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鉄道写真のクオリティーを格段にアップさせる…キヤノン「Neural network Image Processing Tool」

ディープラーニング技術を採用した画像処理技術「Neural network Image Processing Tool」。解像感が上がりノイズが減る。鉄道風景写真においてその効果は絶大だ。

福島啓和

1975年生まれ、JR九州の広告やカレンダー・オフィシャルスチール及びムービーを撮影。JR時刻表の表紙も担当。2004年から広告写真スタジオ勤務を経験し、2013年鉄道広告写真家として独立、現在に至る。日本鉄道写真作家協会会員。

※本企画はムック『超・鉄道風景 撮影ガイド』より転載・加筆したものです。

レンズオプティマイザ──解像力のアップ

適用後画像
EOS R3/RF28-70mm F2 L USM/31mm/マニュアル露出(F4.5、1/1,600秒)/ISO 400/WB:5,500K/久大本線 筑後大石〜夜明
適用前|適用後
車体の文字とエンブレムがはっきりした。ノイズも消えて格段に見やすくなっている

桜を前景に走る「ななつ星in九州」と新緑がまぶしい「36ぷらす3」を撮影した。このように引き気味に列車を写した場合、列車のディテールが甘くなることが多いが、これはレンズの原理上必ず起こる光学的なボケである。決してピントが甘かったとか落ち込むことではなく仕方のない現象だ。

この現象に対して「ニューラルネットワーク レンズオプティマイザ」を適用させるとクリアな画像へと変化する。上の桜とななつ星の写真では、小さく写っている車体のエンブレムやロゴがシャープになり、全体的に像が引き締まった。レンズオプティマイザを適用すると色みも変化し、グリーンが鮮やかな色合いになる。

下の「36ぷらす3」の写真では、清流のエメラルドグリーンが上品な色みに変化した。レンズオプティマイザは順光で、かつコントラストが高い写真では、エッジとノイズを認識しやすいため効果的に働く。コントラストが弱い逆光写真では効果が多少弱くなる。

適用後画像
EOS R8/RF200-800mm F6.3-9 IS USM/800mm/マニュアル露出(F9、1/160秒)/ISO 6400/WB:日陰/大村線 松原〜千綿
適用前|適用後
背景の新緑がくっきりと鮮やかに。車体のエッジもシャープで際立っている

ノイズリダクション──ノイズレスでクリアな風景

適用後画像
車体や海にあったざらついた高感度ノイズが見事に消えて車体の美しさがよみがえった
EOS R3/RF15-35mm F2.8 L IS USM/16mm/マニュアル露出(F5、1/1,250秒)/ISO 800/WB:オート/日豊本線 北川〜市棚

黄昏時の大村湾に沿って走るJR九州のYC1系。前照灯がレールを輝かせ、赤く染まった空が水面に映る印象的なシーンをISO 6400で撮影した。全体的にややざらついた仕上がりだが、さほど気にならないレベル。しかし水面や照らされるレールと枕木、YC1系の屋根の解像感が気になったため「ニューラルネットワーク ノイズリダクション」を適用したところ、驚くほど全体的に艶やかな仕上がりになった。

水面と屋根にのっていたノイズが一切なくなり、まるで光沢紙にプリントしたような印象に変化した。車体前面上にあるLED行先表示器の文字にあった偽色も改善して読みやすくなった。

適用前|適用後

鉄道の車両は平らの滑らかな外装で構成されているものが多いため、ノイズリダクションとの相性が良く、適用すると低感度で撮影したような滑らかな画像になる。強めにかけるとノイズは消えるが、光条のキレも鈍るので、写真に応じてパラメーターを調整しよう。

Neural network Image Processing Toolの使い方

有料プランに加入する

Neural network Image Processing Toolを使うには有料プランの加入が条件となる(1カ月の無料期間あり)。加入にはキヤノンIDが必要になるので持っていない人は登録しておこう。

Windows 10以降のみ対応。Neural network Image Processing Toolの月額費用は550円/31日、5,500円/365日。

※プランの詳細や使用条件はこちらをご覧ください。

DPPの拡張機能から起動する

DPPの起動後、「拡張機能」の「ダウンロード/更新」でNeural network Image Processing Toolをダウンロードしてインストールする。インストール後はRAWファイルを選択して「拡張機能」からツールを起動する

効果のパラメーターを選ぶ

ツールを開き「設定を開く」を押す。ノイズリダクションとレンズオプティマイザはスライダーを右に動かすと効果を強め、左に動かすと弱められる。センターは「0」になっている

対応カメラ

EOS-1D X Mark III / EOS R3 / EOS R5 / EOS R6 MARK II / EOS R6 / EOS R6 Mark II / EOS R7 / EOS R8 / EOS R10 / EOS R50 / EOS R5 C

解像感を維持したまま画素数が4倍にアップする「Neural network Upscaling Tool」

雑誌の扉などページの都合で、横位置で撮影した写真を縦位置で使いたいという場合も多い。トリミングすると画素数が下がって誌面クオリティーに足りないことがある。

そういうときに使っているのが「Neural network Up scaling Tool」だ。自然な印象のまま縦横の解像度を2倍にしてくれる。

効果のパラメーターを選ぶ
ツールを起動して写真をドラッグ&ドロップする。JPEGとTIFFファイルに対応している
適用後画像
EOS R3/RF100-300mm F2.8 L IS USM/170mm/マニュアル露出(F5、1/1,600秒)/ISO 250/WB:くもり/久大本線 豊後中村〜野矢
適用前|適用後
トリミングすると約550万画素になり解像感が足りない印象。Upscaling後はディテールが大幅に向上している

Neural network Upscaling Toolの月額費用は275円/31日、1,100円/365日。

※プランの詳細や使用条件はこちらをご覧ください。

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福島啓和