切り貼りデジカメ実験室

リコー「GR」にオリンパスPEN用魚眼コンバーターを装着する

新発売となったリコーGRには専用ワイドコンバージョンレンズ「GW-3」が用意されているが、今回はあえてオリンパスの魚眼コンバーターレンズ「FCON-P01」を改造し装着してみた。画角は「GW-3」装着時を上回る120度となり、セミフィッシュアイならではの個性的な描写が楽しめる。さらにマクロ撮影でも被写界深度がより深くなり、最短撮影距離も短縮され、その効果は高い。カメラとしての形状もコンパクトにまとまって、なかなかオリコーなカメラに仕上がったのではないかと思う(笑)。

純正品以外のコンバージョンレンズを試す

 リコーがペンタックスと一緒になってペンタックスリコーイメージングになった、と思ったら今度はリコーイメージングに社名変更になるそうだが、ともかく満を持した新製品リコー「GR」が発売中である。

 みなさんもうご存じの通り、GRはボディはコンパクトでも、極小サイズセンサーを搭載したいわゆるコンパクトデジカメとは異なり、大型のAPS-Cセンサーを搭載したデジタルカメラだ。この意味で、GRはそれまでの「GR DIGITAL」シリーズの後継機のようでいて、全く別のカテゴリーのカメラだとも言えるのだ。

 いや、デジタルカメラの世界は概念そのものが次々に刷新されるから、例えば「コンパクトデジカメとはなにか?」と言いった定義付けが実に難しく説明に困ってしまう。

 しかし、そもそもリコーのGRブランドとそのコンセプトは、フィルムカメラの「GR1」からカテゴリーを超えて連綿と続いているのである。今回の新製品GRも、GRの伝統であるコンパクトサイズのボディを実現しながら大型のAPS-Cセンサーを搭載しているのであり、メーカーの熱意と技術力の高さは賞賛に値する。

 これに敬意を表して、こちらも何か工夫をしなくてはいけない気分になってしまったのだが……あろう事かオリンパスPEN用魚眼コンバーターレンズ「FCON-P01」を装着することを思い付いてしまった。これは普通に言えば“暴挙”なのだが、幸いペンタックスリコーイメージングさんにもオリンパスさんにもそのような記事の執筆を許可していただき、感謝する次第である。

 さて、FCON-P01は本来は「M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II」と「同II R」専用で、装着するとワイド端で画角120度のセミ魚眼レンズとなる。実は、このFCON-P01をオリンパスのコンパクトデジカメ「XZ-1」に装着した記事を、この連載で書いたことがあるのだが、なかなか良い結果が得られている。

 そこで試しに同じFCON-P01をGRに装着して試写したところ、これもなかなか写りが良いのだ。GRには28mm相当のマスターレンズが21mm相当の超広角に変換される高性能のワイドコンバージョンレンズ「GW-3」が用意されているが、それとはひと味異なる面白い写真が撮れそうだ。

 ところでFCON-P01をXZ-1に装着した際は、アダプターの自作が必要だったが、コンバーターレンズそのものは無改造で済んだ。しかし、GRに装着した場合はどうしても画面の隅にケラレが生じてしまい、FCON-P01そのものの改造が必要でちょっと面倒だ。

 実は今回の改造は無駄骨を折って遠回りしてしまったのだが、そのあたりの紆余曲折も楽しんでいただければと思う(笑)。

―注意―
  • この記事を読んで行なった行為によって、生じた損害はデジカメWatch編集部、糸崎公朗および、メーカー、購入店もその責を負いません。
  • デジカメWatch編集部および糸崎公朗は、この記事についての個別のご質問・お問い合わせにお答えすることはできません。


レンズの改造とカメラへの装着

GRには純正のワイドコンバジョンレンズ「GW-3」(中)が用意されており、フード&アダプター「GH-3」(左)を介して装着が可能だ。しかし今回は、これにかわってオリンパス製魚眼コンバーター「FCON-P01」(右)を装着してみることにする。
GR専用のGW-3は、装着すると28mm相当のマスターレンズが21mm相当(画角92度)の超広角レンズになる。これに対し、FCON-P01はマイクロフォーサーズレンズ「M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II」と「同II R」専用で、装着するとマスターレンズの28mm相当のワイド端で、画角120度のセミ魚眼レンズとなる。ちなみに「GW-3」は金属鏡筒でずっしりと重く、FCON-P01はプラスティック鏡筒のため軽い。
GW-3には49mm径フィルターネジが切ってあり、フード&アダプターGH-3に装着できるようになっている。しかしFCON-P01は専用バヨネットによってM.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 IIに装着する方式で、互換性がない。
そこで、49→52mm径のステップアップリング(中)を用意して、これを仲介してFCON-P01をGH-3に装着する作戦を考えてみる。
各パーツを接着せずに仮に組みあわせてみると、こんな姿になる。この状態でまずはテスト撮影をする。
テスト撮影の結果だが、画面の四隅が暗くケラレてしまった。FCON-P01のマウント形状の都合によって、レンズ取り付け位置が前進しすぎてしまうのだ。
そこで、魚眼コンバーターの根元をレザーソー(精密ノコギリ)でカットした。改造後(左)と改造前(右)を比較すれば、その違いが分かるだろう。
さらに改造した魚眼コンバーターを、ステップアップリングにしっかり固定するため、根元に2種類の厚みのケント紙(白と黒)を巻き付ける。
ステップアップリングへの接着は、とりあえず両面テープで行なう。もちろん、エポキシ系などの接着剤を使った方が工作としては確実だが、改造してると何が起きるか分からないので、いざとなったら剥がすことができる両面テープを使うのが無難だと言える。
FCON-P01をステップアップリングに接着し、フード&アダプターGH-3に装着する。このとき、花形フードの角度がまっすぐになるように、位置決めする。これでGR用「魚眼コンバーターユニット」が完成する。
魚眼コンバーターユニットをGRボディに装着すると、完成!
と思ったら、取れた!?……装着した魚眼コンバーターのパーツが根元から外れて、バラバラになってしまった。まぁ、改造にアクシデントは付き物だと言えるのだが(笑)。
ばらけてしまったパーツを検証すると、レンズ本体(左)は化粧リング(中)を挟んで、マウントパーツ(右)に3本の爪で固定されていたようだ。そして、ぼくがマウントパーツを削ったためにレンズ本体の固定爪も削れてしまい、分解してしまったのた。だから本来は、レンズ本体の固定爪を外せば、レザーソーでカットせずともコンバーターは分解できたのだった。
気を取り直して、各パーツをあらためて接着し直して今度こそ本当に完成! ついでに光学ファインダーも装着してみたが、21mm相当のブライトフレーム枠外の視野全体を利用すれば、何とか実用になる。
こちらは連載でお馴染みのディフューザー付きストロボを装着した「広角マクロ」バージョン。GW-3装着時より被写界深度が深くなり、同時に最短撮影距離が短縮されるので、マクロ撮影に有利なシステムとなる。
自作した魚眼コンバーターレンズによって拡張した、GRの撮影システム。単焦点レンズ固定式のカメラでありながら、工夫次第でさまざまな可能性が広がるのが、GRの魅力でもある。


テスト撮影

 テスト撮影はカメラを三脚に固定し、絞りを1段ずつ変えて行なった。ただし誌面の都合上、ノーマル状態(28mm相当)とのワイドコンバージョンレンズ「GW-3」装着時(21mm相当)の結果は参考として1枚ずつ掲載する。

 まず画角を比較すると、ノーマル状態の28mm相当よりも21mm相当のワイドコンバージョンレンズGW-3装着時のほうがかなり広いことがわかるだろう。しかしこれを上回る広い画角が、魚眼コンバーターレンズFCON-P01装着時に得ることができる。また、歪曲収差が補正されていないセミフィッシュアイレンズのため、直線が歪んで写っていることも確認できる。

 画質に関しては、ノーマル状態の28mm相当も、21mm相当のワイドコンバージョンレンズGW-3装着時も、画面の隅に渡るまで申し分のない描写だと言える。

コンバージョンレンズ無し(28mm相当)
GW-3装着時(21mm相当)

 肝心のFCON-P01装着時だが、画面中心は絞り開放からなかなかにシャープだ。しかし画面周辺の画質は多少崩れ、この傾向は(不思議なことに)絞りを変えても変わらない。

 ともかくメーカーの異なるレンズを組み合わせたにしては、なかなか良い結果が得られたと言えるだろう。GRのレンズ性能がもともと優秀なのはもちろん、FCON-P01もその描写をあまりスポイルすることなく画角を変換(コンバージョン)している。

FCON-P01装着時

F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16


実写作品と使用感

 実写は「広角マクロ」による昆虫撮影と、一般撮影の2パターンで行なってみた。

 これまでのGRシリーズは、極小サイズ撮像素子と高性能広角レンズの組み合わせによって、被写界深度の深い広角マクロ撮影が得意なカメラだった。これに対し大型のAPS-Cサイズ素子を採用したGRは、絞り込んでもそこまで被写界深度が深くならず、最短撮影距離もGR DIGITALシリーズの1cmから10cmへと伸びてしまった(それでもこのクラスのカメラとしては頑張っているが)。

 しかし魚眼コンバーターレンズFCON-P01を装着すると、合成焦点距離が短くなったぶん被写界深度が深くなる。また焦点距離の変化に伴いピント位置も移動し、最短撮影距離も短縮されるのだ(このあたりの理屈はややこしいが)。

 画質はピントの合った部分はシャープであり、申し分のない写りだ。画角は180度に満たないセミフィッシュアイレンズだが、虫が写る大きさと背景の入り方のバランスがちょうど良く、なかなか使い勝手がよい。

 ピントはMFで固定し、ストロボを併用しながら飛んでいるチョウなど追いかけながら撮ると、ご覧の通りの「飛翔写真」が撮れる。この手の撮影方法は、昆虫写真家の海野和男さんがフィルムカメラ時代に開発したもので、ぼくもその伝統を引き継いでいると言える。

 一般撮影については、今回はちょっと悩みすぎたせいか今ひとつ煮え切らない結果になってしまった(笑)。歪曲収差が補正されないクセの強い描写のレンズだが、被写体にピタッとはまれば面白い写真になるはずである。画質は立体的な被写体を撮ると画面周辺の崩れが気にならず、良い結果が得られるようだ。

 カメラとしての操作性だが、GRはすこぶる快調だと言える。撮像素子が大型化した分、これまでのGR DIGITALシリーズより多少鈍重になるのでは? と予測していたが、これは見事に裏切られた。全体的なレスポンスはむしろ向上しており、細部にわたって“改良された”と実感できるカメラに仕上がっている。

1/800秒 / F16 / 0EV / ISO200 / マニュアル / WB:オート
1/320秒 / F16 / 0EV / ISO200 / マニュアル / WB:晴天
1/640秒 / F16 / 0EV / ISO400 / マニュアル / WB:晴天
1/400秒 / F16 / 0EV / ISO200 / マニュアル / WB:晴天
1/125秒 / F16 / 0EV / ISO200 / マニュアル / WB:オート
1/800秒 / F16 / 0EV / ISO200 / マニュアル / WB:晴天
8秒 / F16 / 0EV / ISO200 / マニュアル / WB:晴天
8秒 / F16 / 0EV / ISO320 / マニュアル / WB:オート
1/800秒 / F8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:オート
1/640秒 / F8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:オート
1/80秒 / F8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:オート
1/100秒 / F8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:オート
1/200秒 / F8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:オート
1/90秒 / F8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:オート
1/1,000秒 / F4.5 / -0.7EV / ISO200 / プログラム / WB:晴天
1/40秒 / F4 / -0.3EV / ISO1250 / プログラム / WB:オート
8秒 / F2.8 / 0EV / ISO400 / マニュアル / WB:オート
8秒 / F2.8 / 0EV / ISO800 / マニュアル / WB:オート

糸崎公朗

1965年生まれ。東京造形大学卒業。美術家・写真家。「非人称芸術」というコンセプトのもと、独自の写真技法により作品制作する。主な受賞にキリンアートアワード1999優秀賞、2000年度コニカ ミノルタフォト・プレミオ大賞、第19回東川賞新人作家賞など。主な著作に「フォトモの街角」「東京昆虫デジワイド」(共にアートン)など。ホームページはhttp://itozaki.fc2web.com/ Twitterは@itozaki 「前衛実験NETART」所属。