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【試写レポート】コシナ カールツァイス ビオゴン T* 25mm F2.8

〜R-D1でスナップショットスコパー25mmと実写比較
Reported by 根本泰人

 今回テストするビオゴン T* 25mm F2.8は、7月27日よりシルバー仕上げおよびブラック仕上げの両方の発売が開始されている。既発売のカールツァイスレンズはいずれも素晴らしい性能と品質をもっており、25mmへの期待も高まる一方であった。特に昨年のPhotokina 2004で配布されたカタログの25mmによる作例がとても良く、私も非常に待ち遠しく感じていた。今回もカールツァイスの最終検査を受けた量産製品版での試写レポートをお届けする。


ビオゴン T* 25mm F2.8 ビオゴン T* 25mm F2.8を装着したR-D1

 ビオゴン T* 25mm F2.8は、その名の通りビオゴンタイプの7群9枚構成である。ライカ判における25mmという焦点距離は、戦前からのレンジファインダーCONTAX用に、戦後まもない1950年に東独カールツァイス・イエナが開発した「Topogon 25mm F4」がそのルーツである。ライバルのライカには焦点距離25mmのレンズは現在までなく、近似の焦点距離としては近年になって「エルマリート 24mm F2.8」が登場しただけである。

 我が国では1953年に日本光学(現ニコン)が「Wニッコール 25mm F4」を発売、続いてキヤノンが1956年に「キヤノン 25mm F3.5」を発売したが、ライカマウントではコシナが1999年ベッサL用として「スナップショットスコパー 25mm F4」を発売するまで後に続くメーカーはなかったのである。新登場のビオゴン T* 25mmレンズは、その焦点距離からして実に「ツァイス的な」レンズと言えるように思う。

 カールツァイスによる宣伝文句の「建築およびランドスケープのスペシャリスト」であるが、歪曲収差が一眼レフ用のレトロフォーカスレンズに比べてきわめて少ない特性は、線の歪みを極度に嫌う建築写真には最適であるし、対角線82度の広画角は狭い室内の撮影では重宝だし、もちろん風景写真でも活用範囲は広い。


 レンズ性能については、コシナのホームページにMTFのデータ等が公開されており、これを見る限り、対称型のビオゴンらしく歪曲収差が最周辺部でも1%と少ないことがわかる。ただし前々回テストしたビオゴン 35mmに比べるとやや大きく、前回の28mm並である。MTF曲線で判断すると、F2.8開放でも非常にコントラストが高く鮮明な描写が期待でき、F5.6まで絞ると画面全体に文句のつけようのない高画質となる。

 ただし対称型レンズの特性として周辺光量の低下が生じるのはやむを得ないのであるが、F2.8開放では35mm判の四隅では光量は中心部の20%しかない。これは約2絞り半程度暗くなることを意味していて、かなり四隅が暗く落ちるだろう。周辺光量の低下は絞ることで改善されるが、グラフではF5.6でも約40%つまり約1絞り半程度暗くなることがわかる。このデータを見る限りでは、画面全体に明るさが均質なイメージが欲しい場合にはF11以上に絞る必要があるのではないかと思う。ただし周辺の光量落ちはむしろ広角感が強調されるので好きだという写真家も少なくなく、必ずしも欠点とは言えない。要は写真表現はレンズの使いこなしいかんである。

 レンズの外観や操作性の印象は、いままでのカールツァイスレンズのレポートで述べたものと同じであるので、それらを参照して欲しい。レンズ先端の外爪バヨネットに装着する専用金属フードは、ビオゴン 28mm F2.8と兼用の円形のタイプと、未発売のビオゴン T* 21mm F2.8と兼用の四角いタイプのものと、2種類いずれも使用可能である。

 カールツァイスでは「フード」ではなく「レンズシェード」と呼んでいて、脱着はバヨネット式だから簡単確実である。また28mmと兼用できる専用外付けファインダー(35mm判用)が用意されている。眼鏡をかけても周辺部まで鮮明に見えるこの優れたファインダーは、接眼部に視度補正レンズが装着できるようになっている。


円形フード 角型フード

 絞りは1/3段ずつクリックがあり、絞り羽根は10枚で、円形絞りではなく正10角形ではあるが、どの絞りでも形が正確に整っている。

 もうひとつ特筆すべき点は、このレンズもビオゴン T* 28mm F2.8と同様に最短撮影距離が0.5mである。多くの距離計連動式カメラは0.7mまでしか測距できないので、それより短い距離では目測あるいは被写体からの距離をメジャーで実測して撮影することになる。しかし距離計に連動しなくても、近接撮影能力が高いことは撮影の自由度がたいへん大きくなる。

 今回使用したレンズのシリアル番号は15545019で、カールツァイスの検査を受けた合格品は8桁のシリアル番号が与えられる。コシナで製造したカールツァイスのレンズは1本ずつすべて検査を受けるため、出荷される製品の品質については万全であるとアナウンスされている。

 以上、この新しいコシナ製ビオゴン T* 25mm F2.8の仕上がりは、今までのコシナ製カールツァイスレンズ同様たいへん素晴らしいものである。


フォクトレンダーブランド25mmレンズと実写比較

スナップショットスコパー 25mm F4(右)と、標準で付属するビューファインダー
 今回の試写にあたっては、ビオゴン T* 25mm F2.8に加えて、すでにコシナ・フォクトレンダーブランドで発売され好評を博している「スナップショットスコパー 25mm F4」を加えて、同一条件で比較することとした。このレンズのマウントはライカスクリューマウント(L39)で、R-D1に使用するにはMアダプターリングを使用する。

 スナップショットスコパー 25mm F3.5は、コシナ初のライカマウントカメラ、ベッサLと同時に1999年5月に発売された。レンズ構成は5群7枚で、非球面レンズなど特殊なレンズは使用していないのはビオゴンと同じである。最小絞りはF22、絞り羽根は10枚で1/2段ずつのクリックがある。全長29.5mm、フィルター径39mmというコンパクトなボディは重量わずか90gで、携帯性は抜群だし操作性も悪くない。

 このレンズにはユニークな特徴がある。フォーカスクリックストップによる目測距離合わせ方式のため距離計とは連動しないのである。距離計を持たない目測専用カメラのベッサL用として開発されたためだ。

 その代わりに、ヘリコイドの途中3mと1.5mの2カ所にクリックがあり、その3mのクリックに合わせれば、例えば絞りF8なら無限から約1.4mまでピントが合うという使い方ができるようになっている。この使い方はレンジファインダーでいちいちピントを合わせているよりはるかに撮影が速く、とっさのシャッターチャンスに強い。そういう撮影ができるレンジファインダーカメラの使い手には、とても評判が良いレンズである。


銀塩フィルムとの撮影結果の比較

 今までのテスト結果について、R-D1での撮影結果は銀塩フィルムでの撮影結果と異なるということを毎回述べてきたが、今回は最初に銀塩フィルムで撮影した結果をフィルムスキャナーでデジタル画像化し、R-D1との撮影結果の違いを見ていただくことにする。

 前回テストした3本の28mmレンズの中で、カラースコパー 28mm F3.5は絞っても周辺減光が解消せず、R-D1で使用する場合にはその特性を理解した上で使いこなす必要があることを述べた。

 このレンズを銀塩フィルムで撮影した場合、そもそも画角が大幅に異なりはるかに広角描写となるわけだが、絞り開放では四隅で少し暗くなってもR-D1での撮影結果ほどひどい周辺減光は認められない。F8に絞って撮影した場合には、周辺減光は解消し、画面の四隅までたいへんシャープで均質な画像が得られることがわかる。このようにカラースコパー 28mm F3.5レンズは銀塩フィルムでは優秀な描写性能を持ち、外観は大変コンパクトで携帯性と操作性に優れ、特に旅行の際には重宝するレンズである。


●R-D1での撮影結果

 R-D1で撮影すると、絞り開放でもF8に絞ってもこのレンズは周辺減光が目立つ。


F3.5 / 1/1553 / +1EV F8 / 1/362 / +1EV

●ベッサR2Aでの撮影結果(フィルムは富士写真フイルム「RDPIII」)

 画角がはるかに広いのに、周辺減光は絞り開放で四隅が少し暗くなる程度。F8に絞るとほぼ解消している。


F3.5 / AE F8 / AE

 このようにR-D1での撮影結果は銀塩フィルムでの撮影結果とは一致せず、R-D1では大口径レンズの撮影結果が一般的に良くなる傾向がある。

 また、R-D1でRAWデータで撮影し、エプソンの「Photolier」(フォトリエ)でRAW現像する際に、周辺光量の補正機能を適切に設定すれば、この周辺減光を解消することができる。周辺部まで均質な明るさの画像を必要とする場合には、RAWデータで撮影すればよい。


R-D1での実写テストについて

 実写にあたっては、R-D1の設定を初期設定とし、その他の条件は一切変更していない。フィルム設定は標準、ISO200、ホワイトバランスはオート、画質はJPEGのFINE、露出はカメラまかせのAE(絞り優先)である。

 R-D1の撮像素子はAPS-CサイズのCCDであり、25mmレンズは35mm判換算で37mm相当となる。撮影はすべて三脚に固定して撮影し、手ブレの影響がでないよう注意した。

 特に注釈がない限り、各レンズとも絞り開放から一段ずつ絞って撮影した。

 なお繰り返しになるが、今回のテストも従来同様あくまでもR-D1との組み合わせにおける撮影結果であり、銀塩フィルムで撮影した結果とは異なるものと考えていただきたい。


●遠景

 遠景としてはR-D1によるピント合わせでほぼ無限遠となる、江戸川の風景を撮影した。R-D1は最低感度がISO200であるが最高シャッター速度は1/2,000秒までのため、各レンズの開放近くの絞りでは完全に露出オーバーとなり撮影は無理である。したがって今回はF4からF11まで絞って撮影したが、F4でも一段以上露出オーバーである。

 ビオゴンは絞りF4で最周辺部までよく像が整っているのが印象的だ。露出オーバーのため、周辺光量の低下がややわかりにくいが、やはり四隅方向に暗くなっている。ほぼ適正露出になったF5.6のほうが、むしろ周辺光量の低下が目立っている。F8、F11と絞っても、周辺部の光量落ちはあまり解消しない。これはレンズ性能というより、R-D1とこの25mmレンズの相性の問題と考えられる。広角レンズになるほど、周辺部の光量落ちの問題がひどくなるはずだからである。

 歪曲収差だが、右端のビルがわずかに外側に曲がっているように見える。発色については、スナップショットスコパーに比べて色鮮やかでわずかに赤みを感じる。

 スナップショットスコパーは絞り開放のF4では、四隅の光量落ちがビオゴンに比べて大きい。これはF5.6、F8と絞っていってもまったく解消しない。またビオゴンに比べて絞り開放では鮮鋭度が少し不足しているようだが、これはF5.6に絞るとビオゴンと同程度にシャープになる。絞ることでさらに周辺部の解像度やコントラストなどの画質は向上している。歪曲収差はほとんどわからない。発色は落ち着いた感じでやや黄色みを感じる。

 以上2本のレンズを同一絞りで見てみると、ビオゴンは周辺部の光量落ちが全般に少なく、また絞りF4ではビオゴンのほうが鮮明であるが、さらに絞ると両レンズとも同等のシャープさでかなり良い。


※作例のリンク先は、撮影した画像データそのものです(ファイル名のみ変更してあります)。縦位置のものは、サムネールのみ回転していますが、拡大画像はあえて回転せずに掲載しています。クリックすると撮影した画像が別ウィンドウで表示されます。


【F4 / ビオゴン】 【F4 / スナップショットスコパー】

【F5.6 / ビオゴン】 【F5.6 / スナップショットスコパー】

【F8 / ビオゴン】 【F8 / スナップショットスコパー】

【F11 / ビオゴン】 【F11 / スナップショットスコパー】

●遠〜中景

 浅草寺の本堂を撮影した。日中の撮影であるため絞りF4以下ではシャッター速度は1/2,000秒になり露出オーバーとなる。しかし今回は空が大きく画面に入るため、カメラまかせの露出ではアンダーになってしまった。これを補正するため+1EV露出補正をかけたが、さらにもう半絞りくらい+に露出補正したほうが結果がよかったようだ。まだ少しアンダーである。距離計のピントは中央部の街路灯であわせた。

 ビオゴンは絞り開放F2.8では露出オーバー気味だが、四隅をのぞいて画面全体に良く像が整っている。中心部付近の本堂の瓦は細かいところまで見えるが、アウトフォーカスなので解像感はもう一息だ。周辺光量の低下は四隅方向にやや目立つ。F5.6くらいまで絞ると隅まで画質が良くなり、被写界深度内に入った本堂の瓦が非常に細かいところまで解像しているのがすごい。画面全体に高画質であるが、周辺光量の低下はまだ認められる。さらに絞っても画質の変化はほとんどなく、周辺光量の低下も残存する。このショットでは歪曲収差はまったくわからない。また倍率色収差などが原因の色にじみはまったく生じていない。

 スナップショットスコパーは、絞り開放のF4では画面の大部分はビオゴン同様に良く整った画像であるが、四隅には像の流れがある。また四隅の光量落ちがビオゴンより大きいことが目につく。周辺光量の低下はF5.6、F8と絞っていっても解消しない。しかしF8まで絞ると四隅まで画質が安定し解像感などはビオゴンと同等であるし、歪曲収差が認められないことや色にじみがないことも同じである。

 以上2本のレンズを比較すると、絞り開放付近ではビオゴンのほうが画質の均質性が優れているが、スナップショットスコパーもF8以上に絞るとビオゴン並の画質となる。ビオゴンのほうが周辺光量の低下が少ない。


【F2.8 / ビオゴン】

【F4 / ビオゴン】 【F4 / スナップショットスコパー】

【F5.6 / ビオゴン】 【F5.6 / スナップショットスコパー】

【F8 / ビオゴン】 【F8 / スナップショットスコパー】

【F11 / ビオゴン】 【F11 / スナップショットスコパー】

●中景

 近所のお寺の門を撮影した。距離にして15〜20mほどである。晴天下の撮影であり、絞りF4以下ではシャッター速度は1/2,000秒となり露出オーバーと判断できるが、R-D1の自動露出では露出アンダー気味となるため、絞りF2.8では1段以上露出オーバーであるが画質の検討は可能と判断した。瓦の模様の鮮明さ、周辺部の画質の変化などに注目して欲しい。

 ビオゴンは絞り開放からピントのあった部分はシャープである。四隅は少し像の乱れがある。全体的に少しにじんだように見えるが、これは露出がオーバー気味のためかもしれない。また周辺光量の低下はすこし認められる。

 F4に絞ると画面全体にコントラストが高く、にじみが消え、解像感が強くシャープとなる。露出がアンダー気味のためか、周辺光量の低下はむしろ目立つ。F5.6になると被写界深度が深くなりピントの合う範囲が広く、画面全体が非常にシャープになる。ただし周辺光量の低下は解消しない。歪曲収差は判別できない。柱の赤色は実物より彩度が高い鮮やかな発色である。緑色も同様。

 スナップショットスコパーは絞り開放では周辺光量の低下が大きく、また四隅で像が流れる。しかし画面中心部はすっきりした描写で鮮明である。周辺部の光量低下は絞っても改善しないが、四隅の画質はF8まで絞れば改善する。発色は落ち着いた自然な感じである。歪曲収差は確認できない。

 以上2本のレンズを比較するといままでの結果と同様で、違いは周辺光量の低下の度合いと、開放絞り付近の四隅の描写、発色傾向である。画質については、ビオゴンは開放付近から相当に良いが、スナップショットスコパーもF8以上に絞れば優秀だ。


【F2.8 / ビオゴン】

【F4 / ビオゴン】 【F4 / スナップショットスコパー】

【F5.6 / ビオゴン】 【F5.6 / スナップショットスコパー】

【F8 / ビオゴン】 【F8 / スナップショットスコパー】

【F11 / ビオゴン】 【F11 / スナップショットスコパー】

●街路風景

 今度は平面的な被写体ではなく、街路を撮影してみた。晴天下であるため絞りF2.8とF4では露出オーバーだが、撮影画像の観察は可能と判断して掲載した。ピントは画面中央部とし、スナップショットスコパーは目測であるため被写界深度指標を参考にして6mに設定した。

 ビオゴンは、F2.8開放では解像度がやや低くにじんだように見えるが、これは露出オーバーが原因のようでレンズの性能ではないだろう。なお、前ピン気味に見えるがカメラ側の測距性能も関係する問題である。周辺光量の低下が認められるが、露出オーバーのためさほど目立たず、むしろ絞って適正露出となったコマのほうが目立つ。F4に絞ってもまだわずかに露出オーバーだが、コントラストが向上し画像が締まりシャープになる。建物のタイルの線などがきちんと分離しているのは気持ちが良い。四隅の像は良くないが、アウトフォーカスであるからやむをえない。F5.6になるとさらにコントラストが良くなる印象だ。なおR-D1の自動露出は、このようなシーンでは露出がアンダー気味となり暗部がつぶれるから、撮影の際にプラスに露出補正したコマを撮影しておきたい。

 スナップショットスコパーは、すべての絞りでビオゴンより周辺光量の低下が目立つ。F4開放ではわずかに甘いが、F5.6に絞るとコントラストが向上し解像度もあがり、ビオゴンとさほど遜色ない画質となる。こちらも絞るとなかなかよい画質である。

 以上、絞り開放ではどちらのレンズもややソフトな感じの描写だが、露出オーバーなど他の要因の影響も考えられる。いずれのレンズもひとつ絞ると画質が良くなるが、スナップショットスコパーはビオゴンより周辺光量の低下が目立つ。どちらのレンズも歪曲収差は目立たない。また発色の傾向もよく似ている。


【F2.8 / ビオゴン】

【F4 / ビオゴン】 【F4 / スナップショットスコパー】

【F5.6 / ビオゴン】 【F5.6 / スナップショットスコパー】

【F8 / ビオゴン】 【F8 / スナップショットスコパー】

【F11 / ビオゴン】 【F11 / スナップショットスコパー】

●人物

 近接撮影をかねて室内で人物を撮影した。背景のボケ具合なども見て欲しい。なお絞りF8では1/4秒ほどとなり、被写体ブレが生じているがご容赦いただきたい。ビオゴンは連動距離計でピント合わせを行ない、スナップショットスコパーはメジャーで被写体までの距離を実測してピントを設定した。

 ビオゴンは絞りF2.8開放から、人物の肌のみずみずしい質感や髪の毛の繊細な感じが良く出ていて素晴らしい。背後のボケもごく自然でレンズの癖が感じられない。この構図では周辺光量の低下も目立たない。絞るにつれて被写界深度が深くなり、背景のボケも小さくなっていくが、あくまで自然なボケ方である。

 スナップショットスコパーもF4開放からきちんとした写りである。が、やや周辺光量の低下が大きい。背景のボケは、このレンズも自然である。ピントをきちんと合わせれば、このレンズの描写性能はかなりのものである。

 この2本のレンズの描写の傾向はよく似ていて、いずれもしっかりとした描写が印象的であるが、違いを感じる部分としてビオゴンは肌がみずみずしい感じで描写されるのに対し、スナップショットスコパーは乾いた感じに写るようだ。これはレンズの発色が関係しているのだろう。このため人物、特に女性を撮影するならビオゴンのほうが良いと感じる人は多いのではないだろうか。


【F2.8 / ビオゴン】

【F4 / ビオゴン】 【F4 / スナップショットスコパー】

【F5.6 / ビオゴン】 【F5.6 / スナップショットスコパー】

【F8 / ビオゴン】 【F8 / スナップショットスコパー】

●歪曲収差

 歪曲収差の程度を調べるため、ビルの壁面を撮影した。撮影距離は1.2mほど、各レンズとも絞りはF8である。ファインダーフレームで壁面の線に正確に構図をあわせたが、撮影された画像はやや傾いている。また壁面の線も正確な直線ではないようだ。それでも、いずれのレンズも歪曲はほとんど認められず、広角系単焦点レンズとして非常に優秀であることがわかる。一眼レフ用のレトロフォーカスタイプの超広角では、このように素直な写りは望めない。


【F8 / ビオゴン】 【F8 / スナップショットスコパー】

●夜景

 夜景撮影で強い光源のまわりの像の乱れ方をみた。今までのテストからR-D1は夜景がきれいに撮れるカメラだと思う。

 ビオゴンは絞りF2.8開放からコントラストが良好で、予想以上に良く整った画像である。ピントは奥の五重塔ではなく手前の建物付近に合っている。絞るにつれて被写界深度が深くなり、五重塔も鮮明になってくる。また周辺部の画質が良くなる。周辺光量の低下はあまり目立たないが、F4になると周辺部が明るくなるのでやはり周辺光量の低下があるということがわかる。強い光源のまわりに絞ると光条が10本あらわれるのは、10角形絞りの形状のためである。明るい光源に現れるゴーストは特徴的である。画面の中心の反対方向にいくつかの丸い反射像が現れている。このゴーストは絞るにつれてよりはっきりした形になる。内部のレンズ面の反射のようだ。

 スナップショットスコパーも絞りF4開放から、画面全体に良く整った印象の画像である。ピントはこちらも手前の建物付近で、絞るにつれて五重塔も鮮明になってくる。周辺光量の低下はあまり目立たない。こちらも明るい光源に現れるゴーストは特徴的で、ビオゴンと現れ方がとてもよく似ているのには驚いた。絞ると絞りの形状に対応した10本の光条がはっきりあらわれるのも同じである。

 今回撮影した夜景シーンでは、どのレンズも絞り開放からかなりにきれいに撮影できたが、周辺まで画質を均質にするにはいずれも1段以上絞ると良いだろう。なおR-D1の露出はばらつき、特にF11に絞ると露出アンダー気味となるので注意したい。


【F2.8 / ビオゴン】

【F4 / ビオゴン】 【F4 / スナップショットスコパー】

【F5.6 / ビオゴン】 【F5.6 / スナップショットスコパー】

【F8 / ビオゴン】 【F8 / スナップショットスコパー】

【F11 / ビオゴン】 【F11 / スナップショットスコパー】

●逆光

 逆光時のゴーストやフレアを見てみた。R-D1はこうした条件では極端に露出不足となるため、+2EVで撮影したが、これでもまだかなりの露出不足である。またCCD上のゴミが写り込んでしまった。

 画面上端に太陽を入れてみたが、ビオゴンは画面中央部にかすかにゴーストが認められるがほとんど目立たない。スナップショットスコパーではなにも生じていない。いずれもとても優秀と言える。


【ビオゴン】 【スナップショットスコパー】

●銀塩フィルムでの撮影結果との比較

 今回は銀塩フィルムで撮影した結果との比較も行なった。撮影はベッサR2Aを使用し絞り優先AEで行なっている。フィルムは富士写真フイルムの「RDPIII」である。また撮影位置は「遠〜中景」と同じ位置である。35mm判とAPS-Cサイズの画角の違いもお解りいただけるだろう。

 ビオゴンもスナップショットスコパーも絞り開放では周辺光量の低下が目立つ。また画像についてはビオゴンもスナップショットスコパーも絞り開放では周辺部の像がやや甘いように見えるが、フィルムスキャン時のフィルム面の湾曲の影響が現れているようだ。F8まで絞ると周辺光量の低下も大幅に少なくなり、周辺部の画質も向上する。


【F2.8 / ビオゴン】 【F4 / スナップショットスコパー】

【F8 / ビオゴン】 【F8 / スナップショットスコパー】

●総評

 今回テストした2本のレンズは、銀塩フィルムで撮影するといずれもとても優秀なレンズである。R-D1で使用しても、いずれも高い描写性能を持っていることが確認できた。

 私の評価では、やはりその明るさと距離計連動性能により、ビオゴン T* 25mm F2.8が優れていると言える。どのようなシーンでもF4以上に絞ると画面の隅まで高画質となり、コントラストが高く発色も鮮やかでとても魅力的な画像を安定して得ることができる。特に人物を撮影したときの肌色の良さが気に入った。

 スナップショットスコパーについては、距離計に連動しないというハンディがあるものの(銀塩では超広角25mmなので目測で十分撮影できるが、R-D1では37mm相当となるためやはりピントは正確に合わせたい)、レンズそのものの性能は驚くほど高い。撮影する前は周辺部が相当落ちるのではないかと予想していたが、周辺光量の低下はやや目立つものの画面全体に良く整った画像で、F5.6以上に絞ればビオゴンとほぼ同等の画質だった。このレンズは35mm判で使用する場合に必要な外付けビューファインダーも標準で付属してきて、価格はビオゴンの半分ほどだから、お買い得度はきわめて高い。

 なお、いずれのレンズも絞っても周辺光量の低下は避けられないが、広角レンズの場合周辺光量落ちは必ずしも欠点とは言えない。ただしこれがどうしても困る場合にはRAWデータで撮影し、PhotolieでRAW現像する際に「特殊設定」内の「周辺光量補正」(ビネッティング補正)をかけて現像すれば、周辺光量低下をほとんどなくすことが可能である。


●RAWデータによる周辺光量補正の効果について

 いずれもビオゴン T* 25mm F2.8でRAWモードで撮影。絞りF8。ビネッティング補正を行なったものは、四隅まで均一の明るさとなる。ただしこれでわかるように、かなり画像の雰囲気が変わってくるので、補正量などは自分の好みの値に調整したい。


【そのままRAW現像】 【ビネッティング補正を25mm、補正強度0でRAW現像】

【そのままRAW現像】 【ビネッティング補正を25mm、補正強度0でRAW現像】

●一般作例

 最後にビオゴン T* 25mmで撮影した作例を掲載する。R-D1の設定はテストの時と同じである。


【公園 / F8】
近所の公園のベンチ。周辺光量が落ちたため、独特の空間描写になった
【路傍の花 / F11】
最短撮影距離付近。妙に立体感のある描写である

【赤いクルマ1 / F11】
赤のトーンの変化が良く表現されている
【赤いクルマ2 / F11】
最短撮影距離近辺。クロームメッキのリアル感がいい

【仕事場 / F2.8】
30年もお世話になったジーンズショップで。閉店してしまうそうで寂しい
【安売り王 / F11】
35mm近辺の画角は、誇張のない空間描写が特徴である

【ビル / F11】
周辺光量落ちの効果で、力強い表現となっている


URL
  コシナ
  http://www.cosina.co.jp/
  製品情報(ビオゴン T* 25mm F2.8)
  http://www.cosina.co.jp/seihin/co/b-25/
  製品情報(スナップショットスコパー 25mm F4)
  http://www.cosina.co.jp/seihin/voigt/v-lens/v-l-m/l-25/

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根本泰人
(ねもと やすひと)クラシックカメラの収集が高じて有限会社ハヤタ・カメララボを設立。天体写真の冷却CCD撮影とデジタル画像処理は約10年前から、デジカメはニコンE2/E900から。趣味は写真撮影、天体観測、ラン栽培、オーディオ(アンプ作り)等。著書「メシエ天体アルバム」アストロアーツ刊ほか。カメラ雑誌、オーディオ雑誌等に寄稿中。 http://www.otomen.net
http://www.hayatacamera.co.jp

2005/09/06 01:27
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