交換レンズレビュー
AF-S DX NIKKOR 18-300mm f/3.5-6.3G ED VR
小型軽量かつ描写に磨きのかかった高倍率ズームレンズ
Reported by 大浦タケシ(2014/5/19 08:00)
「AF-S DX NIKKOR 18-300mm f/3.5-6.3G ED VR」は、DXフォーマット対応の高倍率ズームレンズ。ズーム倍率は約16.7倍とし、35mm判換算で27mmから450mm相当の画角をカバーする。
光学系はEDレンズ3枚、非球面レンズ3枚を含む12群16枚。コンパクトな鏡筒に押し込まれるが、高倍率ズームレンズとしては圧倒的ともいえる解像感、コントラストを誇る。
さらに従来よりも補正効果のアップした手ブレ補正機構VRの搭載により、望遠側の撮影でもたいへん心強い。加えて超音波モーターSWM(Silent Wave Motor)の搭載により静粛性に優れ、高速のAFを実現しているのも特徴とする。
デザインと操作性
これまでニコンの高倍率ズームというとレンズ専業メーカーのものにくらべ大きく重いものであったが、本レンズは一回り以上小さく、しかも軽量。
ちなみ従来からある本レンズと近いスペックのレンズ「AF-S DX NIKKOR 18-300mm f/3.5-5.6G ED VR」は全長120mm、最大径83mm、質量は830gであるのに対し、本レンズは全長99mm、最大径78.5mm、質量は550gとする。
望遠での撮影の際、ブレを少しでも抑えたければレンズ先端を持つとよいだろう。ズームリングの操作感で気になったところといえば、ワイド側からテレ側にズーミングすると途中重く感じるところがあることである。個体差なのかも知れないが、今後改善を希望するところである。なお、移動や収納の際に便利なズームロック機能を備える。
前述のとおりAF駆動用にSWMを採用し、ストレスのないスピーディなピント合わせを実現する。ただし、残念ながらフルタイムMFには未対応だ。望遠レンズの使用ではAF合焦後ピント位置の微調整をしたくなることも少なくないので、こちらも今後に期待したいところである。
遠景の描写は?
ワイド端およびテレ端とも、画面の四隅にわずかにユルい部分が見受けられ、線もやや太めの描写であるが、それ以外は絞り開放から高倍率ズームとして十分キレのよい描写といえる。
コントラストの高い被写体なら単焦点レンズと見分けがつかないようなこともありそうだ。画面周辺部で発生することの多い色のにじみについてもよく抑えており、A3ノビサイズにプリントしても気になるようなこともないだろう。
また、回折現象による解像感の低下は、F11あたりから見受けられるようになる。周辺減光についてはワイド端開放値でやや強めに感じられるほかは、極々一般的なレベル。F8あたりから気にならなくなりそうである。もっともこのレンズの描写のピークはワイド端、テレ端とも総合的にF8あたりといってよい。
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
ボケ味は?
テレ側に限っていえば素直なボケ味である。フォーカスした部分からのボケの始まりには不自然なものは感じられず、ナチュラルにデフォーカスへと変化する。
焦点距離によっては二線ボケが現れることもあるが、さほどネガティブな印象はない。むしろ描写的に何かと不利なことの多い高倍率ズームというジャンルの製品であることを考えると満足できるボケ味である。
なお、撮影した画像を見るかぎり、筆者は後ボケよりも前ボケのほうがより素直なボケに感じられた。球面収差の補正によるものか気になるところである。
逆光は?
ゴーストおよびフレアの発生はわずかに見受けられるものの、気にならないレベル。コントラストの低下もわずかである。ナノクリスタルコートは採用されていないが、内面反射に対し十分な対策が施されているといってよい。
ちなみに、本レンズ専用のフード(HB-39)は別売としている。フレアやゴーストの低減のためにも本レンズの購入を検討している人は、併せて手に入れるとよいだろう。
なお、逆光の作例はワイド端のみとさせていただいた。テレ側ではその狭い画角ゆえにファインダーをのぞくとたいへん危険だからだ。本レンズユーザーに限らず、画角の狭いレンズの使用ではくれぐれも気をつけていただきたい。
太陽が画面に入らないが、直射光が前玉に当たっているような条件では、画面内に雲のようなフレアが発生した。しかしこれは付属の花形フードを装着することで簡単に回避することができる。高倍率ズームの広角端であることを考えれば優れた逆光耐性だといえるだろう。
まとめ
正直に言えば、かつて高倍率ズームレンズは画質面で妥協せざるを得ない時代があった。特にフィルム時代、いわゆる高倍率ズーム黎明期ではその傾向が強かったように記憶している。
しかし現在は高倍率ズームの描写特性も飛躍的に向上し、今や標準ズームレンズや望遠レンズに引けをとらないものばかりといってよい。そのようなかで登場した本レンズはさらに描写に磨きがかかり、今まで高倍率ズームを敬遠してきた層にも強く訴求できるものである。
加えて鏡筒は、軽量でコンパクト。撮影はデジタル一眼レフの優れた描写で楽しみたいが、レンズを何本も用意するのは勘弁と考えるワガママなニコンユーザー必見の高倍率ズームである。