交換レンズレビュー

ニコン「AF-S NIKKOR 58mm f/1.4 G」

美しいアウトフォーカス描写が堪能できる逸品

今回はニコンD800Eで試用した。ボディとのバランスもよく使いやすい組み合わせだ。発売は2013年10月。実勢価格は17万9,500円前後

 AF-S NIKKOR 58mm f/1.4 Gは、FXフォーマット対応の大口径単焦点レンズだ。58mmの焦点距離は、同社の銘レンズ「ノクトニッコール」を彷彿とさせる。

 本レンズは、非球面レンズ2枚を含む6群9枚。非球面レンズを2枚採用することで諸収差を良好に補正している。また、絞り開放時に点光源が円にならず、カモメが羽ばたいているような像になってしまうサジタルコマフレアが発生しづらい点も魅力の1つだろう。

 さらに、定評のあるナノクリスタルコートが施してあり、逆光に強いことにも注目したい。また、製品情報ページやカタログにあるMTF曲線を見ても同心円方向(M)と放射方向(S)が非常に近く優秀なレンズであることがうかがえる。

デザインと操作性

 カタログやWebなどで写真を見るとやや大きめに感じられるが、全長70mm、最大径約85mm、質量は約385gで、F1.8クラスの中望遠レンズやAF-S NIKKOR 85mm F1.8 Gとサイズも重量も近い。また、デザインはAF-S NIKKOR 85mm F 1.4 Gに近く、近年のニッコールレンズらしいものとなっている。

前玉はレンズ鏡筒のやや奥まった位置にある
全長は70mmとD800Eに装着するとバランスがよい

 D5000クラスのカメラに装着するとやや大きく感じるかもしれないが、D600やD800クラスであればバランスもよく使い勝手が良い印象だ。

 AFだが、駆動用モーターにSWM(超音波モーター)を採用。高速で静粛性に優れているため、ストレスなくピントを合わせられる。駆動音も気にならないレベルだ。

 本レンズはフルタイムマニュアル機能搭載しているため、AF中でもフォーカスリングを回すことでシームレスにMFでのピント微調整が可能だ。人物撮影やピント位置が思い通りにならかった場合に役立つので便利。

 フォーカスリングは滑らかで適度なトルクがあり、操作しやすかった。

レンズの最大径は85mm。マウントが小さく感じられる

遠景の描写は?

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。
F1.4
F2
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16
共通設定:D800E / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:晴天 / 58mm

 細かく見れば、絞り開放で周辺に像の乱れが確認できるほか、同じく周辺部ではハイライト部分にパープルフリンジが確認できるなど、中央部分と比べるとややシャープさが足りない印象。F2まで絞るとかなり改善されるが、厳しく見ると画像周辺はシャープさが足りない。

 一方、F2.8にするとD800Eでもレンズ中央から周辺まで像が安定してくる。F4〜F8あたりは驚くほどの解像感があり、数km離れたビルの窓枠や観覧車の窓までしっかり解像していることがわかる。

 F11くらいから回折の影響が出始めるが、F16まで絞らない限り気になることはなさそうだ。また周辺の光量落ちに関しては、カメラ側で補正していることもあり開放から1〜2段絞ることで消えるため問題ないと言える。

 絞り開放付近は厳しめに評価したが、開放F1.4ということを考えると圧倒的な描写力と言っても良いだろう。

ボケ味は?

絞り開放・最短撮影距離(58cm)で撮影。D800E / 1/5,000秒 / F1.4 / 0EV / ISO80 / 絞り優先AE / WB:晴天 / 58mm
絞り開放・距離数mで撮影。D800E / 1/80秒 / F1.4 / +0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:オート / 58mm
絞りF2.8・距離数mで撮影。D800E / 1/1,250秒 / F2.8 / 0EV / ISO80 / 絞り優先AE / WB:晴天 / 58mm
絞りF4・距離数mで撮影。D800E / 1/1,250秒 / F4 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:晴天 / 58mm

 二線ボケも見られず、素直なボケが楽しめるレンズだ。絞り開放時の描写力はややソフト目の印象を受けるが、D800Eの解像力にも十分対応できている。

 最短撮影距離ではボケが大きくなるが、色収差が少し目立つ印象。F2.8まで絞るとコントラストが高くなり、像も安定する。ピントの合った部分はシャープな切れ味で表現したい部分をしっかり表現できている。

 F4まで絞り被写体との距離が1mくらいあっても、FXフォーマットのカメラと組み合わせれば適度な前ボケ、後ボケを得られる。

逆光は?

太陽が画面内に入る逆光で撮影。D800E / 1/3,200秒 / F5.6 / -0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:晴天 / 58mm
太陽が画面外にある逆光で撮影。D800E / 1/1,250秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:晴天 / 58mm

 逆光性能に関しては非常に優秀といえる。太陽が画面内に入るように撮影した画像と、太陽が画面外になるように撮影した画像のどちらともゴーストは確認できない。

 フレアもほとんど目立たず、太陽が画面内にあっても高いコントラストを維持できており、改めてナノクリスタルコートの優秀さを感じさせた。

作品

モデルを室内で撮影した。絞り開放付近ではやや柔らかめの印象ではあるが、大きなボケを得られ被写体を際立たせることができた。開放付近のピントは非常にシビアなので気をつけたい。D800E / 1/160秒 / F1.8 / 0EV / ISO100 / マニュアル / WB:オート / 58mm
ハイビスカスのシベの黄色い部分を狙って撮影。F3.2まで絞ることで解像感はグッと増しシベの細かい部分までしっかりと解像している。被写体までの距離が近いため花びらの部分はアウトフォーカスになっているが、ボケ方も綺麗だ。D800E / 1/1,000秒 / F3.2 / +0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:晴天 / 58mm
竹富島のネコをF2で撮影。ピント位置のキリッとシャープに解像している部分とアウトフォーカスのとろけるようなボケは本当に美しい。適度なシャープさとボケ感を得られるのでF2前後の描写はお気に入りだ。D800E / 1/1,250秒 / F2 / +1EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:晴天 / 58mm
絞り開放で島の道に止めてあったバイクを撮影した。適度な距離がある被写体でも絞り開放とFXフォーマットを組み合わせて使うことで大きなボケが得られるため、バイクを際立たせることができた。D800E / 1/1,600秒 / F1.4 / +0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:曇天 / 58mm

まとめ

 今回、AF-S NIKKOR 58mm f/1.4 Gを使い様々な被写体を撮影した。58mmという慣れていない焦点距離ではあったが、使ってみると実に使いやすく筆者愛用のAF-S NIKKOR 50mm F 1.4 Gと変わらない撮影ができた。ただし、ボケの質は正直別物の印象。とろけるような美しいアウトフォーカス部分はこのレンズの最大の魅力だろう。

 AFのレスポンスや操作感もシンプルで、撮影に集中することができた。ポートレートはもちろんのこと、スナップなどにも最適のレンズと言えるだろう。価格は高めの印象ではあるが、ボケや点光源をより美しく撮影したいユーザーには最適なレンズだろう。

上田晃司

(うえだこうじ)1982年広島県呉市生まれ。米国サンフランシスコに留学し、写真と映像の勉強しながらテレビ番組、CM、ショートフィルムなどを制作。帰国後、写真家塙真一氏のアシスタントを経て、フリーランスのフォトグラファーとして活動開始。人物を中心に撮影し、ライフワークとして世界中の街や風景を撮影している。現在は、カメラ誌やWebに寄稿している。
ブログ:http://www.koji-ueda.com/