【新製品レビュー】カシオEXILIM ZOOM EX-Z450

~被写体を自動で識別する「さがしてフォーカス」を搭載
Reported by 本誌:武石修

EXILIM ZOOM EX-Z450

 今回は、カシオが今夏に発売したコンパクトデジタルカメラ「EXILIM ZOOM EX-Z450」を採り上げたい。デジタルカメラでは珍しい被写体の自動検出機能「さがしてフォーカス」を新たに搭載したのが特徴になっており、さらに独自の動画合成機能「ダイナミックフォト」も従来機から進化した。量販店での価格は3万6,800円+ポイント10%といったところ。


撮影したい被写体をカメラが自動選択

「インテリジェントAF」を選ぶとさがしてフォーカスが利用できる

 さがしてフォーカス(カメラ内の表記は「インテリジェントAF」)は、撮りたいシーンにカメラを向けると画面内のどの部分を撮影者が狙っているのかを判断して、自動的に被写体を探す機能だ。従来、各社とも被写体が人物の場合には顔検出機能により実現していた。今回カシオは、人間以外の被写体であっても自動的に検出してピントと露出を合わせることを強調している。

 ところでコンパクトデジタルカメラの多くには、従来から測距点を自動的にカメラが選択する多点AF(カシオでは「マルチAF」と呼称)が搭載されている。今回のさがしてフォーカスが一般的な多点AFと違う点は、カメラの画像解析で得られた情報を、独自のアルゴリズムに照らし合わせ「この構図の場合は、これが撮影者の撮りたい被写体だろう」とカメラが判断してくれること。このアルゴリズムは、写真のデータベースを基に作成したという。

 多点AFでは、例えば人物の手前に葉があったりすると、より近いもの(葉)に合わせてしまうこも少なくない。カシオによるとそうした場合により主被写体(この場合人物)にフォーカス枠を合わせることができるとのこと。

 実際に試してみると、確かに撮りたかった被写体に緑のフレームが出るのがわかる。背景よりも前にある被写体に合わせているのかと思ったが、水平線を画面の中心にした構図では手前の海に合焦しないで、きちんと奥にピントが合った。カメラに不慣れなユーザーでもピンぼけが防げる有効な機能と言えそうだ。


さがしてフォーカスで半押ししたところ。ちゃんと船の部分に緑のフォーカスフレームが出ている一方、手前に船がない場合はちゃんと奥にピントが合った

 カシオの従来機やEX-Z450のマルチAFではフォーカス枠は9点あるが、9点が中央寄りに固まって配置されているため、主被写体が中央寄りである必要があった。一方さがしてフォーカスでは、構図や被写体の状況からフォーカス枠の位置が移動するためほぼ画面全体で主被写体が探せるのもメリットだ。さらに、フォーカス枠自体も状況に合わせて大きさが変化し、よりフレキシブルに対応できるようになっている。さがしてフォーカスは、2CPU構成の「EXILIMエンジン4.0」で実現した機能の1つだ。

ダイナミックフォトは1回の撮影で切り抜き可能に

キャラクターの撮影を1回で済ませることが可能になった

 動く被写体を合成できるダイナミックフォトも引き続き搭載している。今回からは、素材(動くキャラクター)の撮影時に、背景が平面で単一色の場合には1度の撮影で切り抜きができるようになった。模様のない壁の前で撮影すると確かに1度で切り抜くことができ、使い勝手が高まっている。光の当り具合などにもよるが、今回試したところでは従来の2回切り抜きとほぼ同じ精度だった。

 なお、合成用の動く素材は同梱のCD-ROMに250種類ほどが収録されており、好きな静止画に合成して楽しむことができる。また、作成したダイナミックフォトは同梱のPCソフト「Dynamic Photo Manager」で変換することにより携帯電話などで再生可能になる。


人物の肌を綺麗にする「人物メイクアップ機能」も搭載風景をくっきり写せる「風景メイクアップ機能」も備えている

 

2つのメイクアップ機能は、本体上部の専用ボタンから素早く利用できる

明暗差を最適にコントロールできる機能も

 撮像素子は1/2.3型有効1,210万画素CCDを採用している。画質は特段綺麗というわけではないが、このクラス(1/2.3型で1,200万画素前後)では標準的なところだろう。高感度はISO400までならディテールの喪失は少ない。ISO800になるとノイズはそれなりに増す。本機のノイズリダクションはノイズを塗りつぶすタイプのようで、ざらざら感は少ないものの詳細なディテールは失う。ISO1600では全体的に描写が甘くなる。最高感度であるISO3200になると一気にカラーノイズが増えてしまい、ほとんど緊急用といった感じだ。

撮影画面明暗差のバランスを最適に設定できる「ライティング」機能も搭載
フォーカス枠の種類も選択できる無線LAN機能内蔵SDカード「Eye-Fiカード」にも対応する

 レンズは35mm判換算で28~112mm、F2.6~5.8の4倍ズーム。薄型モデルとしては使いやすいズームレンジになっている。手ブレ補正はCCDシフト式だ。歪曲収差もコンパクトデジタルカメラとしては目立たず、周辺の流れは少ない。ただ、望遠端はやや甘くなる印象だ。

まとめ

 本機の目玉であるさがしてフォーカスは、なかなか使い勝手のいいシステムだと思う。デザインはオーソドックスだが、レンズ周りのスピンドル加工やボディの微妙な曲線で高級感を演出しているのも良い。録画や人物メイクアップ/風景メイクアップボタンを独立して設けているのも使いやすさ向上に役立っている。手ブレや被写体ブレが収まった瞬間、自動的にシャッターを切る「オートシャッター」など従来からの機能も継承している。何より、今のところカシオのカメラでしかできないダイナミックフォトが楽しめる最新機種とあって、ファミリー層などにはひと味違ったデジタルカメラとしてお勧めしたい。

レンズは広角28mm対応の4倍ズーム背面操作部
録画ボタン(下)は独立して設けた電源ボタン
付属の充電器とバッテリーバッテリーおよびメモリーカード室

作例

※サムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウインドウで表示します。

●画角

広角端
EX-Z450 / 4,000×3,000 / 1/200秒 / F7 / 0EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 4.9mm
望遠端
EX-Z450 / 4,000×3,000 / 1/320秒 / F5.8 / 0EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 19.6mm

・歪曲収差

広角端
EX-Z450 / 4,000×3,000 / 1/100秒 / F2.6 / 0EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 4.9mm
望遠端
EX-Z450 / 4,000×3,000 / 1/30秒 / F5.8 / 0EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 19.6mm

●ISO感度

共通設定:EX-Z450 / 4,000×3,000 / F3 / 0EV / プログラム / WB:オート / 6.9mm

ISO64ISO100ISO200
ISO400ISO800ISO1600
ISO3200

●ライティング

 明部と暗部のバランスを最適に調節する機能。「入り」よりも高度な処理を行なう「エクストラ」も選択できる。


EX-Z450 / 4,000×3,000 / 1/160秒 / F7 / 0EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 4.9mm

EX-Z450 / 4,000×3,000 / 1/1,000秒 / F2.6 / 0EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 4.9mm
エクストラ
EX-Z450 / 4,000×3,000 / 1/1,000秒 / F2.6 / 0EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 4.9mm

●人物メイクアップ

 肌を滑らかにするとともに、顔の影を和らげることができる。効果の強さ(メイクアップレベル)は0~12に設定可能。

共通設定:EX-Z450 / 4,000×3,000 / 1/5秒 / F5.8 / 0EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 19.6mm

メイクアップレベル0同6同12

●風景メイクアップ

色を鮮やかにしたり、もやの除去を行なって風景をより美しくする機能。「あざやか風景」と「もや除去」から選択でき、それぞれ効果の強さを2段階から選べる。

共通設定:EX-Z450 / 4,000×3,000 / 1/400秒 / F5.8 / 0EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 19.6mm

あざやか風景:+1(弱)あざやか風景:+2(強)
もや除去:+1(弱)もや除去:+2(強)

●HD動画

サムネイルをクリックすると1,280×720ピクセルのAVI動画(39MB)を開きます

●ダイナミックフォト

 左は1回の撮影での切り抜きで作成したダイナミックフォト。右は従来からの2回撮影で作成したもの。背景が単一色の壁であれば、1回の撮影でも綺麗に動くキャラクターを切り抜くことができるようになった。


●一般作例

EX-Z450 / 4,000×3,000 / 1/200秒 / F7 / 0EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 4.9mmEX-Z450 / 4,000×3,000 / 1/250秒 / F5.8 / 0EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 19.6mm
EX-Z450 / 4,000×3,000 / 1/400秒 / F5.8 / +0.7EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 19.6mmEX-Z450 / 4,000×3,000 / 1/250秒 / F5.2 / +1EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 16.5mm
EX-Z450 / 4,000×3,000 / 1/200秒 / F7 / +0.7EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 4.9mmEX-Z450 / 4,000×3,000 / 1/400秒 / F7 / 0EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 4.9mm
EX-Z450 / 4,000×3,000 / 1/250秒 / F7 / 0EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 4.9mmEX-Z450 / 4,000×3,000 / 1/800秒 / F5.8 / 0EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 19.6mm
EX-Z450 / 4,000×3,000 / 1/200秒 / F7 / +0.7EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 4.9mmEX-Z450 / 4,000×3,000 / 1/400秒 / F5.8 / 0EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 19.6mm
EX-Z450 / 4,000×3,000 / 1/400秒 / F4.6 / 0EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 13.9mmEX-Z450 / 4,000×3,000 / 1/640秒 / F5.8 / +0.3EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 19.6mm
EX-Z450 / 4,000×3,000 / 1/200秒 / F7 / 0EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 4.9mmEX-Z450 / 4,000×3,000 / 1/800秒 / F5.8 / 0EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 19.6mm
EX-Z450 / 4,000×3,000 / 1/500秒 / F5.8 / 0EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 19.6mmEX-Z450 / 4,000×3,000 / 1/320秒 / F7 / 0EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 4.9mm
EX-Z450 / 4,000×3,000 / 1/320秒 / F5.8 / 0EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 19.6mmEX-Z450 / 4,000×3,000 / 1/800秒 / F4.6 / +1EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 13.9mm





本誌:武石修

2009/10/8 12:34