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「LUMIX DMC-G1」で楽しむマウントアダプター(キヤノンFDマウント編)

Reported by 中村文夫


 レイコール(宮本製作所)がライカMマウント用と同時に発売したマイクロフォーサーズアダプターには、キヤノンFD用がある。キヤノンFDとはキヤノンがMF一眼レフの時代に採用していたレンズマウントだ。キヤノンはAF化の際に完全電子マウントのEFマウントを新たに開発。FDマウントはその役目を終えた。

 マイクロフォーサーズ用アダプターの製造元であるレイコールの製品情報ページには、以下のように記されている。

――Panasonic純正のフォーサーズ - マイクロフォーサーズアダプタ「DMW-MA1」と弊社製フォーサーズアダプタ群を併用していただくことで、その他のレンズをご使用いただけます。今後CY-M4/3やNF-M4/3のダイレクトタイプのアダプタも製作予定になっています。

 つまりマウントアダプターを二段重ねすれば、既存の一眼レフ用交換レンズをDMC-G1に使用できる。だが現在発売中のアダプターの中にキヤノンFD用は見当たらない。この理由はキヤノンFDマウント独特の構造にある。キヤノンに限らずどのメーカーのマウントも、マウント面に絞り連動ピンを備えているが、キヤノンはこのピンの長さが他社より長く、実測値で5.5mmもある。これが障害物となり、マウントアダプターの製品化を阻んでいたのだ。

 また同じ理由から、キヤノンFDレンズを他社のボディに取り付けるマウントアダプターも、これまで存在しなかった。要するにマウントアダプターの世界では、キヤノンFDマウントだけが「蚊帳の外」に置かれていたというわけ。そのためキヤノンFDレンズファンにとって、デジタルカメラで撮影を楽しめないことが悩みの種になっていた。だがマイクロフォーサーズ用アダプターの登場により、この問題は解決。永年我慢を強いられてきたキヤノンFDレンズファンも溜飲を下げる時がついにやって来た。


レイコールのキヤノンFDレンズ用マイクロフォーサーズアダプター

ボディ側マウント面


 現在の中古カメラ市場では、M42、ニコンF、ペンタックスKのレンズが安定した人気を保っている。これに対しキヤノンFDレンズは人気は低め。今さら説明するまでもなく、この原因はマウントアダプターの存在だ。キヤノンFDレンズはキヤノン製フィルム用一眼レフにしか装着できないが、ほかのレンズにはアダプターという強い味方があるので、他社のフィルム用一眼レフやデジタル一眼レフに使用可能。これが市場売価に大きな影響を与えていると考えられる。

 実際のところ一部の高級レンズを除きキヤノンFDレンズの売値はとてもリーズナブル。これからレンズを買いそろえても、それほど大きな出費にはならないだろう。


キヤノンFDとNew FDレンズ

 キヤノンFDレンズにはFDとNew FDの2種類がある。FDはNew FDと区別するため旧FDと呼ばれることも多い。両者の違いはレンズの固定方法で、旧FDはマウント部のリングを締め付けるスピゴット式。これに対しNew FDは、通常のバヨネット式のようにレンズを右回りに回転させるとカチッと音がしてレンズをロック。外すときはレンズ側のボタンでロックを解除する。


旧FDレンズ(左)とNew FDレンズ 旧FDレンズは銀色のリングを締め付けてレンズを固定。New FDレンズは、レンズを時計方向へ回転させるだけで固定できる

キヤノンFDレンズは絞り連動ピンが長いため、これまでマウントアダプターを作ることができなかった

旧FDレンズの取り付け方法。最初に絞り連動ピンの位置を確認。写真左の位置にある場合は、写真右と同じ位置になるよう手で移動させる


この状態でレンズ側の指標とアダプター側の▲マークを合わせ、リングを締め付ける

New FDレンズの取り付け方法。レンズ側の赤い指標とアダプター側の▽マークを合わせ、反時計方向へ回転させると▲の位置でレンズが止まる。レンズがマウントに嵌ったのを確認し、反対方向へ回すとレンズが固定される


FDレンズ用アダプターの内側には、絞りを絞った状態に保つためのピンがある

 いずれのレンズもマウント自体の規格は同じなので完全な互換性があり、マイクロフォーサーズアダプターを介してDMC-G1に使用できる。ただしアダプターに装着するときは、レンズ側の絞り連動ピンをアダプター側のピンに引っ掛ける必要があるため、取り付け方法がわずかに異なる。

 アダプターを使用した際の絞りは手動式で測光は絞り込み測光。撮影モードはライカMマウントと同じで、絞り優先AEまたはプログラムAEと優先AEが利用可能だ。ピント合わせは手動。撮影モードとピント合わせの詳細は、前回のライカMマウント用アダプターのレボートを参照して欲しい。


可能性は無限大。ユニークな製品の登場に期待

 パナソニックではDMC-G1のボディのコンパクトさに着目し、女性層をターゲットにしたセールスプロモーションを行なっている。もちろん、より多くの製品を売るという意味では正しい展開と言えるだろう。だが実際にこのカメラを使ってみると、かなり上級者を意識したカメラであることが分かる。特にマウントアダプターを使用したときの機能は、これを前提に設計したとしか思えないほどだ。

 マイクロフォーサーズは、そもそもボディのコンパクト化に主眼を置いて誕生した規格だ。ミラーを省くことによって、かつてないフランジバックの短さを実現。その副産物として今回紹介したマウントアダプターが実現した。別の見方をすれば、非常に高い発展性を秘めた新しいスタイルのカメラと解釈することもできる。

 現在、発売中のマウントアダプターは、ライカM用とキヤノンFD用の2種類。さらにレイコールでは、コンタックス/ヤシカ、ニコンFマウントレンズを直接取り付けるアダプターも企画中だ。今のところ製品化の予定はないが、技術的にはオリンパスペンFやペンタックスオート110用レンズなどを使うためのアダプターも作ることが可能。このほかシネカメラ用レンズもマウントを改造すれば、装着できる可能性がある。

 なお、記事中の最後に紹介しているのは、レイコールのマイクロフォーサーズ用マウントアダプターを分解して得た部品を利用し、自分でマウントを改造したキヤノンビデオカメラ用交換レンズ。レイコールのアダプターは2ピース構造なので、ドライバー1本でマウント部が分離できる。これを利用すればカスタムマウントの自作も思いのままだ。1/3インチのCCD用なのでフォーサーズのイメージサークルはカバーしないが、作例を見れば分かる通り意外と面白い画が撮れる。

 いずれにしてもマイクロフォーサーズほど「遊べる」マウントはほかにないだろう。現在、この規格を採用したカメラはDMC-G1だけ。だがオリンパスをはじめ、これから登場する新製品を含めると可能性は無限大だ。とにかくこれまでの常識にとらわれない、ユニークな製品の誕生を期待したい。


 

●作例

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。
  • モデル:原智美(はらともみ)ルフ・プロモーション


キヤノンNew FD 28mm F2


 New FD初期の大口径広角レンズ。近距離撮影時の像の崩れを防ぐためフローティング機構を採用している。絞り開放だと、かなり軟調な描写になる。


DMC-G1 / New FD 28mm F2 / 約3.1MB / 2,672×4,000 / 1/125秒 / F2 / -1.7EV / ISO100 / WB:オート / フィルムモード:ダイナミック

キヤノン旧FD 28mm F3.5 S.C


 開放F値を3.5に抑えた広角レンズ。DMC-G1に装着すると、標準レンズに近い約56mmになる。通常の撮影ではそれほど気にならないが、絞り開放で夜景を撮影するとコマ収差が目立つ。


DMC-G1 / FD 28mm F3.5 S.C / 約4.9MB / 2,672×4,000 / 1/50秒 / F3.5 / 0EV / ISO400 / WB:オート / フィルムモード:スタンダード DMC-G1 / FD 28mm F3.5 S.C / 約3.8MB / 4,000×2,248 / 2.5秒 / F3.5 / 0EV / ISO100 / WB:オート / フィルムモード:スタンダード / シーンモード:夕焼け

キヤノン旧FD 35mm F3.5


 発売は1971年だが、1968年に発売された旧タイプの光学系を継承。コーティングが単層なので、コントラストはそれほど高くない。像はソフトだが質感描写は良い。


DMC-G1 / FD 35mm F3.5 / 約4.2MB / 3,000×4,000 / 1/60秒 / F3.5 / 0EV / ISO100 / WB:オート / フィルムモード:スタンダード DMC-G1 / FD 35mm F3.5 / 約4.5MB / 4,000×3,000 / 1/30秒 / F3.5 / 0EV / ISO100 / WB:オート / フィルムモード:スタンダード / シーンモード:花

キヤノン旧FD 55mm F1.2 S.S.C


 50mm F1.2といえば、非球面タイプのALレンズが有名だが、このレンズは球面のスタンダードタイプ。製品名のS.S.Cはスーパースペクトラムコートの意味で、キヤノン独自の多層幕コートが施されている。だが逆光にはそれほど強くなくフレアが出やすい。絞り開放時の描写は柔らかく、まるでソフトフォーカスレンズのようだ。やや二線ボケの傾向がある。


DMC-G1 / FD 55mm F1.2 S.S.C / 約4.2MB / 4,000×2,672 / 1/1,000秒 / F1.2 / 0EV / ISO100 / WB:日陰 / フィルムモード:スタンダード DMC-G1 / FD 55mm F1.2 S.S.C / 約3.7MB / 2,248×4,000 / 1/2,500秒 / F1.2 / 0EV / ISO100 / WB:日陰 / フィルムモード:スタンダード

DMC-G1 / FD 55mm F1.2 S.S.C / 約4.0MB / 4,000×2,672 / 1/1,000秒 / F1.2 / 0EV / ISO100 / WB:日陰 / フィルムモード:スタンダード

キヤノンNew FD 135mm F3.5


 開放F値を3.5に抑えた普及タイプの中望遠レンズ。決して大口径ではないが、ボケ味は意外なほどキレイ。ただしデジカメとの相性はあまり良くないようで、今回の撮影ではパープルフリンジが盛大に発生した。絞りを絞ると急激にシャープになる。


DMC-G1 / New FD 135mm F3.5 / 約5.6MB / 4,000×3,000 / 1/800秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:晴天 / フィルムモード:ダイナミック DMC-G1 / New FD 135mm F3.5 / 約3.4MB / 3,000×4,000 / 1/160秒 / F3.5 / 0EV / ISO100 / WB:晴天 / 内蔵ストロボ使用 / フィルムモード:ダイナミック

キヤノン旧FD 50mm F3.5 S.S.Cマクロ


 レンズ単体で最大1/2倍の接写ができるマクロレンズ。設計は古いが、コントラストが高く透明感のある描写が特徴。ボケ味も良い。


DMC-G1 / FD 50mm F3.5 S.S.C Macro / 約4.4MB / 3,000×4,000 / 1/125秒 / F3.5 / 0EV / ISO100 / WB:オート / フィルムモード:スタンダード DMC-G1 / FD 50mm F3.5 S.S.C Macro / 約5.3MB / 3,000×4,000 / 1/125秒 / F3.5 / 0EV / ISO400 / WB:オート / フィルムモード:スタンダード

DMC-G1 / FD 50mm F3.5 S.S.C Macro / 約5.1MB / 4,000×3,000 / 1/250秒 / F3.5 / 0EV / ISO400 / WB:オート / フィルムモード:スタンダード

キヤノンレフレックスレンズCL 250mm F4(マイクロフォーサーズ用に改造)


 レンズ交換式ビデオカメラ、キヤノンXシリーズ用レンズのマウントを自分で改造し、DMC-G1に装着。マイクロフォーサーズのフランジバックは短いので、こんな遊びもできる。

 イメージサークルが小さいので、画面周辺部の像は流れるが、被写体を選べばそれほど気にならない。レフレックスレンズなのでボケにも特徴がある。


DMC-G1 / Reflex CL 250mm F4 / 約4.9MB / 4,000×2,672 / 1/200秒 / F4 / 0EV / ISO800 / WB:晴天 / フィルムモード:スタンダード DMC-G1 / Reflex CL 250mm F4 / 約4.3MB / 4,000×3,000 / 1/1,000秒 / F4 / 0EV / ISO100 / WB:オート / フィルムモード:スタンダード / シーンモード:花


URL
  パナソニックLUMIX DMC-G1関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2008/10/02/9224.html



中村文夫
(なかむら ふみお) 1959年生まれ。学習院大学法学部卒業。カメラメーカー勤務を経て1996年にフォトグラファーとして独立。カメラ専門誌のハウツーやメカニズム記事の執筆を中心に、写真教室など、幅広い分野で活躍中。クラシックカメラに関する造詣も深く、所有するカメラは300台を超える。1998年よりカメラグランプリ選考委員。

2009/01/20 00:13
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