デジカメ Watch

【伊達淳一のデジタルでいこう!】キヤノンIXY DIGITAL 2000 ISでデジスコに挑戦!

Reported by 伊達 淳一

 今年3月にオリンパスSP-550UZで人生初のカワセミを撮影して以来、“あのブルーのキレイな鳥をアップで撮りたい!”と、ゴーヨン(キヤノンEF500mm F4L IS USM)まで買って意気込んだものの、ボクが通うフィールドでは1.4倍のテレコンをかませてもカワセミのド・アップを撮るにはまだまだ望遠不足。もっと寄って撮影できればいいのだけれど、よほどカワセミの機嫌がいいときでないと寄らせてはもらえないし、ゴーヨンのように白い巨砲を抱えていてはカワセミでなくても不審がって逃げてしまう。

 となると、残る手段は“デジスコ”しかない。デジスコとは、フィールドスコープをテレコン代わりに超望遠で撮影する方法で、フィールドスコープの接眼レンズ(アイピース)から見える像(虚像)をコンパクトデジカメで撮影することで、なんと1,000mmから3,000mm相当の超望遠で撮影できるのが特徴だ。

 ただ、周囲をケラレず撮影できるコンパクトデジカメはかなり限られていて、ズームの高倍率化に伴い、年々デジスコ向きのデジカメは減ってきた。それに、画素数が増加したことで、確かに低感度撮影時の細部描写力は向上しているが、わずかなピンぼけやブレ、収差に伴う像の甘さが必要以上に強調されてしまい、おまけに高感度画質や連写スピード、連続撮影枚数はジリジリと低下、2~3年前に比べると歩留まりが悪くなり、(究極の描写にこだわると)難易度が増している感じだ。

 それに、デジスコは安上がりな撮影法だと思われているが、ゼロから撮影システムを組み上げていくと、結構な値段になってしまう。ボクが購入したコーワProminar TSN-774は、国産フィールドスコープのなかでは中堅機種だが、それでもスコープ単体の実売は13万円台半ば、これにアイピースやカメラを接続するためのアダプタやブラケット、照準器、三脚やビデオ雲台、そして、コンパクトデジカメやメモリーカードが必要となるので、どんなに安く見積もっても一式20数万円はかかる計算だ。キヤノンEOS 40Dにゴーヨンを組み合わせた値段よりは安いものの、デジイチ+超望遠レンズなら野鳥以外にもスポーツや戦闘機、飛行機、動物などさまざまな被写体に対応できるのに対し、デジスコシステムだと撮れる被写体が限定されるし、他につぶしも効きにくいのが難点。また、デジイチやその交換レンズなら、飽き足り持て余したりしたら中古カメラ店に売り飛ばせばそこそこのお金にはなるが、デジスコだと知人に譲ったりインターネットオークションにかけるなど、自分で売却先を探すしかない。


 さらに、デジスコは、“止まりモノ”には強いが、“動きモノ”、“飛びモノ”の撮影はむずかしい。デジスコ撮影は、基本的にフィールドスコープ側を手動でピント調節する必要があり、しかも、コンパクトデジカメは高感度画質が悪く、ISO80もしくはISO100での撮影が多くなるため、1,000mmを超える超望遠撮影なのに、シャッタースピードは1/60秒とか1/30秒、場合によっては1/8秒を切るシチュエーションも珍しくない。ミラーショック、シャッターショックがほとんどないコンパクトデジカメではあるが、これだけのスローシャッターともなれば被写体ブレは必至。だから、被写体にピントを合わせたらひたすら連写して、運良くブレていないカットを後から選ぶという撮影方法になる。

 デジスコの達人ともなると、照準器と液晶モニターを両眼視しながら被写体に追いながら少しずつピントをズラしながら連写するという離れ業で、動きモノや飛びモノも撮れるそうだが、それでもうまく撮れるのは1,000枚に1枚とか5,000枚に1枚とか、気が遠くなるような話。

 そんなわけで、まずはデジスコではなく、“デジイチ+超望遠レンズ”という組み合わせをチョイスし、それなりにカワセミの子どもが親に餌をねだるシーンなども撮影できたのだが、やはり“カワセミをド・アップで撮りたい!”という欲求は満たせず、背に腹は代えられず、禁断のデジスコの世界に足を踏み入れることとなったのだ。


デジスコ・システムが完成

これが、ボクのデジスコ・システム。コーワProminar TSN-774にキヤノンIXY DIGITAL 2000 ISという、これから定番となりそうな組み合わせで、初デジスコにチャレンジ
 で、問題は、フィールドスコープと組み合わせるコンパクトデジカメの選択だ。単なる個人的趣味であれば、デジスコ用としては定評の高い“ソニー サイバーショット DSC-W7”や“キヤノンPowerShot S80”を持っているのでこれらを使えばいいのだが、すでに生産中止となっている旧機種でデジスコしても、記事のネタとしては成立しない。どうせなら、出たばかりの新製品のほうが記事のネタになる。

 デジカメ・ドットコムが運営する“でじすこや( http://www.digiscoshop.com/ )”のブログを見ると、キヤノンIXY DIGITAL 2000 IS用のカメラブラケット(BR-IXYsu2)の先行品を先着10名に販売するという。早速でじすこやに電話して、2000 IS用のブラケットを予約。9月下旬に入荷の連絡を受けたので、でじすこやに行って、ブラケットを取り付けてもらった。IXY DIGITAL 2000 ISはボディが曲面になっているので、熟練者でないと光軸合わせがむずかしく、お店にカメラを送り取り付けてもらうのが基本になっているのだが、“でじすこや”があるのが割と家の近所だったりするので、ちょっと恐かったけど(なにしろ、トップページに「スコープ+デジタル一眼レフはお勧めしていません!」と宣言しているショップだからね。でも、スタッフの皆さんに暖かく迎えてもらえました)、直接お店に行って取り付けてもらった。

 カメラブラケットやカメラアダプターの値段が結構高いというのも、ボクがデジスコをすんなりと始められなかった理由のひとつだが、BR-IXYsu2を実際に手にしてみると、確かに質が高く、堅牢な作りであることがわかる。それほど数は出ないニッチな商品なので、どうしてもこのくらいの価格(26,500円)になってしまうのも納得だし、とてもこのクォリティのものは自作できない。こうしてブラケットを提供してもらえるだけでもありがたいと感謝するべきか。


コーワというのは、ケロちゃん&コロちゃんで有名なあの薬剤メーカーのコーワだが、その昔には、コーワシックスなどフィルムカメラも製造していた由緒正しき光学機器メーカーでもあるのだ
IXY DIGITAL 2000 ISをスコープに取り付けるため、デジスコ・ドットコムのカメラブラケットBR-IXYsu2の先行品を使用、10月下旬には量産品が発売される予定だ。照準器や液晶フードも、デジスコ・ドットコム製品で固めているが、カメラアダプターはコーワ純正

 こうした専用のカメラアダプターではなく、コーワのユニバーサルカメラアダプターTSN-DA4を使えば、いろいろなデジタルカメラを取っ替え引っかえ付け替えて楽しむことができるので、汎用性という点ではDA4のほうが便利だ。ただ、撮影を始める前には光軸を調整する必要があるし、バッテリーやメモリカードのスロットが底部にある機種は、バッテリーやメモリカードを交換する際にいちいちカメラを取り外しては付け直し、光軸を調整し直す手間がかかる。それを考えると、やはり専用のカメラブラケットのほうが快適にセッティングできるし、光軸がズレているという失敗もない。

 本当は、ソニー サイバーショット DSC-W7のように、カメラ本体にしっかりとしたアダプター装着用の溝があるのが理想だけど、それでもケーブルレリーズを付ける必要があるので、なんらかのブラケットは必要となる。どこかのメーカーでデジスコでの使用を重視した究極のコンパクトデジカメを作ってくれないものだろうか? 撮像素子サイズは1/1.7型クラス、光学3倍程度のズーム倍率で、ズームに伴うレンズ鏡胴の伸縮が少なく、2~3枚/秒で無限連写でき、AF測距点は自由に移動、もしくは任意選択可能、液晶モニターは23万ピクセル以上、AV端子かUSB端子をケーブルレリーズ端子としてメニュー設定で切り換えられる。できれば、コンバージョンレンズ等を装着する溝も装備していればバンバンザイなんだけどね。もういいかげん、画素数アップによる付加価値向上も頭打ちになってきているだけに、2~3年のスパンで売り続けられる息の長い製品を作ってもらいたいものだ。

 少々話が脱線してしまったけれども、最終的に完成したボクのデジスコシステムは、


  • スコープ:コーワProminar TSN-774(対物77mm径XDレンズ搭載)
  • アイピース:コーワTE-17W(30倍ワイド)
  • デジタルカメラアダプター:コーワTSN-DA10
  • アダプターリング:コーワTSN-AR750
  • カメラブラケット:デジスコ・ドットコムBR-IXYsu2
  • カメラ:キヤノンIXY DIGITAL 2000 IS
  • 照準器:デジスコ・ドットコムDOS-FSB1
  • 液晶フード:デジスコ・ドットコム 究具03
  • レリーズ:デジスコ・ドットコム455US
  • 雲台:ジッツォ ビデオ雲台G2380
  • 三脚:ジッツォ レベリング三脚GT2540LVL


……という、とてつもなく贅沢な組み合わせになってしまった。う~ん、トータルでかかった金額は計算しないほうが、精神衛生上好ましいかも(苦笑)。ただ、さらにこの世界にはまると、デジスコ・ドットコムのジンバル雲台、究具01が欲しくなるのが確実なだけに、さらに傷口は広がりそうな悪寒だ……。


左側にあるのが照準器。枠の中にLEDの赤いドットが表示される。フィールドスコープはあまりに高倍率で視野が狭いので、こうした照準器を併用することですばやく被写体を画面に捉えることができる。液晶モニターには、ルーペ付きのフードを装着してあり、慣れてくると、照準器と液晶モニターの像を両眼視しながら、被写体をフォロー撮影することも可能となる(らしい) 専用ブラケット、BR-IXYsu2を装着したIXY DIGITAL 2000 IS。上下からガッチリ止められているので、六角レンチがないと取り外せないし、一度、取り外すと光軸を合わせ直すのが大変なので、通常撮影はあきらめて、デジスコ専用にしてしまうのが賢明。ソニー サイバーショット W200用のブラケットなら、コインでネジを緩めるだけで着脱可能なので、デジスコだけでなく通常の撮影にも使いたい場合はW200が向いている。なお、レンズ周りに黒いテープを貼っているのは、面間反射を抑えるため。これはボクの工夫だ

フィールドスコープのアイピースにデジカメを接続するには、カメラアダプター(アイピース部分に装着)、アダプターリング(ネジ径を変換する)、コンバージョンレンズアダプター(コンバージョンレンズ装着用のアダプター)、カメラブラケット(コンバージョンレンズ装着用のネジが設けられていない機種に各種アダプターを取り付けられるようにする)を使用する BR-IXYsu2を装着したIXY DIGITAL 2000ISの背面部。レリーズ装着用のステーがあるので、シャッターボタンを指で押すのはやりにくい。液晶モニターの周りには、遮光フード用の枠が両面テープで止められている。せっかくスタイリッシュなIXY DIGITALが見るも無惨な姿に! 1/1.7型クラスのCCDを搭載したPowerShotがデジスコにマッチしていれば、無理にIXY DIGITALを使う必要もないんだけどね。残念ながら現行のPowerShotシリーズは、周辺がケラレてしまうので、デジスコには不向きだ

IXY DIGITAL中、もっとも使いやすい2000 IS

IXY DIGITAL 2000 IS
 さて、組み上がったデジスコ・システムを抱え、いつものカワセミ・ポイントにいざ出撃! 30倍のアイピースを装着しているので、36mm相当のワイド端の画角は、36mmの30倍の焦点距離、つまり1,080mm相当。テレ端までズームするとなんと3,990mm相当の画角になる。一眼レフではちょっと考えられない超望遠の世界が堪能できる。これこそがデジスコの魅力だ。

 ピント合わせも想像していたよりも楽だ。まず、液晶モニターのライブビューを見ながら、フィールドスコープ側でピントを合わせ(もちろん手動だ)、ケーブルレリーズを使ってカメラのシャッターボタンをそっと半押しする。すると、カメラのAFが働いて、ピントを追い込んでくれる。測距点を自動選択にしておくと、意図しない部分にピントが合ってしまうことが多いので、できるだけ測距点はスポットAFにしておくのが基本。IXY DIGITAL 2000 ISは、従来よりもAFフレームを小さくできるようになったので、狙ったポイントにしっかりとピントを合わせられるが、AFフレームが中央固定なのは不満。せっかく多点測距ができるのだから、備わっているAFフレームを任意で選んでスポットAFできるようにしてほしいところだ。

 ただ、IXY DIGITAL 1000と比べると、IXY DIGITAL 2000 ISは、さまざまな部分で操作性が良くなっている。まず、再生ボタンが新設され、いちいち撮影モードレバーを動かす必要がなくなり、シャッターボタン半押しで即座に撮影モードに復帰できる。これはかなり快適だ。また、イージープリントボタンに、露出補正やホワイトバランスなどあらかじめ指定された8つの機能のうち1つを登録できるようになっていて、ボクは迷わず“露出補正”を割り当てた。

 さらに、かなり裏技的な操作を要求されるがAE-LとAF-Lも可能で、シャッターボタン半押しでピントを合わせた状態で、十字キーを上方向に押せばAE-L、左方向に押せばAF-Lがかかる。シャッターを切ってもロックは解除されないので、フォールドスコープでピントをずらしながらシャッターを切る、なんてことも可能だが、ズームやメニュー操作(FUNCボタン内の機能設定はOK)、マクロモードや再生モード切り換え、オートパワーオフが働いた際などには、ロックが解除される仕様だ。なんとも苦し紛れな操作ではあるが、ないよりは100倍マシだ。待望の光学手ブレ補正も搭載され(デジスコ撮影では手ブレ補正OFFで使うのが無難だが……)、これまでのIXY DIGITALの中で、もっとも使いやすく、使いこなしがいがあるモデルに仕上がっていると思う。


IXY DIGITAL 2000ISは、絞りやシャッタースピードを任意にコントロールしたり、MF撮影はできないが、シャッターボタン半押し状態で上方向キーを押すとAE-L、左方向キーを押すとAF-Lがかけられるようになった イージーダイレクトボタンにいくつかの機能を割り当てることもできるようになった。ボクは迷わず露出補正を割り当てた。これは非常に便利だ。また、再生ボタンが新設されたことで、撮影と再生の切り換えが非常に快適になった。この2つの改良だけでも、IXY DIGITAL 1000よりも2000 ISのほうが断然使いやすくなっている

デジスコ撮影では、フィールドスコープ側のピントを手動で合わせ、後はカメラのAF任せとなるが、AFフレームが大きいと予期しない場所にピントが合ってしまうことも多い。IXY DIGITAL 2000 ISは、AFフレームサイズを「小」にできるので、従来よりも狙った場所にピントを合わせやすくなっている。ただ、AFフレームが中央固定のみというのは不満。デジスコ撮影では、とてもシャッター半押しでAFロックをかけている余裕がないからだ せっかく搭載された光学式手ブレ補正だが、デジスコ撮影では「切」で撮影したほうが無難。フィールドスコープとの光軸がずれてしまう可能性もあるからだ

IXY DIGITAL 2000 ISの再生画面。ちゃんと絞りやシャッタースピード、ISO感度も確認できる 全体表示を見ながら部分アップもできる。レックビューでも同様の表示が可能だが、デジスコ撮影ではレックビュー(画像の確認)は切っておくことが多い

拡大再生時にFUNC/SETボタンを押して、左右の方向キーを押すと、拡大再生したまま、前後にコマ送りができる。ピンぼけ、ブレチェックには便利だ

 気になる高感度画質も、画素数が増えているにもかかわらず、従来のIXY DIGITAL 1000よりもわずかに良くなっている。両機種ともISO200まではカラーノイズリダクションはかかっていないようで、背景のグレーにカラーノイズが浮いているが、ピクセル等倍で比べてみてもIXY DGITAL 2000 ISのほうがカラーノイズはおとなしい。また、ISO400以上になると、カラーノイズリダクションがしっかりかかるので、勝負は輝度ノイズの出方になるが、これも2000 ISのほうがザラツキが少なく、彩度は下がってくるが、解像感の喪失は少なめだ。

 とはいえ、鳥撮りに使えるのはやはりISO80と100。ちょっと妥協してISO200までか。ISO80や100に比べるとわずかにキレが悪くなってしまうが、後処理でカラーノイズを低減すれば、なんとか実用範囲になると思う。参考までに、デジスコ用として定評の高いキヤノンPowerShot S80でも感度比較カットを撮影してみたが、ISO100でも結構カラーノイズが浮いていて、ISO200、400になるとかなり目立つ。現在の技術で1/1.8型800万画素CCDを作り、DiGIC IIIで信号処理すれば、もっとすばらしい高感度画質が得られるのだろうが、残念ながら1,200万画素のIXY DIGITAL 2000 ISのほうが画質は上のようだ。ただ、S80は、AFフレームを自由に移動できるし、さまざまな撮影機能も搭載されているのが魅力。残念ながら今のPowerShotシリーズには、デジスコにマッチした機種が存在しないのが、デジスコ界にとっての不幸だ。


ISO感度別画質比較

 ISO200、400で撮影できたら、デジスコ撮影の歩留まりもグンと向上する。しかし、現実は最低感度で撮影しないと、鳥の羽根や羽毛がカリッと描写できないし、背景が濃いめのグリーンや茶色だとノイズが目立って作品性を損ねてしまう。最近は、画像処理エンジンでノイズリダクションを行なうことで、高感度撮影時の輝度ノイズやカラーノイズの低減を図っている機種が増えているので、パッと見た目のザラザラ感は目立ちにくくなってきてはいるが、その代償として、ローコントラスト部分の解像感が喪失したり、シャドー部の彩度が極端に下がったりして、なんとも不自然な描写に陥ってしまうケースが極めて多い。

 はたして、画素数が1,200万画素に増えたIXY DIGITAL 2000ISは、解像感や彩度を損ねることなく、高感度を実現できているのか? 従来のIXY DIGITAL 1000だけでなく、デジスコに適したコンパクトデジカメとして定評の高いキヤノンPowerShot S80も含め、同一シーンをISO感度を変えて撮り比べてみた。背景のグレーやカラーチャートのノイズだけでなく、人形の顔の布目がどれだけしっかり描写されているかが、真の高感度画質を見極めるポイントだ。

※作例のリンク先のファイルは撮影した画像です。クリックすると、等倍の画像を別ウィンドウで開きます。

IXY DIGITAL 2000IS


ISO80 ISO100 ISO200

ISO400
ISO800
ISO1600

ISO3200(シーンモード)

IXY DIGITAL 1000


ISO80
ISO100
ISO200

ISO400
ISO800
ISO1600

ISO3200(シーンモード)

PowerShot S80


ISO50
ISO100

ISO200
ISO400

マイカラーモードによる発色の変化

 カワセミのブルーや背景のグリーンをより鮮やかに再現したいときには、“マイカラー”をポジフィルムカラーにするのが効果的。ただ、比較作例を見ると、青空のグラデーションが乱れ、ノイズも目立ってしまうので、そのあたりを十分把握して使う必要がありそうだ。


マイカラー切
くっきりカラー

すっきりカラー
ポジフィルムカラー

鮮やかブルー
鮮やかグリーン

 ボクがコンパクトデジカメによる正攻法のデジスコを始めて、撮影に出たのはまだ正味6日間なので、デジスコの達人から見ればまだまだつたない作例で申し訳ないが、それでも想像していたよりも写りが良いので正直驚いている。ピクセル等倍で厳しくチェックすれば、少しピントが甘かったり微妙にブレているカットもあるが、A4フチなしにプリントして鑑賞する分には、なんとか許容範囲ではないだろうか? 少なくとも、デジイチでこれほどの超望遠をこれだけシャープに写すのは極めて困難だ。それに、デジイチでシャッターを切ると、シャッター音に驚いて一瞬鳥がビクッとするが、コンパクトデジカメを使ったデジスコなら撮影者本人以外はほとんどシャッター音が聞こえないので、連写し続けても鳥を驚かすことはない。鳥にストレスを与えない撮影方法だと思う。

 ただし、撮影者にはストレスがかかりまくりだ(笑)。噂には聞いていたが、デジスコ撮影はかなり歩留まりが悪い。さすがに1,000枚撮影して1枚というほど悪くはないが、1,000mmを超える超望遠撮影でシャッタースピードが1/100秒を下回るのはザラ。ちょっと暗いと1/8秒、1/4秒などという被写体ブレなしに撮れるのが奇跡に思えるほどのスローシャッターになってしまうこともあり、条件によっては撮影したカットが全滅ということも珍しくない。

 とにかく被写体をど真ん中に入れ(余裕があったらAF-Lをかけて構図を考え)、後は祈る気持ちでケーブルレリーズを押しっぱなしにして連写し続けるしかない。デジイチだったら即座に感度をISO800や1600に増感して撮影するところだが、コンパクトデジカメなのでISO80もしくはISO100で頑張るしかない。最近、コンパクトデジカメの高感度画質に手厳しいのも、高感度でデジスコ撮影できるカメラの登場を願ってやまないからだったりする。

 そんなわけで、ほんの3~4時間デジスコ撮影に出かけ、1,000カット以上シャッターを切ることも珍しくなく、2GBのSDメモリーカードではアッという間にいっぱいになってしまうし、バッテリーも途中でダウンするので予備バッテリーが2本は必要だ。そして、本当に大変なのは、家に帰ってからだ。1,000枚以上撮影したカットをチェックしながら、ブレ、ピンぼけのカットは即座に削除し、そこそこ見られるものだけをHDDに保存、残ったものから納得できるカットをセレクトしていくことになる。これが結構疲れる作業だ。


デジスコ作例

※すべてTE-17W使用。測光モードは中央重点平均です。
※画像下の撮影データは、合成焦点距離/F値/シャッタースピード/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランスです。


1,920mm相当 / F4 / 1/160秒 / +0.3EV / ISO80 / 太陽光
2,730mm相当 / F4.5 / 1/60秒 / -0.7EV / ISO100 / 太陽光

1,350mm相当 / F3.2 / 1/500秒 / -0.7EV / ISO100 / 太陽光
1,620mm相当 / F3.5 / 1/125秒 / -0.7EV / ISO80 / 太陽光

2,280mm相当 / F4 / 1/25秒 / -0.3EV / ISO100 / 太陽光
2,280mm相当 / F4 / 1/50秒 / 0EV / ISO100 / 太陽光

1,080mm相当 / F2.8 / 1/80秒 / 0EV / ISO100 / 太陽光
3,990mm相当 / F5.8 / 1/30秒 / -0.7EV / ISO200 / 太陽光

1,920mm相当 / F4 / 1/80秒 / -0.3EV / ISO100 / 太陽光
2,280mm相当 / F4 / 1/25秒 / -0.7EV / ISO100 / 太陽光

3,300mm相当 / F5 / 1/40秒 / +1.7EV / ISO100 / 太陽光
2,730mm相当 / F4.5 / 1/250秒 / -1EV / ISO80 / オート

1,080mm相当 / F2.8 / 1/160秒 / -1EV / ISO80 / オート
1,620mm相当 / F3.5 / 1/500秒 / -1EV / ISO80 / オート

2,730mm相当 / F4.5 / 1/100秒 / -0.3EV / ISO80 / 太陽光
1,620mm相当 / F3.5 / 1/60秒 / -1EV / ISO80 / オート

1,350mm相当 / F3.2 / 1/40秒 / -1EV / ISO80 / オート
2,280mm相当 / F4 / 1/25秒 / -1EV / ISO100 / オート

2,730mm相当 / F4.5 / 1/13秒 / 0EV / ISO100 / オート
2,730mm相当 / F4.5 / 1/13秒 / +0.3EV / ISO100 / オート

2,280mm相当 / F4 / 1/25秒 / +0.3EV / ISO100 / オート 2,730mm相当 / F4.5 / 1/50秒 / -0.7EV / ISO80 / オート

2,730mm相当 / F4.5 / 1/125秒 / -1EV / ISO80 / 太陽光
1,080mm相当 / F2.8 / 1/40秒 / -0.7EV / ISO80 / オート

2,730mm相当 / F4.5 / 1/80秒 / +1.7EV / ISO80 / オート
2,730mm相当 / F4.5 / 1/10秒 / 0EV / ISO80 / オート

2,730mm相当 / F4.5 / 1/250秒 / -0.3EV / ISO80 / オート 2,730mm相当 / F4.5 / 1/125秒 / 0EV / ISO80 / オート

1,080mm相当 / F2.8 / 1/60秒 / -1EV / ISO80 / オート
2,280mm相当 / F4 / 1/15秒 / -1EV / ISO80 / オート

1,080mm相当 / F2.8 / 1/125秒 / -1EV / ISO80 / オート
1,080mm相当 / F2.8 / 1/125秒 / -1EV / ISO80 / オート

1,920mm相当 / F4 / 1/25秒 / +0.3EV / ISO80 / 太陽光
2,730mm相当 / F4.5 / 1/10秒 / 0EV / ISO80 / 太陽光

1,620mm相当 / F3.5 / 1/30秒 / 0EV / ISO80 / 太陽光
1,080mm相当 / F2.8 / 1/100秒 / -0.3EV / ISO80 / 太陽光

2,280mm相当 / F4 / 1/30秒 / -0.3EV / ISO80 / 太陽光
1,080mm相当 / F2.8 / 1/100秒 / -0.3EV / ISO80 / 太陽光

1,920mm相当 / F4 / 1/15秒 / -0.7EV / ISO100 / 太陽光
2,280mm相当 / F4 / 1/13秒 / -1EV / ISO100 / 太陽光

1,620mm相当 / F3.5 / 1/30秒 / -1EV / ISO100 / 太陽光
1,920mm相当 / F4 / 1/15秒 / -1EV / ISO100 / 太陽光

1,620mm相当 / F3.5 / 1/10秒 / -1EV / ISO100 / 太陽光 1,920mm相当 / F4 / 1/8秒 / -0.7EV / ISO100 / 太陽光

2,730mm相当 / F4.5 / 1/3秒 / -0.3EV / ISO100 / 太陽光

全ズーム域の画質比較

 IXY DIGITAL 2000ISには、36~133mm(35mm判換算)、F2.8~5.8相当の光学3.7倍ズームが装備されている。ただし、ズームは無段階に変動するのではなく、ワイド端からテレ端まで全部で8つのポジションで停止する。

 デジスコでは、使用するアイピースやアダプター、ブラケットによってケラレや周辺減光が生じることがあり、テレ側にズームするにつれ描写も甘くなってくる。そのため、ズームワイド端から何ステップ目までが、自分にとって実用となる画質を得られるのかをあらかじめテストしておき、本番の撮影でも今何ステップ目にズームしているのかを把握しながら撮影するのが基本だ。

 そこで、2000 ISのズーム域の全ステップにおける焦点距離、開放F値、2000 IS内蔵レンズの素のままの画質をチェックしてみた。なお、手ブレ補正はOFFにして撮影している。4ステップ目と5ステップ目以外は開放F値でズームがどのポジションになっているかを把握できる。

※すべてTE-17W使用、測光モードは中央重点平均です。
※画像下のデータはステップ/焦点距離/開放F値です。


1ステップ目 / 7.700mm(36mm相当) / F2.8(このシーンではF8に絞られている)
2ステップ目 / 9.572mm(45mm相当) / F3.2(このシーンではF9に絞られている)
3ステップ目 / 11.454mm(54mm相当) / F3.5(このシーンではF10に絞られている)

4ステップ目 / 13.683mm(64mm相当) / F4
5ステップ目 / 16.293mm(76mm相当) / F4
6ステップ目 / 19.548mm(91mm相当) / F4.5

7ステップ目 / 23.495mm(110mm相当) / F5
8ステップ目 / 28.500mm(133mm相当) / F5.8

左上が、20-40倍のズームアイピースTE-10Z(63,000円)、右下が30倍ワイドTE-17W(42,000円)
 デジスコなら2,000mm、3,000mmの超望遠でもシャープに写せる、と思っていたが、実際にデジスコで撮影してみると、テレ側にズームしていくとだんだん描写が甘くなってくる。考えてみれば、フィールドスコープの虚像をどんどん部分アップしていくのと同じなので、それだけ収差も拡大されるわけだし、テレ側にズームするとデジカメのレンズの開放F値も暗くなり、それだけぶれやすくもなる。また、被写界深度も浅くなるので、わずかなピントのずれや収差の影響も大きく受けることになる。テレ側にズームして撮影すると、こうした複数の要素が複合して、描写が甘くなってしまうようだ。

 ということは、カメラ側でズームせずに、アイピースをもっと高倍率なものに変更すれば、より超望遠でも高画質が得られるはずだ。そこで、コーワからTE-10Zという20~60倍のズームアイピースを借りて、試してみることにした。

 結果はちょっと微妙な感じだ。やはり、アイピースも高倍率になってくると明るさが落ちてくるし、キレも悪くなってくる。それに、遠くを写すと大気の揺らぎの影響をモロに受け、同じピント位置で連写しているにもかかわらず、コマによって大きくボケてしまったり、部分的に不鮮明になってしまうことが多かった。もっと近くの被写体でテストするべきだったのかもしれないが、高倍率で撮影したいときは被写体も遠くにあることが多いので、やはり超望遠で撮影するにも限度があるようだ。40倍付近にセットし、カメラ側をズーム中域にして撮影すると、条件さえよければTE-17Wよりも望遠でシャープに写ることもあるが、TE-10Zの価格を考えるとちょっと二の足を踏んでしまう。45倍くらいの単焦点で広視野のアイピースをラインナップしてほしいところだ。現状では、TE-17Wでテレ側2段を捨てて撮影し(F値がF5や5.8にならないようにする)、それでも倍率が足らなければ、1,200万画素という画素数の多さを活かし、トリミングするのが賢明なようだ。

コーワTE-17W(30倍ワイド)


1ステップ目 / 1,080mm相当 2ステップ目 / 1,350mm相当
3ステップ目 / 1,620mm相当

4ステップ目 / 1,920mm相当
5ステップ目 / 2,280mm相当
6ステップ目 / 2,730mm相当

7ステップ目 / 3,300mm相当
8ステップ目 / 3,990mm相当

コーワTE-10Z(20-60倍ズーム)

20倍


1ステップ目 / 720mm相当
2ステップ目 / 900mm相当
3ステップ目 / 1,080mm相当

4ステップ目 / 1,280mm相当 5ステップ目 / 1,520mm相当 6ステップ目 / 1,820mm相当

7ステップ目 / 2,200mm相当
8ステップ目 / 2,660mm相当

30倍


1ステップ目 / 1,080mm相当
2ステップ目 / 1,350mm相当
3ステップ目 / 1,620mm相当

4ステップ目 / 1,920mm相当
5ステップ目 / 2,280mm相当
6ステップ目 / 2,730mm相当

7ステップ目 / 3,300mm相当
8ステップ目 / 3,990mm相当

40倍


1ステップ目 / 1,440mm相当
2ステップ目 / 1,800mm相当
3ステップ目 / 2,160mm相当

4ステップ目 / 2,560mm相当
5ステップ目 / 3,040mm相当
6ステップ目 / 3,640mm相当

7ステップ目 / 4,400mm相当
8ステップ目 / 5,320mm相当

50倍


1ステップ目 / 1,800mm相当
2ステップ目 / 2,250mm相当
3ステップ目 / 2,700mm相当

4ステップ目 / 3,200mm相当
5ステップ目 / 3,800mm相当
6ステップ目 / 4,550mm相当

7ステップ目 / 5,500mm相当
8ステップ目 / 6,650mm相当

60倍


1ステップ目 / 2,160mm相当
2ステップ目 / 2,700mm相当
3ステップ目 / 3,240mm相当

4ステップ目 / 3,840mm相当
5ステップ目 / 4,560mm相当
6ステップ目 / 5,460mm相当

7ステップ目 / 6,600mm相当
8ステップ目 / 7,980mm相当

TE-10Z使用使用時のデジスコ作例

※すべてTE-10Z使用、測光モードは中央重点平均です。
※画像下の撮影データは、合成焦点距離/F値/シャッタースピード/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランスです。


不明 / F4 / 1/30秒 / 0EV / ISO80 / 太陽光
不明 / F5 / 1/10秒 / 0EV / ISO80 / 太陽光

不明 / F4 / 1/60秒 / 0EV / ISO80 / 太陽光
不明 / F4 / 1/500秒 / -0.7EV / ISO80 / 太陽光


URL
  キヤノン
  http://canon.jp/
  製品情報
  http://cweb.canon.jp/camera/ixyd/2000is/

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伊達 淳一
1962年生まれ。千葉大学工学部画像工学科卒業。写真、ビデオカメラ、パソコン誌で カメラマンとして活動する一方、その専門知識を活かし、ライターとしても活躍。黎 明期からデジタルカメラを専門にし、カメラマンよりもライター業が多くなる。自ら も身銭を切ってデジカメを数多く購入しているヒトバシラーだ。ただし、鳥撮りに関 してはまだ半年。飛びモノが撮れるように日々精進中なり

2007/10/29 00:00
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