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はる・なつ・あき・ふゆ──河本順子
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河本順子
http://pocari.exblog.jp/
1964年 | 大阪府生まれ |
2003年10月 | Web上デジカメサークル「お散歩ネット」参加 |
2003年12月 | デジカメを購入、写真をはじめる |
2004年4月 | ブログ「はる・なつ・あき・ふゆ」開始 |
2005年3月 | ワークショップ須田一政塾大阪 参加 |
2005年10月 | 大阪須田塾写真集「黄金の天井」参加 |
2006年5月 | グループ写真展「千々の瞬き」CASO |
2006年8月 | グループ写真展「紅い指」CASO |
2006年9月 | グループ写真展「布袋」R.ローカス |
2006年10月 | 現代美術講座「高嶺格:アーティストワークショップ」参加 |
2007年1月 | 個展「雛祭り」R.ローカス |
※記事中の写真はすべて河本順子氏の作品です。
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はる・なつ・あき・ふゆ
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河本順子氏
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新しい写真サイトを発見する時は、いつも偶然というか不意打ちのような感じを受ける。他人のページのリンクやブックマーク、あるいは自分のページのリファラ(参照元。自分のページにリンクしているページを示している)をたどって、未知の写真に出会うことは新鮮な体験である。
河本順子さんのブログ「はる・なつ・あき・ふゆ」は、たしか山田大輔さん( http://www1.odn.ne.jp/~caa31720/ )のリンクから知ったのだけど、そこに載せられている写真の質の高さにただちに目を引かれた。誰に教えたというわけでもなく、示し合わせたわけでもないが、たちまちぼくの周辺の人たちのブログやWebで「はる・なつ・あき・ふゆ」をリンクしたりブックマークする人が増えた。皆それぞれ「はる・なつ・あき・ふゆ」を、驚きとともに発見したものとみえる。
河本さんはのブログは、頻繁に写真が更新され、時には文章が書かれ、コメント欄では活発にやりとりが行なわれている。現在進行形で変化し続ける、まさに生きて動いている「Web写真」という印象を受けた。
今回は、メールによって河本さんにいくつかの質問に答えていただいた。
──いつから写真を始めましたか?
2003年の年末、デジカメを購入したのがきっかけです。もちろん、それ以前にも写真を撮ったことはあります。ただそれは旅行に行ったときとか、記念撮影程度ということでした。
──そのきっかけは?
その頃の趣味が登山だったんですけど、登山の好きな人って、何故か写真好き(というよりカメラ好き?)な人が多いんです。で、周囲の影響で興味を持ち始めました。カメラを貸してくださる方も現れまして、撮ってみると結構おもしろかった、それがきっかけだったように思います。
──ブログを始めたきっかけは?
ブログは2004年4月29日から始めました。その半年ほど前にデジカメを買って写真を撮っていて、写真がたまってきたんです。
で、どうしたものかと。
そのころネットを通じて知り合った友人がホームページを持っていて、1日1枚ずつ写真をアップされていたんですね。毎日それを見るのがとても楽しみだったんです。同じことができないかと思ったんですが、ホームページを自分で作成するのはめんどくさそうだったんですね。そういうセンスもないし。で、ブログの存在を知り、ためしに作ってみたのが「はる・なつ・あき・ふゆ」です。
──エキサイトブログを使っている理由は? あるいは他のブログサービスとくらべてどうですか?
最大の理由は、最初に作ったのがたまたまここだったから。でも、引き続き使っている理由としては、非常に使いやすいことがあると思います。ブログ初心者でも簡単に作成できたり、リンクが簡単にできたり、コメントが入れやすいことなどですね。
「はてなダイアリー」のようなサービスはとても便利で、私も「はてなRSS」(自分がよく見ているWebサイトやブログを登録しておけば、それらが更新された時に自動的にそのエントリーを収集して表示してくれるサービス)などを利用しているんですけど、どうも玄人ぽい感じがするんですよね。敷居が高い感じがします。エキサイトブログの方がより幅の広い層の方に見てもらえる機会があるかなーと。
ブログについては、自由に行き来できて、いろんな方が好き勝手なことを言ってくださったらおもしろいんじゃないかと思ってるんです。写真に関係ないことも全然OKだし。なので、なるべくそういうチャンスがある方がいいかなと思っています。
──どのようなカメラやレンズを使っていますか?
OLYMPUS C-4100Z(2003/12~2005/2)
NIKON D70(2005/2~)
Ai 28mm F2.8
Ai 35mm F2.8
Ai 50mm F1.8
Ai 105mm F2.5
AF-S DX 17-55mm F2.8 G
もっとも使用頻度が高いのはAi 35mm F2.8です。
──それらのカメラやレンズを使う理由は?
デジカメを使う理由は「速攻」性ということにつきると思います。一時期フィルムを使っていたこともあるんですけど、撮るだけとって現像にださなかったフィルムがたくさんありました。デジカメを始めて1年くらいしてから、モノクロフィルムで撮ってたときもあるんですけど、フィルム代や印画紙代にコストがかかりすぎて続けられませんでしたね。そういう意味でもデジカメでなくては写真を継続して撮ってなかったと思います。
D70を使う理由は、当時自分の知る範囲で一番手ごろに購入できた一眼レフデジタルカメラだったからということです。コンパクトデジカメでもよかったし、携帯性ということではそちらに軍配が上がるんだと思うんですけど、一眼レフデジタルカメラを使う理由は、操作性のよさということではないでしょうか。
レンズはAF-S DX 17-55mm F2.8 G以外は、実は人からの借用品です。使わないからということでお借りして、そのままずっと使っています。
特に不自由は感じないし、むしろ慣れてしまったので、これでいいやという感じですね。たくさんのツールをいろいろ使いこなすという器用なことができないし、興味もないので、あるものをなるべくじっくり使うという方が性にあってます。
──どのようにして写真を学んだのですか?
「写真を学ぶ」と言えるかどうかわかりませんが、まだデジカメを持っていない頃、「お散歩デジカメ」というメーリングリストを購読し始めたんです。そして、その関連の画像掲示板にフィルムで撮った写真を投稿したのがネットデビューのきっかけです。
でも、最初の数カ月はデジカメも持っていなし自分で撮ろうという気もなく、人の掲示した写真につっこみばかり入れてました(しかもほめてばっかりという……)。自分で撮らなくても写真を見るのが楽しかったので、違和感はなかったですね。なんとなく見てるうちに露出のこととか、基本中の基本のことがメカ音痴の私でも自然と身についてきました。
そういう下地があったせいか、その年末にデジカメを持ったら、急に写真を撮り始めました。で、今度は撮った写真を掲示板に投稿したら、いろんな方から「暗すぎる、適正露出じゃない」とか「ブレている」とか、いろいろ言われて、そこで初めていろんなことが疑問になるようになりまして、急速に写真にのめりこんだような覚えがあります。
その後はできるだけ枚数を撮ること、ブログにアップすること、他の方の写真を見ること、これの繰り返しでした。上手くなることってあまり興味がなかったので、毎日楽しかったからいいやと、それ以上のことは特に考えてなかったんですよ。
それから2005年3月に須田一政氏(1940年生まれの写真家。大阪芸術大学教授。非常に活発かつ頻繁に展覧会を行なっている。長く続けているワークショップには参加者も多い)のワークショップに参加しました。須田さんは放置プレイの方なんで、特に何かを指導された覚えはいまでも記憶にないんですけど、持って行った写真の中から選択される写真の結果が、ちょっと衝撃的だったんですね。
──どういう風に衝撃的だったのですか?
ワークショップには、ブログでは未発表のものもふくめてあらゆる写真を持っていったんですけど、その中には自分でも「気になる写真」が含まれていました。「気になる写真」というのは、自分では好きだけど、いくらなんでも人様に見てもらうのに、これじゃあダメだろう、と勝手に自分の中で「枠」を作って誰にも見せなかった、ひと言でいうと「恥ずかしい写真」です。
ところが結果的に須田さんが選んだのは「気になる写真」のほうが多かったんですね。そのうえで、全面肯定されて、あなたのやってることは全部OKですよ。もっとどんどんやりなさい。すぐにでも個展をしなさい、とおっしゃったんです。でも、そうした評価は私にとってうれしいというよりも、自分がこれまで作っていた「枠」をいきなり外された感覚があって、むしろ自由であることに対する恐怖のほうを感じてしまいました。その結果、途方に暮れてしまいその後1年くらいはワークショップもほとんど行かずに、なんだかおろおろ写真のことばかり考えていました。それがその頃ブログを休止していた理由につながっています。
写真もほとんど撮れなくなってしまって、10年くらいは撮れないかなーなんて考えていたんですが、1年たったらあっけなく、また毎日のように写真を撮り始めてました。自分でも不思議ですね。でも自分の中ではこの1年は結構大きかったと今でも思っています。「学び」といわれて、思い出すのはこのことくらいでしょうか。
──普段の生活の中で、写真に費やす時間はどれくらいですか?
写真とはまったく関係の無いIT系企業に勤めていて、平日はほとんど写真は撮れないのですが、それでもお昼休みの10分とか、毎日なにがしかを撮るようにしています。あとは土日などの休日の数時間をあてるということになります。写真を撮る時間は1週間で実質10時間もあるかないかでしょうか。写真を撮る場所は、家と会社の近所。あとは休日に出かけた先です。京都とか大阪とか、被写体は目についたものなんでも。
ただ、「写真について考えている時間」ということになると、それはもう、極端にいえば、いつも、ということになるでしょうか。
──どれくらいの頻度でブログを更新していますか?
週4~6日くらい。
──ブログのデザインについてどう考えていますか?
背景の色とデザインは、ブログを始めた時に決めたものがそのまんま踏襲されて、今に至っています。その間、あれこれ変更しようかと思ったこともあったんですけど、基本的にいろんなことを「ひきずる」のが好きなんですね。ぱっと変えて、一からやり直しというのがどうも気に食わない性格です。なので、「変えないこと」を基本にして今まで来ました。
よほど気に入らないことがない限り、1度決めたことは何でも変えたくないと思う方なんですよ。大きさについても大きいのがいいかなーとも思うし、他所で大きい写真を拝見するのはとても見てて楽しいのですが、なんかそういう人が多いので、せめて自分くらいは違ってもいいかと……。背景の黒もそうですね、白のデザインの方多いので。というのもあるかもしれませんね。
──ブログに文章を書くのはなぜですか?
最初は文章は書かないでおこうと思っていました。写真を載せるからには、写真がすべて説明するだろうと思っていたので。その考えは今でも変わりないんですけど。
ただ、最近は写真についてもう少し自覚的になりたいなと思うようになってきまして、そのためには文章を書くことは有効なんではないかと思ったんです。アップした写真とは直接関係のない文章を書いているように見えるかもしれません。書くことで自分でも自覚したり、発見することが多いんですよね。それに影響されて写真が変わっていくのもまたおもしろいかなとも思います。写真で表現できることと、文章で表現したいことというのは必ずしも一致しないんですよね。なので相互作用があるといいなと思っています。
──ネット上での他人と交流していますか?
交流というのか、コメントのやりとりはしていますね。最初、ブログをはじめたころは、コメントがついたことに驚いたんですよ。自分の写真を見てくれて、コメントをわざわざ書いてくれる人がいる!ということが単純に新鮮にうれしかったんです。なので、負担のない程度で、「コメント」という交流は続けられたらと思っています。
──それらの人たちとオフラインでも交流していますか?
そうですね。交流している人もいます。私の中ではオンラインとオフラインはあまり区別がありませんし、抵抗もないです。普通なんですよ。興味のある人には会いたいし、話してみたい。それは別段いつでもよくある日常の光景だと思っています。それに、だいたい会ったときの印象ってオンライン上での印象と劇的には変わらないですね。それもおもしろいです。
──プリントした写真とディスプレイで見る写真についてどのような違いがありますか?
多分、展示やワークショップといったきっかけがないと、自分から進んでプリントするということはあまり無い気がします。もちろん写真集や雑誌なんかも好きなんですけど。自分の写真をどこで見るのが一番好きかというとやっぱりディスプレイかなーなんて思ったりもします。なにより簡単ですから。
ただ、プリントしてみると、また違った見方ができますので、それはそれでおもしろいです。現状は、プリントにものすごく興味があるわけではないんですよね。コストと時間に対して、どこまで自分が許せるかかなー、と考えます。だって展示をするとなると、撮影する時間がなくなるんですよ。とにかく撮影したい気持ちが大きい自分としては、そこが大問題です。時間やお金があったらいろいろやってはみたいですけど。
──現実の空間での展示について、Web上で発表することとの違いについて教えてください。
どちらもおもしろいと思いますけど、現実の空間での展示というのは一種のお祭りみたいなもので非日常的な何かですよね。
そういう意味ではWebでの更新はすっかり日常化していますよね。これってすごいことなんじゃないかと思っています。毎日見てもらえるなんて、夢のようですよね。
おそらくどんなに好きな作家の方の展示でもそうそう長く眺めていることってできないし、ブログで毎日見ていただいている時間って案外すごい時間じゃないかと思っています。でも、Webで写真を見ることがここまで一般的になってしまうと、今後は現実空間の展示はこれまで以上に質の高いものでないと、残っていかないかもしれません。
──他人の写真サイトをご覧になりますか? それは自分の写真に対してどういう風に影響していますか?
写真サイトはリンクをたどって発見することで、たくさん見ているほうだと思います。人の写真を見るのは好きです。ただ、それが自分の写真に役立っているかどうかは、わかりません。
私は、人に影響されるというのがどういうことなのかよくわからないし、あまり実感としてそういう経験がないんですよ。いい写真を撮ってる人がいたら、単純にうれしいし、楽しくなります。で、それで満足してしまうので、そういう写真については「がんばってね、私も自分のやり方でがんばるから」みたいな感じにしかならないんですよね。自分の写真については写真以外のことからの影響のほうが大きいんではないかと思います。
──河本さんの写真は非常にトーンがアンダー(適正露出よりも暗い)のが特徴的なのですが、なぜこのような写真を撮られるのですか?
なぜでしょうか? と自分でもわかってない部分が多いのですが、一番落ち着くんですよ。それが一番しっくりくる答えですね。
適正露出は自分にはまぶしすぎる感じなんですよ。ちょっと私にはこんな風に「明るく」世界は見えてないとしかいいようがないですね。
──ほとんどすべてが縦位置であるのも特徴的ですね。
ひと言で言えば、縦位置が自分にとって自然なんです。横位置にするのはなんだか作為が入る気がします。そこしか目に入らないという、ある意味「視野の狭さ」も私らしいと思います。
性格が出ているかもしれません。たくさんのものを把握したいとか、そういう欲求はないんですよ。むしろそういうことには抵抗を感じます。いい意味でも悪い意味でも自分らしいと思っています。それに対しては不満もあるし、うんざりもすることもあるんですけど、無理には変えられないんですよ。じっと待つしかないかなーって思っています。
──どのように被写体を選んでいるのですか?
目に付いたものを撮る。気になったものを撮る。ということです。
──写真以外に興味をもっていることはありますか?
人間。
──それは写真に影響を与えていますか?
写真は手段なんです。写真よりもっと自分にとってぴったりくる方法が見つかったら、きっとそっちに移行すると思います。でも今は見つからないんです。写真が一番しっくり来ます。楽しいです。
──写真をやるうえで、男性と女性の違いというのは関係あると思いますか?
うーん、どうなんでしょうね、今、私もそのことをしきりに考えているんですけど、いわゆるWeb写真界隈で目に留まる方って男性がほとんどなんですよね。私の探し方が悪いのか、私の好みがそうさせるのか、ちょっと疑問に思っているところです。で、そこに息苦しさを覚えることがあります。やはりそれはそれで、ものの見方がある意味、偏ってるような気がするんですね。そこでの見聞をもとにして思うのは、よい写真とは何かということの定義自体が非常に男性的な気がしています。
だから、私が惹かれる写真のほとんどは、少なくとも少しは「非男性」であることを許容してくれる何かがあるかどうかということ。それは結構大きなファクターになってるんじゃないかと最近思っています。付け加えると「非男性」的な見方が正しいということではないんですよ。ただ、現状では「男性的」な視点に偏りすぎているのではないか思うんです。なんていうのか、そういう性差なんか意識しなくてもいいくらいのスケールの写真が撮れたら一番いいんでしょうけど。
■ URL
バックナンバー
http://dc.watch.impress.co.jp/cda/webphoto_backnumber/
内原 恭彦 (うちはら やすひこ)1965年生。東京造形大学デザイン科中退。絵画やCGの制作を経て、1999年から写真を撮り始める。
2002年エプソンカラーイメージングコンテストグランプリ受賞、2003年個展「BitPhoto1999-2002」開催、2003年写真新世紀展年間グランプリ受賞、2004年個展「うて、うて、考えるな」開催
http://uchihara.info/ |
2007/03/08 01:16
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