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今回使用したSEA&SEAのニコンD70用ハウジング「DX-D70」
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前回に引き続いて、海の中にデジタルカメラを持ち込むための機材や撮影のちょっとした知識について紹介をしていくことにしよう。前回はコンパクトデジタルカメラ用の水中ハウジングを紹介した。
コンパクトデジタルカメラ用ハウジングなら、サイズも小さく素潜りが得意な人ならば、浅場の魚や珊瑚を手軽に撮影できるだろう。体力に自信のある男性ならば、スノーケリングでも深度5~6m程度、あるいは10mぐらいまでは慣れ次第で潜ることができる。
だが本格的な撮影となるとエアタンクを背負ったスキューバダイビングでの撮影となる。今回はデジタル一眼レフカメラを海の中に持ち込んでみよう。
■ 水中でのカメラ撮影に必要な機材
●水中ハウジング
一眼レフカメラで利用する水中ハウジングは、国内ではアンティス、SEA&SEA、イノンといったベンダーが銀塩カメラ用ハウジングを開発。これ以外にもDIVというポリカーボネート素材を用いてカスタイムメイドのハウジングを作るベンダーもある。
またニコンは水陸両用カメラのニコノスシリーズをかつて販売しており、入門用として根強い人気のあったNIKONOS-Vや、一眼レフカメラのNIKONOS-RSといった名機も存在した。今でもNIKONOS-RSなどは希少価値が高く、相当のプレミアム製品となっている。
さすがにデジタルニコノスといった製品は現時点で存在していないが、水中ハウジングに関しては銀塩時代と同じメーカーが開発を行なっている。中でもデジタル一眼レフカメラ用に力を入れているのが、アンティスとSEA&SEAだ(イノンはメーカー純正のコンパクトデジタルカメラ用ハウジングに取り付けるコンバージョンレンズに力を入れているので、コンパクトカメラ派はチェックしてみるといい)。
アンティスとSEA&SEAは、それぞれに特色のあるメーカーで、アンティスは耐蝕アルミ合金鋳物を用いた軽量で高機能・コンパクトなハウジングを作ることで有名。ニコン用ハウジングしか発売していない。職人芸とも言えるボディギリギリのコンパクトな設計で、なおかつ組み上がった後の操作性もよく、ピックアップファインダー仕様などマニアックな装備も魅力だ。
一方のSEA&SEAは、ニコンに加えてキヤノンのEOS用にも水中ハウジングを開発。アクリル製ハウジングということもあってか、アンティス製のものよりも大柄でやや重い(水中でのマイナス浮力もSEA&SEA製の方が一般に大きい)。ただセッティングのしやすさは抜群で、クイックシューを用いて簡単にカメラ本体を正しくセット可能。操作性の面でも特に劣る部分はなく、アンティス製の水中ハウジングよりもやや安価に設定されている。
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オリンパスのE-300用の純正水中ハウジング「PT-E01」
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これら定番の2メーカーに加え、今年2月のPMAではオリンパスがE-300用の純正水中ハウジングを発表した。カメラを支えるハンドルや操作性の面などで、やや心配な面はあるが(筆者はまだ使ったことがない)、とにかく低価格なことが魅力。上記2つのメーカーの製品に比べると(比較対象にもよるが)ハウジングの価格差だけでE-300を購入し、さらに余る(ストロボ購入費用に充てられるだろう)ぐらいの差がある。
ただし今回は、テスト撮影に出かけた7月初旬のタイミングでオリンパスの純正ハウジングが間に合わず、果たしてサードパーティ製の本格水中ハウジングに匹敵する機能性があるのかどうかはわからずじまい。機会があれば、挑戦してみたいところだ。
結局、今回持ち込んだのはSEA&SEAのニコンD70用ハウジング「DX-D70」。なおSEA&SEAでは、キヤノンのEOS Kiss Digital N用とニコンD50用ハウジングの開発をスタートさせているという。これら新機種用のハウジングでは、ボディギリギリに成形した軽量コンパクトな設計を行なっているという。発売予定は10~11月との事である。
●レンズポート
レンズポートというのは水中ハウジングに取り付けるレンズ部を覆う部分のパーツだ。一眼レフカメラではレンズを交換することで画角やレンズの全長が変化するため、レンズポートを別売とし、使いたいレンズに合わせて異なるポートを取り付ける。通常、ポートはバヨネット式で簡単に脱着が可能となっている(ただしレンズポートの取り付けが甘く水没するケースが多いので細心の注意を払わなければならない)。
大まかにはマクロ用ポートとワイド用ドームポートがあり、鏡筒部分を延長するリングなどを組み合わせ、好みのレンズで使えるようにすることも可能。詳しいことは各ハウジングを選ぶ際に、使いたいレンズ用ポートを確認しておくようにしよう。
●レンズ
一般的にはワイド系は対角魚眼レンズ、マクロ系は標準あるいは100mm前後のマクロレンズを用いる。
ただしデジタル一眼レフカメラ用の対角魚眼レンズはニコンしか発売していない(SEA&SEAのEOS-1Ds用ハウジングを使えば通常の15mm魚眼を使えるが)。来年にはオリンパスがフォーサーズマウントの対角魚眼レンズを発売するとアナウンスしているが、当面はニコン製のデジタル一眼レフカメラが現実的な選択肢となるだろう。
もちろん、必ずしも対角魚眼レンズである必要はなく、超広角のズームレンズでも撮影できないわけではない。ただ対角魚眼レンズの視野の方が、水中の魚をデフォルメしてくれたり、より多くの小魚を捕らえてくれたりと絵的なおもしろさに勝る。
また、前回の記事でも説明したように、水中で浮遊物などに影響されずにきれいな写真を撮影しようとすると、どうしても被写体に近づかざるを得ない。このためワイドマクロ的な撮影となり、最短撮影距離の短い対角魚眼レンズの方が扱いやすい。
一方、マクロレンズは慣れないうちは50~60mm程度の標準マクロが、被写体を追いやすいため使いやすい。水の中は画角が焦点距離の1.33倍相当になることもあり、陸上とはやや感覚が異なる。慣れるまでは短め(といってもAPS-Cサイズセンサーでは90mm程度になるが)の方が失敗は少ない。
ある程度、経験を積んだ後に小さい魚の顔をアップで撮影したいとか、珊瑚の一部分を拡大して撮影したいといった場合には、100mm前後のマクロレンズを使うといい。ちなみに今回、座間味島でお世話になったSEA STEP DIVERSのオーナー、知久博志氏はタムロンの90mmマクロに2倍テレコンバータを入れて180mm相当とし、ニコンD70で撮影していた(つまり270mm相当のマクロ撮影を水中、手持ちで行なうことになる。
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銀塩カメラで撮影した105mmマクロの例。マクロ撮影の被写体としては定番のハゼ類は、近付くとスグに穴の中に逃げてしまい、おまけに数分間出てこないことが多い。ここでは105mmで撮影しているが、慣れればもう少し長いレンズの方が楽だ
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同じく銀塩カメラで撮影。こちらは105mmで撮影したガーデンイール。なかなか撮影させてもらえなかったが、このときは逃げられなかった
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さて、今回の撮影では魚眼ではなくAF-S DX Zoom-Nikkor ED 12-24mm F4Gをワイド撮影用、AF Nikkor 60mm F2.8をマクロ撮影用に使用。ボディはニコンD70sを使用した。筆者自身、最近は水中ではビデオ撮影が多く、スチルカメラは(コンパクトデジタルカメラを除けば)5年ぶりだったため、安全を見てやさしいレンズの選択をした。
●ストロボ
ストロボに関しての選び方や使い方のポイントは、コンパクトデジタルカメラ編で説明したことが、ほぼそのままデジタル一眼レフカメラでも当てはまる。異なるのは、内蔵ストロボを利用できない点。基本的に外部ストロボでの撮影となるが、注意したいのは接続するストロボは、水中ハウジングと同じメーカーにしなければならないことだ。
接続は防水接点に接続する専用のシンクロコードを用いる。2灯ストロボの場合は、途中で二股に分かれたコードで接続するが、接点に標準規格がないため、水中ハウジングを決めた時点で、どのメーカーのストロボを使うかが決まってくる。
また一眼レフ用水中ハウジングの場合、ストロボの固定方法は主に2種類ある。多関節のアームを用いて固定する方法はコンパクト機の場合と同じだが、加えてレンズポートに取り付けることも可能だ。
マクロ撮影しか行なわないのであれば、比較的小型のストロボを2灯、レンズポートに直接取り付け、マクロツインライトのようにセットして撮影する方が、ストロボの方向がずれて光が回らないといったトラブルを防げる。ただしワイドで撮影する場合には、画角全体に光を回しにくいため、ガイドナンバーが大きく照射角が広い大型ストロボをアームで自由に動かせるようにする。
今回はマクロとワイド、両方をセットし直しながら撮影するため、SEA&SEAの「YS-90 AUTO」を2灯、それぞれハウジングの左右のハンドル部にアームを介してセットした。
■ SEA&SEA製水中ハウジング「DX-D70」の準備
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DX-D70の前面。左右のハンドルでホールドする。ハンドル上部にはアームを取り付けられる構造に。ペンタ部上にもアクセサリシューのような溝が切られており、ターゲットを照らすランプなどを取り付けることができる。ここではワイド用のドームポートを装着してある
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ではD70sで利用可能な水中ハウジング「DX-D70」の実際の使い方を簡単に紹介しよう。
ごく簡単な特徴は既に触れているため、やや繰り返しになる面もあるが、DX-D70は前面のシェルがABS素材、背面シェルが透明なアクリル素材。D70/D70sに配置されているスイッチ・ボタン・ダイヤル類は、すべてハウジングに入れたままで操作が可能だ。またボタンに関しては、すべてマーキングが施されており、どのボタンが何の意味なのかが見た目でわかるようになっている。
大柄で重いのがやや難点で、ストロボ2灯を取り付けた時の浮力はマイナス1kg以上(つまり沈む)ある印象だ。つまり本機を持ってダイビングをすると、1kg分以上のウェイトを装着したのと同じ感覚となる。
しかし大柄な分、扱いはやさしく、レンズギアのかみ合わせやカメラ本体のセットは、スグに慣れることができるだろう。特にカメラ本体はクイックシューで固定する形式で、素早く正しい位置にセットすることが可能だ。レンズギアとはフォーカス、絞り、ズームなどのリングを回すためのギアで、レンズにギアをはめてからカメラにレンズを取り付け、カメラを水中ハウジングに取り付ける際に、ギアが正しくかみ合うようにセットする。
どんな水中ハウジングでも、一度慣れてしまえば比較的迷いなく使えるだろうが、サイズが大きくクイックシューを用いる分、DX-D70はわかりやすいだろう。
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右手の操作部。赤いレバーがシャッターボタン。その下にあるダイヤルノブでメイン電子ダイヤル(ニコンでは人差し指で操作するダイヤル)が回転する
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左手の操作部。ダイヤルノブの上側はフォーカスリング、下側は絞り環を操作。ただしレンズに装着するギアとの組み合わせで異なる機能になる場合も。たとえばズームレンズならいずれかのノブがズーム操作となる
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上部から見たところ。操作ボタンは液晶表示部のライト点灯ボタンを含め、すべて配置されている
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ハウジングを後部から見たところ。右上のダイヤルノブはサブ電子ダイヤルを回転させるためのもの。ファインダーは水中マスクを通して見ることを考慮してレンズで拡大される
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背面操作部を拡大したところ。すべての操作ボタンには機能が判別しやすいようにマーキングが施されている
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ハウジングのカバーを取り外したところ。ノブとギアの関係やストロボ発光用の端子類が見える。SEA&SEAのハウジングにはクイックシューの座がある
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カメラを装着する際にはクイックシューのアタッチメントとレンズ操作用のギアを取り付けておく
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カメラをハウジングにセット。操作ダイヤルの位置がハウジング上の表示と合うように気をつけながらセットする。クイックシューのレバーをロックし、アクセサリーシューにシンクロコードを取り付ける
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レンズポートの脱着はバヨネット式。ポート接合部のゴムシールなどに砂や塩が噛んでいないか気をつける。ポート接合部は水没の原因となりやすい場所でもある。右下にあるのはマクロ用レンズポート
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レンズを交換する場合は、カメラ本体を収める前にレンズポートを合わせておく必要があるが、これはバヨネット式で比較的簡単に取り付けできるだろう。
なおDX-D70の防水シールはゴムリングを所定の溝にはめておく方式。埋没式(ハウジングにシールが埋め込まれているもの)ではないため、頻繁に取り外して海水の塩や砂が噛んでいないか、グリスが不足していないかをチェックしやすいので、時間がある限り面倒でもチェックを怠らないようにしたい。
なお、グリスはあまり厚く塗りすぎると、むしろ水没の原因となる場合もあるので薄く塗る。またハウジングの合わせの部分だけでなく、ポートの接合部やシンクロコードの接点部分、あるいはストロボの電池蓋などにもシール用のリングがあるので、忘れずにメンテナンスをしよう。
こうした対策をきちんと行なった上で、塩や砂が噛むことがなければ、まず水没することはない。水没の原因のほとんどは、ユーザー自身のミスによるもので、ハウジング自体に問題があることはほとんどない。とはいえ、その中に入っているのは決して安い機材ではないから、初めて水中撮影するときには不安も大きいだろう。
銀塩時代であれば、ボディは安い中古のF-601やEOS Kissを使っておき、最初の潜行時に水没の兆候を確認できたら“レンズを上に向けて”すぐに浮上してしまうこともできたが、デジタル時代でボディ単価が上がってくると、そのいずれも犠牲にできない。水没時に購入費用が支給される水没保険もあるので、それらを使うというのも手だ(筆者も1度だけ、ビデオ機材でお世話になったことがある)。
さて、ハウジングにカメラを収めたら、次はストロボとアームを取り付ける。ポイントはシンクロコードが邪魔にならないよう、アームなどに絡めておくといい。
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今回はマクロポートに取り付けるストロボステーがなかったため、通常のアームで2灯のストロボを撮りつけた。マクロ撮影だけならば、アームではなくポートにストロボを付ける方が撮影しやすい
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アームはさまざまな形状になるので、光の当て方を考えながらいろいろな位置から光を当ててみよう
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■ まずはワイド撮影に挑戦
レンズにワイド系を使うか、それともマクロ系を使うかは、潜るポイントによって決めるものだが、南の島のリゾートなどでは、まずはワイド系の撮影から入る方がいいだろう。マクロ撮影はフォーカスやライティングにシビアな分、どうしても撮影に時間がかかる。じっくりと撮影できるあまり動かないポイントならばいいが、まずはワイド系で慣れてからの方がいいだろう。
D70sの場合、ISO感度は最低の200に設定。今回は自動調光機能を持つストロボを利用しているので、絞り優先、あるいはマニュアルモードで絞り値を設定し、その絞り値を1段分明るく設定するのが基本だ(ISO感度の違いによる補正)。
たとえばF8で撮影するならば、ストロボ側の絞り設定はF5.6に設定しておく。ただしコンパクト編でも書いたように、水中では被写体との距離や水の透明度に応じて調光が狂う場合がある。ややアンダーになる場合は、設定F値を大きい方に1段階ずらしてみるといい。
もっとも、個人的にはワイド系の撮影は被写体に対してストロボを正対させない場合も多く、自動調光ではかえって感覚が掴みにくいように感じた。実はオートストロボを水中で使うのは初めてだったのだが、完全マニュアルで発光させた方が混乱は少ないかもしれない。YS-90 AUTOはマニュアル調光モードがない(別モデルのYS-90DXはマニュアル)こともあり、慣れる頃には撮影期間が終了してしまった。
なおSEA&SEAではサンパックとの提携を発表しており、共同でストロボの次期モデルを開発中とか。サンパックのノウハウを取り込む形で、ニコンのiTTLやキヤノンのE-TTL2などのTTL調光、内蔵センサーによる自動調光、マニュアル調光の3モードを切り替えて使えるものになるという。各社最新のTTL調光に対応したストロボになれば、水中撮影の敷居も劇的に下がるだろう。実に楽しみな話だ。
さて、話が横道にそれたが、ホワイトバランスはデーライトに固定してRAWで記録。必要に応じて現像時にホワイトバランスを変更するつもりで。フォーカスはファインダーが見づらいこともあり、オートフォーカスでいい。
撮影後のポストプレビューはオンにしておき、ヒストグラムが表示されるモードに設定しておくことをオススメする。そのヒストグラムを見ながら、もし被写体が逃げていないなら、その場で微調整して再トライしてみよう。
ただ今回、10-22mmのDX Zoom Nikkorを使ったが、画角には不満はないものの、やはり最短焦点距離や絵の面白さでは対角魚眼の方が良さそうだ。ワイドマクロで迫ろうと思っても、さほど被写体に近付けず、ファインダーでも確認しづらいためピンぼけ写真を連発してしまった。せっかくニコンがDXフォーマット向けの対角魚眼レンズを提供しているのだから、これを使わない手はない。
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ワイド系で撮影する際は、少しアオリ気味に構えて上方までを画面の中に入れると、水面の模様が入り込んでくる。ここではワイドズームを使っているが、魚眼ならもう少し変わった構図も楽しめる
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洞窟から漏れる光を見上げ、自分の吐く泡と一緒に撮影。水中撮影では定番の手法だ
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今回はなかなかチャンスが無かったが、珊瑚の大きな根にストロボを当ててアオリぎみに太陽を入れて……というのも定番の撮影手法。ここではダイビングボートだが、水面と太陽の使い方は撮影時のひとつのポイント
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おなじみのカクレクマノミが住むイソギンチャクにストロボを当てて、背景を撮し込んだ。が、ピントが全く来ていない。実は少々寄りすぎてピントが合わなかったから。フィッシュアイならレンズ前3cmまで寄れるため、こうしたワイドマクロ的な使い方ももっとしやすくなるのだが
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■ 少し慣れたらマクロ撮影に
さてワイド撮影でカメラの操作に慣れてきたら、マクロ撮影に挑戦してみよう。もちろん、マクロ撮影ばかりのポイント、たとえば西伊豆・大瀬崎の湾内などなら、狙ったポイントに1時間、ずっと張り付いてマクロで遊ぶという手もある。
今回使用した60mmマクロは、ご存知のようにD70sでは画角的に90mm相当となる。この画角は10cm程度の魚全体を撮影するのにちょうどいい。もちろん、近づくことができるなら、もっと高倍率で撮影可能だが、ハゼやギンポなどすぐに隠れてしまう被写体の場合、ゆっくりと近付いても逃げられる確率が高い。
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ニセアカスジというエビの一種。こうしたエビはほとんど逃げないため、60mmマクロでも十分に寄って撮影できる
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マクロレンズで浅瀬だと、あまりすることがなくて暇なことも多いが、60mmぐらいの画角なら自然光で珊瑚に集まる小魚を撮影しても楽しい
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もし、もっと特定部分を拡大して撮影したいなら、90~105mm程度の中望遠マクロレンズを用い、必要に応じてテレコンバータを入れるといいだろう。被写体が大きい時は、逆にシャッターチャンスを逃がしたり、水の状態が悪い時にはワーキングディスタンスが広がって浮遊物が写り込んでしまうかもしれないが、思い切り拡大すると意外にも面白い世界が撮影できることがある。
今回、個人的な旅行でお世話になったSEA STEP DIVERSのオーナー知久氏が、90mmマクロ+テレコンでの写真を何枚か同氏のページで公開しているので参照して欲しい。DX Nikkorのフィッシュアイで撮影した作例もある。
カメラの設定はデーライト固定。マニュアルモードでシャッタースピード1/125秒、絞りF8~16程度にしておき、ストロボの調光で色や影を出すイメージで撮影するのがいい。自然光の影響を排除した方が、マクロ撮影ではよい結果が出る場合が多い。ストロボの動作モードも、寄れば寄るほど調光センサーの微妙な向きによって調光の具合が変化しやすいため、できれば(今回は選択したモデルの関係で調光センサーによるオートだったが)マニュアルモードかTTLで撮影したい。
しかし個人的には今回はマクロ撮影はほとんどダメダメ。久々の撮影とはいえ、情けない限り。いつかリベンジに出かけなければ。
■ 奥の深さはそのままに楽しみが増えたデジタルカメラによる水中撮影
前出の知久氏にデジタル化で何が変化したか? と訊いてみたところ、感度が上がったことによる自由度、その場でプレビュー、自ら上がればスグにチェックできることによるフィードバックの早さ、それに撮影枚数の増加の3つを挙げた。これは筆者も同感。
かつて水中撮影は独特の色彩を強調するため、ISO50の富士写真フイルム・ベルビアを使うことが多かった。現在はISO100のプロビアやベルビア100を使うことが多いようだが、D70/D70sの最低感度はISO200。ほとんどのデジタル一眼レフカメラは、ISO200で不満のない絵を出してくれる。同じ絞りならストロボのバッテリを節約できるし、チャージサイクルも速くなる。逆に同じ発光量で撮影するなら、より絞り込んで被写界深度を稼ぐこともでき、撮影の幅が広がる。
また撮影結果のフィードバックを素早くかけられるため、撮影者自身がその場で反省して次のショットに活かせる点も魅力だろう。水中ではなかなかゆっくりと撮影する機会や余裕を持てないという人でも、ダイビングを終えてその晩にでも確認できれば、上達は早いに違いない。銀塩時代はそのサイクルが極端に長く、なかなか上達しないことにいらいらして、やめてしまうケースも多かったようだが、デジタルならばもっと楽しいものになるだろう。
最後に撮影枚数の増加。銀塩時代は36枚撮影してしまえばそこで終わり。逆に半分ぐらいしか撮影していなかったとしても、次のダイビングの時に不足しないようにと考えると、フィルムを交換せざるを得ない。この不自由さから解放されるだけでも、大いに水中撮影の敷居が下がったような気がする。
これらの組み合わせで、奥の深さはそのままに上達する楽しみ、その日のうちに一緒に潜っている仲間と写真でダイビングを振り返る楽しみなど、より撮影を楽しむ幅が広がった。機材の高価さというネックはあるが、それを除けば以前よりもずっと敷居の低い趣味になってきたように思う。
最後に今回使用したSEA&SEAの機材について。
一眼レフ用水中ハウジングと言えばアンティスのNexusというイメージが強かったが、実際に使ってみるとセッティングの容易さという面で、SEA&SEAのハウジングにも強い魅力を感じた。扱いやすさではもっともよいのではないだろうか。ハウジングの操作系もわかりやすく、使いやすい。
ただストロボに関してはやや古さを感じる。せめてマニュアルと調光センサーによるオート撮影を切り替えて使えるといいのだが……。しかし互換ストロボで実績のあるサンパックと共同開発する新型のTTL水中ストロボが登場すれば、そうした不満も一掃されるだろう。登場は今年の晩秋から初冬になるとのこと。水中でのデジタル一眼レフカメラ撮影の敷居を、さらに下げてくれることを期待したい。
■ URL
SEA&SEA
http://www.seaandsea.co.jp/
SEA STEP DIVERS
http://www.f5.dion.ne.jp/~seastep/
ニコン
http://www.nikon.co.jp/
2005/08/25 00:47
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