オリンパスE-620【第7回】

とりあえず何でもかんでも地べたビューで撮ってみた

Reported by 北村智史


今回の撮影で使ったのはZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6とZUIKO DIGITAL ED 50mm F2 Macroの2本

 先日、ほかの仕事の撮影で、ローアングルから空抜きで撮るのが良さそうなシーンがあったのだが、そういうときに限って持っていってるカメラが固定式液晶モニターのD700だったりして、ちょっと切ない思いをした。一応、念のために書いておくと、空抜きというのは空を背景にして撮るという手法で、写真に文字を載せてレイアウトしやすいように、背景をシンプルにするのが主な目的だ。

 まあ、D700にだってライブビュー機能は付いているのだが、液晶モニターの画面に正対して見られないとなんだか落ち着かないし、だったらファインダーをのぞいて撮っちゃったほうがいいやというわけで、地べたに寝っ転がってしまった。天気も良かったし、きれいな撮影場所だったこともあって抵抗はなかったのだけれど、体勢的にはやっぱり苦しい。出てきた感想は「なんでE-620持ってないんだろ……」だった。

 というのは、E-620の液晶モニターがフリーアングル式(バリアングルと呼んでいるメーカーもある)だからで、これがあるとないとでは、同じライブビューでも使い勝手が全然違うのだ。フリーアングルなら液晶モニターの向きを自由に変えられるので、どんな体勢でも見やすい状態をキープできる。なので、地面すれすれのローアングルとか、頭上にカメラを掲げてのハイアングル撮影とかも余裕で対応できる。D700なら地面に這いつくばらなくてはならないシーンでも、E-620なら楽勝なのである。

 一方、世の中には上下方向だけ動くチルト可動式というのもある。こちらもローアングル撮影やハイアングル撮影が容易にできることを売りにしているが、フリーアングルと違って左右方向には動かないので、縦位置での撮影には対応できない。横位置だけでも便利なんだから、と擁護する心の広い人も多いが、筆者的には、横位置の便利さの分だけ縦位置の不便さが際立ってしまう。


横位置撮影でのローアングルはこんな感じ。ファインダーをのぞけない条件でも、ライブビュー+フリーアングル液晶モニターならばっちりだ縦位置でもきちんとローアングルに対応できるのがフリーアングルの強みだ

 そういうのはさておくとして、このフリーアングル液晶モニターというやつは、一度はまってしまうと、カメラを買い替えるときもフリーアングルじゃないカメラが選択肢に入れられなくなってしまうくらいの病みつき系アイテムである。

 さっきも書いたように、ローアングルやハイアングル撮影が抜群にやりやすい。ライブビューに切り替えて、液晶モニターを上に向けるだけ。普段と違う目線でカメラを構えれば、それだけで新鮮な気分が味わえる。ちょいとしゃがみ込むだけで、いつもと違った写真が撮れる。ファインダーをのぞくために四苦八苦したり寝転がったりしなくていいし、撮影距離を調整するために匍匐前進する必要だってもちろんない。素晴らしい。

 もっとも、今回のレポートのように、何でもかんでも地べたすれすれのローアングルで撮ってみようというのには無理がある。ローアングルのほうが撮りやすい、もしくは画になりやすい被写体はそう多くない。そのうえ、人の多い街中なんかでやっていたら白い目で見られるのは間違いないし、通報されないとも限らない。TPOを選ぶ手法なのである。

 ライブビュー+フリーアングル液晶モニターだとこんな写真が撮れるんだぞ、すごいだろう、みたいな偉そうな気持ちは毛頭ない。今どきライブビューができない一眼レフはほとんどないが、そのわりに地面に這いつくばらなくてもローアングルが撮れるカメラは数えるほどもないのが現状で、そういう特典は誰もが持っているわけじゃないんだし、少しは活用しないとねぇ、と考えた結果である。

 あちらでしゃがみ、こちらでしゃがみするのは腰にあまりよくないのと(撮ってるあいだはずっと猫背状態なので、背中にもきつい)、ブレを抑えようと片膝つくと小石が食い込んで痛いとか、水面近くで撮っていてカメラを濡らしそうになったとか、こんなネタを思いついたことに後悔しつつ撮ってきたのをご笑覧いただきたい。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。
普通に撮ったように見えるかもしれないけれど、カメラを支える左手の甲が地面に触れる状態で撮影している
ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2 Macro / 4,032×3,024 / 1/250秒 / F4 / +1.3EV / ISO200 / WB:オート
地上に出てきたばかりの木の赤ちゃん(草だったりして)。高さはほんの数cm
ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2 Macro / 4,032×3,024 / 1/320秒 / F8 / -2EV / ISO200 / WB:オート
こちらは枯れて倒れたと思われる木の根方。手ブレ補正機構内蔵のE-620だから助かったけど、なかったらけっこうきつかったかも
ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2 Macro / 4,032×3,024 / 1/25秒 / F4 / -0.7EV / ISO200 / WB:オート
斜面に石段上に並べられた飛び石。地面すれすれからだと、目で見ているのとはずいぶん違う雰囲気になる
ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 4,032×3,024 / 1/13秒 / F5.6 / -0.3EV / ISO200 / WB:太陽光
水辺の苔なんかもローアングルでないと撮れない被写体。カメラは地面すれすれでも、ライブビュー+フリーアングルなららくちん
ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2 Macro / 4,032×3,024 / 1/40秒 / F5.6 / -0.3EV / ISO200 / WB:太陽光
水面近くまでカメラを下ろすのはかなりスリリング。下げすぎて指を濡らしてひやっとしたことも数回(カメラはセーフだったけど)
ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2 Macro / 4,032×3,024 / 1/100秒 / F5.6 / +0.3EV / ISO200 / WB:太陽光
苔むした石が水面に映っている。こういうのがねらえるのもローアングルならではのおもしろさ
ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2 Macro / 4,032×3,024 / 1/50秒 / F5.6 / -0.3EV / ISO200 / WB:太陽光
ふと気配を感じて顔を上げると、「何やってるんだ、こいつ?」みたいな視線にぶつかったりもする。ちょっと切なくなる一瞬である
ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2 Macro / 4,032×3,024 / 1/60秒 / F4 / 0EV / ISO200 / WB:太陽光
今回は14-42mmと50mmマクロの2本のレンズを持っていったけれど、結局ほとんどは50mmマクロで撮っていた
ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2 Macro / 4,032×3,024 / 1/80秒 / F2.8 / -0.7EV / ISO200 / WB:太陽光
穴の開いた岩もローアングルから見ると、洞窟っぽい
ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 4,032×3,024 / 1/30秒 / F5.6 / -0.7EV / ISO200 / WB:太陽光
タンポポの花を下から仰ぎ見るアングルというのは普通はあまりないと思う。下から見ることに価値があるかといわれると困るけど
ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2 Macro / 4,032×3,024 / 1/400秒 / F4 / 0EV / ISO400 / WB:太陽光
タンポポの綿帽子になるちょっと前の状態。50mmマクロは、円形絞りじゃないのが残念だけど、それ以外は素晴らしいレンズだと思う
ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2 Macro / 4,032×3,024 / 1/125秒 / F8 / +1.0EV / ISO400 / WB:太陽光


北村智史
北村智史(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。2011年、東京の夏の暑さに負けて涼しい地方に移住。地味に再開したブログはこちら

2010/5/7 14:27