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【新製品レビュー】アドビ「Photoshop Elements 7」

~魅力的な機能が加わった定番ファミリー向けソフト
Reported by 飯塚直

Photoshop Elements 7
 プロカメラマンの御用達ソフト「Photoshopシリーズ」の下位に位置するのが、ホビー&ファミリーユースをターゲットとした「Photoshop Elements」シリーズ。その最新版「Photoshop Elements 7」がリリースされた。発売は10月17日。前バージョンの「Photohsop Elements 6」(Windows用)から約1年、シリーズにおける近年の更新ペースを崩すことないリリースタイミングである。

 パッケージ版の価格は1万4,490円、ダウンロード版が1万3,800円。乗換え/アップグレード版が1万290円となっている。対応するOSは、Windows XP/Vista。


親しみやすさそのままの「写真整理モード」

 処理エンジンなど基幹技術は同じものの、ビジネス(クリエイター)とホーム(ホビー)という違う方向に進化した「Photoshop」と「Photoshop Elements」。最近では積極的な差別化とコンシューマ市場の広がりにより、Elements側の更新スピードが早くなっている。「Photoshop Elements 5」の発売が2006年の9月、「Photoshop Elements 6」の発売が2007年の10月、そして「Photoshop Elements 7」の発売が10月といった具合だ。

 Photoshop Elements 5からPhotoshop Elements 6へバージョンアップしたとき、タブの位置が変更になったり、ウインドウの色が変更されたりと大幅な改編がみられた。通常、このような変化は、従来バージョンからの慣れによる戸惑いで不評なことも多いが、同じ年に登場した上位ソフト「Photoshop CS3」に類似した配色を採用したこともあり、比較的好意的に受け入れられた。では今回のPhotoshop Elements 7はどうだろうか。

 ハッキリいうと、見た目の変化は少ない。新味がなく物足りないが、Photoshop Elements 6からのアップグレードを考えているのであれば、すんなりと受け入れられるはずだ。逆に6以前のバージョン(例えばPhotoshop 5など)から買い替えた人には、大きな変化が感じられるだろう。

 例えば、スタートアップスクリーンから「整理」、「編集」、「作成」、「配信」という4つカテゴリに直接アクセスできるようになっている構造に変わりはない。また、操作の基本軸となる「写真整理モード」と「写真編集モード」の扱いも変わっていない。


写真整理モード。レーティングやキーワードを付与できる サムネイル表示はアルバム単位が基本。さらにアルバムの上位に「アルバムグループ」を設定できる

 このうち「写真整理モード」では、メタデータのテキスト検索窓が設けられた。いままでも作成した名札(キーワード)から特定の写真をピックアップできたが、検索窓から直接入力することで、写真の絞り込みがより簡便になっている。
  
 写真整理モードをおさらいすると、その名の通り取り込んだ写真の管理と管理に特化したモードであり、ユーザーが作成したアルバム単位でのサムネイル一覧表示が基本的な表示となる。さらに写真整理モードというだけあって、その整理方法は柔軟にして多種多様だ。例えば右側の「アルバム」枠には、撮影日時をはじめ、シャッタースピード、カメラメーカーなどキーにしたスマートアルバムを設定可能。取り込んだすべての画像からその条件にあった画像だけが表示される。

 そしてもうひとつ、アルバムが用意されている。これは取り込んだ画像を選択してまとめ上げるもので「アルバムグループ」という。大きなアルバムグループの下層にさらにアルバムがあり、ドラッグ&ドロップで写真を追加していく仕組みだ。

 なお、名称が写真整理モードとなっているものの、任意に選んだ画像を右クリックするか、右上の「補正」タブをクリックすれば、簡易ながら「自動スマート補正」や「自動赤目修正」などの自動補正が行なえる。ほぼワンクリックといっても良いほど操作が簡単で、この簡便さがElementsシリーズの屋台骨であり、魅力といえる。


実用的かつ楽しい「スマートブラシ」

 一方、写真編集モードのスタンダード編集には、新機能「スマートブラシ」が加わった。補正したい、または変化させたい部分をブラシでなぞるだけで「多目的」、「カラー」、「ライティング」などの特殊効果を加えられるツールだ。

 なぞるといっても使い勝手は「自動選択ツール」と同じ。ポイントごとにクリックしてもよいし、そのままなぞってもよい。自動選択ツールの性能の良さは上位ソフトのPhotoshop譲りだけあり、精度は抜群だ。

 スマートブラシの面白いところは、多彩な特殊効果にある。明るさを調整するような基本的な効果から、緑色のピーマンをショッキングピンクにカラーチェンジ……といった遊び要素もある。


左上のプルダウンメニューがスマートブラシの効果一覧 「口紅」や歯を白くする「パールホワイト」も選べる

「レインボー」を適用。実用的なものから、お遊び的な効果まで楽しめる

 そのほかスタンダード編集には、「自動選択ツール」、「ブラシツール」、「切り抜きツール」、「消しゴムツール」などPhotoshopでおなじみのツールが用意されている。画像解像度の変更やモノクロ2階調、グレースケールなどへの変換に対応しているほか、レイヤー処理、フィルタ加工などのツールが利用できる。

 スタンダード編集以外のクイック補正とガイド付き編集についても触れておこう。クイック補正はスタンダード編集ほど細かな調整は行なえないが、「一般補正」、「ライティング」、「カラー」、「シャープ」などが設けられており、それぞれの効果量をスライドバーで調整できる。ガイド付き編集は、いわゆる逆引きモードで、作業内容を選んで補正するモード。暗い写真を明るくしたいのであれば「明るさを調整」を選ぶ。

 ガイドモードには、複数の連続写真から不要な要素だけをブラシで消し去る「Photomerge Scene Cleaner」が加わっている。最低2枚、最大で10枚の写真を取り込み、必要なパーツと不必要なパーツを選択することで、最終的に必要なパーツだけで構成された写真を作ろうという機能だ。例えば連続してシャッターを切ったものの、すべてに邪魔な要素が入り込んでいる……といった時に重宝する機能だ。

 また、写真整理モードと写真編集モードの両方に存在する配信タブには、新たに「プリント」という項目が追加された。もちろん、ツールバーの「ファイル」からプリントを選んでも同じことができる。


クイック補正。「スマート補正」が秀逸だ ガイド付き編集では、やりたいことに沿った操作ツールが表示される

前バージョンの売りのひとつだった「Photomerge」には、「Scene Cleaner」が加わった 複数の画像から、歩行者のみを消すといった修正が施せる

まとめ

 引き続きRAW現像プラグインの「Camera Raw」も付属するので、カメラメーカー各社のRAWデータの現像も可能。Photoshop CS3よりいくつか機能が制限されているが、一般的なRAW現像ならこれで対応できる。もちろん、写真整理モードでのRAW表示が可能。すでに多くのRAWに対応しており、複数のメーカーのRAWを扱う人なら重宝するだろう。

 Photoshop Elementsに求められているのは撮った後の楽しさ。それをしっかり押さえながら、多彩な管理機能、PC初心者を意識した簡便な操作性、対応RAW形式の豊富さをミックスしたところが本製品の魅力だ。前バージョンからの大きな変化はないものの、新機能のスマートブラシやPhotomerge Scene Cleanerを使用すれば、よりシンプルな操作性で大きな効果が得られるようになったのはポイント。補正という作業に対して苦手意識を持っている人にほどオススメしたいソフトだ。



URL
  アドビ
  http://www.adobe.com/jp/
  製品情報
  http://www.adobe.com/jp/products/photoshopelwin/

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飯塚直
(いいづか なお)パソコン誌&カメラ誌を中心に編集・執筆活動を行なうフリーランスエディター。DTP誌出身ということもあり、商業用途で使われる大判プリンタから家庭用のインクジェット複合機までの幅広いプリンタ群、スキャナ、デジタルカメラなどのイメージング機器を得意とする。

2008/10/24 00:30
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