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キヤノンEOS 40D【第3回】
セントレアで航空機を撮影

Reported by 奥川浩彦


 筆者が20数年前に一眼レフを買ったのは、モータースポーツを撮るためだった。今でも動く被写体を撮るのが好きなのは変わっていない。今回は中部国際空港、通称セントレアに航空機を撮りに行ってみた。

 2年半前、EOS 20Dの長期レポートの際に、セントレアに移転する直前の名古屋空港(小牧)を撮影したが、航空機の撮影はそれ以来となる。セントレアは海を埋め立てた海上空港で、小牧のように着陸する機体を真下で撮ることはできない。セントレアが開港したとき、関係者のコメントとしてT字に突き出したデッキが滑走路に近いと宣伝していた。乗客として行った際にデッキ先端まで行ったことはあるが、実際にそれほど近いとは感じられなかった。

 愛知万博直前に開港したセントレアだが、当時は万博会場並に混んでいると話題になった。現在は平穏な状況で、デッキ先端にはカメラを持った人が数人、空港利用客が数人いる程度だ。デッキの位置は滑走路のほぼ中央に向かって突き出している。離陸する機体は、早いときはデッキより手前で機体を浮かす。その位置は機体の特性とパイロットの考え方によると思われ、デッキを通過した後に離陸する場合もある。場合によってはデッキ正面の柱が障害物となり、被写体にかぶることがあるが、運もあるので仕方ないだろう。

 望遠レンズは銀塩時代から単焦点派だ。まずはEF 200mm F2.8 L USM(35mm判換算で320mm相当)で撮影を開始した。大型の機体はフレームアウトすることもあり、この手の撮影だと望遠ズームの方が使いやすそうだ。

 離陸する機体をまずはシャッター速度1/1,000秒で撮ってみた。特に難しいこともなく、フレームにさえ収まれば誰でも撮れそうである。次はシャッター速度を1/160秒に落として流し撮り。機体の速度は200~300km/hだろうか。速さはあるものの被写体までの距離があるので、レンズを振る速さはそれほどでもない。

  • 作例のリンク先のファイルは、EOS 40Dで撮影したJPEGをコピーおよびリネームしたものです。
  • 作例下の撮影データは、使用レンズ/記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。


セントレアから飛び立つJAL機をシャッター速度1/1,000秒で撮影。フレームに収めれば誰でも撮れそう
EF 200mm F2.8 L USM / 3,888×2,592 / 1/1,000秒 / F6.3 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 200mm
このサイズの機体なら200mmのレンズで丁度いい。飛び立つ位置が一定でないので、ズームレンズの方が撮りやすいだろう
EF 200mm F2.8 L USM / 3,888×2,592 / 1/1,000秒 / F6.3 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 200mm

シャッター速度1/160秒で流し撮り。少し動きが出るが、ブレる確率も高くなる。速いシャッター速度の方が無難な選択
EF 200mm F2.8 L USM / 3,888×2,592 / 1/160秒 / F14 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 200mm

 撮った画像を比較すると、シャッター速度が遅い方が背景が流れて動きが感じられるが、被写体ブレの確率も高くなる。レーシングカーなどの場合、横位置から速すぎるシャッター速度で撮ると走っているのか停まっているのかわからず、魅力のない絵になってしまう。しかし航空機の場合は浮いていること自体、その姿勢に動きがあるので、速いシャッター速度で撮った方が確率が上がって楽に撮れるだろう。

 着陸する機体は距離があるので、EF 300mm F4 L IS USMに×1.4のテレコンバーターを付けて420mm(35mm判換算で672mm相当)で撮影してみた。着陸する位置も意外にバラツキがあり、滑走路の端だともう少し長いレンズが欲しい印象だ。特に小型の機体は小さく写るので物足りない。被写体が小さいとオートフォーカスが背景にに引っ張られるケースがあるので、センターの1点にして撮影している。

 着陸する機体のタイヤが地面に接触した直後、白煙が上がる瞬間を撮るのに秒間6.5コマの連写は役に立った。ただし撮った画像を見ると、被写体までの距離があるので空気の揺らぎが気になる。この日の天候は晴れ時々曇り、湿度は高め。冬になると問題ないのかもしれないが、夏場の撮影はここまで離れると難しそうな感じだ。

 2~3時間セントレアのデッキに滞在して撮影したが、予想通り面白味がない。動く被写体と言っても至近距離で撮れるわけではないので、それほど難易度も高くなくやりがいがない。ということで日をあらためて小牧に撮りに行くことにした。


300mmに×1.4コンバータを付けて撮影。着陸する位置の機体の大きさによってはもう少し長いレンズが欲しい。撮影時間は10時14分
EF 300mm F4 L IS USM / 3,888×2,592 / 1/1,000秒 / F5.6 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 300mm
撮影時間は10時52分。やや空気の揺らぎが出てきた。天候によっては撮影が難しそうだ
EF 300mm F4 L IS USM(テレコンバーター使用) / 3,888×2,592 / 1/1,000秒 / F7.1 / -0.33EV / ISO200 / WB:オート / 420mm

撮影時間11時32分。すっかり空気が揺らいできた。夏場のお昼前後は厳しそうだ
EF 300mm F4 L IS USM / 3,888×2,592 / 1/1,000秒 / F8 / -0.33EV / ISO200 / WB:オート / 420mm
離陸準備に入るJAL機。真後ろが向いた瞬間を狙って200mmで撮影
EF 200mm F2.8 L USM / 3,888×2,592 / 1/1,000秒 / F5 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 200mm

遅延して到着したベトナム航空機。セントレアでは比較的珍しい機体
EF 200mm F2.8 L USM / 3,888×2,592 / 1/640秒 / F11 / -0.33EV / ISO200 / WB:オート / 200mm
ベトナム機は丁度デッキ先端のすぐ横のゲートに到着。標準ズームにレンズを変更して撮影
EF-S 17-85mm F4-5.6 IS USM / 3,888×2,592 / 1/500秒 / F9 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 30mm

飛び立つ機体の後ろ姿を撮影。デッキ先端が混んでいないので撮影場所の移動も楽
EF 200mm F2.8 L USM / 3,888×2,592 / 1/1,000秒 / F7.1 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 200mm

 セントレアに旅客機の大半が移り、現在の名古屋空港は、比較的マイナーな路線を飛ぶ小型機と自衛隊機の離発着に限られている。撮影は平日だったが、滑走路手前の公園には無線機を持った人や一眼レフを持った人がそこそこいて、今でも小牧の人気が感じられた。

 撮影の準備はできたが何も飛んでこない。しばらくしてプロペラ機が降りてきたので、まずは試し撮りをしてみた。前回EOS 20Dの時は、大型のジェット機狙いでプロペラ機は無視していた。撮った画像を液晶モニターで確認するとプロペラが止まって見える。そこそこ回転している様に撮るにはシャッター速度を落とす必要がありそうだ。

 プロペラの回転数がどれくらいなのかわからないが、モニターで確認した感じでは機種によって差がありそうだ。もちろん同機種でも一定ではない。単純にいうと大きなプロペラほどゆっくり回転しているようで、プロペラの径が大きいほどシャッター速度を落とさないと、回転しているように写らない。小型機→大型機→ヘリコプターの順だ。とは言え、望遠レンズを使用しての動く被写体の撮影なので、シャッター速度を遅くすればするほど手ブレ+被写体ブレしてしまう。

 最初の撮影ポイントは滑走路の手前、着陸してくる機体を正面から撮ってみた。2機のプロペラ輸送機が離発着の訓練をしているようで、滑走路に降りてはすぐに飛び立つタッチアンドゴーを繰り返していた。レンズはEF 300mm F4 L IS USM。レンズ内手ブレ補正を搭載してるので、正面からの撮影なら多少アシストしてくれそうだ。

 まずはシャッター速度1/400秒。これでは回転している感じが出ない。1/250秒にするとやや回転している感じがする。1/125秒まで落とすとやっとプロペラが回ってる絵となった。レンズは35mmフィルム換算480mmなので当然ブレが多発する。この手の撮影では連写速度が速いことが多少は役に立つ。EOS 20Dで4秒間に20枚撮れるとすれば、40Dなら26枚となる。単純に確率だけで考えると、枚数を多く撮れば、それだけブレていない画像が増える。

 セスナのような小型機の場合、プロペラの回転数がやや高い。そのためか、シャッター速度1/250秒でそこそことなった。レンズをEF-S 17-85mm F4-5.6 IS USMに付け替え、上空を通過する小型機を見上げるように撮ってみた。1/160秒まで落として撮ると、もう一息で1回転つながりそうな感じとなった。


最初に来たプロペラ機を試し撮影。シャッター速度が速いとプロペラが止まってしまう
EF 300mm F4 L IS USM / 3,888×2,592 / 1/3,200秒 / F4.5 / -0.33EV / ISO200 / WB:オート / 300mm
300mmのレンズでシャッター速度1/250秒で撮影。小型機のプロペラはこれくらいで回転して見える
EF 300mm F4 L IS USM / 3,888×2,592 / 1/250秒 / F18 / -0.33EV / ISO200 / WB:オート / 300mm

大型機になると回転数が低いようだ。1/400秒ではまだまだ
EF 300mm F4 L IS USM / 3,888×2,592 / 1/400秒 / F9 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 300mm
シャッター速度1/250秒。手ブレも気になるがもう少し遅くしたい
EF 300mm F4 L IS USM / 3,888×2,592 / 1/250秒 / F13 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 300mm

シャッター速度1/125秒。300mmの手持ち撮影だがこれくらいに落としたい
EF 300mm F4 L IS USM / 3,888×2,592 / 1/125秒 / F16 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 300mm
頭上を通過する機体を斜め下から見上げる様に撮影。焦点距離85mmなので1/160秒で撮影
EF-S 17-85mm F4-5.6 IS USM / 3,888×2,592 / 1/160秒 / F9 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 85mm

 撮影ポイントを近くの歩道橋に移動してアプローチする機体を斜め横から撮ってみた。レンズはEF 200mm F2.8 L USM。手ブレ補正を搭載していないし、横移動する被写体なので条件はさらに厳しい。35mm判換算で320mmなので、最初はシャッター速度1/320秒。ブレはそこそこの確率で抑えられたが、当然プロペラはイマイチ。

 やはりシャッター速度を落とすには手ブレ補正付きのレンズの方が多少良いかと考え、EF 300mm F4 L IS USMに変更。動く被写体なので1/160秒にすると盛大にブレが発生するが、なんとかプロペラが回転している感じとなった。この辺りが落としどころであろう。

 最後に1/125秒で撮ってみたが、ほぼ全滅状態の中で貴重な1枚となった。また、途中でかなり上空を通過するヘリコプターを撮ってみた。プロペラは相当ゆっくり回転しているようで、おそらく1/100秒以下で切る必要がありそうだ。さすがに飛んでいるヘリコプターになると、被写体ブレせずにプロペラが回転しているように撮ることは難しい印象だ。

 小牧にもジェット機がまばらに飛んでいる。「プロペラ機ではシャッター速度を遅く」、「ジェット機では速く」と切り替えながらの撮影となった。最初に現れたジェット機は自衛隊のF-15。離陸を始めたので真後ろから撮ってみた。排気による空気のゆらぎが凄く絵になる画像は少なかった。

 その後に小型の旅客機、自衛隊のC-1輸送機が降りてきたので正面から撮影した。EOS 20Dの時もフレーム中央にとらえるのは難しかったが、それさえできればAFもそこそこ追従していた。EOS 40Dでも印象としては大差なく、機体をフレームにさえ収めればかなりの確率で撮れる。


レンズを300mmの手ぶれ補正付きに変更してシャッター速度1/160秒で撮影。ブレも増えるのでこの辺りが妥協点だろう
EF 300mm F4 L IS USM / 3,888×2,592 / 1/160秒 / F11 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 300mm
シャッター速度1/125秒。ほぼ全滅の中で貴重な1枚。デジカメなら駄目もとで何枚も撮影できるメリットあり
EF 300mm F4 L IS USM / 3,888×2,592 / 1/125秒 / F14 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 300mm

200mmのレンズでシャッター速度1/320秒。まだまだプロペラはイマイチ
EF 200mm F2.8 L USM / 3,888×2,592 / 1/320秒 / F11 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 200mm
ジェット機はシャッター速度1/1,000秒で簡単に撮れる。フレームに入れればAFもそこそこ合う
EF 300mm F4 L IS USM / 3,888×2,592 / 1/3,200秒 / F4.5 / -0.33EV / ISO200 / WB:オート / 300mm

小牧では貴重になった大型機。頭上を通過するときは迫力あり
EF 300mm F4 L IS USM / 3,888×2,592 / 1/1,000秒 / F5 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 300mm
離陸直前のF-15。歳をとっても戦闘機を見るとウキウキする
EF 300mm F4 L IS USM / 3,888×2,592 / 1/1,000秒 / F7.1 / -0.33EV / ISO200 / WB:オート / 300mm

最後に戻ってきてくれたF-15。やはりカッコイイ
EF 300mm F4 L IS USM / 3,888×2,592 / 1/1,000秒 / F9 / -0.33EV / ISO200 / WB:オート / 300mm
夕日を浴びながら着陸するF-15。後ろ姿もカッコイイ
EF 300mm F4 L IS USM / 3,888×2,592 / 1/1,000秒 / F10 / -0.33EV / ISO200 / WB:オート / 300mm

 帰り際、最初に飛び立ったF-15が戻ってきたので、横位置から撮影して終了だ。セントレア、小牧と2つの空港で撮ってみると、やはり海上空港より内陸の空港の方が撮っていて楽しい。利用客としては鉄道が直接乗り入れているセントレアの方が便利だが、被写体としてはこれからも小牧の方に魅力がありそうだ。

 フォーカスポイントが9点全てクロスセンサーになり、AF性能が上がったと言われるEOS 40Dだが、航空機の撮影ではEOS 20Dとそれほどの差は感じられなかった。撮る側の腕の問題もあるが、フレームにしっかり入れればそこそこ撮れそうな感じだ。逆に全てのコマのピントがバッチリ合ってるわけでもなく、それなりに甘いコマも存在する。強いて言えば6.5枚/秒の連写が少しアドバンテージと感じる程度だろう。筆者としてAF性能は気になる部分なので、また別の被写体で試してみたい。



URL
  キヤノン
  http://canon.jp/
  製品情報
  http://cweb.canon.jp/camera/eosd/40d/
  気になるデジカメ長期リアルタイムレポート(EOS 40D)
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm2007.htm#eos_40d
  レンズ交換式デジタルカメラ機種別記事リンク集(EOS 40D)
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/link/dslr.htm#40d
  中部国際空港(セントレア)
  http://www.centrair.jp/
  県営名古屋空港(小牧)
  http://www.pref.aichi.jp/kouku/nagoya/top/

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奥川浩彦
(おくがわひろひこ)1961年、名古屋生まれ。パソコン周辺機器メーカーのメルコ(現:バッファロー)で広報担当、2001年イーレッツの設立に参加。2006年、iPR(http://i-pr.jp)を設立し広報代理業とライター業で独立。写真を始めたのは学生時代にモータースポーツを撮りたかったから。キヤノンモータースポーツ写真展3年連続入選経験あり。鈴鹿で開催されたF1日本グランプリは87年から20年皆勤賞。http://okugawa.jp/menu/

2007/10/10 00:01
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