庄治政写真展「DEN-EN 痕跡考」(オリンパスギャラリー大阪)


(c)庄 治政

田園地帯とその集落で目に付いた「痕跡」を撮影。ここで言う「痕跡」とは人が生活をしていた印としての「痕跡」のことである。「痕跡」を収集して私たちの日常がどのように維持されてきたか、あるいは維持されているかを見ようとした。別の見方をすれば環境問題なのであるが、作者としては現在問題視されている環境の悪化を告発するつもりはない。というのは環境の切実な問題とするには、収集した写真からでは伝わってこないからである。そのことを承知であえて作品化を試みたのは、「痕跡」が実は偶然にもアートとして着眼できるように思ったからである。しかも特別な地域などではなく、作者の身近な日常の中で生じているところに存在価値がある。
みずみずしいグリーンの田園の風景は日本のどこでも目にすることの出来る素晴らしいものであるし、季節によってその色彩は別の色に変化していく。自然が与えてくれている豊かなアートであると思う。今回はそのグリーンをキャンバスに様々な人の手で置いてきた「痕跡」を見ていった。「痕跡」とは言えないものまで含まれているが現在の農村の状況までを捉えながら朽ち果てたモノや、いずれ厄介になるであろう墓石や、新しく塗り替えられた朱色の鳥居といったものなどである。それらの情景は自然への渇望と思われる気持ちが重なる。
もちろん、農村が社会的に様々な問題を抱えていることを考えれば、アートなど言ってはおれないかもしれない。それは経済や政治などの課題として解決されるものである。もっともアートだけが特別であるはずがないと思う。起きている事象を見据える素養の眼こそ今もっとも必要としている。わずかでも問題の提起となれば幸いである。

出展作品数:カラー 約40点(写真展情報より)

  • 名称:庄治政写真展「DEN-EN 痕跡考」
  • 会場:オリンパスギャラリー大阪
  • 住所:大阪市西区阿波座1-6-1 MID西本町ビル
  • 開催日:2012年4月5日〜2012年4月11日
  • 時間:10時〜18時(最終日は15時まで)
  • 休館:日、祝日

(本誌:鈴木誠)

2012/3/22 00:00