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富士フイルム FinePix F30【最終回】
何不自由しないコンパクトカメラ

Reported by 本誌:折本 幸治


 発売日に手にしてから早2カ月が経った。ほぼ毎日持ち歩き、どうでもいいものを果敢に撮っている。この間、梅雨空が続き好天に恵まれなかったものの、逆に高感度域での実力をひんぱんに見ることができた。屋内でも楽に撮れるので、まさに「日常メモカメラ」として手放せない状態だ。

 もちろん、旅行や出張にも必ず携帯した。その場合、デジタル一眼レフカメラのサブ扱いになるわけだが、目的地までの移動中や、空き時間などに生じたちょっとした散策中などなら、気軽に胸ポケットから取り出せるFinePix F30が大活躍する。旅行中はテンションが高まっているので、以前なら「この暗さではまず撮らなかった」というシーンにも果敢に挑戦できるのがうれしい。結果としてFinePix F30を持ち歩くことは、撮影への強烈なモチベーションを得ることにつながると思う。おおげさだけど「24時間写欲を満たし続けてくれるカメラ」とでもいっておこう。

 さて最終回は、これまで使った中で気になった点を挙げてみる。といっても、欠点が思い浮かばないのが本当のところだ。「欠点のなさが欠点」というオチにするわけにもいかず、重箱の隅をつつくようなアラ探しに終始することを了承いただきたい。

 まず「露出が明るめ」。これはFinePix F11の頃から気になっていた。ほとんどのシーンで問題ないと思うが、得てしてハイライトがトビがちだ。この場合、マイナスに露出補正するか、露出モードを「アベレージ」にするとちょうど良いことが多い。

 次に「パープルフリンジ」。白トビの周囲に出やすい。普段はほとんど気にならないが、画面の端に発生すると幅が広くなり、プリントでも目立つことがある。F4以上に絞ると幅が狭くなるが、端の方だと最小絞りのF8でも消えない。ただし、白トビ近辺に現れるパープルフリンジは、上記のマイナス補正やアベレージ測光である程度防げる。

 レンズ関連だと、広角側で「タル型に歪む」というのもある。ただし程度の差こそあれ、ほかのコンパクトデジタルカメラでも見られる。

 最近はレタッチソフトにパープルフリンジやタル型歪みを補正する機能が付いているので、ある程度の補正は可能だ。それでもPhotoshop CS2などではソフト側が想定するよりも幅が広いからだろうか、色収差補正機能で幅広のパープルフリンジを消し去るのは難しい。もっとほかのソフトも試してみたいと思う。

※作例のリンク先ファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
※写真下の作例データは、記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。


2,848×2,136 / 1/480秒 / F5 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 8mm 2,848×2,136 / 1/350秒 / F4.3 / -0.33EV / ISO200 / WB:オート / 18.1mm

2,848×2,136 / 1/600秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 8mm 2,848×2,136 / 1/450秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 24mm

 そのほか困るのは「ヒストグラムが出ない」ことぐらい。あとは「ズームのステップ数が物足りない」、「PLフィルターが付けられない」、「ごくたまにポケットの中でモードダイヤルが勝手に動く」といったところだ。バッテリ―も500枚以上持つし、1GBのxDピクチャーカードを入れておけば2泊3日の旅行でも大丈夫。本当に手間がかからないデジタルカメラだ。

 ちなみに富士フイルムによると、xDピクチャーカードはType MでもType Hでも、本体内での記録速度は変わらないそうだ。FinePix F30に限らず、同社の現行デジタルカメラすべてに当てはまるという。そのため、富士フイルムではType Hを発売していない。それでもType HだとType MよりPCへの取り込み時間が1.5倍ほど速くなるので、効率を重視する人には勧められる。


FinePix S6000fd
 なおFinePix F30になってから、シーンモードが大幅に多くなった。FinePix F11では「ナチュラルフォト」、「人物」、「風景」、「スポーツ」、「夜景」しかなかったのに、FinePix F30では「花火」、「夕焼け」、「スノー」、「ビーチ」、「水中」、「パーティー」、「美術館」、「花の接写」、「文字の撮影」、「高感度2枚撮り」が加わった。「水中」は専用ハウジングを使った水中写真用のモード。正直、使ったことがないものの方が多いが、「花火」や「ビーチ」など、これからの季節で役立てたいと思う。

 もちろんFinePix F30を使っていると、「もっと広角や望遠で撮りたい」、「マニュアル露出で撮りたい」、「RAWで撮りたい」といった欲求は常に起こる。画質が良いだけに当然だろう。デジタル一眼レフカメラの代わりは無理としても、ちょっとした作品撮りにもっと活用したいものだ。特にこのカメラの場合、画像処理エンジンを介していないRAWデータに興味がある。

 また、さらに持つ喜びを感じられるように、スタイルにもカメラらしさがもっとほしい。といってもFinePix F30はあくまでエビちゃん世代とそのファミリーにアピールしたカメラであり、マニア狙いのGR DIGITALではないのだから仕方がない。

 そんな希望を叶える新製品が、9月上旬発売の「FinePix S6000fd」かもしれない。この製品に初めて触れたときは、思わず「よっしゃ!」と叫んでしまった。FinePix F30と同じCCDと画像処理エンジンに、28-300mm(35mm判換算)、F2.8-4.9の高倍率ズームレンズ、マニュアル露出、RAW撮影と、上記の要件を満たした内容になっている。

 出てくる絵は「ほとんどF30と同じ」(富士フイルム)とのこと。わずかな改良はあるが、基本的な絵づくりに変更はないという。少しだけ触った印象では、レスポンスもよく、ズームリングでの操作も心地よい。細かくダイヤに刻まれたローレットなど、通好みの意匠も見られる。レンズ部以外はEOS Kiss Digital Nより大きいけど……。

 ともあれ、これから購入するなら、F30とS6000fdで悩むのもいいと思う。コンパクトデジタルカメラとしてバツグンに画質はいいので、本格的な撮影への対応と機能面での充実を期待するなら、実売で1万円高のFinePix S6000fdという選択もアリだろう。


2,848×2,136 / 1/170秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 8mm 2,848×2,136 / 1/320秒 / F4.5 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 8mm

2,848×2,136 / 1/340秒 / F5 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 12.2mm 2,848×2,136 / 1/320秒 / F4.5 / -0.67EV / ISO100 / WB:オート / 8mm

2,848×2,136 / 1/350秒 / F7.1 / -1EV / ISO200 / WB:オート / 24mm 2,848×2,136 / 1/50秒 / F5.6 / 0EV / ISO1600 / WB:オート / 8mm

2,848×2,136 / 1/250秒 / F4.7 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 20.1mm 2,848×2,136 / 1/340秒 / F4.5 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 8mm(F-B&Wモード)


URL
  富士フイルム
  http://www.fujifilm.co.jp/
  製品情報
  http://fujifilm.jp/personal/digitalcamera/finepixf30/
  気になるデジカメ長期リアルタイムレポートバックナンバー
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm.htm

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( 本誌:折本 幸治 )
2006/08/01 00:51
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