デジカメ Watch

沖縄で薄型防水デジカメ2機種を使ってみた

~「μ720SW」と「Optio W10」
Reported by 本誌:田中 真一郎

 デジタルカメラはメモリと電池残量さえあれば撮り続けられるうえ、本体も小型化しやすいので、フィルムカメラよりも水中撮影への障壁が低い。なので、多くのメーカーがオプションで防水ケースを用意し、水中撮影に対応したシーンモードを載せたりしている。

 また、本体に防水機能を備え、オプションなしで水中撮影が可能な機種も、いくつか発売されてきた。こうした製品は本格的な水中撮影には向かないものの、海水浴をはじめ、カメラが水をかぶりがちな状況でも気にせず撮影ができる。防水ケースの類を買うには安いコンパクトデジカメ1台分くらいの出費を強いられてしまうが、少ない投資で防水機能がほしいという向きにはうれしい製品だ。

 この3月に発売されたオリンパスの「μ720SW」と、ペンタックスの「Optio W10」も防水機能を備え、本体のみで水中撮影が可能なコンパクトデジカメだ。GW中に家族旅行で沖縄に行ってきたので、ついでにこの2台を試してみた。ここでは、防水機能を中心とした使い勝手を比べてみたい。

 なお、μ720SWの詳細については、ニュース記事や北村智史氏によるレビューを参考にされたい。

 また、Optio W10の詳細についてはニュース記事を参照していただきたい。W10のレビューは掲載していないが、前々機種の「Optio WP」の中村文夫氏によるレビューがあるほか、弊誌スタッフの折本がハワイで同機を試用した記事があるので、こちらもあわせて参照されたい。

 WPとW10の大きな違いは記録画素数、液晶モニターの大きさなど。また最高感度がISO800に引き上げられ、特定シーンモードでは顔認識AF&AEが可能になるなどの改良も施されている。


気軽に防水、だけど注意すべきことも

 2機種とも、初めて実物に触れると「これで防水なの?」と思うはずだ。小さな撮像素子(720SWは1/2.33型、W10は1/2.5型)と屈曲光学系を採用することで薄型のボディを実現していることを事前に知っていても、「防水」という文字から想像するような“ゴツさ”はこの2機種にはない。720SWに至っては、防水に加えて1.5mの高さから落としても撮影可能な耐衝撃性能まで備わっているのだが、外観からはにわかには信じられない。

 実際に持ち歩いた感じも、他の非防水デジカメとほとんど変わらない。同じ大きさ、重さの製品を持つなら防水機能があるにこしたことはないじゃないか、なんでどのデジカメも防水にならないんだ、と思ったりする。


このカットでは720SWのほうが大きく見えるが、720SWのほうが若干重く感じられるだけで、持った感じはどちらもそんなに変わらない。やわらかい曲線でデザインされたW10は手のなじみがよかった
ボタンの数は720SWが1つ多いだけで、大きさもあまり変わらないが、W10のほうがクリック感があり、操作しやすく感じられた。液晶モニターはどちらも2.5型で、同じように見やすい

 筆者自身、初めてこの2機種を水に漬けるときは勇気が必要だったし、水中で電源のON/OFFや各種設定、撮影が普通にできたときにはたいへん感動した。また旅行中には、この2台を持ったまま海やプールに入ろうとするときに、事情を知らない人に「カメラ大丈夫なの?」と問われる経験を何度もした。

 もっともひとくちに防水といっても、720SWやW10には本格的な防水ケースの代わりは務まらない。720SWの水中撮影は「水深3mまで、連続60分以内」、W10は「水深1.5mまで、連続30分以内」という制限がある。海水浴や川遊びなどのアウトドアスポーツ、ちょっとしたシュノーケリングには十分な性能だが「夢中で遊んでいて、気が付いたらカメラを持ったまま1時間以上水の中にいた」なんてことにならないように気をつけなければならない。

 また、電池室やメモリーカードスロット、各種端子を覆うカバーを開けてしまうと防水にならない。水中に持ち込む前にはこれらがしっかり締まっていることを確認する必要があるし、水中ではカバー類を開けないのはもちろん、カバー類が開いてしまうような衝撃を加えないように注意しなければならない。

 水から上がったあとも、手と本体をよく拭いてからカバーを開けないと、水が入ってしまう。水中での使用後はすぐに拭くように、習慣づけたい。さらに水中での使用後は、真水に数分間(W10は2~3分、720SWは10分程度)さらすというメンテナンスも必要になる。

 カバー類の防水パッキンが「消耗品」であることにも留意しておきたい。両機種とも、防水機能を維持するために、1年に1度のパッキン交換が推奨されている。どちらも交換は有料である。

 W10にはこのうえに「砂の上にカメラを直接置かないでください」という注意書きもある(ホームページの製品紹介には「砂浜やホコリの多い場所にカメラを置いたりしても大丈夫」と書いてあるのだけど……)。


W10は電池室、メモリカードスロット、USB/AV端子、電源端子を1枚のカバーで覆う。カバーの黒いパーツが防水パッキン 720SWは電池室+メモリカードスロットと、USB/AV端子+電源端子でカバーが分かれている。写真は電池室+メモリカードスロット部で、カバーの灰色のパーツが防水パッキン

“アップグレードパス”がある720SW、徹底してカジュアルなW10

 720SWもW10も、基本的に「防水コンパクトデジカメ」というくくりで語られることが多い。720SWのほうがやや防水性能が高く、耐衝撃性能も備えるという違いはあるが、違いはそれだけだろうか。

 筆者が使い比べた感想では、この2機種は「性格がまったく違う」といっていいほど異なるものだった。手短に言うなら、720SWは「より高度な防水機能を将来必要とする人向け」で、W10は「なーんにも考えないで気軽に撮りたい人向け」といったところだ。

 W10は外観もメニューも実にシンプルにできている。たとえばレンズには、レンズバリアはおろか、レンズキャップさえない。ただレンズがボディについているのだ(一番外側は保護ガラスになっているが)。これに不安を感じる人も多いようだが、実際にはそうそう傷は付かないし、むしろ「レンズバリアを開ける(キャップを取る)」という操作がないぶん、手軽で便利にさえ感じる。

 シーンモードは「MODE」ボタンを押して画面に一覧表示されるアイコンから選ぶのだけど、この中にはプログラムAEも入っていて、モードへの切り替えも簡単だ。メニューも「撮影」と「設定」の2種類だけで、それぞれ15項目ずつ、いずれも明快だ。

 好みのコマンドを割り当てられる「グリーンボタン」も秀逸なインターフェイスだ。露出補正やホワイトバランス、記録サイズ、シャープネスなど好みの設定機能を4つ割り当てることができる。筆者は露出補正、ホワイトバランス、感度、測光方式を割り当てた。世の中にはもっとカスタマイズの余地が広い製品もあるが、このカメラの使い方にはこれで十分と感じられた。

 一方720SWは、水中用のシーンモードが静止画だけで4種類もあったり(W10は「マーメイド」と「マーメイドムービー」だけ)、オプションで水深40mまで使用可能な防水ケースが用意されていたり、シーンモードによっては画素混合でISO2500の高感度撮影ができたりと、より高度な使い方もできる余地のあるカメラだ。こうした“懐の深さ”は同社製カメラ全般にある美点で、720SWもいかにもオリンパスらしい製品といえるだろう。

 ただしこれらの美点は裏返すと、煩雑でわかりにくいということにもなることがある。たとえば4つの水中用シーンモードは、どう使い分ければいいのかわかりにくい。ちなみにいくつかの水中用シーンモードでは「防水プロテクタを使用してください」と表示されるので、「これって防水デジカメじゃなかったのかよ」と驚かされる。実際には「水深3mより深いところで使うときは」という注釈が必要なのだ。


これは沖縄ではないが、豪雨の中で720SWで撮影した作例。普通のカメラなら取り出すのがはばかられるようなこんな状況でも、躊躇せずに撮影できる
 というわけで、防水性能の違いを考慮しないならば、W10はプログラムAEやオートモード(W10では「グリーンモード」と呼ばれる)で気楽に撮る人向け、720SWはさまざまな設定をまめにいじりながら高度な撮影をしたい人向けといえるだろう。家族の面倒をみる合間や、慣れていない水中でカメラを操作する必要があり、海面に浮かんでのシュノーケリング程度しかしない筆者には、シンプルなW10が好ましく感じられたが、720SWでなければ困る人もいるはずだ。

 ともあれ、どちらも防水防塵という特別な機能を感じさせない、“フツーのコンパクトデジカメ”として仕上がっているのがもっとも印象的だった。防水防塵が便利なのは、リゾートで海に入るときだけではない。土いじりや料理中など、汚れた手でカメラを操作しなければならないときにも気軽に使えるし、雨の日だって遠慮なくカメラを振り回すことができる。レンズに付いた水滴で描写が変わる、という経験も、防水機能なくしては味わえないものだ。


作例


※リンク先の画像は撮影した画像データをリネームしたものです。
※画像下のデータは機種名 / 記録解像度 / 露出時間 / 絞り / 露光補正値 / ISO感度 / レンズ焦点距離 / ホワイトバランスモード


μ720SW / 3,072×2,304ピクセル / 1/250秒 / F3.5 / 0EV / ISO80 / 6.7mm / マニュアル
Optio W10 / 2,816×2,112ピクセル / 1/160秒 / F3.3 / 0EV / ISO64 / 6.3mm / オート

μ720SW / 3,072×2,304ピクセル / 1/500秒 / F3.5 / 0EV / ISO64 / 6.7mm / オート
Optio W10 / 2,816×2,112ピクセル / 1/160秒 / F6.6 / 0EV / ISO64 / 6.3mm / オート

μ720SW / 3,072×2,304ピクセル / 1/800秒 / F5.0 / 0EV / ISO64 / 6.7mm / オート
Optio W10 / 2,816×2,112ピクセル / 1/200秒 / F6.6 / 0EV / ISO64 / 6.3mm / オート

μ720SW / 3,072×2,304ピクセル / 1/320秒 / F3.5 / 0EV / ISO64 / 6.7mm / オート
Optio W10 / 2,816×2,112ピクセル / 1/200秒 / F6.6 / 0EV / ISO64 / 6.3mm / オート

μ720SW / 3,072×2,304ピクセル / 1/500秒 / F4.0 / 0EV / ISO64 / 6.7mm / オート
Optio W10 / 2,816×2,112ピクセル / 1/200秒 / F6.6 / 0EV / ISO64 / 6.3mm / オート

μ720SW / 3,072×2,304ピクセル / 1/125秒 / F3.5 / 0EV / ISO200 / 6.7mm / オート Optio W10 / 2,816×2,112ピクセル / 1/50秒 / F3.3 / 0EV / ISO64 / 6.3mm / オート

μ720SW / 3,072×2,304ピクセル / 1/320秒 / F5.6 / 0EV / ISO64 / 15.52mm / オート
Optio W10 / 2,816×2,112ピクセル / 1/500秒 / F4.0 / 0EV / ISO64 / 18.9mm / オート

μ720SW / 3,072×2,304ピクセル / 1/500秒 / F5.0 / 0EV / ISO64 / 6.7mm / オート
Optio W10 / 2,816×2,112ピクセル / 1/200秒 / F6.6 / 0EV / ISO64 / 6.3mm / オート

μ720SW / 3,072×2,304ピクセル / 1/500秒 / F3.5 / 0EV / ISO64 / 6.7mm / オート
Optio W10 / 2,816×2,112ピクセル / 1/160秒 / F6.6 / 0EV / ISO64 / 6.3mm / オート

μ720SW / 3,072×2,304ピクセル / 1/320秒 / F3.5 / 0EV / ISO64 / 6.7mm / オート
Optio W10 / 2,816×2,112ピクセル / 1/125秒 / F6.6 / 0EV / ISO64 / 6.3mm / オート

μ720SW / 3,072×2,304ピクセル / 1/30秒 / F6.3 / 0EV / ISO100 / 6.7mm / オート
Optio W10 / 2,816×2,112ピクセル / 1/40秒 / F3.3 / 0EV / ISO200 / 6.3mm / オート


URL
  製品情報(μ720SW)
  http://olympus-imaging.jp/digitalcamera/mju720sw/
  製品情報(Optio W10)
  http://www.digital.pentax.co.jp/ja/compact/optio-w10/

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本誌:田中 真一郎

2006/05/17 13:35
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