デジカメ Watch

【前編】「撮り鉄」のためのカメラの設定


 最近は「鉄道ブーム」らしく、周りとの会話の中に鉄道の話題が多くなってきた。すぐになぜ? と分析したくなるのが「オールド鉄」の悪いところだが、多分、お煎餅の販売で車両の検査費用を捻出した「銚子電鉄」や、女性アテンダントを乗せた「えちぜん鉄道」の話題、省エネタイプできれいな新型車両が多く投入されてきていること、さらには男女雇用機会均等法で女性の運転士や車掌などが増えてきたなど、明るい話題が多いからだと思っている。これにあやかるわけではないが、鉄道写真愛好家ももっと増えてくれるといいのだが……。

 「鉄道写真」と言うとちょっと堅苦しいので、早い話が「撮り鉄のすすめ」と思っていただければよい(ちなみに「撮り鉄」というのは、写真撮影が好きな鉄道マニアのことで、鉄道に乗るのが好きな「乗り鉄」、鉄道グッズ集めが好きな「収集鉄」など、さまざまな「鉄」がいる)。フィルムカメラ派が多かった「撮り鉄」たちも、急速にデジタルカメラが浸透しているので、ここでもデジタル一眼レフカメラを使おう。

 前編、後編の2回に渡ってお届けするが、前編ではカメラ選びとカメラの設定を、後編では構図の決め方などの撮影テクニックを解説する。

 後編はこちら( http://dc.watch.impress.co.jp/cda/rail_l/2008/06/12/8625.html )。


デジタルカメラやレンズの選択

今回使用した機材の一部。D300+タムロン AF 18-250mm(左)とD3+AF-S 70-300mm
 デジタルカメラは、1,000万画素を越えて2,000万画素級の一眼レフカメラも登場してきた。プリントサイズにもよるが、A4程度までで楽しむなら600万画素あれば十分だが、A3あるいはそれ以上となるとやはり1,000万画素以上の一眼レフがほしい。もちろんノイズ性能などから、撮像素子が比較的大きなものが望ましいことはいうまでもない。

 レンズは、いわゆるデジタルカメラ対応品が望ましい。カメラとセットで買った標準ズームと望遠ズームの組み合わせでもよいが、被写体との撮影距離が大きく変わる鉄道写真には、高倍率ズームがお奨めだ。さらに超広角系ズームもあると撮影範囲がグーンと広がる。

 この講座では、カメラはニコンD3、D300、D60、D40を、レンズはタムロン 18-250mm F3.5-6.3 Di II(A18)/11-18mm F4.5-5.6 Di II(A13)、ニコン AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-200mm F2.8 G/AF-S DX VR Zoom-Nikkor ED 18-200mm F3.5-5.6 G/AF-S DX Zoom-Nikkor ED 18-55mm F3.5-5.6 G IIと、いろいろなものを使ってみたが、まずは18-200mmや18-250mmのような高倍率ズームで始めるといいだろう。


自分流の撮り方で撮影しよう

D300のドライブモード切替スイッチ。CL(低速連写)、CH(高速連写)が用意される
 撮影地やセミナーなどで会話していると、「シャッター速度優先AEですか?」、「シャッター速度は1/4,000秒ですか?」、「MF(マニュアルフォーカス)ですか?」、「連写は5コマ/秒ですか?」などと訊かれることが多い。

 小山流は、「絞り優先AEかマニュアル露出、シャッター速度は明るさに左右されるが、1/500〜1/1,000秒が多い。AFが多いがMFも使う。コマ撮りが多く、連写はあまり使わない」だ。すでに35年以上も一眼レフを使っていれば、誰だって自分流の操作方法がある。どんなにカメラが進化しても、良好な露出をフィルムや撮像素子に与える原則は変わらず、メーカーも昔からの愛好者の使い方を無視したものは商品化していないから、自分流を押し通している。

 鉄道に限ったことではないが、写真は楽しむことが大切だから、カメラにはまず自分流の使い方があって、時と場合によって必要な操作をするのがよいと思っている。鉄道写真だからとか花だからとか、さらに人物だからといって、被写体のジャンルに合わせて設定を変えていたら誤操作の原因になる。だから、「MF、シャッター速度優先AE、高速連写」で鉄道を撮影して来た人は、今まで通りの方法で撮りましょう。


SAF、CAF、MFの使い分け

D300のフォーカスモード切替レバー
 自分流の撮影方法でといいながら、フォーカシングに関しては、かなり細かく切り替えて使っている。写真の命は「ピントと露出」なので、状況に応じてSAF(シングルオートフォーカスの略、メーカーによってAF-Sなどとも言う)、CAF(コンティニュアスオートフォーカス、メーカーによってAF-Cなどとも言う)、MF(マニュアルフォーカス)を切り替えて使っている。

 たとえば、停車中の列車ならば、三脚使用の有無にかかわらずSAF。ピントを合わせたい部分に使いたいAFエリアを合わせ、フォーカスロックを掛けながらフレーミングを微調整する。

 動いている列車の場合には、CAFとMFを使うが、三脚使用の有無、カメラの性能などによって変えている。三脚使用時は、AFが多点化されてもフレーミングの後にピントを合わせることになり、AFエリアに列車の前頭部が入るとは限らないので、MFを使ってレールや枕木などの構造物にあらかじめピントを合わせておく「置きピン」を使うことが多い。ニコンのD3やD300を使う場合には、AFエリアを列車の進路上に配置するようにフレーミングして、3D-トラッキングで連続撮影をしたり、ライブビューを使った置きピンを使ったりしている。

 手持ち撮影の場合には、CAFを使うことが多い。被写体の状況からあらかじめどのAFエリアを使うかを決めておいて、列車が近づいてきたら、そのAFエリアを列車の先頭部に合わせて最もよいタイミングでシャッターを押し込み、先頭部を追い掛ける。最近のデジタル一眼レフカメラには、動体予測機能が搭載されているので、連続撮影することも可能だ。

※作例をクリックすると、等倍の画像を別ウィンドウで表示します。
※撮影データは、カメラ / レンズ / 画像解像度(ピクセル) / 露出モード / ISO感度 / 露出時間 / 絞り値 / 露出補正値(EV) / ホワイトバランス / 実焦点距離です。


【SAF】
西武鉄道東長崎駅、2000系
このようなアングルから撮影する場合、SAFを使ってピントを先頭部の左端あたりに合わせるようにする。列車の行き先や列車種別(急行とか普通など)がうまく写っていないのは、布(フィルム)ではなくLEDが使われており、LEDは常時点灯しているのではなく、100Hz前後でON-OFFを繰り返しているから。そのため、うまく写し込むにはシャッター速度を1/60秒より遅くする必要がある。ただし例外もある
D300 / タムロン AF18-250mm F3.5-6.3 Di II(A18) / 4,288×2,848 / 絞り優先AE / ISO200 / 1/500秒 / F8 / -0.3EV / AWB / 58mm
【MF+三脚】
JR西日本山陽本線塚本駅、321系+183系
三脚を使って撮影する場合には、基本的にMFを使う。どこでシャッターを切るかを考えながらフレーミングして、レールや枕木などにピントを合わせておく「置きピン」を使う
D300 / タムロン AF 18-250mm F3.5-6.3 Di II(A18) / 4,288×2,848 / マニュアル露出 / ISO200 / 1/500秒 / F8 / 0EV / AWB / 250mm

【CAF、手持ち】
京阪電鉄大和田駅、6000系
手持ちで動いている列車を撮影する場合、CAFを使ってフレーミングをしながらシャッターレリーズボタンを半押ししてタイミングを合わせてシャッターを切る
D300 / タムロン AF 18-250mm F3.5-6.3 Di II(A18) / 4,288×2,848 / 絞り優先AE / ISO200 / 1/400秒 / F8 / -0.3EV / AWB / 250mm

単写と連写

 昔、SL(蒸気機関車)は、発車する時や上り勾配にさし掛かった時に煙を猛烈に吐くことが多かった。その煙は、時々刻々と変化するのでよい形となった瞬間を捉えられるとうれしかった。今のデジタル一眼レフカメラは、3〜10枚/秒の連写が可能になり、CAFや動体予測などの機能も搭載されているので、もし当時に存在したら、鉄道写真愛好家は争って買ったに違いない。

 それに対して、昨今の主流となった電車や電気機関車は、煙を吐くことはなく表情も特段変わることがないので、シャッターを切るタイミングは「このカーブを抜けた直後」というように、フレーミングの段階である程度予想できる。理屈の上からは、単写で十分なはずだ。

 しかしながら、昨今の列車はSLに比べてスピードが速く、いくら頭でシャッターを切るタイミングがわかっていても指が追いついていかないことも多い。そのため、カメラのドライブモードを連写にして、列車がベストの位置に来る少し前からシャッターを切り始めて、そのベストな位置を通過するまで連写することが多い。

 この時、三脚にカメラを固定するなどフレーミングを固定する場合には、「MFで置きピン」を使い、手持ち撮影で列車の先頭部を追い掛ける場合には、「CAF」を使うのがよい。

 次の作例は、京阪電鉄大和田駅で撮影した8000系。手持ちで連写すると、どうしても列車の動きにつられてカメラを動かしてしまう。それを防ぐために三脚に固定して撮影することが多い。

※すべてD300 / タムロン AF 18-250mm F3.5-6.3 Di II(A18) / 4,288×2,848 / 絞り優先AE / ISO200 / 1/800〜1/640秒 / F6.3 / -0.3EV / AWB / 250mm





AE

 本格的なAF一眼レフカメラ(フィルムカメラの)が登場した1985年以降は、AFだけでなくAE(自動露出制御)の性能も非常に高くなった。測光そのものの精度の向上はもちろんのこと、多分割測光(評価測光、マルチパターン測光、インテリジェンス測光などとも言う)によって逆光など輝度差が大きい場合でも、比較的思い通りの露出が得られるようになった。

 ところが、10年程度前からだと思うが、JRや関東の私鉄を中心に踏切事故対策として昼間でもヘッドライトを点灯するようになった。ヘッドライトは、主要被写体である列車の前頭部にあって光を放っている。写真的に言えば主要被写体の一部が発光しているという、誠にややこしい被写体なのだ。

 このため、いくらAE性能が向上しても、主要被写体が発光しているとなると思い通りの露出が得られないことが多い。極端な場合には、ヘッドライト以外は真っ黒なんて言うこともある。

 ちょっと実験をしてみたのが次の作例だ。まず、列車がいない状態で絞り優先AEで撮影したのが写真【A】。測光値は、絞り優先AE、F8、1/400秒(-0.5EVの露出補正)と出た。そのまま写真【B】のように絞り優先AEで撮影した場合には、ヘッドライトの影響を受けてシャッター速度が1/640秒となり、-0.5EVのアンダーになった。

 写真【C】のようにマニュアル露出で撮影すれば、ヘッドライトの影響は受けない。このようにヘッドライトの影響を受ける場合には、あらかじめ列車がいない時に測光しておいて、その値でマニュアル露出で撮影することをお奨めする。

※すべてD300 / タムロン AF 18-250mm F3.5-6.3 Di II(A18) / 4,288×2,848 / 絞り優先AE / ISO200 / 1/400秒 / F8 / -0.5EV / AWB / 250mm。JR西日本大阪環状線福島駅、103系


【A】絞り優先AE 被写体ナシ

【B】絞り優先AE 前照灯アリ 【C】マニュアル露出 前照灯アリ

RAWかJPEGか

 鉄道写真に限らず、JPEG形式で記録するかRAW形式で記録するかをよく訊かれる。

 少し復習してみると、JPEGは、非常に汎用性が高くほとんどのPCで開くことができる画像データ形式。画質を比較的劣化させずに圧縮できるので、メールに添付したりWebに掲載したりすることにも向いている。しかしながら、RGB各色8bitであり、大伸ばしした時にやや階調の粗さが目立ったり、強い圧縮をかけた時にブロックが現れたり、特有のノイズが発生したりすることがある。

 それに対して、RAWは、RGB各色12〜14bitで、階調も豊か。非圧縮あるいは可逆圧縮なので、大伸ばししてもよい画質が保たれている。しかしながら、デジタルカメラの機種ごとにデータ形式が異なるため、汎用性が高いとは言えず、データそのものが大きくやや扱いにくいのが難点だ。

 このため、私のような仕事をしていると、このデジカメWatchや雑誌に掲載する場合にはJPEGで画像を提供し、個人で楽しむ場合にRAWを使うことが多い。今回の一部の作例は、RAWからJPEGを生成したものもある。

 どちらが画像データの保存形式として適切であるかどうかは、良し悪しではなく撮影後の用途で決まってくる。最終的にプリントして鑑賞する場合には、RAWで記録し、画像編集ソフトを使って画像をいろいろと調節するのがよい。

 次の作例は、阪急電鉄南方駅で撮影した6300系だが、「阪急マルーン」と呼ばれる阪急電車の塗装をうまく表現するのはなかなか難しい。こういう場合は、RAWで記録しておき、自宅に戻ってからじっくりと画像を編集加工して自分のイメージに持っていくのがよい。

 写真【A】は、RAWで記録して、特別な調節を行なわないでJPEGに変換したもの。写真【B】は、RAWの画像をニコンの画像編集加工ソフトCapture NXを使って、暗部を少し明るくなるように調節してからJPEGに変換したものだ。

※すべてD300 / タムロン AF 18-250mm F3.5-6.3 Di II(A18) / 4,288×2,848 / 絞り優先AE / ISO800 / 1/160秒 / F8 / -0.5EV / AWB / 110mm


【A】RAWから無調整でJPEGに変換 【B】RAWから調整後、JPEGに変換

画質調整

 フィルムの種別には、カラーとモノクロ以外にもリバーサルとネガがあり、さらに銘柄によって画像の調子が異なって、被写体や撮影環境によってフィルムを選択するのも楽しみの1つであった。

 昨今のデジタルカメラには、「ピクチャースタイル」、「ピクチャーコントロール」、「仕上がり設定」などと呼ばれる絵作り調節機能がある(メーカーによって呼び名はまちまちだ)。

 JPEGで保存した場合には、撮影後に再調節することは難しいが、RAWで記録した場合には、メーカー指定のソフトで後から絵作り設定を変更できるものが多い。これを利用する場合には、基本的に柔らかいあるいは淡い感じの仕上がりになるように設定しておいたほうが、後での調節も含めて扱いやすい。

 次の作例は、今回の撮影に使ったニコンのD300の「ピクチャーコントロール」の例。大きく「スタンダード」、「ニュートラル」、「ビビッド」の3ポジションがある。一般的に言えば、写真【A】のスタンダードは、標準的リバーサルフィルムのような調子、写真【B】のニュートラルは、リバーサルフィルムには無い、やや淡い感じの仕上がりで、レタッチソフトで画像を編集加工するのに向いている調子、写真【C】のビビッドは、やや彩度の強いリバーサルフィルムに似た仕上がりになる。

 実際には、スタンダード、ニュートラル、ビビッドの3ポジションで撮影したのだが、約10分間隔での撮影となり、列車への日の当たり方が異なるので、ビビッドで撮影したRAW画像を、ニコンの画像編集加工ソフト「Capture NX」でニュートラルとスタンダードに変更し、JPEGに変換した。

※すべてD300 / タムロン AF 18-250mm F3.5-6.3 Di II(A18) / 4,288×2,848 / マニュアル露出 / ISO200 / 1/320秒 / F8 / -0.5EV / AWB / 200mm。阪神電鉄淀川駅


【C】ビビッド
「ビビッド」で撮影したRAWデータを、無調整でJPEGに変換
【A】スタンダード
「ビビッド」で撮影したRAWデータを、「スタンダード」に変更してJPEGに変換
【B】ニュートラル
「ビビッド」で撮影したRAWデータを、「ニュートラル」に変更してJPEGに変換

ホワイトバランス

東京駅、300系、N700系、700系
D40 / AF-S DX Zoom-Nikkor ED 18-55mm F3.5-5.6 G II / 3,008×2,000 / 絞り優先AE / ISO200 / 1/60秒 / F5.6 / -0.7EV / AWB / 32mm / RAWから現像
 ホワイトバランスには、撮影時にカメラが自動的に設定してくれるAWB(オートホワイトバランス)のほかに、あらかじめ曇天、晴天、蛍光灯、電灯光などのように光源の種類に合わせてあるもの、色温度を直接設定するものなどがある。

 駅構内で鉄道を撮影する場合、駅の明かりは蛍光灯が多く、昼間でも点灯しているのが一般的である。夜間のようにほかに光源が無い場合には、ホワイトバランスを蛍光灯に設定しても構わないが、昼間は自然光と蛍光灯の2種類の光源が存在するので難しい。手動で設定する場合、大陽光に設定したほうがよいのか、蛍光灯に設定したほうがよいのか迷ってしまう。特に夕方などのように自然光がやや弱まり、蛍光灯がやや強くなった時などは、調整困難と考えたほうがよい。

 そのため、基本的にAWBで撮影することが多い。もちろん、RAWで記録しておけば、後からソフトウェアで自分の好みのホワイトバランスに調節することも可能である。

 右の作例は、今年の3月上旬の17時頃にAWBで撮影したもの。300系、N700系、700系と3形式の新幹線が並んだ瞬間。西日を受けて手前の300系と奥の700系のホワイトボディはやや赤っぽい色となっている。それに対して真ん中のN700系には西日が直接当たらず、天空からの間接光と蛍光灯の光を受けており、やや青っぽいホワイトボディとなっている。このように複雑な光源の場合にホワイトバランスを合わせるのは難しいので、AWBに任せるのが一番よいと思っている。

※後編は明日(12日)掲載予定です。


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小山 伸也
中央大学理工学部卒業後、オーディオメーカー、カメラメーカーを経て2002年春にフリーになる。カメラ雑誌で写真やカメラの解説、鉄道や航空雑誌で車両や航空機の解説など幅広く活躍している。カメラメーカー勤務時には日本カメラショーなどの講師を務めていた。1955年生まれ東京都出身。

2008/06/11 00:58
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