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【特別企画】紅葉直前! 京都撮影ガイド

~南禅寺から銀閣寺へと「哲学の道」を歩く

このカットのみEOS 20D+トキナー10-17mmF3.5-4.5 FishEyeで撮影
11mm / F8 / 2.5秒 / ISO100 / 太陽光
 秋といえば京都を思い浮かべるのは、新幹線のCMのせいだろうか。関西出身の私からすれば、京都は大きな買い物をするときに行っていた街だったが、首都圏で暮らすようになって思い返してみれば、すばらしい撮影地に恵まれた場所だったことに気づく。

 今回、京都を旅するにあたり、写真撮影を楽しめる場所をいろいろ考えた結果「哲学の道」を歩いてみることにした。

 市内の有名観光地、例えば清水寺などは観光客でいっぱいであるし、撮影しようにも必ずどこかに人が入ってしまう。また、三脚の使用が禁止されているので、感度を上げて撮影するなどの制約ができてしまう。

 市内のお寺のみならず、京都から大阪方面へいったところにある紅葉の名所、光明寺(長岡京市)でも、紅葉シーズンのみ拝観料が有料になり、三脚使用が禁止されるようになってしまった。従来は普通に撮影できたところが、観光化により思い通り撮影できなくなってきているのだ。

 その点、哲学の道は紅葉のスポットでもあるし、三脚は使用でき、もちろん拝観料はいらない。そこで昔の土地勘を活かして、京都駅から南禅寺へ出て、哲学の道を歩いてみることにした。


用意した機材

トキナーAT-X 235 AF PRO。金属鏡胴の重厚感と幅広のフォーカスリングで、MF撮影を楽しみたくなる
 カメラはEOS 20Dを用意した。

 今回は使うレンズを1本に限定して、なるべく撮影距離の調整でフレーミングしてみることにした。使うレンズは「トキナー AT-X 235 AF PRO」。20~35mm F2.8のズームレンズだ。28~70mm F2.8、80~200mm F2.8とともに、開放F値2.8の大口径ズームとして愛用された。「高性能なワイドズーム」というコンセプトは、デジタル専用のAT-X 124 PRO DXに引き継がれているが、今でも現行品だ。各収差を防ぐには前玉と後玉の両方の口径を大きくした方が有利だが、口径の大きな非球面レンズは製造が困難。AT-X 235 AF PROはその困難さにあえて挑戦したという、トキナーにとって「技術的なチャレンジ」となった製品だ。

 ただ、EOS 20Dで使うと焦点距離が1.6倍され、32~56mmとワイドから標準域のズームとなってしまう。ズーム域が狭いが、ついついズームで被写体を引き寄せたり、遠ざけたりする手抜きができない分、真剣にフレーミングできる気がする。ピントリングを手前に引くとグリスの感覚を伴う、抵抗感のあるフィーリングとなり、まるでMF専用レンズのような感覚で使える。AFとMFの切り替えにはさらにレンズ鏡胴脇のスイッチを切り替える必要がある点が、最新のAT-X 124 PRO DXと違う点だ。今回はあまりAFは使わずに、積極的にMFで撮影してみた。ピントリングの回転方向は純正EFレンズに合わせてあるので、迷うことがない。


三脚は4段のカーボンにグリップ雲台を組み合わせた。スローシャッターになるとリモートスイッチは必需品
 三脚は移動を考えて、縮長が短い4段のカーボン。パイプ径が27mmの中型タイプを選択することで、スローシャッターに対応できるように備える。雲台はグリップタイプを使った。2ハンドルタイプの雲台は、構図をしっかり決めるのに向くが、移動時にハンドルが邪魔になる。また、ハンドルの付けはずしが面倒になることもある。グリップ雲台はグリップを離すだけで固定できるし、自由雲台と違ってカメラを支える手がいらず、場合によっては片手で操作ができる。


京都駅から哲学の道へ

 京都は東京同様、11月に入っても気温が高い日が続き、紅葉は遅れている。北の修学院や嵐山あたりで、ようやく色づき始めた程度だという。今回の旅ではまだ紅葉はあまり見られない可能性もあるが、シーズン前の状況をチェックしておけば、11月末の撮影シーズンに役立つだろう。ただ、知人によると「紅葉はまだでも、市内の交通量は増えていて、既に観光シーズン真っ盛り」だそうだ。

 東京から新幹線で京都に着く。京都の玄関口である京都駅は11月というのにすっかりクリスマスムードだ。できたときはいろいろ物議をかもした京都駅ビルも、すっかり京都の顔として定着してきた様子。京都駅が今のビルになる前から京都の顔だった「京都タワー」も健在。地元の人はあまり昇らないが、京都に修学旅行へいった方は昇ったことがあるのではないだろうか?

※作例のリンク先は撮影した画像です。縦位置の画像は、あえて回転せずに掲載しています。
※サムネール下のデータは実焦点距離/絞り/露光時間/感度/ホワイトバランス/露出補正値です。


京都駅ビルの中のクリスマスツリー。人通りは多いが、三脚を立てるポイントはある
35mm / F11 / 5秒 / ISO100 / 太陽光 / +2/3EV
京都タワーと駅前のイルミネーション
20mm / F11 / 1.6秒 / ISO100 AWB / -1EV

 京都駅から南禅寺へは地下鉄で移動する。京都は、地下鉄が2系統しかなく、多くの観光地、例えば清水寺や金閣寺、銀閣寺などへはバスかタクシーで移動することになる。南禅寺の最寄り駅は「蹴上(けあげ)」。

 京都駅からはまず、地下鉄烏丸(からすま)線の「国際会館」行きで「烏丸御池」へ行き、東西線に乗り換える。「六地蔵」行きに乗れば、3駅で蹴上につく。


地下鉄烏丸(からすま)線。京都市内の南北を結んでいる 地下鉄東西線。京都の二条から、南東の六地蔵を結んでいる。「いかにも古都」という感じの発車ベルが面白い

 駅から南禅寺へ向かう出口を出て、右へ行くところを、逆に左へ坂を上っていくと、途中で安養寺の入口がある。その参道を上れば疏水をまたぐ橋の上から「インクライン」の終端が見える。

 蹴上には浄水場があり、京都市民の水を供給しているが、この水源が「琵琶湖疏水」。明治時代に作られた水路である。滋賀県の大津からトンネルを通じて京都へと水を引いているのだ。琵琶湖疏水は水源の供給以外に、水力発電や船での移動も考えていた。蹴上から鴨川への運河へと、船を移動できるようにできたのがインクラインというケーブルカーの一種である。今ではもちろん使われていないが、公園としてインクラインを歩くことができる。


インクラインの入り口。今では使われない船を載せた車両が見える。PLフィルターを使って、映り込みを増やして撮影。反射が消えるところから90度回すと、映り込みが増える
20mm / F11 / 1/5秒 / ISO100 / 太陽光 / -1EV / サーキュラーPL使用
インクラインの反対側。琵琶湖からの水路(トンネル)が見える
35mm / F11 / 1/5秒 / ISO100 / 太陽光 / -1EV / サーキュラーPL使用
インクラインは通常の鉄道に比べて線路間が極端に広い。ここの紅葉はまだまだのようだ
26mm / F4 / 1/8秒 / ISO100 / 太陽光 / 0EV / サーキュラーPL使用

 インクラインから公園を回り込むと、北へ分岐した琵琶湖疏水の脇道へ出ることができる。ここはほとんど人が通っていない。今朝ほどまで小雨が降っていたせいだろうか。疏水の脇道は、柵などがないので、落ちないように注意が必要だ。山の中をしばらく歩いていくと、お寺の境内に出る。南禅寺である。疏水はレンガのアーチの上を流れるようになるので、疏水から離れて、南禅寺の境内を歩いていくことになる。


結構水量がある琵琶湖疏水。山の中を流れていく
20mm / F8 / 1/1.7秒 / ISO100 / 太陽光 / -1EV / サーキュラーPL使用
琵琶湖疏水の脇を歩いていくと、南禅寺へと出る。レンガのアーチは明治時代に作られた疏水の水路
20mm / F8 / 1/10秒 / ISO100 / 太陽光 / -2/3EV

南禅寺の境内を通る、優美なデザインのレンガのアーチ
27mm / F8 / 1/6秒 / ISO100 / 太陽光 / -2/3EV
境内で最も赤くなっているモミジ。レンガのアーチをバックに
35mm / F8 / 1/8秒 / ISO100 / 太陽光 / -2/3EV

南禅寺の境内を出たところの湯豆腐屋さん。鬼瓦の屋根が印象的。モミジは色づき始めたところ
27mm / F8 / 1/6秒 / ISO100 / 太陽光 / 0EV

南禅寺から哲学の道への順路を示す看板。初めてここへ来る人も安心できる
京都は観光都市らしく、通りのあちこちに観光地図もある

この看板が見えたところで細い路地を入ると、いよいよ哲学の道だ
石畳が哲学の道の始まり。植木に隠れるように「哲学の道」の石碑がある

 南禅寺の境内を出て、哲学の道へ向かう。哲学の道までは少し距離があるが、順路を表す看板があり、迷うことはないだろう。南禅寺から哲学の道まではアスファルトの道を歩くが、途中にモミジの名所として知られる永観堂がある。初めて京都に来た、という人にはお勧めの観光スポットだが、今回は撮影を目的としているのでパスする。永観堂では三脚は使用禁止だ。しばらく大通りを歩き、途中細い道を入ると、いよいよ哲学の道だ。


哲学の道で秋を探す

 哲学の道は、熊野若王寺神社から銀閣寺へ至る約1.8kmの道で、昭和43年に整備されたという。秋の紅葉のいいが、春の桜の時期もきれいなところだ。


熊野若王子神社脇の林。竹とモミジが入り交じっている
26mm / F5.6 / 1/40秒 / ISO100 / 太陽光 / 0EV
神社の鳥居を通して紅葉が始まった林を見る。ちょっと日が射してきた
24mm / F5.6 / 1/160秒 / ISO100 / 太陽光 / 0EV

哲学の道は疏水の分水沿いを行く。モミジはまだまだ青い
35mm / F8 / 1/3.3秒 / ISO100 / 太陽光 / +1EV
モミジは木によって既に赤くなっているモノもある
25mm / F4 / 1/60秒 / ISO100 / 太陽光 / 0EV

道は疏水沿い、民家の裏を通って続いていく
24mm / F4 / 1/60秒 / ISO100 / 太陽光 / 0EV
空を見上げて赤くなったモミジを撮る。プラス補正で赤色を明るく出す
35mm / F4 / 1/60秒 / ISO100 / 太陽光 / +1EV

 哲学の道の途中に、大豊神社がある。京都の知人の言葉でなるほど、と思ったのが「お寺は拝観料や入山料が必要なところがあるけど、神社はお金がいらない」ということだ。京都で有名な平安神宮でも、奥の庭を見ずに本殿をお参りするだけなら拝観料はいらない。もちろん、大豊神社も拝観料は不要だ。大豊神社は哲学の道から少し脇に入ったところにある。神社で秋を探してみた。


大豊神社入り口にある「椿ヶ岳のご神水」。常に冷たい水が流れている
25mm / F4 / 1/2秒 / ISO100 / 太陽光 / -2/3 / 0EV
風に揺れる黄色い葉。境内は秋色に染まっている
25mm / F8 / 1/4秒 / ISO100 / 太陽光 / 0EV

境内にあるススキ。最短撮影距離50cmにセットして近づく。絞りをF4とすることで、背景の赤い鳥居をボカした
35mm / F4 / 1/400秒 / ISO100 / 太陽光 / 0EV
再び哲学の道を歩く。脇を流れる疏水の水はきれいで、魚が泳いでいる。PLフィルターで水面の反射をなくして撮ってみた
35mm / F8 / 1/6秒 / ISO100 / 太陽光/ -4/3EV / サーキュラーPL使用

秋は紅葉ばかりではない。赤い南天の実も秋を演出してくれる
31mm / F4 / 1/60秒 / ISO100 / 太陽光 / -2/3EV
モミジはまだ色づかないモノもあるが、桜は既に紅葉。散っているモノもある
31mm / F4 / 1/125秒 / ISO100 / 太陽光 / -2/3EV

哲学の道の川向かいに、ピンクと白の花が咲いている。盛りは少し過ぎているようだ
35mm / F8 / 1/40秒 / ISO100 / 太陽光 / -2/3EV

 哲学の道の疏水をはさんだ反対側に、京菓子とちりめん山椒の屋台を出している夫婦に出合った。「哲学の道は桜の時期もきれい」という。「京都市内の紅葉の見頃はいつもやったら11月27日やそうやけど、今年は11月30日。新聞に書いてたわ。温暖化のせいやろか」。京都で2番目においしい、とPRする自家製の本わらび餅を食べた。「2番目に」というのは京都人ならではの謙遜か。カメラを向けると周囲のお客さんが「繁盛しているように見えた方がいいでしょ?」と入ってきてくれた。

 ここまでくると、哲学の道の終端にある銀閣寺まであと5分。


京菓子とちりめん山椒の店で、わらび餅とお茶のセット200円。赤い茶席の色味を見ながらマイナス補正をしてみた
20mm / F8 / 1/100秒 / ISO100 / 太陽光 / -2/3EV
この看板のある銀閣寺への道との分かれ目が哲学の道の終端。銀閣寺界隈はいつも人でにぎわっている

 いよいよ、銀閣寺への道の分かれ目、哲学の道の終端へ着く。紅葉はまだでも人出は大変多い。京都が初めてなら是非銀閣寺も見ていただきたいが、三脚は使えず、撮影よりも観光、という感じとなるだろう。銀閣寺から京都の主要ターミナルへは市バスでの移動となる。また、清水寺や三十三間堂、平安神宮などの有名観光地へもバスで1本だ。

 使ってみたトキナー 20-35mm F2.8はさすが10万円オーバーの高性能レンズらしく、撮影を楽しめた。ただ、設計は決して新しくないレンズのため、F4より絞った状態で使うのが使いこなしのコツだ。今回、F2.8で撮ったカットもあったが、私の基準で考えてボツにした。「絞って使うなら、F2.8でなく開放F値が暗いレンズでもOKなのでは?」という疑問もあるだろうが、決してそうではない。F2.8ならではの明るいファインダーは撮影にとって重要な「被写体の確認」を確実にさせてくれる。

 風景撮影で常用するPLフィルター(デジタルで使うなら、露出の誤差などを起こさない「サーキュラーPL」)は、絞り2段分暗くなるとされている。PLで暗くなる影響は、シャッター速度の低下だけではない。ファインダーの見かけの明るさも絞り2段分暗くなるのだ。開放F値F5.6のズームレンズなら、ファインダーの見かけの明るさがF11相当と、被写体の確認をするのが困難なくらい暗くなってしまう。その点開放F値がF2.8の明るいレンズなら、PL装着時の見かけもF5.6と実用範囲となる。

 また、フルサイズをカバーするので、フィルムカメラとの兼用や、APS-Cよりも大きなフォーマットのデジタル一眼との兼用を考えれば、まだまだ出番があるレンズではないだろうか。

 11月下旬からいよいよ本格的に紅葉する京都。今回歩いた哲学の道では、もう少し時期を待てばよりよい紅葉が撮れるのでは? という印象であった。有名な撮影地もいいが、歩いて探す秋の風景も被写体としていいだろう。三脚を使ってじっくり狙ってみたいものだ。




木村 英夫
1971年滋賀県出身。父の趣味の影響を受け、カメラの世界へのめりこむ。高校時代の愛機はニコンF2フォトミックS。モータードライブやアクションファインダー他、かなりマニアックなアクセサリーまで揃え、ニコンオリジナルグッズのバッグで登校していた。「住宅と家具、クルマとカー用品の関係のように、カメラの世界も写真用品まで極めれば楽しい」が信条。その研究熱心さのあまり、毎年「用品ショーカタログ」を読破する。

2006/11/15 00:36
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