インタビュー:ペンタックスK-xの「100 colors, 100 styles.」


 ペンタックスが10月16日に発売したデジタル一眼レフカメラ「K-x」は、カメラ業界として極めて異例な「オーダーカラー受注サービス」を取り入れたことでも話題になっている。

PENTAXイメージング・システム事業部マーケティング統括部商品企画グループの若代滋氏K-xはレギュラーカラーだけでも3色から選べる

 「100 colors, 100 styles.」と銘打たれたこのサービスは、ユーザーが本体20色、グリップ部5色の計100パターンから組み合わせを選べるというもの。Web上のカラーシミュレーターで再現した組み合わせをプリントアウトして店頭に持参するか、店頭においてあるオーダーシートを元に注文する。レギュラーカラーと同等の販売価格を想定しており、デジタル一眼レフカメラとしては極めて珍しい手法といえる。

 オーダーカラー受注サービスについて、HOYA株式会社PENTAXイメージング・システム事業部マーケティング統括部商品企画グループの若代滋氏に聞いた。

さらに「100 colors, 100 styles.」で選べる100通りの組み合わせ

事業部長直轄の新プロジェクト

――どのような経緯で企画がスタートしたのでしょうか。

 スタートは今年の春です。事業部長(井植敏彰氏、HOYA株式会社PENTAXイメージング・システム事業部)の直轄プロジェクトで、企画、開発、販売、デザインなどさまざまな部署での横断的なプロジェクトになります。

 こうしたプロジェクトはこれまでのペンタックスにはなかったものです。常時関わっていた中心となるスタッフ以外にも、さまざまな部署を巻き込み、膨大な人数が参加しています。

――すでにK-m(2008年10月発売)で限定カラーを出していますが、100 colors, 100styles.のテストプロジェクトだったのでしょうか。

 いえ、そういう関係性はありません。ただ、K-mで一度トライしていたため、土台ができていたことが今回のプロジェクトで役立ちましたね。

100 colors, 100 styles.の前身ともいえる「K-m white」カラーバリエーションといえば、「K-20Dチタンカラープレミアムキット」も記憶に新しい

――本体と同時の発表でしたが、反響はいかがでしょう。

 非常に良いと感じます。ユーザーからは「(あの真面目な)ペンタックスがやったことが面白い」といった評価をいただいているようで、いい意味でのサプライズだったと自負しております。一部の販売店様からは「混乱するのでは」といった意見もありましたが、どちらかといえば「売り場が活性化する」など好意的な意見を多く頂戴しています。

――メディアでのとり上げられ方も変わってきたのでは?

 カメラ専門誌に加えて、ライフスタイル的な雑誌の取材を受けることも増えてきました。多色展開を行なっているほかのジャンルの製品とあわせて紹介いただくことがありますね。

生産コストはノーマルカラーとあまり変わらない

――カラーバリエーションを決定するに当たって、内部や外部に対してヒアリングを重ねたのでしょうか。

 K-mの頃からカラーバリエーションの試作を行ない、内部や外部に対してヒアリングをおこないました。また、100 colors, 100 styles.の企画案が出る前からK-xで積極的なカラーバリエーションを展開しようと考え、デザイナーには沢山の試作を行ってもらって検討を重ねました。しかしながら、色だけでなく質感でも好みはバラバラでしたので、なるべくカラフルに、かつ質感でもバリエーションを持たせる事を念頭に置き、決定しました。私の机の周りには、採用されなかったカラーのサンプルがたくさん残っています(笑)

――ボディとグリップを組み合わせるシステムですが、選択不可能なパターンがあります。その意図は?

 理論上はすべてを組み合わせると100を超えるのですが、単純に増やしすぎても選択が難しくなることもありますので、それぞれのカラーマッチングを検討した上でパターンを絞り込むことにしました。ただし、100という数字を前面に出したかったため「計100パターン」にこだわり、おすすめできる組み合わせをディスカッションで絞り込みました。そういった経緯もあり、組み合わせるパターンをどれにするのか最後まで悩みぬき、苦渋の決断をいたしました。

――人気の組み合わせは?

 K-xスペシャルサイトの「カラーシミュレーター」に人気投票機能(I LOVE IT!ボタン)を設けています。その結果をランキングとして公開中です。カラーシミュレーター公開からの累計ランキングになります。公開したときは、サイトが重くなるほどの多くのアクセスをいただきました。重くなったのは、滞留時間が長いせいもありますね。色々なパターンを投票していただいていますが、必ずしも予約状況と人気が一致しないところが興味深いです。

10月26日現在のカラーランキング。1位:ホワイト×ブラック、2位:ネイビー×ブラック、3位:レッド×ブラック、4位:シルバー×ブラック、5位:チョコレート×ブラック

――グリップは成形材そのものに着色しているようですね。ボディは?

 ボディは塗装です。白やビビッドは色が映えるようグレーのベースボディに塗装しています。ブラックはブラックのベースボディです。塗料の強度は通常のブラックモデルと同じで、剥がれにくく問題のない品質だと自負しています。

――グリップ交換はユーザーで行なえない?

 はい。大変な作業になるためお勧めしていません。容易にできるようなら、グリップ全色をパッケージに同梱して、自由に取り替えてもらうことも考えましたが……。グリップは力が加わる部分なので、交換式というわけにはいきませんでした。

――意外にシルバーボディが斬新ですね。表面が強い光沢感を帯びている。国内でシルバーボディは*ist DL以来ですね。

 この企画では色だけでなく、グロス、マット、パールと、表面の質感にもこだわっています。開発時にはシルバーにもマットタイプなど色々なパターンがありましたが、今回の質感に落ち着いています。樹脂ボディのデジタル一眼レフカメラではあまり見ないケースではないでしょうか。

ずらりと揃ったK-x。これでもほんの一部しかないグリップは成形材そのものに着色している

――すべての組み合わせを見ることができる場所はありますか? カラーシミュレーターではわからない、質感や色合いを見たいと思う方は多いと思います。

 いまのところありません。ペンタックスフォーラム(東京都新宿区)に40パターン、大阪サービスセンター(大阪市中央区)には20パターンを展示していますが、残念ながら展示スペースの問題などですべては置けていません。

――まあ、見比べると返って迷うかもしれません。それよりせっかくなので、レンズにもカラーバリエーションが欲しいのですが……

 良く言われます。実は、ボディとレンズとでは生産国が違うので、色や質感を合わせるのが本当に難しいのです。ボディはフィリピン、レンズはベトナムで生産しています。

――レギュラーカラー(ブラック、ホワイト、レッド)に対する生産コストは?

 具体的なコストは申し上げられませんが、数パーセント増といったところです。受注生産なので、ボディの在庫が膨らみすぎることはありません。

――注文してから受け取るまでの納期は?

 最短で2週間です。

――同色のアイテムなどの展開はどうでしょう。例えばストラップやボディジャケットなど。

 アイデアとしてはたくさん出ましたが、いまのところレギュラーカラーに合わせたハンドストラップ以外に具体的な予定はありません。

――「K-x2010年カラー」といった具合に、新色を追加する計画は? また次機種や上位機種への展開は?

 こうした企画は今後も積極的にやっていきたいと思います。ただ、K-7のような上級機に波及させるかは未定です。新色や次機種についてもまだ考えていません。

――海外での展開は。

 オーダーカラーについては、ボリュームの増減が激しくなると対応が難しいこともあり、現在は国内市場のみです。海外で販売しているカラーは、国によって採用しているモデルは異なりますが、国内と同じブラック・ホワイト・レッドに加え、ネイビー(ボディがネイビー、グリップが黒、レンズが黒)があります。

カメラにマジックで手書きした「コレジャナイロボモデル」も

――コレジャナイロボモデルもユニークな試みです。企画のきっかけは。

 K-xのプロジェクトの一環として、どこかのブランドとのコラボレーションを考えてみました。一番最初のコラボレーションは、100colors,100styles.にも負けない「インパクト」のあるブランドが良いのではないかと思っていた矢先、ザリガニワークスさんの「コレジャナイロボ」をたまたま見つけて「コレだ」と。

デジタルカメラとしては異例のコラボレーションとなる100台限定のK-xコレジャナイロボモデル。手書きによる顔のほか、パーツごとに色が違うなど、ありそうでなかった試みだ

――ペンタックスから声をかけたわけですね。

 はい。ザリガニワークスさんからは「本気ですか?」と聞かれました(笑)。K-mのモックアップを渡し、「好きに色分けしてほしい、デザインしてほしい」とお願いしたわけです。

 顔は1つ1つマジックインキで手書きしてもらいます。世界で1台しかないという意味では、100 colors, 100 styles. では得られない希少性がありますね。

――発表時に未定だった販売形態は決まりましたか?

 11月2日午前10時に、ペンタックスオンラインショップにて100台限定で予約受付けを開始します。価格は7万9,800円で、11月下旬に発送する予定です。

(本誌:折本幸治)

2009/10/26 18:40