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【新製品レビュー】オリンパスSP-800UZ

驚きの840mm相当! 光学30倍ズームを実現
Reported by 吉森信哉

 広角28mmから超望遠840mm(数値はいずれも35mm判換算、以下同)という非常に幅広い焦点距離をカバーするコンパクトデジタルカメラ。ズーム比はなんと光学30倍だ。現在、光学30倍を実現した製品は、本機と富士フイルムのFinePix HS10だけ。ちなみに、FinePix HS10のズームレンジは24〜720mm相当なので、望遠側に関してはSP-800UZの方に分がある。

 また、これほどまでの高倍率ズームレンズを搭載しながら、楽に手のひらに載せられるコンパクト&軽量設計になっているのも大きな特徴である。電池とメモリーカード込みでの重量は、わずか418g。FinePix HS10と比べると、なんと312gも軽いのだ。また、光学15倍ズームを搭載する兄弟モデルSP-600UZと比べても15gほど軽い(使用電池の違いも影響しているが)。

 焦点距離840mmもの超望遠撮影になると、どうしても手ブレによる失敗が懸念される。だが、CCDシフト式手ブレ補正機構と高感度撮影を組み合わせた「DUAL IS」によって、その問題に対応している。

 撮像素子は1/2.33型で有効画素数1,400万画素のCCD。液晶モニターは3型23万ドット、アスペクト比16:9のワイドタイプになる。

 動画撮影は、最大1,280×720ピクセル/30fpsのHD対応。動画圧縮方式には長時間記録が可能なMPEG-4 AVC/H.264を採用する。

 記録メディアにはSDHC/SDメモリーカードを採用。また、2GBの大容量メモリも内蔵する。それにより、メモリーカードがなくても、最大19分54秒のHD動画が撮影できてしまう。もちろん、最高画質の静止画も最大265コマも撮影可能だ(いずれも仕様表の数値)。

 豊富な内蔵メモリを活かした機能として、パソコンに取り込んだ画像をカメラに書き戻し、日付やシーンモードなどの撮影情報で検索や観賞ができる「フォトサーフィン」も楽しめる。


高倍率なのに無駄のないスリムなフォルム

 光学30倍というレンズのズーム倍率にも驚くが、それを搭載するボディのコンパクトさにも驚かされる。一般的に、20倍以上の高倍率ズームレンズを搭載したコンパクトデジカメは、“一眼レフカメラを小型化”したようなフォルムのモデルが多い。富士フイルムFinePix HS10などは、そんな典型的な例である。直径の太いレンズ鏡筒部に合わせるように、全体に肉付きが良いフォルムとなり、全体のボリューム感も増してくる。また、一眼レフカメラの光学ファインダーに相当するEVF(液晶ビューファインダー)の搭載例も多い。バッテリーも単電池4本で駆動するタイプや、デジタル一眼レフカメラ並みの大きさのリチウムイオン電池を採用するのが一般的だ。

 だがSP-800UZは、大きめのレンズ鏡筒に対し、スリムタイプのコンパクトデジカメのようなボディを組み合わせたスタイル。とにかく余分な肉厚感がないのを特徴としている。また、EVFも非搭載。しかも、薄型コンパクトデジカメと共通のリチウムイオン充電池を採用したことで、電源を収納するグリップ部も驚くほどスリム。その結果、他の高倍率ズーム機とは異なる、独特のデザインや軽快さが生まれた。

上から見るとレンズをのぞいた本体の薄さが目につく バッテリーは薄型タイプ。徹底的した小型軽量化の思想を感じる
パソコンからのUSB給電も可能 すっきりした背面。動画専用ボタンを備えている
内蔵ストロボ。ホットシューは非搭載

 ズーム操作は、グリップ上部のズームレバー(シャッターボタンの基部にある)で行なう。レバー操作やズームの動きに大きな不満はないが、操作中、液晶モニター上にズーム倍率が表示されない(ズーム位置を示すバーのみ表示)のは、30倍もの高倍率ズーム機としては少々さびしい。それにしても、30倍ともなると、画角変化の大きさには圧倒されるばかりだ。

 P(プログラムオート)、iAUTO(iオート)、SCN(シーンモード)、MAGIC(マジックフィルター)、パノラマ、BEAUTY。これらの撮影モードの選択や、各種の撮影機能や設定は、液晶モニターの右側に縦に表示されるファンクションメニューから行なう。そのファンクションメニューはMENUボタンを押す(またはスクロールダイヤルを下側に押す)と表示される方式だ。

 だが、直前にどの項目を選んで設定しても、再度表示させると選択ポジションが一番上の「撮影モード」に戻ってしまう。だから同じ機能を続けて操作したい場合にストレスを感じることがある。スクロールダイヤルの十字キー(4方向)に各種機能の割り当てやカスタマイズ性を持たせていないのなら、せめて前回に操作した項目くらいは記憶していて欲しいものである。

 液晶モニターは、セットアップ内の「モニタ調整」で明るさが調整できる。また、標準の状態でも十分に明るい。明るい屋外で使用しても不都合はあまり感じなかった。ただしパソコンでチェックした際、明るさや階調再現について、液晶モニターと撮影画像とのギャップを感じる場合もある。

撮影モードの画面例。右側に表示されているのがファンクションメニュー
マジックフィルターや露出補正などを設定(選択)する際には、液晶モニター上に前後の設定での効果も確認できる。露出補正での有効性には疑問を感じるが、マジックフィルターでは有効な方式だと思う。

オート撮影を主体とした操作性

 SP-800UZは、基本的には“非マルチモード”のプログラムオート機で、A(絞り優先オート)やS(シャッター優先オート)やM(マニュアル)の露出モードは搭載していない。また、彩度やシャープネスといった画質調整も行なえない。光学30倍というハイスペックながら、あえてオート撮影に主眼をおいた製品といえる。そのため、撮影テクニックを駆使して撮影したい人だと、少々物足りなさを感じるかもしれない。

 ピント合わせもAFのみで、MFは利用不可。ただし、動いている被写体に自動でピント追従する「自動追尾」や、AFターゲットの位置を自由に移動できる「ターゲット選択」といったAF方式を搭載しているので、特に不便さは感じないだろう。

 18種類もあるシーンモードの中で、ボク自身が特に興味を覚えたのが「背景ぼかし」モード。被写体の背景(周囲)を画像処理によって大きくぼかせるモードで、撮像素子が小さくてぼけが小さいコンパクトデジカメでは有効な機能と言えるだろう。

「背景ぼかし」モードは、オートのほか手動で主要被写体の形を指定するモードがある
「背景ぼかし」モードで、人の上半身を描いた枠を選んだところ。サイズは中。事件現場みたいです こちらは「大」の枠。画面上の枠の位置は自由に動かせる。かなり端にも寄せられる

 この種の機能としては、富士フイルムのFinePix F80EXRやS200EXRなどに搭載されてる「ぼかしコントロール」があるが、SP-800UZの「背景ぼかし」には独自のおもしろさがあった。被写体を認識して、ぼかし領域を自動で判断して背景をぼかす……というオートモードは、FinePixの「ぼかしコントロール」にも通じるものがある。だが、実際にオートで撮影してみると、思い通りにいかない場合も多い。被写体と背景との境目が不自然だったり、条件的に難しくてぼかし処理が行なわれずエラーメッセージが表示されたり、といったことも多い。これはFinePixもSP-800UZも同じである。

 その点SP-800UZでは、主要被写体が占める画面内の領域を、オートではなく手動で選べる点が面白い。ファンクションメニューの一番上でSCNに切り替えて「背景ぼかしモード」を選ぶと、その下に被写体の領域を選択する項目がある。そこでオートや手動の枠(被写体の領域)を選ぶのだ。その枠の形は“円形”と“人の上半身”の2パターン。それぞれ大中小と3つのサイズが選択でき、その枠を十字キー(スクロールダイヤルの上下左右)操作で自由に移動できる。

 だが、被写体の形状や大きさがその枠に合っていないと、枠の形(ぼけた部分とそうでない部分との境目)が不自然に出てしまう。今回の撮影では、主に花の撮影で円形の枠を使用したが、大きさはともかく、被写体が上手く収まらず苦労した。「円形じゃなくて楕円だとピッタリはまるのに……」と何度も感じたものである。

 ただし、自分で枠を選んで位置も決められるという方法自体は、かなり快適に操作できるし、そのボケの効果も十分に期待できる。今後、もっと枠の大きさや形状が自由に選べるようになれば、さらに魅力的な機能になると思う。円や四角の枠を選ぶことができ、その枠の大きさを自由に変えたり、縦や横に変形させたり……といった操作ができるようになれば理想的である(タッチパネルで操作できたらより快適だ)。また、ボケの度合いも3段階くらいから選べるとベストだろう。


予想以上に画質は良好

 画質面で気になるのが、光学30倍ズームという激しいスペックのレンズ描写である。試用する前は、「超望遠域がアマくなるのでは?」、「いや、望遠側を重視するあまり逆に広角域に悪影響が出るのでは?」……といった心配が脳裏に浮かんだものだ。だが、ズーム全域で思った以上に良好な描写を得ることができた。もちろん、望遠端ではわずかに解像感やコントラストの低下、色収差の発生などが感じられるが、手軽に使えるコンパクトデジカメの超望遠域としては、十分に実用的なレベルに達していると思う。

広角端 望遠端
付属するレンズフロントキャップと落下防止用のひも

 なお、メーカー担当者の話によると、連写時のレスポンスなどの理由で、カメラ内での画像補正(収差の補正など)は行なっていないとのこと。まあ、そのぶん広角側の歪曲収差は、それなりに目立っているが……

 また、超望遠域ではレンズの性能よりも、手ブレの影響が問題になってくる。SP-800UZのCCDシフト式手ブレ補正機構は効きが良く、手持ちでの望遠撮影でも「大きくブレてアウト」というカットは、ほとんど発生しなかった。シャッター速度が1/125秒やそれ以下になっても、少し注意して撮影すれば、手ブレを抑えたシャープな描写を得ることが可能である(撮影条件や個人差による差はあるだろうが)。

 高感度画質について見てみると、最低感度のISO50だと、さすがに細部まで緻密に描写されている。とはいえ、暗部や特定の色では、少しノイズっぽさが感じられる場合もある。こうしたノイズっぽさは、マジックフィルターの「ポップ」などでも、感じられる場合がある。

 ISO400まで感度を上げると、ノイズ処理の関係で細部がアマくなり、画面全体にむらっぽさも感じられるようになる。とはいえ、もう1段上のISO800も含め、「画質最優先の撮影」でなければ、十分に実用になるレベル。それ以上の感度になると、記録用と割り切っても厳しいクオリティに思える。

 ちなみに、ISO感度をオートに設定しておくと、望遠端でもISO100くらいまでしか感度アップしないことが多い。本機の場合、感度による画質劣化は、あまり気にしなくていいだろう。もちろん、手ブレの可能性には注意を払いたい。

 オリンパス機にも搭載がはじまったHD動画撮影機能に関しては、基本的な画質(精細感やシャープ感など)は十分にクリアしていると思う。超望遠域でのAF追従もまずまずである。だが、明るさの変化に対する追随性は「少し滑らかさに欠けるかな」という印象を持った。また、せっかく光学30倍ズームを搭載しているのに音声付き動画では、光学ズームが使用できないのは残念である。音声なしにすればズームが可能だ。

録音をオフにすると動画中のズームが可能になる micro HDMI端子を装備。静止画に加えて動画のHD出力が可能だ

まとめ

 最大の特徴である光学30倍ズームは、何と言っても望遠端840mm相当のインパクトが大きい。しかし、いうまでもなく、一般撮影では広角端28mm相当での撮影も重宝するだろう。また、被写体に1cmまで接近できる「スーパーマクロ」も実用度が高い。ズーム位置は固定だが、その画角は中望遠域(約84mm相当)なので、広角側でしか寄れないコンパクトデジタルカメラよりも使いやすいのだ。

 カメラ内の画像を、撮影日や人物(認識)や撮影モードなどの条件で検索・再生できる「フォトサーフィン」は、パソコンとの連携により、イベント情報、位置情報、人物情報などを付けて管理できる。また、HD動画も含めた撮影画像は、別売のHDMIケーブル(カメラ側はミニ端子でなくマイクロ端子)で接続すれば、より高画質な再生を楽めるだろう。こうした最近のトレンドを上手く取り入れた点は評価できる。

 ファンクションメニューの操作性がひとつの機能を継続的に操作するのに適していなかったり、大量の画像をすばやく表示(コマ送り)する際に使用するスクロールダイヤルの動きが固くてスムースに回せない……といった操作に関する不満点もいくつかある。しかし、楽に手のひらに載るコンパクト&軽量ボディでありながら、28mmから840mmまでカバーしてしまう光学30倍ズームを搭載したコンセプトが、細かな不満を補って余りある大きな魅力に変えている。

 超スリムなボディや、防水・防塵・耐衝撃性など、コンパクトカメラには、レンズ交換式のデジタルカメラにない特徴がいくつもある。この製品の“手のひらボディ+光学30倍ズーム”も然りである。

カメラ内で画像を検索できる「フォトサーフィン」。共通する日時や撮影モードの写真を抽出して表示する。付属ソフトの[ib]を使えば、さらに高度な検索も可能に

実写サンプル

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。

・画角

広角端
SP-800UZ / 約5.3MB / 4,288×3,216 / 1/60秒 / F5 / +0.3EV / ISO50 / WB:オート / 4.9mm
望遠端
SP-800UZ / 約6.1MB / 4,288×3,216 / 1/40秒 / F5.6 / +0.3EV / ISO100 / WB:オート / 147mm

・歪曲収差

広角端
SP-800UZ / 約5.4MB / 4,288×3,216 / 1/8秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 4.9mm
望遠端
SP-800UZ / 約5.7MB / 4,288×3,216 / 1/6秒 / F5.6 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 147mm

・感度

※共通設定:SP-800UZ / 4,288×3,216 / -0.3EV / ISO50 / WB:曇天 / 5.5mm
ISO50 ISO100 ISO200
ISO400 ISO800 ISO1600
ISO3200    

・背景ぼかし

「背景ぼかし」では、オート以外に主要被写体の枠の形を選択できる。この例では選択した円形の枠が上手くマッチした。ちなみに、「背景ぼかし」モードでは、ぼかし処理されたカットと未処理(通常どおり)のカットの2パターンが記録される。

※共通設定:SP-800UZ / 約3.8MB〜約4.8MB / 4,288×3,216 / 1/80秒 / F4.2 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 41.1mm
背景ぼかしON 背景ぼかしOFF

 枠が被写体に合っていないと、不自然な背景ボケになってしまう。

※共通設定:SP-800UZ / 約3.6MB〜約5.1MB / 4,288×3,216 / 1/80秒 / F4.1 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 10mm
背景ぼかしON(失敗例) 背景ぼかしON(失敗例)

・マジックフィルター

※共通設定:SP-800UZ / 約1.4MB〜約5.8MB / 4,288×3,216 / 1/80秒 / F4.1 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 10mm
通常 ポップ ピンホール
フィッシュアイ スケッチ  
ポップ
SP-800UZ / 約5.8MB / 4,288×3,216 / 1/320秒 / F5.7 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 7.1mm
フィッシュアイ
SP-800UZ / 約4.9MB / 3216x4288 / 1/80秒 / F5.7 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 4.9mm
ポップ
SP-800UZ / 約5.8MB / 4,288×3,216 / 1/50秒 / F3.6 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 4.9mm
ポップ
SP-800UZ / 約5.9MB / 3216x4288 / 1/80秒 / F4.9 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 13.2mm
ポップ
SP-800UZ / 約5.9MB / 4,288×3,216 / 1/80秒 / F4 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 17.1mm
スケッチ
SP-800UZ / 約1.4MB / 2,048×1,536 / 1/200秒 / F2.8 / 0EV / ISO800 / WB:オート / 4.9mm
ピンホール
SP-800UZ / 約4.1MB / 4,288×3,216 / 1/8秒 / F3.1 / 0EV / ISO125 / WB:オート / 6.3mm

・スーパーマクロ

SP-800UZ / 約6.1MB / 4,288×3,216 / 1/500秒 / F5.6 / +0.3EV / ISO50 / WB:オート / 15.2mm SP-800UZ / 約6.1MB / 4,288×3,216 / 1/50秒 / F3.9 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 15.2mm

・HD動画

48.2MB / 1,280×720 / 30fps / mp4

・そのほか

SP-800UZ / 約5.9MB / 4,288×3,216 / 1/50秒 / F5.6 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 147mm SP-800UZ / 約5.7MB / 3216x4288 / 1/100秒 / F5.6 / +0.3EV / ISO100 / WB:オート / 147mm
SP-800UZ / 約5.5MB / 4,288×3,216 / 1/160秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 147mm




吉森信哉
(よしもりしんや) 1962年広島県生まれ。東京写真専門学校(現東京ビジュアルアーツ)を卒業後、雑誌や写真展などで作品を発表。1990年から写真専門誌を中心に撮影と執筆の仕事を始める。ライフワークは“素朴な農村風景”や“日常の中の花景色”など。現在のメイン撮影機材はデジタル一眼レフだが、旅のお供にコンパクトデジカメも持参する……というか大好物(笑)。気がつけば、1年間に10台近くのコンデジを買ってたりする。

2010/4/28 20:13