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【プリンタ特集2007年冬】ミドルクラス複合機レビュー(前編)

~エプソン、キヤノン、日本HPの3機種の概要を紹介

 ハイエンド機に続き、売れ筋のミドルクラスインクジェット複合機をエプソン、キヤノン、日本ヒューレット・パッカード(日本HP)の3社から1台づつピックアップした。ハイエンド機では製品ごと、各メーカーの今年の傾向についても触れながら紹介したが、共通した部分も多いためミドルクラスについては、各製品の紹介を前編として、使い勝手や画質の評価は後編としてまとめている。


エプソン カラリオ PM-A840

オープンプライス(店頭価格:2万1,400円前後)
 上位機種として紹介したPM-T960と比較すると、カラー液晶モニターのサイズと解像度のダウン(3.5型から2.5型)、ネットワーク機能の省略、スキャナのグレードダウン(CCD3,200dpiからCIS1,200dpiとなり、フィルムスキャンには未対応)、自動両面印刷機能と前背面W給紙機構の省略が行なわれている。また複合機単体で利用できる機能も削減されており、機能選択ボタンから「スキャン」が選べない。顔認識技術を用いて色白かつスッキリした輪郭で描写するナチュラルフェイスのソフトウェアも内蔵されず、PCから専用ユーティリティを用いた場合のみ利用することが可能だ。

 もっともその分、価格は安い。Lサイズフチなし印刷の速度はスペック値で22秒と、上位機種の19秒と大差はなく、使用するインクも同じ6色。最小1.5pl(ピコリットル)の小ドットから5段階のサイズを打ち分けるAdvanced MSDT、高画質処理を行なうための専用LSIなど画質に関連するスペックは上位モデルと同じである。


液晶モニターは2.5型 6色インクを採用 メモリカードスロットは。CF、Microdrive、メモリースティック、メモリースティックPRO、SDHC/SDメモリーカード、MMC、xDピクチャーカードに対応

 つまり、写真印刷の画質において肝心な部分は可能な限りグレードダウンさせず、価格を抑えたモデルということだ。

 具体的にはフィルムスキャン、立体物のスキャンなどを行ないたいならば、CCDスキャナを採用する1ランク上のPM-A940の方がいいだろう。自動両面印刷やW給紙システムを求める場合も同じだ。なお、機能選択からスキャンは省略されているものの、JPEGやPDFでスキャンした画像をメモリカードに保存する機能は実装されていた。

 一方、PCからの写真プリントで高画質が必要だが、複合機としての機能はコピー中心。あまり複合機単体の機能を積極的に使わないというのであれば、価格の安い本機の方がお得ということになる。前述したように印刷エンジン部のグレードは最上位機種との遜色がないため、画質指向かつ価格重視というユーザーに向いている。

 もっとも、上記はあくまで上位機種との比較であって、インクジェット複合機として一般的に押さえるべき機能は一通り押さえられている。

 手書き合成シートやPCレスでのCD/DVDレーベルプリント、オーダーシートによるメモリカードダイレクト印刷など、すでにおなじみになった機能はすべて盛り込まれており、近年のエプソンプリンタが重視している自動補正機能のオートフォトファイン! EXももちろん搭載されている。



URL
  製品情報
  http://www.epson.jp/products/colorio/printer_multi/pma840/

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キヤノン PIXUS MP610

オープンプライス(店頭価格:2万2,200円前後)
 キヤノンのミドルクラスプリンタは、実は今世紀に入ってから、ずっとコンスタントにベストセラーを続けている。それは複合機の時代になっても同じだ。その理由は高品質な4色(顔料黒インクを加えると5色)プリント、低インクコスト、コストパフォーマンスの高い機能性などにある。

 エプソンが、あくまでも写真印刷を中心にしたエンターテイメント性を重視したミドルクラスを展開しているのに対して、キヤノンはどちらかといえば実用重視派。地味だが使いでのあるプリンタとしてミドルクラスを推してきた。

 もっとも、昨今はフォトを起点にした機能も充実してきており、6色カラー印刷機能を備えない以外は、かなりエンターテイメント性を意識した機能となってきている。今年で言えば、得意のミドルクラスはMP610ということになるだろう。

 機能面を見ると、上位機種として紹介したMP970に対して落ちる面もあるが、むしろ向上している性能もある。

 スペックダウンしているのは液晶ディスプレイのサイズ(3.5型から2.5型)、7色インクに対して5色インク(写真印刷時に使われるのは、それぞれ6色と4色)、スキャナ方式(解像度は同じだが、CCDとCISというセンサー方式の違いがあり、本機はフィルムスキャンに未対応)だ。その一方、インク数が少ないため印刷速度とインクコストには優れており、Lサイズフチなしの印刷速度は18秒(MP970は29秒)。インクコストはLサイズ1枚あたりで5~6円も安くなる。薄いインクを使わないため、打ち込むインクの総量が少なくなるためである。


2.5型液晶モニター インクは5色 CF、Microdrive、スマートメディア、メモリースティック、メモリースティックPRO、SDHC/SDメモリーカード、MMCに対応

 その分、階調性やハイライト部分の表現力が劣るハズだが、このあたりは実際のプリントにて検証してみることにしたい。なお、粒状性に関しては最小1plという極小ドットを使っていることもあってか、さほど4色印刷の不利は感じさせないレベルになってきている。

 そのほか、操作性やインクジェット複合機単体で利用できる各種機能に関しては、MP970との差はほとんどない。自動両面印刷や前面、背面の両方から給紙できるマルチペーパーハンドリングも同じ。Exifデータ付きのサムネイル印刷機能や、独自のDVD/CD手書きナビといった機能も同一。

 写真印刷のクオリティは4色インクでもかまわないが、それ以外の機能には妥協したくない。また、フィルムスキャンは必要ない。そんな人には、非常にお買い得な製品に仕上がっている。



URL
  製品情報
  http://cweb.canon.jp/pixus/lineup/mp610/

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日本HP Photosmart C5280

オープンプライス(店頭価格:1万7,900円前後)
 日本HPからはC5280をピックアップしよう。HPのプリンタはミドルクラスから上位がすべてSPTという同じエンジンで開発されており、印刷性能に大きな差がないことがひとつの理由だが、もうひとつ本機はHPの複合機として初めてCD/DVDレーベルプリントに対応しているからだ。

 ローエンドに近い価格帯だが、採用スキャナは4,800dpi(CIS方式のためフィルムスキャン機能はない)。2.4型カラー液晶パネルが搭載されており、CF、SDHC/SDメモリーカード、メモリースティック、xDピクチャーカードに対応するメモリスロットを備える。内蔵コントローラは上位機種と同一と推測され、1,000万画素クラスのJPEGファイルでも十分にレスポンスの良い印刷を行なえるなど、価格以上に複合機としてのパフォーマンスは高い。

 一方、印刷システムはSPTより1世代前となるヘッド一体型だ。CMYカラーの3インクカートリッジに2種類のカートリッジを選択して装着するのが基本。HP伝統のDuPontとの共同開発による、普通紙への滲みが少なくコントラストの高い顔料黒インクカートリッジを組み合わせれば、高画質のドキュメント印刷用4色プリンタとして活躍。染料系黒と薄いシアン、マゼンタを配したフォトカートリッジに交換すれば、写真画質を重視した6色プリンタにもできる。3色カラーカートリッジ、顔料黒カートリッジ、フォトカートリッジともに、本体に最初から添付されている。


2.4型の液晶モニター 4色または6色インクを使用(写真は6色構成時)

CF、SDHC/SDメモリーカード、メモリースティック、xDピクチャーカードに対応 CD/DVDレーベルプリントが可能

 もちろん、自動ヘッド位置調整や光学センサーで用紙タイプを認識する機能、フォト用紙とA4普通紙を同時にセットしておき、自動的に切り替える2段前面給紙トレイなどの、利便性を高める機能は本機にもきちんと搭載されている。

 初の搭載となるCD/DVDレーベルプリント機能は、専用トレイが本体内に内蔵されており、そこにCD/DVDをセット。本体のガイドに従ってトレイを挿入すればよく、トレイの収納まで含めてスマートに、スッキリと使いこなせるのが特徴だ。8cmディスクにも簡単に対応できる。

 ただし付属のジャストシステム製レーベル印刷ソフト「ラベルマイティ」を用い、Windows PCからの印刷は行なえるが、日本メーカーのように複合機単体でCDのレーベルコピーやメモリカードからのダイレクト印刷を行うといった機能は残念ながら搭載されていない。とはいえ、これまで高い実用性を誇りながら、CD/DVDレーベルプリントがないことで敬遠されていたケースがあったことを考えれば、ひとつ大きな前進とは言えるだろう。

 なお、タッチパネルを用いる上位機種とは異なり、本機はボタンによるオペレーションとなるため、この点にも簡単に触れておきたい。

 上位機種はほとんどの操作をタッチパネルで行なうためボタン類が極端に少ないが、本機は逆に横に多数のボタンが並ぶ。ただし、これらはすべて機能ごとに分類されており、フォト印刷、コピー、スキャンなど、各機能で使うボタンは整理されている。

 機能を選択すると、あとは液晶画面上のガイダンスに従い、画面すぐ右に配置されている十字ボタンで操作するだけなので、ボタン数の多さからイメージするよりもずっとシンプルでわかりやすい操作体系となっている。



URL
  製品情報
  http://h50146.www5.hp.com/products/printers/inkjet/aio/ps_c5280/

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日本HP、6chスキャナ搭載の複合機「C8180」など5機種(2007/10/18)


URL
  プリンタ特集2007年冬
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/special2/2007/12/21/7635.html



本田 雅一

2007/12/27 14:32
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