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【特別企画】4人の写真家とEOS 5D 第1回
渡部さとる「重慶」


マニュアル露出 / 1/250 / F8 / ISO400 / WB:太陽光 / EF 50mm F1.4

 EOS D60、20Dは発売直後から使っている。EOS-1Ds Mark IIも試してみた。中判フィルムと同じくらいのクオリティがあるのは実感できた。が、いまだに仕事で使う割合はフィルムのほうが多い。デジタルが必要なのは、撮影条件の悪いところでも、ライトを使わずに現場の光を生かしたい時のみだ。

 D60で不満だったところは、20Dでほぼ解消された。D60では黄色系の濁りが目立ち、どうしても肌のくすみが取れなかったが、20Dではどの色相に対しても素直で、肌色もきれいになった。

 5Dが発表された時には、フルサイズだからといっても、さしたる変化はないだろうと考えていた。20Dのセンサーが大きくなっただけでは魅力は薄い。1,200万画素というが、画素の量が問題ではなく、1画素の質が大事だ。

 そもそも、デジタルカメラで35mmフルサイズにこだわるほうが変だ。新しい機器なのだから新たなフォーマットを考えればいい。ミラーが介在する必要性も疑問だ。ライブビューのほうが理にかなっている。

 と、思っていた。

 だから「5Dを買うつもりはない」と言い続けていた。なのに、いつの間にか予約を入れ、35万円なら2年間で減価償却できるはずだと勝手に理由をつけて発売直後に手に入れた。

 箱から出すのももどかしく早速撮影してみた。ファインダーを覗いた第一印象は「懐かしい」だ。ずっと使い続けてきたEOS-1の感触なのだ。20Dを使うようになってから、まったくといっていいほどEOS-1の出番はなくなった。20Dのファインダーの小ささがあたりまえになりつつあったのだ。

 5Dと20Dで、同じものを同じ設定で撮り比べたところ、あきらかに液晶モニターの見え方が違う。20Dのほうが鮮やかだ。対して5Dのハイライト部分は若干青みがかって見え、コントラストも低い。しかし、5Dの液晶モニターの大きさはありがたい。画像の確認もさることながら、設定表示のフォントも大きくなっていて視認性が格段に増した。20Dとほぼ同じ大きさの背面に、よく入れ込んだものだと関心する。ただ残念なのは、日中明るいところでは輝度が足りず、画像が見えづらかったことだ。


マニュアル露出 / 1/30 / F4 / ISO400 / WB:オート / EF 20mm F2.8

 撮影したデータをPCのディスプレイで確認してみると、20Dと決定的に違う点があった。それはピントの合焦率だ。20Dでの最大の不満がそこにある。ポートレート撮影の時にきちんと眼に合わせようとしても、10枚撮影すると必ず3枚はピントが合っていない。

 ところが5Dでは全てのカットに合っている。カメラとしてあたりまえの機能だが、それだけででも買った甲斐があったというものだ。

 1D系ならピントがきちんと合うのはわかっていたが、それならなぜ使ってこなかったと言えば、値段が高すぎ、重いからだ。それと一番には、普及機タイプのD60、20Dと背面モニター設定の操作性がまるで違うせいだ。20Dに慣れてしまった者には、1D系のクラッチ操作は辛い。逆に1D系で慣れた人は5Dの操作に戸惑うだろう。

 さて、画質のほうは20Dで満足していたのだからまったく問題はない。いつものように感度はISO400に常時設定し、ホワイトバランスは太陽光を基準にしている。ミックス光の時のみオートホワイトバランスを使うのだが、これが非常に使いやすい。蛍光灯と白熱灯が入り混じった場所でも雰囲気を重視しながらバランスをとってくれる。常時オートでもかまわないくらいだ。

 800万画素と1,200万画素の違いはというと、細部の描写力もたしかに違うが、それより1画素あたりの質の良さが感じられる。濃度やコントラストの変更に強い気がする。1D系と似た印象だ。色相のバランスが良いためホワイトバランスが取れていれば色の調整はほとんど必要ない。

 RAWデータを現像するソフトが新しくなって、PC上で「ピクチャースタイル」の変更が可能になっている。以前のソフトに比べ、画像データの表示が速くなっているためRAWデータが使いやすくなった。

 もはや仕事の撮影で35mmのフィルムを使うことはなくなるだろう。そのくらい5Dは使いやすく、性能もいい。


マニュアル露出 / 1/30 / F5.6 / ISO400 / WB:太陽光 / EF 20mm F2.8

マニュアル露出 / 1/30 / F2.8 / ISO400 / WB:オート / EF 50mm F1.4

 5Dを持って中国重慶へ行ってきた。「重慶の犬は太陽を見て吠える」というくらい雨の多いところだ。雲が重く立ちこめ、湿度が高い。揚子江が白くけぶり、空との境をなくしている。

 仕事の撮影が終わりホテルに戻ってから自由時間となった。地図もガイドブックもないので、とりあえずホテルの周りをうろついてみた。反日感情の強い街だと聞いていたので、カメラは5Dだけ。レンズは20mと35mmの単焦点のみ。それをバックに入れて目立たぬよう歩いた。

 大きなビルの陰に隠れるようにして、坂道となった路地がいくつも目に付く。その中の一本を歩いていたおじいさんの後に付いて入ってみた。細くて暗い曲がりくねった路地をビクビクしながら歩いた。奥の路地伝いには間口が一間ほどの小さな店がびっしりと軒を並べている。

 食堂、屋台、パーマ屋、雀荘、雑貨屋、ビリヤード…

 映画のセットのような光景だ。夕暮れ時で子供たちがしゃがんでご飯をかき込んでいる。5分も歩いたら別の大通りに出た。道が分からなくなってしまうので、いま来た道をゆっくり折り返す。出口付近には屋台が集まっていた。今日の夕食は、その中の麺のお店で食べることにした。

 お店のおばちゃんに平打ちの麺を指差す。トッピングはザーサイ。辛い、けれど美味い。頭から汗をかきながら食べた。目の前に小さな餃子が並んでいる。これも頼んでみる。茹でた餃子は噛むと汁が飛び出した。麺の中に入れてもおいしい。海外に行って一番幸せを感じるのが屋台でのご飯だ。麺と餃子で5元。日本円で80円だった。

 代金を払うとその場を離れ、そっとカメラを取り出した。レンズは20mm、露出は1/30秒で絞りはF2.8開放。1枚だけシャッターを切って、おばちゃんに会釈して立ち去った。歩きながら再生ボタンを押してみた。拡大ボタンで細部をアップにしてみると、食べた丼まではっきり確認できた。

 フィルムの給装音がないため、意外とシャッター音が目立たない。バッテリーグリップを外して使っていると大きさも気にならない。街中での撮影にも気を使わずにすむ。

 日本に帰って、エプソンのプリンタ「PX7500」でA1ノビサイズで出力してみた。新聞紙見開きよりも大きい。RAWデータで撮った画像は、キヤノンのソフト「DPP」で開いた。若干濃度の調整を加え、保存。Photoshopでコントラストを調整し、画像解像度を240dpi、短辺530mm、長辺795mmにリサイズした。色の調整、シャープネスの変更はしなかった。

 大伸ばしてみて、はっきりと5Dの実力が分かった。果物屋のりんごやバナナが丸みを帯びて写っている。作り物ではなく、本物の感触が感じられるようだ。デジタルでは不可能と思っていた曖昧な表現ができる。デジタルが得意なシャドー部の描出はもとより、ハイライト部からハーフトーンにかけてのトーンの繋ぎの良さが感じられる。

 ここに掲載している重慶の写真は、フィルムでは再現できないものばかりだ。

 5Dは素晴らしいカメラだと実感しているが、全てがデジタルに切り替わるわけではない。ただ5Dの出現により、新たな絵筆ができたように感じている。


マニュアル露出 / 1/30 / F2.8 / ISO400 / WB:オート / EF 20mm F2.8



渡部 さとる
(わたなべ さとる) 1961年山形県米沢市生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、日刊スポ−ツ新聞社に入社。スポーツ、報道写真を経験。同社退職後、フリーランスとして、雑誌、写真集などでポートレートを中心に活動。 著書に「旅するカメラ」などがある。 http://www.satorw.com/

2005/12/20 00:52
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