交換レンズレビュー

EF-S 24mm F2.8 STM

高画質なAPS-C一眼レフ用パンケーキレンズ

今回はEOS 70Dで試用した。発売は2014年11月。実勢価格は税込1万9,540円前後

EF-S 24mm F2.8 STMは、APS-CサイズのEOSデジタル一眼レフ専用に設計された、パンケーキタイプの単焦点レンズである。35mm判換算で約38mm相当という自然な画角をもち、カメラに装着してもでっぱりの少ない薄型の形状であることから、気軽に持ち運べる使い勝手のよさが本レンズの大きな特長となっている。

キヤノンの一眼レフ用パンケーキレンズとしては、先にEF 40mm F2.8 STMが発売されているが、こちらは35mmフルサイズ対応のEFレンズであるため、APS-Cサイズの一眼レフに装着すると画角が約64mm相当となる。標準よりもいくぶん望遠よりで、普段使い用としてはやや窮屈な画角となってしまうため、APS-Cサイズでも使いやすいパンケーキタイプのレンズが望まれていたところに登場したのが本レンズというわけだ。

また、本レンズはEF-S 60mm F2.8 マクロ USMを除けば、APS-Cサイズ対応のEF-Sレンズとしては初の単焦点レンズであり、その意味でも存在価値は大きいといえるだろう。

デザインと操作性

レンズの全長は22.8mm、最大径は68.2mm、フィルター径は52mmとなっており、重量は125g。大きさはEF 40mm F2.8 STMと同じなので、鏡筒に共通の部品を使用しているのかも知れないが、いずれにしても薄いレンズであることに変わりはなく、カメラに装着していることを感じさせない軽量・コンパクトなサイズであるのは確かだ。

100円硬貨(22.6mm)の直径とほぼ同じ、薄さ22.8mmのパンケーキタイプのレンズ

スペースの少ないレンズ側面であるが、ちゃんとAF/MF切り替えスイッチが備えられており、先端部のフォーカスリングには指がかりのよいゴムローレットが施されている。AFの後にフォーカスリングを回転させると即時にMFが可能な「フルタイムマニュアル」も搭載されており、小さなレンズながらもMF時の操作性には十分な配慮がされている。

EOS 70Dに装着したイメージ。わずか125gと、とにかく軽くてコンパクト。小柄なAPS-Cサイズのデジタル一眼レフとのマッチングは最高だ
でっぱりの少ない省スペースながら、AF/MF切り替えスイッチを装備。フォーカスリングにはキチンとゴムローレットが施される

レンズ名称のSTMが示すように、AF駆動にはステッピングモーターを採用。制御性のよさを特長とするステッピングモーターだけに、AFは大変にレスポンスがよく精度も高い。光学系がコンパクトなため、フォーカス系のレンズ移動量が少なく、AF速度についても全く問題は感じられない。

また、ステッピングモーターは静音性にも優れているので、動画撮影の際に録音されてしまうAF駆動音も気になることが少なくて済む。

光学系は5群6枚のレンズ構成。後玉のGMo(ガラスモールド非球面)レンズは収差を抑制するとともに小型化にも寄与している
金属製のマウント部。コンパクトながらしっかりとした造りで、堅牢性や耐久性に安心感がある

遠景の描写は?

絞り開放から画面中央部は十分な解像感を示すが、周辺部はさすがにわずかな甘さが見られる。周辺の甘さは絞り込むほどに改善され、F5.6でほぼ全画面で均質な高解像が得られるようになり、F8になると画面の四隅まで安定するようになる。F11を超えると回折の影響で解像感は失われていく。

諸収差や色収差は極めてよく補正されているが、ビルの直線をよく観察するとややタル型の歪曲があることに気づく。とはいえ、曲率は極わずかであり、換算38mm相当のレンズとしてとしては一般的なレベルといってよいだろう。

作例のように青空などの均質な背景で撮影した場合、絞り開放で周辺付近にまで及ぶ周辺光量不足がやや目立つが、2段以上絞ればほとんど問題なく解消される。

概してカリッとしたハイコントラストな描写をするレンズであり、開放F値がF2.8と控え目であること以外は、上位の単焦点レンズと比較しても遜色のない描写性能をもったレンズといっていいだろう。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。

※共通設定:EOS 70D / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 24mm

中央部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16
周辺部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16

ボケ味は?

本レンズの最短撮影距離は0.16m。レンズ先端からは約9cmにまで近寄ることができ、近づいた分だけ被写体を画面いっぱいに写して背景のボケを大きくする撮影が可能だ。

コンパクトな光学系のパンケーキレンズなので、ボケの描写にはあまり期待しなかったのであるが、なかなかどうして、二線ボケの発生なども少なく柔らかく綺麗なボケ味を見せてくれた。

ただし、本来の焦点距離が24mmなので、相当する画角の35mm判フルサイズと比べると、被写界深度が深くボケ量は小さくなってしまうのは仕方がない。被写体までの距離を1mほどにすると背景のボケ量はさらに小さくなるが、絞り込んでもギスギスすることの少ない素直なボケ味に好感を持てる結果であった。

絞り開放・最短撮影距離(約16cm)で撮影。EOS 70D / 1/1,600秒 / F2.8 / +0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / 24mm
絞り開放・距離数mで撮影。EOS 70D / 1/2,500秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 24mm
絞りF5.6・距離数mで撮影。EOS 70D / 1/640秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 24mm
絞りF8・距離数mで撮影。EOS 70D / 1/320秒 / F8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 24mm

逆光耐性は?

太陽を画面に入れた画像では、太陽から伸びるようにシャワー状の、虹色ゴーストが見られた。また、太陽を画面外にした場合においても、強い光の影響を受けたフレアの発生が確認できる。こうした目立ったゴーストの発生を避けたい場合、太陽のように極端に強い光源を画面内から意識的に外し、影響を受けないようにする必要があるだろう。

しかし、太陽の周辺以外では目立ったゴースト、フレアの発生は全く見られず、コントラストが低下して画質が劣化するようなこともなかった。本レンズを一般的な用途で使用する場合、逆光耐性に実用上の問題は感じられない。

太陽が画面内に入る逆光で撮影。EOS 70D / 1/800秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 24mm
太陽が画面外にある逆光で撮影。EOS 70D / 1/400秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 24mm

作品

コンパクトなので取り回しがよく、猫をローアングルで撮影するのも楽だった。これくらい近距離だと前ボケも後ボケも十分に大きく、立体感を演出することができる

EOS 70D / 1/125秒 / F4 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 24mm

レンズ先端から9cmの近接撮影能力は本レンズの強み。小さな花でも適度な大きなで画面に納めることができる

EOS 70D / 1/2,500秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 24mm

絞り開放から画面中央部の解像感は十分な本レンズであるが、F5.6まで絞れば高画質が全画面に及んで安定感を増す。街歩きのお供としても安心して使えるレンズである。

EOS 70D / 1/800秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 24mm

35mm判換算で38mm相当の画角は、広すぎず狭すぎず視覚に近い自然なパースペクティブで写真が撮れる。普段使いに便利な画角である

EOS 70D / 1/40秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 24mm

絞り開放でイルミネーションを撮影したが、コマ収差や非点収差などもよく補正されていることが実感できた。大口径というほどではないが、暗い条件下ではやはり開放F2.8の明るさに助けられる

EOS 70D / 1/100秒 / F2.8 / +1EV / ISO1600 / 絞り優先AE / 24mm

まとめ

2012年6月、フルサイズ対応のEF 40mm F2.8 STM登場を大いに喜んだEOSユーザーはたくさんいたのでないかと思う。軽く小さなパンケーキレンズで使いやすい画角、しかも高画質で価格も手頃とくれば、当然の話だった。

だが、薄型のサイズをもっと生かそうと、Kissシリーズなど、APS-Cサイズのデジタル一眼レフにつけると画角が換算64mm相当となってしまい、「普段使いに便利な自然な画角」という旨味がなくなってしまったことを残念に思ったユーザーもまた多かった。

本レンズEF-S 24mm F2.8 STMは、そんな小型軽量一眼レフ愛好家の切望に対し、ほぼ同じデザイン、スペック、価格をもって、満を持して登場したレンズなのである。

EF 40mm F2.8 STMの性能を引き継ぎながら、最短撮影距離を大幅に短くしたことで、APS-C専用レンズの特性を上手く生かした写真表現も可能となった。EF-Sレンズ初の標準単焦点レンズである本レンズは、普段使いのお散歩レンズとしてはもちろん、単焦点レンズ入門用としても文句のない、絶対オススメのレンズだ。

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「エイレホンメ 白夜に過ぐ」(リコーイメージングスクエア新宿)など。