写真展

宮内雅之写真展 町の「1」景

(Roonee 247 photography)

自宅の住居表示が変わったのは高校入学後の1966年だったと記憶している。

合理的な住居表示制度の法律施行によるものだった。

物心着いた頃から慣れ親しみ、江戸時代以来の名称を引き継いでいた町名から「丁目」の付いた何とも味気のない新町名に変わった。住所を記入する時にしばらくは寂しい気がした。

1962年に「住居表示法」が出来、順次法令に則って整備が進められると古くからあった多くの「町名」が消滅していった。法令施行からほぼ半世紀たった現在、住居表示で「○○町(単独町名)」はどのくらい残っているのだろうかと思い、東京の地図を開いてみた。「大江戸八百八町」というくらい沢山あった町名は「江戸の朱引内」と呼ばれた都心部に肩を寄せ合うように残っていた。

今どんな街の姿で残っているのか、興味がわき写真機を持って廻ってみることにした。町の「一番地が肝」だろうと思い、地図と睨めっこしながらの撮影となった。地図上で場所は特定できても、初めて訪れる地域ばかり。巡回中の警察官、郵便局員、宅配便の配達員さんを呼び止めることも度々あった。

また、「一番地」が存在している地域も限られていることも分かった。「住居表示法」での表記の仕方が変わったからだ。住居表示法が実施された住所に「一番」はあっても「一番地」は存在しなかった。

本作は2013年春から2015年秋にかけて撮影したシリーズである。

撮影中に、「ここは一番地ですよね」と住民の方に声をかけると、「○○町一番地だよ」とチョッと誇らしげな返答をもらったことも、撮影を続ける後押しになったと思う。

宮内雅之

(展示情報より)

会場・スケジュールなど

  • ・会場:Roonee 247 photography
  • ・住所:東京都新宿区四谷4-11みすずビル1階
  • ・会期:2016年5月3日(火)~5月8日(日)
  • ・時間:12時~19時(最終日16時まで)
  • ・休館:月曜日
  • ・入場:無料

作者プロフィール

1951年6月 東京都文京区生れ
1998年秋  独学で写真を始める
2002年春  写真活動休止
2010年春  写真活動再開 モノクロ・ゼラチンシルバープリントを始める

<主な展示>
2012年5月 宮内雅之写真展「みちのべ」(ギャラリー2104)
2013年6月 宮内雅之写真展「“4.7m+”から観る都景2012」(MUSEE F)
2014年10月 宮内雅之写真展 「また、会えたね」(ぎゃらりーKnulp)
2015年6月 宮内雅之写真展「東大キャンパス」(MUSEE F)

(本誌:河野知佳)