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【フォトキナ】EFマウントの強化でユーザーに応えるキヤノン

〜真栄田雅也常務に訊く

 前回のフォトキナ2008でパナソニックがLUMIX DMC-G1を発表し、レンズ交換式ミラーレスカメラ(ちなみに欧州ではElectrical Viewfinder Interchangeable Lensで略してEVIL、あるいは小型のレンズ交換式という意味で単にCompact System、Mirror-less Intetchangeable System Cameraなどの呼び名があるそうだが、いずれもまだ定着していない)の歴史の幕が開いた。

 2年を経て、その市場はキヤノンやニコンといった膨大なレンズ資産を持つカメラメーカーも無視できない市場になろうとしている。今後、キヤノンは自社のシステムカメラをどのように進化させていこうとしているのか。ミラーレス機のトレンドに関連した話題を中心に、キヤノンの真栄田雅也常務(デジタルカメラ担当)に話を伺った。

キヤノンの真栄田雅也常務(デジタルカメラ担当)

 その答えは明快なものだった。キヤノンはEFマウントをさらに強化し、システムカメラとしての応用範囲を拡げていくという。ミラーレス機へとシステムカメラの中心軸がブレるのでは?という懸念に対して、EFの強化を行なう事で市場にメッセージを発しようとしている。また、EFマウントではカバーできないニーズに関しては別途、対応していく構えとのことだ。


EOS 60Dは動画をかなり意識

−−前回はデジタルイメージング事業部長としてフォトキナに参加し、EOS5D Mark IIを主力製品として展示していました。当時と今回のフォトキナを比べ、デジタルカメラ業界全体はどう変化したと感じていますか?

 2008年に比べると、全体にデジタルカメラ産業の勢いが上がっています。フォトキナ直後にあった金融危機からの立ち直りも予想より速く、新興国の伸びが予想以上です。先進国に関しても、各国それぞれの状況は日本を除くと外から見るほど悪くはありません。欧州は深刻な経済危機が叫ばれていますが、デジタルカメラ産業に関しては深刻とは言えません。レンズ交換式カメラ製品は、ミラーレスなどの新しい提案があったことで製品バリエーションが拡がり、製品層の厚みが増しており市場全体が拡大しています。

−−確かに出荷台数は経済危機以前のレベルに戻ってきているようですが、金額ベースではどうでしょう。平均売価の低下は著しいように見えます。

 レンズ交換式に関しては、対前年で金額、台数ともに伸びています。コンパクトもワールドワイドでは伸びていますが、先進国だけを見ると平均売価の低下もあって若干のマイナスです。このため、日本で取り組んでいるような、付加価値の高いバリューラインの製品を重視した製品開発を行なっています。日本と米国だけを見ていると、この2つの市場が価格面で競争がもっとも激しいこともあって、単価下落は目立って見えるでしょう。

−−新製品のEOS 60Dは、かなり動画撮影機能を強く意識した製品になっていますね。

 EOS 60DはEOS Kiss X4とEOS 7Dの中間の製品として企画しました。発売当初はEOS 7Dと近い市場価格になるかもしれませんが、そのちょうど間くらいになるでしょう。バリアングル液晶モニターも入れ、動画をかなり意識しています。これで動画撮影の自由度は大きく上がりました。

9月18日発売のEOS 60D。EOS初のバリアングル液晶モニターを採用した

−−動画撮影機能に力を入れるのであれば、ミラーレス機で新たに別のシステムカメラを提案するという手法もありますよね。

 ミラーレス機に関して、私は一貫して小型化のニーズに対応するための手法として、ひとつの方法だと思うと答えてきました。一眼レフカメラユーザーからの改良リストには、いつも上位に小型・軽量化が上がってきます。ミラーの有無は別にして、すべてのカメラにおいて小型化は徹底的に行っていますが、ある種のユーザー層に対しては、まだ要求に応じられていません。そうした小型化の潜在ニーズに一気に応えようとしたのが、今のミラーレス機のシステムだと思います。レンズ交換式である限り、カメラとしてのパフォーマンスを落とさないことが前提ですが、ミラーレス化の可能性もあるとの前提で、技術開発は行なっています。

−−商品化の計画はあるのでしょうか?

 キヤノン内部でミラーレス機を作るとするなら、このくらいのパフォーマンスや機能性がなければならな、という一線を考えています。求めているパフォーマンスがクリアできれば商品化の可能性が出てきますが、現時点ではクリアはできていません。

−−それはどういう意味でのパフォーマンスでしょう?

 基本的なオートフォーカスの速さ、操作レスポンス、レリーズラグ、EVFの見え味や遅延など、総合的なものです。一眼レフカメラは使っていて快適、快速と感じるのと同じように、気持ちよく使えることが重要だと思います。


年間約10本の新規EFレンズを発売

−−もしミラーレス機の開発をするならば、全く新しいシステムをEFとは別に作る事になりますよね。EFマウントはどうなっていくのでしょう?

 キヤノンの基本姿勢は、EFの資産を大切にしていくことです。単に過去の資産として大切にするというのではなく、新しいニーズ、新しい技術に対応して行くことが重要です。現在、あるハリウッドの映画監督がEOSを用いて映画を撮影していますが、当初、一眼レフカメラのシステムに、プロフェッショナルがここまで注目するようになるとは思っていませんでした。動画撮影機能へのEFマウントの拡大は、今まさにスタートしようという状況です。静止画、動画ともによりよいレンズシステムとするため、EFレンズは大幅拡充を開始していきます。

フォトキナ2010の前にキヤノンが発表したEF 70-300mm F4-5.6 L IS USM(左)とEF 8-15mm F4 L Fisheye USM

−−EFレンズには古い設計のレンズ、単焦点で数が多く捌けるわけではないレンズあります。しかし、一方でそれらはシステムとして必要だからこそ存在しています。大幅拡充というのは、そうしたレンズにも及ぶものなのでしょうか?

 古い設計のレンズはまだ多く残っています。それらをキッチリ最新のデジタルカメラトレンドに対応できるものにリニューアルしていきます。一方で、新しい提案のレンズも発売していきます。両方合わせて年間約10本の新規EFレンズを発売していく計画です。もちろん、単焦点レンズのリニューアルもしていきます。

−−FDレンズからEFレンズに変わり、さらに世代を重ねてきて、写りは良くなっていますが、以前ほどの色気がなくなってきたという声もあります。高性能なレンズとはそういうものだ、とも言えますが、リニューアルによってEFレンズはどう変わっていくのでしょう。

 “レンズ交換式カメラ”と言いますが、本質的にはレンズを使うためにカメラを使う、という方が正しいのだろうと思っています。魅力的なレンズというのは、そのレンズを使うために対応するマウントのカメラボディを買う、くらいの魔力を持っていますよね。リニューアルの中では、そうした魅力ある描写のレンズも盛り込めると思っています。

−−EFレンジのリニューアル計画では動画対応も進めるのでしょうか。静止画と動画では、AFや絞りの動作など求められるスペックが異なります。たとえばEFレンズの端子部、通信プロトコルなども変更する必要はあるのでは?

 マウントの機能強化手段にはさまざまな方法論がありますが、社内でのディスカッションは進めています。EOSを使った映画撮影などプロフェッショナルニーズが、ここまで高いものだとは正直、想像していませんでしたから、そうしたニーズを取り込めるようEFマウント自身の強化を行っていきます。我々は放送機器事業部でプロ用動画カメラのレンズを手がけていますから、動画用レンズのノウハウはあります。そうしたノウハウをカムコーダや一眼レフ用のレンズにマージしていけば面白い製品ができると思います。

−−少なくともレンズとボディの通信プロトコルは拡張しなければ、コントラストAFで高速な駆動は行えません。EFレンズで高速なコントラストAFが行なえる目処はあるのでしょうか?

 コントラストAFに関しては、かなり研究開発が進んでいますから、きっと満足してもらえる性能を出せるようになるでしょう。コントラストAFの改善は、答えがすぐ目の前に見えてきている状況なので、技術的な目処がついた段階で新規開発、あるいはリニューアルするレンズに盛り込んでいきます。


「いわゆるブリッジカメラ」を将来必ず投入

−−今年のフォトキナでは、高性能コンパクトカメラがいくつか登場しました。中でも富士フイルムのFinepix X100は高い注目度を集めていますよね。市場シェアを見ると、あまり大きな存在感を示すジャンルではありませんが、キヤノンはこのトレンドをどう見ていますか?

 他社の意図は分かりませんが、一眼レフカメラのラインナップにある隙間をEOS 60Dで埋めたように、いろいろなニーズに対応するように製品ラインを強化するのが基本戦略だと思います。市場での存在感だけで製品を決めるのではなく、上も下も強化するのが基本でしょう。

−−一眼レフカメラとコンパクトカメラの間に入る製品として、今はレンズ交換式とレンズ固定式、両方のカメラが提案されていますよね。この分野にキヤノンは製品を投入する計画はありますか?

 その間に入る、いわゆるブリッジカメラと呼ばれる製品は、より充実した製品に仕上げて将来必ず投入します。100年のカメラの歴史の中で、まだデジタルは10年ですから、まだまだ新しい可能性が残っていると思います。従来、ブリッジカメラと呼ばれる製品は、どれも大きな成功を収めてきませんでした。しかし、デジタルではセンサーの違いなどもありますから、そこには新しい可能性がきっと潜んでいます。

−−キヤノンの考えているブリッジカメラは、レンズ交換式になると思いますか? EFの強化についてお話しいただきましたが、EFのフォーマットではレンズの小型化には限界もあるでしょう。ブリッジカメラをレンズ交換式にするには、新しいレンズシステムの構築は必須ではありませんか?

 新しい交換レンズシステムを構築する計画はありません。交換レンズに関しては、新しいガラス材料なども研究していて、小型・軽量化にも対応していけると考えています。超望遠系レンズのリニューアルで大幅な軽量化を果たしたばかりですが、新しい素材を含めた最新の設計を行なう事で、コンパクト化にも対応できると思います。

−−交換レンズシステムに関しては、まずはEFマウントのプラットフォーム強化が優先ということですね?

 EFマウントのシステムが、我々が思っていた以上に多くのポテンシャルを持っており、多くの可能性を秘めていることがわかってきました。従って、当面はEFマウントの強化によってユーザーに応えていきます。

−−ところで、これだけ動画撮影に熱心でレンズシステムも動画対応を進めるのであれば、動画撮影向きのボディ開発という可能性も出てくるように思えますが……

 ムービー側に振った製品は考えたいですね。映画撮影用ボディなども前向きに検討してみたいと思っています。

−−小型化のニーズを捉えるならば、EOS-1DをEOS 5Dくらいにコンパクト化したバリエーションもあってよいように思います。

 それに関してはノーコメント。でも、個人的にはやりたいですね。小型化ニーズはコンシューマ向け製品だけでなく、プロフェッショナル向けの製品でも同様にあります。1Dのサイズは、それが必要だからこそあのサイズなのですが、何か方法がないかは検討したい。開発現場では1Dのコンパクト化に関しても頑張っていますよ。



(本田雅一)

2010/9/25 18:32