス設定としている。

また、ピクチャースタイルのシャープネス項目にはパラメータとしてこれまで「強さ」が搭載されていたが、新たに「細かさ」と「しきい値」を追加する。「細かさ」はエッジの細さの調整を行うもので、「しきい値」は微小なエッジにかかるシャープネスを調整するものである。3つとなったシャープネスのパラメータで、より撮影意図に沿った仕上がりが得られやすくなったはずだ。

オートWBには、新たにホワイト優先を搭載。従来の光源の色みを残したものとは異なり、可能な限りホワイトバランスの調整を行う。

ワイド3.2型、104万ドットのクリアビュー液晶モニターIIや、CFカード&SDカードのダブルスロット、防塵防滴構造のマグネシウムボディなど、EOS 5D Mark IIIと同じである。さらに、バッテリー(LP-E6N)およびバッテリーグリップ(BG-E11)は共通とし、従来モデルから乗り換えたユーザーはありがたく思えるはずだ。

画像再生メニューではフォトブックの指定も可能。EOS 5Ds/EOS 5Ds Rから新たに搭載されたメニューだ。

高画素機に憧れていたキヤノンユーザーとって、EOS 5Ds/EOS 5Ds Rはまさに待ち望んでいたデジタル一眼レフだろう。ライバルと目されるニコンD810を大きく上回る画素数は、これまで見えていなかったものが撮れ、被写体によっては新たなアプローチも可能とする。高画素機というとその動作は“もっさり”としたイメージがあるが、本モデルはストレス無く撮影が楽しめ、被写体を選ぶようなこともない。

そんなEOS 5Ds/EOS 5Ds Rだが、いざ購入となると気になるのがローパスフィルターの効果の有無だろう。かたやローパスフィルターの効果を活かし、かたや効果を打ち消す。価格の違いはあるものの、どちらの選択が最善であるか、大いに悩みそうである。次回の実写編では、両モデルの比較作例を中心にお伝えしようと思うので、ぜひ期待してほしい。

大浦タケシ

(おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に写真雑誌等の記事を執筆する。プライベートでは写真を見ることも好きでギャラリー巡りは大切な日課となっている。カメラグランプリ選考委員。