デジカメ Watch

【新製品レビュー】オリンパス「SP-590UZ」

~世界最大の26倍ズームレンズを搭載
Reported by 北村智史

 オリンパスCAMEDIA SPシリーズの最新モデル。前身のSP-565UZが26mmからの20倍ズームだったのに対し、本機はさらに望遠側を伸ばして26~676mm相当にグレードアップ。撮像素子もサイズは同じ1/2.33型だが、画素数は有効1,000万画素から有効1,200万画素に増加している。大手量販店の実勢価格は5万9,100円程度。


従来モデルより動作が高速化

 いちばんの特徴は、より高倍率化されたレンズである。28mm相当の広角から超望遠までをカバーしたSP-550UZ(2007年3月発売)のレンズは、28~504mm相当の光学18倍ズームだった。後継のSP-560UZは同じレンズユニットを搭載していたが、撮像素子が若干大きくなったことから27~483.7mm相当にシフト。SP-570UZでは広角端を広げつつ、望遠端は500mm相当オーバーにスペックアップした26~520mm相当の光学20倍ズームを搭載した。

 それだけでも十分にごちそうさまな感じなのに、本機はさらに望遠側を676mm相当にまで伸ばしている。前後して発売されたニコンCOOLPIX P90とペンタックスX70(26~624mm相当の光学24倍ズーム)を抜いて、ズーム倍率でトップスペックを実現している。





 光学系は11群14枚構成で、数字としては従来モデルと同じだが、EDレンズが2枚から3枚に増えている(非球面レンズは4枚で変わらず)。前玉から2枚目にEDレンズを採用したのが効いているのだろう、従来モデルよりシャープさがアップしたように感じた。

 最短撮影距離は通常時、マクロ時ともに広角端が10cm、望遠端は170cm。マクロモードに切り替えなくても近接撮影は可能だが、マクロモードに切り替えたほうが近距離の被写体に対するピント合わせの所要時間は短くなる。焦点距離が9.2mm(52mm相当)に固定されるスーパーマクロはレンズ前1cmまで寄れる。

 公称の起動時間は内蔵メモリ使用時で約1.6秒。普通の3倍ズーム機と比べれば遅めの数字だが、従来モデルよりは高速化を果たしている。起動に3秒近くかかっていたSP-550UZ(2007年3月発売)より1秒以上早くなっているのだから立派だと思う。

 記録メディアは内蔵メモリは22MBとxDピクチャーカード。microSDアダプターが付属しているが、フルサイズのSDHC/SDメモリーカードには対応していない。

 電源は単3電池×4本で、製品パッケージには単3アルカリ乾電池が付属している。CIPA基準の撮影可能コマ数は340コマだ。SP-570UZが390コマ、SP-565UZは410コマだったから、ちょっと後退である。とは言え、普通に撮っている分には不満を感じることはないだろうし、大量撮影派にはニッケル水素電池のほうがおすすめだ。

 あと、細かいところでは、HDIMミニ端子が新しく装備されている(動画スペックはVGA/30fpsで変更はないが)。その一方、記録形式はJPEGのみに簡略化された。同じシリーズのSP-560UZ、SP-570UZ、SP-565UZではRAW形式記録が可能だったのだから、載せておいて欲しかった気もする。また、SP-565UZ同様にアクセサリーシューも省略されている。


搭載レンズは4.6~119.6mm F2.8~5。35mmフィルムカメラ換算では26~676mm相当となる光学26倍ズーム

ズームの広角端はこのくらい
望遠端にするとここまで伸びる。以前よりはズームスピードも速くなった気がする。


もちろん、お得意のセンサーシフト式手ブレ補正機構を内蔵している

AFは自動選択となる「iESP」のほか、画面中央部だけの「スポット」、測距点を好きな位置に動かせる「ターゲット選択」、「顔検出」がある


シャッターボタンを半押ししなくてもAFがはたらく「フルタイムAF」は、動画撮影中でもピント合わせしてくれる

AF関連の設定はけっこう多彩。一眼レフのものとは同じではないが、動く被写体にピントを合わせつづける「動体予測AF」も備えている。


記録メディアは内蔵22MBとxDピクチャーカード(実際は裏向きに装填する)。microSDカードが使えるアダプターも付属している

電源は単3電池×4本。単3アルカリ乾電池で340コマ撮れる


右側のが新設のHDMIミニ端子。ハイビジョンテレビとの接続に利用する

画質モードは「FINE」と「NORM(ノーマル)」だけ。従来機種にはあったRAWがなくなっている


上級者向けに絞り優先AEやシャッター優先AEなども装備。女性ポートレート用の「BEAUTY」モードももちろん搭載している
十字キーまわりの操作部はこんな感じ。再生ボタン押しで再生中は、シャッターボタン半押しとかで撮影待機状態に復帰できないのが難点


便利なダイレクトヒストグラム表示

 画素数アップの影響だろう、連写スペックもダウンを余儀なくされている。5M(2,560×1,920ピクセル)以下に制限される「高速連写1」はSP-565UZは7コマ/秒(570UZは7.2コマ/秒)で30コマまでだったのが6コマ/秒で25コマまで、3M(2,048×1,536ピクセル)以下に制限される「高速連写2」でも前の2モデルは13.5コマ/秒で30コマまでだったのが10コマ/秒で25コマまでとなった。

 いずれも、シャッターボタンを全押しする前の瞬間(10コマ分)の画像も残せる「プリキャプチャー機能」もあって、シャッターチャンス重視の撮影にも対応できるのはいいところ。スピードと連写可能なコマ数が減ったのは残念だが、プロクラスの一眼レフでもないかぎり、10コマ/秒などという連写スピードはありえないわけで、それなり以上に楽しめるスペックであるのは間違いない。

 SP-570UZから搭載されているカメラ内パノラマ作成機能も楽しい。従来は、オリンパス製のxDピクチャーカードを使ってパノラマモードで撮影したものをパソコン上で合成する必要があったが、カメラ内合成なら撮ったその場でパノラマ画像を見ることができる。

 ただし、カメラ内合成の場合、撮影できる画像は最大3コマまでにかぎられてしまうし、きれいにつながってくれないケースも少なくない。そういうときのためにも、元画像は元画像で残しておいてくれればよかったのにと思う。元画像を素材として保存しておくという選択肢があれば、カメラ内合成がうまくいかなかったときでも、あとでパソコン上で合成できるからだ(パソコン上でやったほうがきれいにつながってくれないときに、何度でもやり直しができるから)。

 個人的に便利に感じたのは、ヒストグラムのダイレクト表示。画面内の白トビ部分を赤、黒ツブレ部分を青で表示するものだ。コントラストが高いシーンや、暗い場所での撮影ではわずらわしく感じられることもあるが、画面上にグラフを重ねて表示するタイプと違って被写体が見づらくなることがないのがいいところだ。まあ、オリンパスのコンパクト機にはかなり以前から搭載されている機能なので、今さらほめてもなぁと思いはするが、けっこうお気に入りだったりする。


使用頻度の高い機能に素早くアクセスできるファンクションメニューの画面。「高速連写2」は最高10コマ/秒連写が可能だ

高速連写モードやISO3200以上の高感度に設定すると、自動的に記録画素数が変更される。戻せば元の設定に復帰するのでラクチンだ


再生時は連写した画像はひとまとめで表示される。次のシーンを見るために延々画像送りをやらなくてもすむ

パノラマ機能はカメラ内合成が2種類、OLYMPUS Masterを使って合成するための素材撮影用モードがある


「カメラで合成2」の画面。カメラを振る方向は十字キーで選択できる

カメラ内合成で作成したパノラマ画像


再生時は画面を自動スクロールしてくれる


ヒストグラム表示は「ON」にすると普通のグラフ表示。「ダイレクト」は白トビと黒ツブレの両方を色分けして表示してくれる

ダイレクトヒストグラム表示はこんな感じ。白トビが赤、黒ツブレは青で表示される。両方が同時に見られるので露出を決めるのに便利だ


こちらは普通に再生しているときの画面
サムネイル表示は4コマから25コマまで。選択中のコマだけは少し大きめに表示される。さらに縮小するとカレンダー表示に切り替わる

左上のボタンはビューファインダーと液晶モニターを切り替えるもの。右下のは好みの機能を割り付けられるカスタムボタンだ
カスタムボタンに割り付けられるのは、AEロック、AFロックをはじめ、15項目から選べる

まとめ

 SP-570UZやSP-565UZに比べるとボディの幅が小さくなって、グリップもやや細身になったおかげでスリム感は出ているが、高さと奥行きは逆に大きくなった。重さも565UZの373gから62g増えて435gになっている(SP-570UZよりは10g軽いけど)。また、連写スペックは従来より落ちているし、RAW形式記録もなくなっている。

 そういったマイナス面もあるが、それ以上に、光学26倍ズームの魅力は大きい。一眼レフなら100万円コースの超望遠域をこれだけのコンパクトさで楽しめるのだ。しかも、広角も26mm相当からカバーしているうえに、1cmまで寄れるスーパーマクロもある。1台でいろいろと遊べるカメラに仕上がっていると言える。


 

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。


画角

 同じものを撮ったようには見えないかもしれないが、26倍ズームにもなると、広角と望遠の画角の差はこんなである。


4.6mm(26mm相当)
3,968×2,976 / 1/100秒 / F5.6 / -0.7EV / ISO64 / WB:オート
119.6mm(676mm相当)
3,968×2,976 / 1/125秒 / F5 / -1EV / ISO64 / WB:オート

感度

 ベース感度はISO64と低め。安心して使えるのはISO200までで、ISO400になると暗部にノイズが浮いてきてシマリも悪くなってくる。ただ、ディテールの劣化はあまりひどくないので、小サイズのプリントならISO800でもいけそうな感じだ。

 ISO3200と6400は記録画素数が5M(2,560×1,920ピクセル)以下に制限される。正直なところ、Lサイズ程度の画質としか言いようのないものだが、子どもやペットの寝顔を撮るときなどには役立ってくれるだろう。


感度の設定範囲はISO64-6400。フル画素で撮れるのはISO1600までで、ISO3200以上は5M(2,560×1,920ピクセル)に自動的に切り替わる


ISO64
3,968×2,976 / 1/15秒 / F8 / -0.3EV / WB:オート / 4.6mm(26mm相当)
ISO100
3,968×2,976 / 1/30秒 / F8 / -0.3EV / WB:オート / 4.6mm(26mm相当)
ISO200
3,968×2,976 / 1/60秒 / F8 / -0.3EV / WB:オート / 4.6mm(26mm相当)

ISO400
3,968×2,976 / 1/125秒 / F8 / -0.3EV / WB:オート / 4.6mm(26mm相当)
ISO800
3,968×2,976 / 1/250秒 / F8 / -0.3EV / WB:オート / 4.6mm(26mm相当)
ISO1600
3,968×2,976 / 1/640秒 / F8 / -0.3EV / WB:オート / 4.6mm(26mm相当)

ISO3200
2,560×1,920 / 1/1,000秒 / F8 / -0.3EV / WB:オート / 4.6mm(26mm相当)
ISO6400
2,560×1,920 / 1/2,000秒 / F8 / -0.3EV / WB:オート / 4.6mm(26mm相当)

仕上がり

 仕上がりモードは2種類だけで、しかも「NATURAL」と「VIVID」の差はあまり大きくない。

※共通設定:3,968×2,976 / 1/80秒 / F4.5 / -0.3EV / ISO64 / WB:晴天 / 6.4mm(36mm相当)


仕上がり:NATURAL 仕上がり:VIVID

連写

 記録画素数が5M(2,560×1,920ピクセル)以下となる「高速連写1」は6コマ/秒、3M(2,048×1,536ピクセル)以下となる「高速連写2」は10コマ/秒というスペック。カメが飛び込むシーンは初めて見たが、どうやって水からあがったかは謎である。

※共通データ:2,048×1,536 / 1/320秒 / F5 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 72.7mm(411mm相当)






パノラマ

 従来どおり、パノラマモードで撮った画像をOLYMPUS Master上で合成する「PCで合成」も選べるが、カメラ内でパノラマ画像を作成することもできる。ただし、つなぎ目はあまりきれいとは言いがたいので、クオリティ重視なら「PCで合成」を選ぶのがおすすめだ。


3,904×1,064 / 1/320秒 / F5.6 / -0.7EV / ISO64 / WB:オート / 4.6mm(26mm相当)

自由作例

大昔のボンネットバス。ナンバープレートは針金で留めてあるだけだったりするのがすごい
3,968×2,976 / 1/125秒 / F5 / -0.3EV / ISO64 / WB:オート / 11.8mm(67mm相当)
電車の内部。26mm相当の広角までカバーしているので、こうした狭い場所での撮影にも強い
3,968×2,976 / 1/60秒 / F5 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 4.6mm(26mm相当)

EDレンズが1枚増えたおかげだろう、ズーム倍率は上がっているのにシャープさがアップしているように思えた
3,968×2,976 / 1/160秒 / F5.6 / -0.3EV / ISO64 / WB:オート / 13.4mm(76mm相当)
1/2.33型CCDとは言え、高倍率ズーム機とあって、望遠域では少しは背景もボケてくれる
3,968×2,976 / 1/125秒 / F4.4 / -1EV / ISO64 / WB:オート / 26.4mm(149mm相当)

こういう青系の被写体を画面いっぱいに撮ると、オートホワイトバランスでは色が転ぶカメラもあるが、本機はなかなか優秀
3,968×2,976 / 1/40秒 / F4.1 / -0.7EV / ISO64 / WB:オート / 16mm(90mm相当)
昔のかぜ薬の看板。いつごろのものかはわからないけど、ネーミングのセンスはすごい
3,968×2,976 / 1/80秒 / F4.3 / -0.3EV / ISO64 / WB:オート / 20.8mm(118mm相当)

高倍率ズームも手ブレのオンパレードなら魅力は半減してしまうが、本機は手ブレ補正機構を内蔵しているので、気軽に望遠撮影が楽しめる
3,968×2,976 / 1/200秒 / F4.5 / -1EV / ISO64 / WB:オート / 40.6mm(229mm相当)
広角端ではタル型の歪曲がちょっと気になってしまう。まあ、26倍ズームで26mm相当なのだから、これくらいは我慢しないといけない
3,968×2,976 / 1/13秒 / F2.8 / -0.3EV / ISO64 / WB:オート / 4.6mm(26mm相当)

望遠側は弱いイトマキ型。もっとも歪曲が少なくなるのは40mm相当あたりだ
3,968×2,976 / 1/8秒 / F4 / -0.7EV / ISO64 / WB:オート / 14.7mm(83mm相当)
写真館の外壁の文字は、よく見ると木の板を糸ノコかなにかで切り抜いたものっぽい
3,968×2,976 / 1/320秒 / F5.6 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 39.1mm(221mm相当)

柱にカメラを押しつけてブレを抑えて撮った
3,968×2,976 / 1/6秒 / F2.8 / -1.7EV / ISO64 / WB:オート / 4.6mm(26mm相当)
こちらはイスに座った状態での手持ち撮影。絶対ブレると思って撮ったのに、手ブレ補正ってすごい
3,968×2,976 / 1/2秒 / F2.8 / -2EV / ISO64 / WB:オート / 4.6mm(26mm相当)

囲炉裏の火は遠目に見ている分にはなごめるものだが、近づくとけっこう熱かったりする
3,968×2,976 / 1/3秒 / F3.8 / -1EV / ISO64 / WB:オート / 13mm(73mm相当)
マクロは広角端で最大倍率になるカメラが多いが、オリンパスのスーパーマクロは標準域で固定。画角が狭い分背景が処理しやすいし、そこそこボケてもくれる
3,968×2,976 / 1/60秒 / F3.5 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 9.2mm(52mm相当)

こういう画面にすると、たいていの液晶モニターはなにも見えない状態になりがちだが、ハイパークリスタルII液晶ならなんとか見える
3,968×2,976 / 1/320秒 / F5 / -2EV / ISO64 / WB:オート / 85.6mm(484mm相当)
いつごろのものかはまったく見当も付かないが、動いているところを見てみたかった
3,968×2,976 / 1/50秒 / F3.6 / +0.3EV / ISO64 / WB:オート / 10.3mm(58mm相当)

以前に比べると手ブレ補正の制御がよくなっているようで、望遠撮影時の画面のふらつきが少なくなった感じ
3,968×2,976 / 1/80秒 / F5 / 0EV / ISO64 / WB:晴天 / 59.9mm(339mm相当)
広角で寄って撮ると歪曲が気になるので、少し離れて望遠で撮った
3,968×2,976 / 1/100秒 / F5.6 / -1.7EV / ISO64 / WB:オート / 19.7mm(111mm相当)

ちょっとブレっぽい気もしないではないが、137mm相当の画角で1/5秒というシャッター速度で、ここまで撮れれば文句はない
3,968×2,976 / 1/5秒 / F4.4 / -0.3EV / ISO64 / WB:オート / 24.3mm(137mm相当)
普通のマクロモードは広角端で10cmまで寄れる。花びらにこぼれた花粉の粒までくっきり
3,968×2,976 / 1/80秒 / F3.5 / 0EV / ISO64 / WB:晴天 / 4.6mm(26mm相当)


URL
  オリンパス
  http://www.olympus.co.jp/
  製品情報
  http://olympus-imaging.jp/product/compact/sp590uz/

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北村智史
(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。最初に買ったデジタルカメラはキヤノンPowerShot S10。 ブログ:http://ketamura08.blog18.fc2.com/

2009/05/19 00:53
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