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genmegane.com──佐久間元
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佐久間元さんのWebサイトを見ていると、「スナップに賭けている人」であると感じる。スナップ写真を撮る人は数多くいるが、元さんのようにスナップだけを撮り続け発表している人は、すぐには思い浮かべることができない。ぼく自身もそうであるように、スナップ写真を撮りつつもも、それ以外の手法やスタイルの写真にもついつい手を出してしまうという人が多いのではないだろうか。
スナップ写真というのはよく使われる言葉ではあるが、あらためて「スナップ写真とは何か?」と問われると、かならずしも簡単には答えられない。スナップ写真とは「瞬間的に撮る」ことだと、ひとまずは言えるだろう。なんらかの目的に応じて計画だてて撮影したり、セットアップや演出をほどこした写真ではなく、時々刻々と変化し続ける状況において他でもないある決定的な瞬間を切り取った写真ということになるだろうか。もちろん、こうした定義は充分ではないし、実際にスナップ写真を撮り続けているとスナップ写真とは何かという疑問はむしろふくらんでいく。
ここではスナップ写真について細かく語ることはできないが、スナップに写真の可能性を感じつつ、同時に疑問や迷いもあわせ持っているぼくにとって、佐久間元さんの基本的にポジティブで迷わない姿勢は新鮮に映る。
佐久間元(さくま げん)「genmegane.com」 http://genmegane.com/ |
1979年 | 愛知県生まれ |
ワークショップ「夜の写真学校」第8期修了 |
2006年 | 写真展「そこへゆけ」新宿 PLACE M |
2007年 | ニコンJuna21 写真展「そこへゆけ」ニコンサロン(新宿・大阪) |
※記事中の写真はすべて佐久間元氏の作品です。 |
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genmegane.com
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佐久間元氏
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──写真を始めたきっかけは?
写真を始めたのは大学1年の18歳の時です。そのころ旅にハマっていて、毎年春夏冬は北海道に行ってたんです。その記録のために写真を撮り始めました。最初のころは今と違ってネイチャー系の写真中心で、でかいカメラと三脚をかついで山に登ってはきれいな風景を撮ってました。夏は自転車に機材とキャンプ用品を載せてまわって、冬はクロカンスキーで機材背負って撮影に行っていました。
スナップを撮り始めたのはたしか大学3年生の時だったと思うんですが、アサヒカメラで尾仲浩二さんの「遠い町」を見たのがきっかけです。「こんな面白い写真があるのか!」ととても感動して、それから旅先で街を撮るようになりました。その後、旅先だけでなく東京でも撮影するようになり、だんだん街の光景よりも人を撮ることに惹かれていって今のスタイルになりました。
──ワークショップについて。
3年ほど前に瀬戸正人さんがPLACE Mというギャラリーで行なっている「夜の写真学校」というワークショップに参加しました。「夜の写真学校」では受講生が毎週写真を持ってきて瀬戸さんに講評していただき、1~2年ほどかけて作品をまとめて最終的にPLACE Mで写真展をすることが目標、という流れでした。
ワークショップではまず最初に、撮った写真を自分でセレクトせずに全部持ってくるよう言われます。瀬戸さんは毎回各人の膨大な写真全部に目を通し、そこからまず「粗選び」をされます。それを何回か繰り返して「粗選び」された写真がたまってきたら、さらにその中からセレクトをしていき、作品の方向性についてアドバイスをしてくれます。
自分が見落としていた写真を拾い上げることによて、自分の写真を見つめなおし、最終的には自分の写真を見る目を養うことができるようになると思います。
瀬戸さんはとても気さくで面白い方で、講評中も軽妙なトークでみんなを笑わせます。
──瀬戸さんの講評で印象に残っている言葉は?
「夜の写真学校」に通い始めて1年くらい経ったころ、自分の写真がちょっとマンネリ気味になってきたことがあったんです。撮っても撮っても、写ってくるのは毎回同じようなものばかりで。そのことについて瀬戸さんに相談したところ、「君はまだ全然撮り足りない」と言われました。「1回思いっきり撮ってみなさい。たとえば今まで1日に最高10本撮った事があるなら、3倍の30本撮り切るまで帰らない! と言うのを試してみなさい。そうすれば今まで写らなかったものが写ってくるから。」と。
で、実際試して見たんですが、30本は撮りきれなかったんですよ。朝から晩までがんばったんですが20本ちょっとしか撮れなくて。でもネガの上がりを見ると、普段撮らないようなものにもシャッターを切っていて、打率は低いにせよ、面白いものが写ってるんですね。それで量を撮ることの重要性を学びました。
瀬戸さんには今でも「ゲン、もっとたくさん撮れ!」と繰り返し言われてます。
一人で撮ってて方向性が見えない、という方はワークショップに通ってみるのもいいんじゃないでしょうか。「夜の写真学校」、雰囲気良くて楽しいですよ~!……と宣伝しちゃ駄目ですかね(笑)
──Webサイトを始めたきっかけは?
Webサイトを始めたのは、撮影後すぐに発表できる場として魅力的だったからです。現像やプリント作業があるので、撮影してからWebサイトにアップロードするまでに2日くらいはかかってしまいますが、それでも写真展よりはるかに早い。お金もかからずだれでも手軽に世界に向けて公開できるわけですから、これはやっとかないと、と。
あ、あとデジタルに対する対抗心からってのもちょっとありました。頻繁に更新している写真サイトのほとんどが、デジタルカメラを使っている人じゃないですか。普段からたくさん撮ってたくさんプリントしてるんだから、アナログでもスキャンすれば同じようにできるんだぞっ! って思ってまして。
──更新頻度について。
だいたい毎週2、3回のペースで更新しています。更新作業は、プリントをスキャンして簡単にゴミ取り、調整をしてからアップしています。毎回だいたい30分くらいかけています。
ただ写ってるだけでは無く、見ていて違和感を感じるかってトコです。あとは、何度見ても面白いかどうか。最初のセレクトでは撮った時の記憶がありありと残っているので、撮影時の印象が強いだけの写真もつい選んじゃうんですけど、それらは時間とともに振り落とされていきます。自分の中の一次審査は緩くて、二次審査以降が厳しいんです。
もちろん後で見て駄目な写真も多々あるんですが、ぼくにとってWebサイトはセレクトの練習場というか、自分の写真を見返す場と考えています。
セレクトする時によって目にブレがあると思うので、自分の写真は何度も何度もしつこく見るようにしてます。いったんアップしておけば、ネット経由で今までの作品を全部見れるので、毎日毎日何回も何回も自分のページの写真を見てます。HPのアクセス数のうち、半分以上が自分のアクセスかもしれません。
──佐久間さんのサイトはとてもシンプルな作りになっていますね。
更新に手間がかかるデザインにしてしまうと、続かないだろうと思ったんです。で、シンプルに写真だけ見せられるようにしようと。
ただ、海外のブログで「厄介なナビゲーションで、写真を探すのが楽しい」とか書かれてて、あーやっぱりちょっと見辛いんだ(笑)って。
1ページに1枚だけ表示して、それをクリックすることで次々と見せていく見せ方はどうかと言われたこともあります。ぼくの写真は写っているものが結構バラバラなので、たしかに1枚1枚見せるほうがいいかもしれないなと思っています。あと、よく言われるのはトップページですね。あまりに縦に長く見づらいので、去年より前のものはリンクとしてまとめようかと。構想だけでまだ手をつけてないんですが……
──モノクロ写真をWebサイトで見せることの難しさはありますか?
たしかにモノクロの写真をコンピュータのディスプレイで見せるのは難しいですね。環境によってかなり見え方が変わってしまいますし。Webサイトにアップする際に自分のモニタでちゃんと見えるように調整していますが、あまりこだわらない事にしています。
完全に自分の思った形で見せるのは展示で、未完成な部分も含めて即見せるのはWebサイトで、と考えています。今のところ、最終的にはプリントで見せたいと思っています。
──インクジェットプリントについて。
最近モノクロのインクジェットプリントがかなり良くなっているようなので、ちょっと興味があります。印画紙も薬品もだんだん高くなってきていて、いつ無くなるかわかりませんし。ただ、プリンタは毎年のように新しいものが出てくるので、まだ買おうとは思いません。今度展示などで思いっきり大きなプリントをする機会があれば、1度どこかに頼んでインクジェットで出してみたいです。
──カメラは何を使われていますか?
コニカHexarと、ニコンF3に50mmをつけたのを2台ぶら下げてウロウロしてます。あと、GR10を普段使うカバンに入れっぱなしにしてます。
──一時期デジタルカメラも使われていましたが……
去年、ひと月ちょっとの間デジタル一眼レフで撮ってみたんですが、しっくり来ませんでした。同じように撮ってるつもりでも、なぜか駄目でした。背面モニタのせいかと思い、モニタ見ないようにしても変わらず。デジタルにして枚数増えるかと思ったらそうでもなかったですし。最初はズームレンズを使っていたんですが、単焦点に換えて、普段の機材に近づけてみたんですが駄目でしたね。デジタル一眼レフではなく、Hexarの代わりにコンパクトデジタルカメラを使ってみたらまた違うかもしれないですね。
もっと長く使ってみれば慣れたのかもしれませんが、慣れるまでに時間を要するのが嫌でフィルムに戻りました。フィルムが無くなるか、買えないような値段になるまでフィルムで撮り続けると思います。
──デジカメの時はカラーで撮られていましたが、モノクロとカラーについてはどう考えていますか?
モノクロで撮ったほうが、写真を自分寄りに引き寄せやすい気がします。カラーだとどうしても色に目がいってしまうと思うんですけど、ぼくが撮りたいのはそれよりもそこで起こっている「コト」なんです。街行く人のかわった行動や仕草、道端の変な物、そのおかしさを引き立たせるにはモノクロのほうが向いていると思います。
撮影時の目もモノクロモードになっちゃってますし、どんよりと重い感じのモノクロが好きなので、カラーは使いません。
──撮影ペースは?
週2日半~3日くらいです。休みの日は朝から晩まで撮ってます。基本的に雨でも雪でも、土砂降りや台風でないかぎり出かけます。
撮影時以外でもカメラは常に持っていて、いつでもどこでも撮れるようにしています。だいたい週に15本くらい撮って、週末に撮ったネガを日曜日の夜に現像し、月曜から木曜日の夜にプリントしています。
──写真を撮る量について。
ぼくはテーマを持たずに面白いと感じたものはなんでも撮ってやろうと思っているので、たくさん撮ることはかなり重要です。枚数を撮る=たくさん歩くということになるので、それだけおかしな光景に出会う確率が上がります。歩いて歩いて、当たるまで数撃って感じです。
セレクトにおいても、たくさんの枚数から選ぶことによって、より厳しく自分の写真が見られると思います。自分にとっての「良い写真」のハードルを上げてる感じです。ハードル上げたぶんブレの無いセレクトになっていって、自分がシャッターを切っているものの傾向、好み等がよりハッキリして来るかな、と。
今の自分はまだまだ撮り足りないと思ってます。もっともっと撮りたいですね。
──撮影場所について。
撮影場所は特に考えずに出かけて、その場の思いつきで適当に決めてます。電車内で路線表を見て「下町行こうかな」とか「海が(山が)見たいなぁ」とか「最近行ってない所に行こう」とか。新宿・上野・秋葉原・池袋・中野など、ゴミゴミして人の多いところが好きですね。最近は地方に撮りに行ったりしてます。慣れない土地で撮るのも新鮮で楽しいです。
──撮影時の移動方法は?
スタート地点の駅までは電車で移動して、駅から歩きます。バイクで出かけていた時期もあったんですが、バイクを停めた場所にいちいち戻るのがめんどうなのでやめました。人を撮るには徒歩でないと撮りづらいので、つねに歩いて撮ってます。
徒歩のデメリットは、疲れるのと靴下がすぐ駄目になるトコですかね。靴下は穴あきまくりです。
──路上スナップで人を撮ることの困難について。
街で撮る以上肖像権の問題は避けられないと思っています。ただ、それによって「撮らない」という事はぼくはありません。ぼくが撮りたい写真はスナップでないと撮れないですから。被写体に配慮しつつ、撮影によって起こることを全部受け止める覚悟の上で撮らなければいけないと考えています。
撮影時にトラブルは時々ありますが、大体話せば判ってもらえます。「なぜ撮ったのか?」と聞かれたら「自分は普段から街で写真を撮って発表している。今の光景はこう心を動かされたので撮りました」と説明します。たいていはそれで納得してもらえますが、今の写真は発表しないでくれと言われれば、その作品は出しません。フィルムをよこせと言われる事もありますが、そういったことは稀ですね。本当に撮りたくてシャッターを切っているのであれば、そのことを真摯に説明することが重要だと思います。
──デモを撮った写真が多いですね。
以前テーマを持って撮ろうとしてた時に、日の丸を巡る人々を撮っていたことがあります。今は人の多さや非日常感に惹かれて撮りに行っているだけで、特に意識はしてないです。デモも街で歩いていて出会えば撮るという感じです。デモに限らず、人が沢山いると何かありそうなんでつい寄って撮っちゃいますね。
■ URL
バックナンバー
http://dc.watch.impress.co.jp/cda/webphoto_backnumber/
内原 恭彦 (うちはら やすひこ)1965年生。東京造形大学デザイン科中退。絵画やCGの制作を経て、1999年から写真を撮り始める。
2002年エプソンカラーイメージングコンテストグランプリ受賞、2003年個展「BitPhoto1999-2002」開催、2003年写真新世紀展年間グランプリ受賞、2004年個展「うて、うて、考えるな」開催
http://uchihara.info/ |
2007/06/07 02:17
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