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オリンパス CAMEDIA SP-550UZ【第4回】
遠くを撮りたい

Reported by 本誌:田中 真一郎


 我が家は新幹線の新横浜駅の近くなのだが、このあたりには国交省の「関東の富士見百景」( http://www.ktr.mlit.go.jp/kyoku/region/fuji100/ )にも選出されるような、富士山の見える場所がいくつかある。富士見百景にこそ入っていないが、天気のよい日は筆者のマンションの廊下からも、丹沢山系の向こうに富士山がくっきりと見えることがある。

 新横浜から富士山までは直線距離で80km以上あるので、富士山といえど300mm程度の望遠レンズでは小さくしか写らない。しかし、SP-550UZの504mm(35mm判換算、以下焦点距離はすべて35mm判換算)の望遠端なら、そこそこ撮れるのではないか、というわけで挑戦してみた。


ピント合わせに苦労

 SP-550UZには手ブレ補正機能があるけれど、500mmとなるとさすがに不安なので、スリックのカーボン三脚「813EX」を使用することにした。同社のカーボン三脚としてはベーシックモデルで、パイプ径が27mmだから、SP-550UZのような高倍率コンパクトでもあまり大袈裟な感じがしないのがいい。3段三脚なので縮長665mmとそれなりの長さがあるが、重さは2,010gと持ち歩きやすい。

 最初はマンションの廊下から、と思ったのだが、このような所で三脚など据え付けて撮影していると、たとえ住人だったとしても怪しげな目で見られてしまうし、通行の邪魔にもなる。なので、前出の富士見百景にもある、「鶴見川多目的遊水地(新横浜・ゆめオアシス)周辺」の、亀の甲橋の上に移動して狙ってみた。

 レンズを望遠端にズームし、AFモードをスポットにした以外は、プログラムAEで感度もホワイトバランスもオート、測光モードも分割測光と、いつもどおりのセッティングで撮ってみた。

 ここで苦労したのがピント合わせだ。作例をごらんいただければわかるとおり、冠雪して白い富士山は、背景とコントラスト差があまりなくて、AFで測距できない。前景の丹沢の山となら差がありそうなので、丹沢の山と富士山の境目あたりでAFを試みてみたが、これもうまくいかない。

 ならばマニュアルで、とMFに切り替えてみた。MFモードにすると、十字キーの上下でピントを合わせ、OKボタンを長押しして確定する。

 こうして手動で無限遠位置に合わせてみたのだが、まるでピントが合わない。どうやらこのレンズはズームによって焦点が変わるタイプで、望遠端や広角端ではフォーカス位置を無限遠にしておいても、無限遠が出てないようだ。試してみたところ、ズーム域の両端でなく、中間域なら無限遠位置で無限遠になるようだ。

 では、望遠端で無限遠が出る位置をMFで探ろうということで、無限遠位置から十字キーの下をクリックして、調節してみるのだが、これもうまくいかない。十字キーの操作中は、ピントの山をつかみやすいように、画面中央部が拡大表示されるのだが、被写体のコントラストが低すぎてピントが合ったかどうかわからないのだ。

 そこで、街灯までは500m以上あるから、これだけ離れていれば被写界深度などあまり問題ないだろうと踏んで、AFで前景の街灯にピントを合わせてみた。狙い通り富士山はそこそこクリアに写ったのだが、前景が目立ちすぎて違和感がある。

 そこで今度は、亀の甲橋のたもとにある日産スタジアムの2階デッキに移動した。ここからなら前景には林しかないので、そんなに違和感はないだろう。

※作例のリンク先のファイルは撮影した画像です。クリックすると、等倍の画像を別ウィンドウで開きます。
※作例下の撮影データは、露出時間/絞り/露出モード/感度/露出補正値/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。


1/640秒 / F3.2 / プログラムAE / ISO50 / 0EV / オート / 4.68mm
亀の甲橋の上から広角端で富士山方向を撮る
1/500秒 / F4.5 / プログラムAE / ISO50 / 0EV / オート / 84.24mm
AFで前景にピントを合わせてみたが、前景が目立ちすぎてヘン

1/500秒 / F3.2 / プログラムAE / ISO50 / 0EV / オート / 4.68mm
日産スタジアム2階デッキから広角端で
1/640秒 / F5.6 / プログラムAE / ISO50 / -1.7EV / オート / 84.24mm
改善されたが、やっぱり前景が目立つ。富士山のディテールをはっきりさせるためにマイナス補正をかけてみたが、これはマイナスにしすぎ

テレコンを使う

CLA-10にはハクバのサーキュラーPLフィルタを装着した。さらにフィルタの先にテレコンを付けることもできる
 この狙いはまあまあ成功したが、やはりもっと富士山を引き寄せたくなる。そこで、望遠端からもっと寄るために、別売オプションの1.7倍テレコンバーター「TCON-17」(15,000円)を使用してみた。

 TCON-17を装着するには、コンパージョンレンズアダプタ「CLA-10」(3,800円)を介する必要がある。SP-550UZにCLA-10をねじ込み、その先端にTCON-17をねじ込むことになる。また、撮影メニューでテレコンバータの項目をオンにする必要がある。ここをオンにしておかないと、Exifにテレコン非装着時の焦点距離が記録されてしまう。

 余談ながらCLA-10の先端には、TCON-17だけでなくて55mm径のフィルタを装着することもできる。SP-550UZは前玉が大きく、つい触れてしまうこともしょっちゅうなのだが、フードやプロテクタを付けることができない。このアダプタをつけっぱなしにしておけばプロテクタを装着できる、と喜んだのだが、残念ながら60mmより広角側では、アダプタにケラれてしまう。フィルタは装着できるけれど、用途は限定されるだろう。


広角側ではアダプタにケラれる 60mmを超えるとケラれなくなる

 閑話休題。テレコンになってもピントが合わない事情は同じなので、前景でピントを合わせてから、フレーミングしなおした。テレコンを付けると焦点距離は実に828.6mm。ここまでくると三脚だけでもちょっと不安になるのでレリーズケーブルがほしくなる。残念ながらケーブルはもちあわせていなかったので、セルフタイマーで撮影することに。普段、ブレ防止を目的にセルフタイマーを使うときは2秒に設定するのだが、このときは2秒でもブレが収まらないような気がして、12秒にした。

 意図したとおり、富士山を大きく写すことができた。80kmも離れたところからこれだけ撮れれば十分だが、もう一押しして、RAWで撮影して見た。SP-550UZのRAW撮影は、多くのコンパクトデジカメのRAW撮影機能同様に、レリーズから記録完了まで10秒ほどかかる。なかなか大変なのだが、今回のような状況なら有効な機能だ。対応する現像ソフトが今のところOLYMPUS Master 2しかないのが残念なところだが、現像時に画像の調整ができるのはありがたい。作例では露出、ホワイトバランス、コントラスト、シャープネス、彩度と、調整できる部分はほぼいじってみた。


1/640秒 / F4.5 / プログラムAE / ISO50 / -1EV / オート / 138.5mm
テレコンで撮影してみた
1/1000秒 / F4.5 / プログラムAE / ISO50 / -1EV / オート / 138.5mm
RAWで撮影して現像

 というわけで、これだけ遠くの被写体を撮るのも、SP-550UZならそこそこやれるということがわかった。ピント合わせには苦労したが、後で、こんなときはシーンモードの「風景」にしてしまえばいいのだと気がついた。露出などの自由度は減るが、風景モードならどんなズーム位置でも無限遠を出してくれるのだった。

 問題は、これだけ被写体までの距離があると、天候などの条件のほうが、画質を左右する要素として大きいということだ。なんだかぼんやりした作例が多くて、SP-550UZの写りが悪そうに見えてしまうが、これは条件が悪かっただけだ。もっと近くの被写体なら、SP-550UZは望遠端でもよく写るのは、この連載のこれまでの回や、ほかのレビューの作例をごらんいただければわかると思う。

 春という季節も不利だったのだろう。この撮影には2週間ほどかけたが、ここまで富士山が見えたのは結局この日だけだった。空気が澄む冬に、再チャレンジしてみたいものだ。夕暮れどきなどに山際に太陽が見える「ダイヤモンド富士」なども挑戦してみたかったのだが、果たせなかった。まあ近所だし、これからもちょくちょく撮ってみよう。なにしろ家の近所でここまで撮れるのだから。


1/15秒 / F8 / 絞り優先AE / ISO50 / 0EV / 晴天 / 84.24mm
夜明けの富士を狙って別な日に撮ってみたが、霞んでほとんど見えない
なので、Photoshopでトーンカーブをいじってなんとかここまで見えるようにしてみた

1/500秒 / F2.8 / プログラムAE / ISO50 / 0EV / オート / 4.68mm
こちらは港北ニュータウンの住宅街の中にある富士山。標高80mの人工の富士山「川和富士」で、富士山信仰のために作られた富士塚のひとつ。上の作例を撮ったのは、この山の頂上

1/250秒 / F4.5 / プログラムAE / ISO125 / 0EV / 晴天 / 138.5mm
今回はもやっとした画像が多いので、こんな作例も。テレコン装着の望遠端でもこのくらいは写る
1/250秒 / F3.7 / プログラムAE / ISO50 / 0EV / 晴天 / 12.63mm
左の作例を撮ったのは葉山の立石海岸。画面中央の岩が立石と呼ばれる。条件がよければ立石の左に富士山が見えるはずだった


URL
  オリンパス
  http://www.olympus.co.jp/jp/
  製品情報
  http://olympus-imaging.jp/digitalcamera/sp550uz/

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( 本誌:田中 真一郎 )
2007/05/11 00:56
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