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【特別企画】キヤノン EOS 5Dで雪の町を撮る


 2月末に旅した室蘭、小樽、積丹の中で印象に残る昼間の雪景色は、小樽から積丹半島にかけての日本海沿いに集中していた。もともと雪の多く降る日本海側であるが、今年は近年稀にみる大雪だったこともあり、はんぱでない雪が町や畑や森に降り積もっていた。

 札樽自動車道の銭函インターを下りて小樽方面に車を走らせ、日本海見たさに朝里駅の方にハンドルを切った。滑りそうな勾配の雪道を下っていくと小さな踏み切りがあり、そこを渡ると90度に道が折れていく。下る道の先には鉛色をした日本海と雪の集落があった。


小樽朝里
雪や氷ででこぼこした道は古びた時間の流れる町への入り口のように見えた。雪の白を基調に黒い道、グレーの空、鉛色の海が雪国に来たという実感となって迫ってくる。どこかモノクローム発色のカラー写真に、5Dの同系色を処理する能力の高さを見たような気がした
1/125秒 / F9 / 0EV / ISO400 / 28mm / WB:オート

 朝里駅から小樽の中心街まではすぐだった。町はいたる所に雪溜まりがあり、車も人ものろのろと動き回っている。商店街の隙間で人だけが通行できる簡易トンネルのような入り口を見つけた。


小樽
トンネルのような通路に入っていくと街の胎内に潜り込む感覚があった。奥までたどり着き振り返ると、商店街が眩しい光の中に消えかけていた。通路下の暗がりに消えていく雪や氷の冷たい表情がリアルに表現されている
1/13秒 / F4 / 0EV / ISO100 / 67mm / WB:オート

 かつてニシン漁で栄えた町であったことを示すように、港近くの運河沿いには立派な倉庫群が残り、あちこちに古い洋館も見られた。この日は雪が降りしきり、暖をとるために入った喫茶店から雪国の町をぼんやり眺めていた。


小樽
喫茶店の曇りガラスを透して見える街は不鮮明で、夢の中で進行していく8mm映画のように懐かしかった
1/125秒 / F8 / 0EV / ISO100 / 24mm / WB:オート

小樽
町の中には坂道や路地が多い。幹線道路からそれた細い路地には、まだ人に踏まれていない雪道もある。そんな雪の上に足跡をつけながら1本の路地を進んでいくと、雪に封印された民家の玄関戸があった
1/80秒 / F6.3 / 0EV / ISO100 / 40mm / WB:オート

小樽
軒先にうずたかく積まれた雪越しからの目線を感じた。その正体は、玩具屋の看板に描かれた赤ちゃんとフランス人形だった。褪色した色彩ではあったが、白い雪の町ではかなりインパクトのある絵だった
1/250秒 / F7.1 / 0EV / ISO100 / 105mm / WB:オート

 翌日、小樽の町を後にして積丹半島に向かった。海岸沿いの古い道に入って行くと雪と空しかない茫洋とした景色が広がっている。

 旅も4日目。雪道の運転にも慣れ、いつの間にか東京の街を走るようにアクセルを踏んでいた。


小樽郊外
左に大きくカーブしていく雪道。右手にはすぐ日本海の荒波が大きな音をたて砕けていた。曇天の中、背景の空に溶け込んでしまいそうな雪道。色味が少なく、非常に難しくデリケートな雪の質感がよく再現されている
1/60秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / 24mm / WB:オート

 積丹の中心の町のひとつに美国がある。町の中心には食堂、和菓子屋、洋品店など何軒もの個人商店が軒を連ねていた。ラーメン屋で昼食をとり、食後のデザートに和菓子屋で桜餅を買った。口にほおばると氷のように冷たくデザートアイスのようだった。冷たくなった喉を潤そうと、自販機にホットドリンクを買いに行った。ホットのボタンがないので他の自販機を巡るが、やたらと冷たいボタンのものばかりが並ぶ。やっとのことで暖かいボタンのあるお茶に巡り会った。室内を暖かくしているためなのか? 真冬なのにホットドリンクの入った自販機がなんと少ないことか。

 美国の町をぶらぶらした後、白い町の全貌を見ようと山の方に車を走らせた。途中、黄色い除雪車とすれ違った。


積丹半島 美国
雪の中からはえてきたような家々が密集している。坂の途中からは、ブリューゲルの絵で見たようなヨーロッパの町を眺める異国感があった。とはいえ、墨色の空や海には水墨画にある和の風景も見えた
1/800秒 / F8 / 0EV / ISO100 / 32mm / WB:オート

 積丹半島は奥が深い。雪も深い。すっぽり雪に覆われた森や町がやってきては去っていく。辿り着いた入舸は半島にある突端の町。車を下りると頬を切るような潮風が吹いていた。

 そんな風景の中、荒涼とした岩肌を背に何棟もの漁師小屋が並んでいた。北の大地で働く小屋の姿からは、北海道の雪景色、最果ての冬景色を強く感じてしまうのだった。


積丹半島 入舸
山にへばりつくようにして十棟ほどの小屋が勢ぞろいしていた。その中で一番素晴らしかった小屋。黒いコールタールの波板トタンをベースに、グリーンとブルーのトタンのパッチワークがモダンアートのようにも見える。雪の白と黒トタンという対照的なコントラストがよく描写されていた
1/100秒 / F8 / 0EV / ISO100 / 24mm / WB:オート



中里 和人
(なかざと かつひと)1956年三重県生まれ。法政大学卒業後、1984年よりフリーランスカメラマン。会場探し、会場作りを自ら手掛け、町工場跡や市場、洞穴などでのユニークな写真展を精力的に開催。写真集「湾岸原野」(六興出版)、「小屋の肖像」(メディアファクトリー)、第15回写真の会賞受賞作「キリコの街」(ワイズ出版)、「逢魔が時」、「長屋迷路」(ピエブックス・文/中野純)、相模原写真新人賞受賞作「路地」(清流出版)、最新刊「夜旅」(河出書房新社・文/中野純)他

2006/04/28 01:17
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