佐藤嗣写真展「MIAGETEMIRU」～東京23区～

遠いある日のこと、友人が運転する黒いシトロエンの助手席に座って、天井に空いたサンルーフから、ぼんやりと空を見上げていた。流れていく四角く切り取られた都心の空は、フロントガラスに映る車の渋滞や雑踏とは対照的に、静寂ささえ漂って来そうな別世界。

「東京にもきっと、遠い島で見たような高い空と、微妙に形を変えながら現れては消えていく雲が、あのビルの向こうに広がっているんだろうな。」

MIAGETEMIRU…すっかり日常となってしまった東京の街と、その向こう側にあるものを、普段とは少し違う視点でとどめてみたいと思い始めていた…

フォトジェニックなヨーロッパの街や風景に比べると、展示作品は、抽象的でやや難解な印象を受けるかもしれません。しかし、オブジェのように切り取られた構造物の背景には、都心とは思えない、そして都心にしかない詩的な情景も感じていただけると思います。

（写真展情報より）