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群馬県みなかみ町に「古民家ギャラリー 里山カメラ館」オープン

カメラと写真文化を発信 暗室も完備

古民家ギャラリー 里山カメラ館(群馬県利根郡みなかみ町須川766)。9時~16時開館(水曜休館)入場無料

日本カメラ財団(JCII)は9月12日(土)、ギャラリーと博物館の機能を融合した施設「古民家ギャラリー 里山カメラ館」を群馬県みなかみ町にオープンした。

建物の時代感にマッチした木製カメラが出迎える。建物の柱や梁など、可能な限り古い構造物を残しているのがこだわりだ

明治31年に建てられた古民家を、東京・半蔵門にある日本カメラ博物館の分館としてリニューアル。博物館、ライブラリー、ギャラリーといった同財団が持つ知見や収蔵品、展示ノウハウなどの全てを注ぎ込む施設となった。

日本カメラ財団 理事長の櫻井龍子氏は、地域振興や観光客向けの施策などにも取り組む「博物館の新しい姿」として提示したいと挨拶。2年半前からみなかみ町と連携協定を結び、建設計画を進めてきた。

みなかみ町の阿部賢一町長も、写真を通じて町の歴史や魅力が多くの人々に伝わることへの期待を述べた。またセレモニーには、半蔵門のJCIIビルに事務局を置く日本写真家協会の熊切大輔会長も出席し、写真の魅力を発信する新たな場所の誕生を喜んだ。

日本カメラ財団 理事長の櫻井龍子氏(右)と、みなかみ町の阿部賢一町長(左)がテープカットを行った
日本写真家協会(JPS)会長の熊切大輔氏。地域の手仕事が集まる「たくみの里」に“写真”が並んだことを嬉しく思うと述べた

里山カメラ館は、みなかみ町の「たくみの里」に位置する。たくみの里は、東京ドーム約70個分という330ヘクタールの面積に20種類以上の体験工房が並び、木工、竹細工、和紙などを手作りできる“里山のテーマパーク”。年間50万人の観光客が訪れ、自然を感じる美しい景色に囲まれた場所だ。近年は都会からのUターンで開業する人も増えているという。

たくみの里のガイドマップ。里山カメラ館でも配布されている。道の駅を起点に、徒歩やレンタサイクルで回るのが楽しそうだ
道の駅や里山カメラ館から5〜10分ほど歩くだけで、自然を感じられる景色に出会える。観光客のレンタサイクルともすれ違った

こうした地域をテーマにした写真展として、館内1階では並木隆氏の「ニイハル・クロニクル」が2027年3月14日(日)まで開催中。みなかみ町になる前は新治村と呼ばれていた地域を、1年間にわたって撮り続けた作品群だ。

里山カメラ館から半径2〜3kmという光景が並木氏の視点で撮影されており、花のマクロ撮影で知られる並木氏の新たな一面を感じられる。早朝に撮影した作品も織り交ぜ、地域の人々にとっても新たな地元の魅力を発見するきっかけになれば、とのことだった。

写真家の並木隆氏。背面に並ぶ作品は写真展「ニイハル・クロニクル」。作品販売や写真をもとにしたグッズ展開を通じて、「写真を買う」という文化もこのギャラリーから発信していきたいという

1階は「写真の間」として、写真展を開催できるギャラリー空間がメインになっている。階段部分には写真集を並べており、来館者が自由に手に取れる。奥には、デザインを手掛けた学芸員が「絶対に設置したかった」と語る暗室があった。水回りや換気設備も行き届いた本物の暗室だ。

建物の木の風合いを生かしつつ展示をデザインしていくとのこと。カラー写真の展示を想定し、5,000Kの白いスポットライトを設置している
並木隆氏のポストカードや、里山カメラ館のグッズを販売。スタッフの1人は東京からみなかみ町に移住し、写真家として職人の姿などを撮影しながら里山カメラ館で勤務しているという
カメラを持つ「ぐんまちゃん」のピンバッジは、ここだけで販売されている品
壁面には写真集を並べた。階段はもともと昔ながらの“はしご階段”だったが、手すりを掴まなくても上り下りできるほどの現代的な階段に改めたという
暗室。3台の引き伸ばし機が並び、複数人でワークショップができそうな設備だ。デジタル時代には、暗室という空間自体が展示物とも言える

2階は「カメラの間」としてデザイン。もともとは養蚕部屋で、その光景が明治の写真館に似ていたことでコンセプトが決まった。この地では7割ほどの家で養蚕が行われていたという背景から、その場所を写場として残そうと考えたという。

カメラとそれに関連する品々の展示がある
オリジナルの柱を残している。蚕棚を設置するための穴がある

歴史を紐解くと、群馬県は1954年に生糸の生産量で日本一だったそうだ。これが日本のカメラ産業が世界的に発展した時期とも重なるため、それらを関連付けた展示も検討しているとのこと。地域と呼応した展示アイデアの数々は、まさしく「博物館の新しい姿」と言えそうだ。

「“日本のシルクロード”の起点のひとつ」というみなかみ町の歴史も大切に紹介されている。これは養蚕のための機械
カメラの展示ケースは新たに作られたもの。天板や棚板にガラスを用いているため、中身が明るく見られる
2階はひとつの広々とした空間になっている

カーテンで区切られたエリアには、カメラの原点である「カメラ・オブスクラ」の原理を体験できる展示を用意。半蔵門の日本カメラ博物館とは違った切り口で、カメラや写真に親しみがない人々にも楽しんでもらえることを意識した展示になっている。

外の景色をスクリーンに映す、カメラ・オブスクラの体験ができるコーナー。19世紀のレンズを使って乳白のアクリル板に投影している
ガラス乾板用の写真修整台。反対側から鏡やライトで照らし、原板ネガに筆などで修整を入れる
肘掛けが片方にしかない椅子は、写真館のために作られたものだそうだ。どちらもかつて岩手の写真館で使われていた品で、実際に腰掛けて写真を撮るのもOK
写真の手彩色が実演されていた。半蔵門の博物館で小中学生向けワークショップを多く開催してきたノウハウが反映されている。手前はサイアノタイプで制作されたプリント。染め物のような風合いがうちわに似合っている

また、隣の建物は「HANARE」と名付けたレンタルギャラリーとして運営。現在はオープン記念として、約1か月で税別4〜6万円(季節により変動)という貸出料金が設定されていた。

レンタルギャラリー「HANARE」。開館時間は里山カメラ館と同じ
こちらも、明治の古民家の雰囲気を残す建物だ

施設名

古民家ギャラリー 里山カメラ館

開館時間

9時00分~16時00分

休館日

水曜日(祝日は開館・翌日休館)、展示替え期間、年末年始

入場料

無料

所在地

群馬県利根郡みなかみ町須川766

ライター。本誌編集記者として14年勤務し独立。趣味はドラム/ギターの演奏とドライブ。日本カメラ財団「日本の歴史的カメラ」審査委員。YouTubeチャンネル「鈴木誠のカメラ自由研究