写真展
金川晋吾写真展「father 2009.09-」
(ニコンサロン)
2016年8月2日 17:00
私の父には蒸発癖があった。私が大学に入った2000年ごろから、父は家族とは離れて一人で暮らすようになった。一人になってからの父は、平穏無事に暮らしていると思われていた。だが、08年の9月、ひさしぶりの蒸発があった。そのときは2週間ほどで戻って来たが、それを機に父は仕事には戻ろうとしなかった。このまま放っておいたらどうなってしまうのかわからないような状況にあったが、父は何もせずにただ家にいるのだった。父がこのような状況に陥ったことをきっかけに、私は父と関わりながら、父を撮影することを始めた。
撮影は09年の9月で一区切りがついた。自己破産の手続きが完了し、持ち家を引き払ってアパートに移り住み、生活保護を受給するという新たな生活が始まったからだ。父はついに何もしなくても生きていける生活を手にした。父の生活は安定した。だが、安定した生活を送っている父は、また別の意味で私を不安にさせた。何もしなくても生きていける生活を手に入れたがために、父は本当に何もしなくなってしまった、と私は思った。「このままでいいのだろうか。何かさせないとすぐにぼけてしまうのではないか」私は不安になった。だが、父自身はそんな不安などまったく感じていないようだった。「何もしない父」を前にして、私はカメラをそれまでの中判カメラから大判カメラに変えた。そうすることで、「そこに父がいるということ」、そのことを撮ろうと思ったのだった。 (金川晋吾)
カラー29点。
会場・スケジュールなど
- ・会場:新宿ニコンサロン
- ・住所:東京都新宿区西新宿1-6-1新宿エルタワー28階
- ・会期:2016年8月16日(火)~8月29日(月)
- ・時間:10時30分~18時30分(最終日は15時まで)
- ・休館:8月21日(日)、8月22日(月)
- ・入場:無料
ギャラリートーク
日時:2016年8月20日(土)18時30分~20時
登壇:金川晋吾×飯山由貴
作者プロフィール
1981年京都府生まれ。神戸大学発達科学部卒業。東京藝術大学大学院美術研究科博士課程修了。写真集に2016年『father』(青幻舎)、受賞歴に第12回三木淳賞がある。