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東京的日乗──相馬泰


相馬泰「東京的日乗」
http://nitijyou.exblog.jp/
1962年 東京生まれ
日本大学芸術学部写真学科中退
※記事中の写真はすべて相馬泰氏の作品です。


東京的日乗
相馬泰氏

 くわしいプロフィールを載せていない写真サイトや写真ブログを見ていると「いったいどういう人がこれらの写真を撮っているのだろう?」と思うことがある。namasteeこと相馬泰(そうま・やすし)さんがやっている「東京的日乗」( http://nitijyou.exblog.jp/ )というブログを知ったときも、それらの写真に惹きつけられるとともにブログ主であるnamasteeさんとは何者だろうという興味をかきたてられた。

 「東京的日乗」というタイトルが示すように、東京やその周辺で撮られた写真には、鍛え上げられた技術の裏づけのある端正さと、自在さを感じる。モノクロ、カラー、フィルム、デジタル、135からブローニーまで、さらにはピンホールカメラやパノラマカメラといったさまざまな撮影手法をどれかひとつにこだわるのではなく、自由に使いこなしていることもすばらしいと思った。ほぼ初対面の相馬さんにタイ料理をつまみながらお話を聞いてみた。

──写真を始めたのはいつですか?

 中学の時に写真部に入って、暗室をやったり、図書館で写真集を見たりしていたのが最初かな。大学は日芸の写真学科に進学しました。同級生に写真新世紀でグランプリを獲った故中村ハルコがいます。


──どのようなカメラを使ってきましたか?

 最初に使ったのはミノルタ XEという一眼レフです。その後、20歳の頃、バンコクに長期滞在していた時、バンコクの質屋でテッサーのついたローライオートマットをたしか2万円で買いました。その後マキナのワイドとか使っていたのだけど、香港の夜景や九龍城を撮るために、ペンタックス67にウェストレベルファインダーをつけて使ったりしました。その後はコンパクトカメラをいろいろ使いましたね。コニカ・ビッグミニ、ローライ35、とか。その後、レンジファインダーをいろいろ。最近はペンタックスの*ist DSも使っています。



──ブログをはじめたきっかけは?

 ぼくは数年間、写真から遠ざかっていたことがあるんだけど、そのころ登場してきたヴォルフガンク・ティルマンス(ドイツ出身で、90年代にヨーロッパの現代美術の世界で注目された写真家。ターナー賞受賞)なんかの写真を見て、今ひとつよくわからないけれど何となく気になって、写真の世界も変わりつつあるのかな、という直感を持ったんです。インターネット上で写真を発表している人たちが増えていることにも気づいて、そういう写真サイトやブログを見たり、彼らが写真展をやっていると見に行っていろいろ話をしたりすると同時に、自分のブログがないんじゃ話にもならないので、ブログを始めて自分の写真を載せるようになったんです。

──1日に何時間くらい写真を撮りますか?

 だいたい、午前11時から、日が暮れる夕方の4時くらいまで。日数で言うと月の2/3位は写真を撮っています。

──どのような場所(街)を好んで撮っていますか?

 自宅が江東区にあるんだけど、そこを中心とした東京近辺ということになるかな。あまり遠くには行かないのだけど、千葉方面だったら、船橋、柏。埼玉方面だとせいぜい川口とか。神奈川方面だと横浜が好きだから、その辺はよく歩くかな。中央線で言うとせいぜい三鷹、吉祥寺くらい。

 海外だと、バンコク、香港、台湾、中国全般、カイロなんかで撮ってました。古い中国の文化に関心があって撮りたいんだけど、大陸にはそういったものはあまり残ってないんだよね。文化大革命で破壊されてしまったから。それが残っているのは香港や台湾、あるいは東南アジア全域に広がった南洋華僑の文化やチャイナタウンの中にある。特にバンコクの中華街であるヤワラー周辺は規模も大きくて面白く、何度か長期滞在していたことがあります。



──撮影時の移動手段は?

 基本的には歩き。電車に乗ってどこかの街に出かけて、後はひたすら歩く。自転車を使う時もあって、それはたとえば、いくつかの駅前を続けて撮りたい時なんか。歩きは「線的」あるいは「面的」に街を移動しているのだけど、自転車の場合は「点的」な移動と言えるかな。

 モノクロで撮る時は、ピーカンで順光あるいは斜め45度くらいの光線が好きだから、太陽を背にして歩くことが多くなる。カラーネガの場合は、ちょっと曇っているほうが好みのトーンになるから、その限りではないけれど。

──ストリートスナップについてどのように考えますか?

 ぼく自身は、特にストリートスナップと思って撮ってないんだよね。単に外で撮る写真だと思っている。作られた写真は好きじゃないから、いっさいセッティングはしないで撮る。それが結果的に、ストリートスナップと呼ばれる写真になっているのかもしれない。街を歩く時は、カメラはハンドストラップで手首にまきつけて持ちっぱなしです。ネックストラップで首から下げるということはしない。カメラを持った手を後ろ手に構えて歩きながら、時おり取り出してシャッターを切るという感じです。

──ブログの更新にどれくらい時間を費やしますか?

 フィルムの場合だとスキャニングに要する時間も含めて1日1~2時間くらいかな。スキャニングは35mmフィルムの場合はスロットインタイプで、ブローニーフィルムの場合はフラットベッドでスキャニングします。どちらもスキャナーのデフォルトの設定で、多少シャープネスをかけたり、モノクロのデータに僅かに黄色味を加えたりといった調整はします。



──他人の写真サイトをよく見ますか?

 ブログを始めた当初は、リンクのリンクをたどったりしていろんなところを見たけど、毎日欠かさず見るところは、おのずと限られたいくつかの写真サイトというところに落ち着くね。

──Web上で他人と交流していますか?

 ブログについているコメント欄で短い文章でやり取りをするくらいかな。それよりも、Web上で興味を持った人の写真展に行ったりすることが多いかもしれない。

──Webで見る写真とプリントの違いは?

 ぼくはモノクロプリントのモノとしての価値観も理解しているけど、それが印刷されて雑誌などの媒体に載ることも写真のひとつの在り方だと思うから、かならずしもプリントを展示することだけが写真の発表方法とは思ってない。ただ、Web写真はまだ過渡的な時期かもしれないね。見る側の「許容度」や「理解度」が上がらないと、なかなか認知されないから。まあ、Webを見る人間はどんどん増えていくだろうから、少しづつ裾野が広がっている段階かもしれない。

──好きな写真家、嫌いな写真家はいますか?

 写真というのは、好き嫌いや良い悪いといった単純な評価軸では考えられないと思う。たとえば、嫌いだけど良い写真というのはあるし、良くないけど好きな写真というのもある。ぼくにはわからない写真やあまり好きではない写真も、自分にはない何かを持っているかもしれないと思うから、理解したいし「参考にする」という気持ちで見ています。

 たとえば、今はクリアーしたけど、昔はウィリアム・エグルストン(1939年生まれのアメリカの写真家。いわゆる“ニューカラー”の創始者のひとりとも言われている。南部の名家の出身で、これまで定職についたことはないらしい)の写真がわからなかった。でも、アメリカの文献なんかを探して、自分で読んで考えることで、少しづつ理解が深まっていった。ティルマンスとかWeb写真なんかに対しても、同様な立場です。



───デジタルとフィルムについてどう考えてますか?

 デジタルについては「うん、それもあり」っていう感じかな。ぼくは今もモノクロフィルムで撮ることが多いのだけど、今の時代に、銀塩でモノクロで撮っていていいのかな、という疑問をいつも抱いている。ただ、デジタルはまだ進化の途上で新機種や新しいテクノロジーが開発されるにつれて、画質が向上するのはいいんだけど、長いスパンで作品を作るということを考えると時期的に画質の差が生じるのは問題じゃないかと思ってる。

 オーディオの世界では、その時代に録音された音源はその時代の再生機器で聴くのがベストだという説があって、たとえば50年代に録音されたジャズのレコードは、その時代のアンプとスピーカーで聴くのが一番いいんだ、というわけだね。この喩えで言うなら、写真もその時代に開発されたカメラとレンズで撮るのがいいんじゃないか、とも思える。今のこの時代の街をビビッドに撮るにはデジタルがより適しているもしれない。



URL
  バックナンバー
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/webphoto_backnumber/



内原 恭彦
(うちはら やすひこ)1965年生。東京造形大学デザイン科中退。絵画やCGの制作を経て、1999年から写真を撮り始める。
2002年エプソンカラーイメージングコンテストグランプリ受賞、2003年個展「BitPhoto1999-2002」開催、2003年写真新世紀展年間グランプリ受賞、2004年個展「うて、うて、考えるな」開催
http://uchihara.info/

2007/03/15 02:13
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