写真展告知
企画写真展:INTERFACE -写真家・東松照明を見る
2017年6月30日 17:00
フジフイルム スクエア写真歴史博物館では、2017年7月1日(土)から9月30日(土)まで戦後日本を代表する写真家の一人、東松照明の作品展を開催いたします。
「戦後写真の巨人」と称される東松照明は60年代初頭、「家」「占領」「長崎」などのシリーズで日本の写真界に衝撃を与えました。60年代末からは米軍基地の取材で沖縄に滞在したことが転機となり、同地を撮影した写真集『太陽の鉛筆』(1975年)を境に作品制作をモノクロームからカラーへと転換させます。その後もライフワークとして長崎の取材を継続するなど、2012年に他界するまで数々の作品を世に問い、多方面に影響を及ぼしてきました。東松にはもう一つ転機となる重要な出来事がありました。それは1986年に受けた心臓のバイパス手術です。東松は「手術を受けてから、どうしても生命力に関心がいく」と語り、以降の作品には、東松がその経験ののちに見出した新たな視点と世界観が映し出されています。
本展では第1部と第2部に分け、その1986年以降に発表されたシリーズ「プラスチックス」(1988-1989年) と「インターフェイス」(1968-1996年)を展示いたします。第1部で展示する「プラスチックス」は、東松が手術後に東京から移住した千葉県の九十九里浜で撮影されたもので、海岸に漂着したプラスチックの残骸が構成的にとらえられています。第2部で展示する「インターフェイス」は、1966年に「潮間帯」として発表された作品に端を発し、のちに「インターフェイス」というタイトルで新たに発表されたものです。潮の満ち引きにより、海と陸の極端な環境が混じり合うそのエリアには独自の生態系が存在し、東松はその場所を俯瞰で鮮明にとらえています。これらの作品からは東松自身の中に宿る生命力と同時に、その生死すらも超越した哲学が感じられます。
展覧会名にもなっている「インターフェイス」とは、本来、2つの領域が接している境界あるいはその界面を意味する言葉で、写真家自身の本質的なテーマとも重なるものです。本展で展示する2つのシリーズにも自然と文明、過去と未来など様々な「インターフェイス」が示唆され、東松の唯一無二の重層的な作品世界が浮かび上がります。東松照明とはどのような写真家だったのか。これまでまとまったかたちであまり発表されることのなかったこの2つのシリーズを通して感じていただければ幸いです。
会場
FUJIFILM SQUARE(フジフイルム スクエア)写真歴史博物館
東京都港区赤坂9-7-3(東京ミッドタウン・ウエスト)
開催期間
第1部「プラスチックス」シリーズより
2017年7月1日(土)~8月14日(月)
第2部「インターフェイス」シリーズより
2017年8月15日(火)~9月30日(土)
開催時間
10時~19時(入館は18時50分まで)
休館
会期中無休
ギャラリートーク(各回約30分の予定)
2017年7月29日(土)14時~、16時~
2017年9月2日(土)14時~、16時~
作者プロフィール
1930年、愛知県名古屋市に生まれる。
1954年、愛知大学経済学部を卒業後、『岩波写真文庫』のスタッフを経て、1956年にフリーランスとなる。
1959年、奈良原一高らとともに写真家によるセルフ・エージェンシー「VIVO」を結成(1961年解散)。
1961年、『hiroshima-nagasaki document 1961』(土門拳らと共著)により第5回日本写真批評家協会作家賞受賞。
1975年、『太陽の鉛筆』により日本写真家協会年度賞受賞。
1995年、紫綬褒章受章。作品制作と並行し、出版社やワークショップを設立・運営するなど幅広く写真活動を展開した一方で、若手作家の育成に注力し、写真文化の浸透に寄与した。
2012年12月14日逝去。享年82。没後も写真集の刊行や展覧会の開催が相次ぎ、国内外で高く評価され続けている。