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【今年の傾向】エプソン編

Epson Color以外にもアイデア満載の複合機


PM-A950
 一昨年、フォトイメージング機能にフォーカスを当てたインクジェット複合機「PM-A850」を発売、ヒットさせ、さらに昨年は各上位モデル相当のプリンタ部、スキャナ部を装備した「PM-A900」で人気を博したエプソン。昨年も販売の主力は複合機へとシフトしていたが、今年はさらに複合機へのフォーカスを強めている。

 プリンタヘッドこそ一昨年からの流れを引き継ぎ、ドット配置精度を向上させた昨年モデルとほぼ同等(やや高速化)ながら、Epson Colorと名付けた新しい自動画像補整技術を複合機の上位2機種に投入した。

 ハードウェアの面では中上位モデルの「PM-870」が「PM-890」となり、筐体デザインも含めて全面改定。PM-A900で導入されていた機能の一部を取り込みつつ、16:9プリントにも対応するなど、このクラスとしては充実した機能を備えている。


DPEを意識し積極的な補正を行なうEpson Color

 エプソンが今年、もっとも力を入れているのが「Epson Color」の認知度向上である。エプソンはデジタルカメラのDPEプリントに対抗するため、インクジェットプリンタの方がきれいに手早く印刷出来ることをアピールしているが、そのイメージを伝えるキーワードとしているのがEpson Colorというわけだ。

 具体的には新型の自動画像補整技術である「オートフォトファイン! EX」を基礎にした、あらゆるデジタルカメラ画像をきれいな色彩で表現するものとの事。しかし自動補正技術そのものには、オートフォトファイン! EXの名称が与えられている。このあたりでやや混乱しそうだが、話はもっとシンプルだ。

 フィルムカメラの時代、フジカラー、コダカラー、さくらカラーなど、感材メーカーは自社のフィルムやプリントサービスにブランド名を付け、メーカー独自の絵作りをブランド名と結びつけていた。「○○カラーなら安心してきれいで長持ちするカラープリントが得られる」という安心感、信頼感を得るためだ。

 その背景には、フィルムと印画紙の組み合わせやDPEマシンの自動露出補正など、様々な技術的背景があるが、それらを隠蔽して、まとめてブランド名で信用してください、というやり方である。

 プリンタの場合、印刷に利用するソフトウェアやレタッチソフト、ドライバの機能を使いこなすことで、もっと自由度の高い、ユーザーの意志を込めたプリントが可能だ。マニア層が中心ならば、そうしたプロフェッショナルライクな使いこなしを行なうための機能や性能を、購買層自身が勉強し、比較して、プリンタを選んでくれていた。

 しかし写真画質プリンタも成熟の度合いが進み、もっと象徴的なキーワードで自社プリンタの美しさをアピールしなければ、一般ユーザー層に響いてこなくなっているのが現状だ。Epson Colorというブランド名を立ち上げる背景には、成熟し、複雑化してきたインクジェットプリンタとその周辺技術があると言えるだろう。

 とはいえ、“今日からエプソンプリンタはEpson Colorで安心して印刷していただけます”といっても、急に認知が広がるわけではない。いったいそれはどういうものなのか? その象徴として存在するのが、オートフォトファイン! EXであり、その裏側にはこれまでに作ってきたエプソンの絵作りがあるというわけだ。


積極的に補正を行なうオートフォトファイン! EX

 実際にオートフォトファイン! EXを使ってみたところ、その特徴は、これまでのオートフォトファイン! に比べ、よりメリハリのある絵へと積極的に補正を行なう点にあるように感じた。

 ハイライトを明るめのトーンで描く一方、シャドウ部はやや引き込み気味で、メリハリのあるコントラスト感の高い画像になる。逆光にも対応した露出補正も積極的で、失敗写真を自動的に生き返らせる効果も持つ(その一方で、補正してほしくないものも補正される場合はあるのだが)。

 自動処理だけに完全というわけではないが、おおむね補正は好ましい方向に行なわれる。意図的に露出を変えている写真でないならば、オートフォトファイン! EXだけで十分な結果が得られそうだ。

 また顔認識技術が用いられており、写真中に顔が見つかると、顔に該当している色を好ましい肌色へと補正する。一方、青空や森などは鮮やかでヌケのいいクロームフィルム系の色に演色される。

 なお、Epson ColorはPCからのプリントのみならず、メモリカードからのダイレクトプリントでも有効だ。ただし、複合機におけるEpson Color対応モデルはPM-A890とPM-A950のみ。これはPM-A750以下の製品が、4色インクシステムにしか対応していないためのようだ。


フォトイメージングユーザーをターゲットにしたアイデアを満載

PM-A890
 昨年まではコピー時のずれを補正したり、内周径を指定する事はできなかったが、今年は内周径を数値で指定可能になった。このため、ハブ部分まで印刷可能なディスクを用いれば、ピクチャーディスク仕様のラベルも違和感なくコピー可能となった。

 またメモリカードの画像を選択し、レーベル面にレイアウト出力する機能もある。この際、もちろん印刷可能な内周径を指定することが可能だ。PM-A890では、さらに文字入力を行ない、タイトルをレイアウトすることも可能になっている。

 キヤノンが同等機能を実装してきたとはいえ、手書き合成シート機能も健在だ。この機能は写真に手書き文字やイラストをオーバーレイ出力する機能で、あらかじめ出力しておいた手書き合成シートに直接書き込み、それをスキャナで読み込んでから再出力する手順を踏む。

 手書きで入れる文字の縁取りタイプを選べるなど芸が細かく、また手書きエリアにはうっすらと画像がプリントされるため、正確な位置に書き込む事ができる。さすが2世代目となり、こなれてきたという印象だ。

 このように、よりフォトイメージング機能の熟成を進めたエプソンのインクジェット複合機だが、今年のブランニューモデルであるPM-A890には、いくつかの新しい試みも導入されている。

 そのうちのひとつは16:9画像の印刷だが、もうひとつ赤外線インターフェイスを通じた携帯電話からの印刷機能もある。携帯電話のカメラは、今や100万画素オーバーも珍しくなくなっているのはご存知の通り。携帯電話のメモリカードは、miniSDカードをはじめアダプタを介してしかダイレクトプリントを行なえないものが多く、ワイヤレスでの印刷は意外にも便利に使える。

 また、携帯電話との赤外線通信を用いて文字入力も可能となっている。入力した文字は、前述したレーベルプリントにタイトルとしてレイアウトできるほか、はがき、L版、カード、名刺などにもレイアウトできる。文字の位置などはプリセットから選ぶだけだが、PCを使わずに単体でプリンタを利用してもらおうという意図が強く伝わってくる機能である。


上位2機種が強いエプソンのラインナップ

 エプソンのインクジェット複合機は、上位2機種が6色染料インクを用いたフォト画質重視のモデル。中下位機種のPM-A750は染料4色ながらフィルムスキャン対応2,400dpiスキャナ装備(ただしCCDではなくCIS方式)、最下位モデルのPX-A650が普通紙画質を重視した顔料系4色インク機という構成である。

 上位2機種はヘッドこそ従来と同じだが、駆動周波数を高速化し、L判フチなし時の印刷パスを最適化することで、特にL版フチなしプリントの速度を向上させた。それでもライバル上位機種には及ばないが、フチなし印刷速度の遅さが弱点のひとつと言われてきただけに改善の効果は小さくない。

 もっとも、液晶が2.5型から3.5型へと大型化され、スキャナも最高4,800dpi(従来は3,200dpi)へと高精細化したとはいえ、PM-A900は機能的には従来機とほぼ同じ。画質面でもEpson Colorのコア技術であるオートフォトファイン! EX以外は、ほぼ同等。

 これに対してPM-A890は各種の機能アップに加え、スキャナ解像度が2,400dpiから3,200dpiへと向上(35mmフィルムスキャンにおいてこの違いは小さくない)。価格的にはPM-A870に対してほぼ据え置き。印刷速度こそ多少遅くなるが、コストパフォーマンスの面ではラインナップ中、もっとも優れている。

 とはいえ、両機種ともにそれぞれの持ち味はある。PM-A950の2ウェイ給紙やカートリッジ交換性の高さも見逃せないところだ。しかし、下位機種はこれらに比べると、個性が今ひとつ見えにくい。


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( 本田 雅一 )
2005/12/01 01:02
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