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【新製品レビュー】パナソニック「LUMIX DMC-FX150」

~「追っかけフォーカス」を搭載、スタイリッシュモデルが進化
Reported by 北村智史

 2007年6月発売の「LUMIX DMC-FX100」の後継モデル。搭載レンズ、撮像素子サイズは同じだが、有効画素数が1,220万画素から1,470万画素に増えているほか、「おまかせiA」をはじめとする機能強化などがほどこされている。

 実勢価格は大手量販店の店頭で4万6,800円程度。カラーバリエーションはブレードシルバー、エスプリブラック、ミラージュゴールドの3種類が用意されている。


液晶モニターが広視野角に

 前モデルのDMC-FX100に比べて奥行きが0.3mm、重さが3g増えているが、おそらくこれは液晶モニターのサイズアップ分だろうと思う。DMC-FX100が2.5型・20.7万ドットだったのに対し、本機は2.7型・23万画素に変更されている。

 個人的には、サイズや解像度が上がったことよりも、視野角が広くなったことのほうが何倍も価値があると思う。というのは、従来のLUMIXの液晶モニターは、左右方向に比べて上下方向の視野角が非常に狭いという泣き所をかかえていて、特に横位置でのローアングル撮影が苦しかった(ハイアングルモードはあったが、ローアングル対策はなかった)。それが、この夏モデルあたりから新しい液晶モニターを採用したようで、斜め方向からの視認性が格段に向上している。

 おかげでハイアングル撮影のたびにいちいちモード切り替えをしたり、ハイアングルモードでカメラを逆さまにしてローアングル撮影をやるなんていうこそくなワザを使う必要がなくなったのは大歓迎である。





 撮像素子はDMC-FX100と同じサイズの1/1.72型CCDだが、有効画素数は1,220万画素から1,470万画素に増えている。レンズはDC Vario-Elmarit 6-21.4mm F2.8-5.6(35mmフィルムカメラ換算28~100mm相当)で、DMC-FX100と同じものと思われる。最短撮影距離は通常時が全域50cm、マクロ時などは広角端で5cm、望遠端で30cmとなる。

 広角端のタル型の歪曲収差がほとんど目立たないのは素晴らしい点。もしかしたら、ソフト的な補正を行なっているのかもしれないが、四隅の画質が大きく崩れるようなことはないからレンズ自体の性能もしっかりしているのだろう。

 スペック上では、マニュアル露出も可能となっているが、これはオマケのレベル。絞りが2段階(広角端はF2.8とF9、望遠端はF5.6とF18)しかないので、存在意義自体がかなりあやしいと言っていい。役に立つとしても、露出補正の範囲を超えて明るく(または暗く)撮りたいときくらいだろう。

 記録メディアはSDHC/SDメモリーカード、MMC(静止画のみ)と約50MBの内蔵メモリー。電源は容量1,150mAhのリチウムイオン充電池。CIPA基準の撮影可能コマ数は330コマで、DMC-FX100より10コマ増えている。

 同時に発表されたDMC-FX37と違って、本機はRAW形式での記録が可能になっている。従来の「LUMIX DMC-LX2」などではできなかったRAWのみの撮影も選べるようになった。ただし、ファイルサイズが1画像あたり19MB程度とかなり大きいので、それなりに覚悟が必要だ。

 記録関連では、1,280×720ピクセルのハイビジョン動画でのフレームレートが15fpsから24fpsに向上した。15fpsだと動きのあるものを撮ったときにパラパラ感が気になってしまうが、24fpsならかなり動きが滑らかになる。同時発売の「LUMIX DMC-FX37」とかはもちろん、ちょっと古めの「LUMIX DMC-TZ5」あたりでも30fpsなのだからもうひと頑張り欲しかったところだが、ハイビジョン動画が気軽に撮れるのはいいところだと思う。


レンズはライカのDC Vario-Elmarit。35mmフィルム換算で28~100mm相当。もちろん、光学式手ブレ補正機能を内蔵している 上面の操作部。モードダイヤルには「おまかせiA」、「P(プログラムAE)」のほか、新しく「M(マニュアル露出)」を装備。右端の「E.ZOOM」ボタンは、一度押すと広角端から望遠端に一気にズーム、もう一度押すと3M記録になって215.6mm相当になる

電源は容量1,150mAhのリチウムイオン充電池。記録メディアは内蔵50MBメモリーとSDカード系(実際には裏向けに挿入する) JPEGのファインとスタンダードに加えて、RAW、RAW+JPEGが可能になった。パナソニックのRAWは圧縮率が低いので、ファイルサイズは強烈にでかい

便利な「追っかけフォーカス」

 使ってみて便利に感じたのが追尾AF、「追っかけフォーカス」である。被写体が画面内を移動してもピントを合わせつづけてくれる機能で、ロックした被写体を追いかけてAFフレームが自動的に画面内を移動する。歩いている人物や動きまわる子どもなどを撮るときに役立ってくれるし、風景やマクロ撮影時にも使いでがある。

 被写体が大きすぎるとか小さすぎるとかまわりと色が似ているとかだときちんとロックしてくれないこともあるが、一度ロックしてしまえば、撮影距離が変わったり横位置から縦位置に構え直したりしてもロックしつづけてくれるので、同じ被写体を何枚か撮りたいときなどには重宝する。

 ただし、遠くから近づいてくる電車を撮るような条件の場合、電車が遠いうちはロックできないし、かと言って、ロックできるくらいに近づくのを待っていると今度は時間の余裕がなかったりで、逆に使いづらくなってしまう。こういうときは、あらかじめ構図を決めて、それに合わせて測距点を選んで撮影するほうがよさそうだ。

 もうひとつ、おもしろそうなのは暗部補正機能。名前を見れば予想できるとおり、シャドー部のトーンを持ち上げて明るく再現する機能で、シャドー部がノイジーになるのは我慢しなくてはならないが、コントラストが高い条件で見た目に近い再現が得られるのがメリットだ。

 シャドー部の持ち上げ具合は弱、中、強の3段階から選べるが、実際に機能が有効になるとはかぎらない。持ち上げるべきシャドー部がないときや、シャドー部のシマリがなくなってしまうだけのようなときは自動的に無効になるように設定されている。そのため、オンにしているのにまったく効果が見られないというケースも起こりうる。

 一応、画面に表示される暗部補正のアイコンが白のときは無効、黄色のときは有効といったふうに、アイコンの色で教えてくれるようになっているのだが、作例を撮っているときでもちょっとしたフレーミングの違い、撮影距離の違いによって、有効になったり無効になったりして、こんがらがってしまった。

 もっと使い込めば有効、無効の見極めができるようになるのかもしれないが。まあ、そういうややこしいことを考えないだろう初心者にとってはこの設定のほうが案外失敗しにくいのかもしれない。


オートフォーカスモードの設定画面。一番上が顔認識で、その下が追尾AF。従来どおり、1点高速やスポットとかもある 追尾AFにすると測距点の表示がこんなふうになる。ピントを合わせたい被写体に向けて、十字キーの下キーを押すとロック状態になる。同じ被写体を構図を変えたり露出を変えたりしながら、いろいろ撮るときに、いちいちフォーカスロックしなおしたりする手間がいらないのが便利

シンプルな画面ではっきりした色味の被写体であれば、向きや撮影距離が変わってもきちんと追いつづけてくれる。多少であれば、ズーミングしても平気だ


任意選択の1点AFも、従来の9点測距から11点測距に進化している メニューの暗部補正の画面。補正のレベルは3段階から選べる

まとめ

 現行のスタイリッシュ系の3モデルのうち、DMC-FX37とDMC-FX500は25~125mm相当の光学5倍ズームが搭載されているのに対し、本機だけは28~100mm相当。その点が少々物足りないのと、個人的に有効1,470万画素という数字には不毛さしか感じられないのが難点だが、それ以外は十分満足いく仕上がりだと思う。

 誰が撮っても失敗しにくいおまかせiA機能に加えて、思いのほか役立つ追尾AFも新装備。液晶モニターの視野角が広くなったのもうれしい。手ブレ補正の効きもいいし、画質も良好だ。若干割高感もなくはないが(あと3,000円出すとD40のレンズキットが買えちゃうのだ)、写りのいいコンパクト機をお探しの方にはおすすめできる1台だ。


手ブレ補正も従来のMODE 1、MODE 2に加えて、画角によって両者を自動的に切り換えてくれるAUTOが加わった 背面の操作部。再生がモードダイヤルから独立したのもこっそりうれしい改良点。右下のボタンがQ.MENU(従来のファンクションメニュー)

Q.MENUボタンを押すと、さまざまな機能に素早くアクセスできる

 

●作例

  • サムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。


感度

 感度の設定範囲はISO100から1600まで。オートではISO400までとなる。また、シーンモードの高感度などでは3M記録になってしまうが、最高ISO6400までの超高感度撮影も可能だ。

 コンパクト機としては大きめサイズの1/1.72型CCDとは言え、有効1,470万画素とあって、ピクセル等倍で見ると苦しい部分も見受けられる。ISO100でもザラツキ感が気になる描写で、ISO200でも解像感の低下がはっきりわかる。ISO400になると高感度ノイズが目立ちはじめるが、思ったよりはディテールがつブレずに残ってくれている。このあたりまでなら常用してよさそうに思う。

 ISO800は大きなサイズのプリントはきついが、解像感の低下はそれほどではないので、手持ちの夜景撮影などでは利用でaきそうだ。ISO1600はさすがにオマケのレベル。同じ1600なら高感度モードのほうが、画素数は減ってしまうものの、カラーバランスの崩れが少なくて使いやすいかもしれない。


ISO100
4,416×3,312 / 1/15秒 / F2.8 / -0.3EV / WB:オート / 28mm(35mm判換算)
ISO200
4,416×3,312 / 1/30秒 / F2.8 / -0.3EV / WB:オート / 28mm(35mm判換算)

ISO400
4,416×3,312 / 1/80秒 / F2.8 / -0.3EV / WB:オート / 28mm(35mm判換算)
ISO800
4,416×3,312 / 1/160秒 / F2.8 / -0.3EV / WB:オート / 28mm(35mm判換算)

ISO1600
4,416×3,312 / 1/320秒 / F2.8 / -0.3EV / WB:オート / 28mm(35mm判換算)
高感度モード(ISO1600)
2,048×1,536 / 1/320秒 / F2.8 / -0.3EV / WB:オート / 28mm(35mm判換算)

追尾AF(追っかけフォーカス)

 ピントを合わせたい被写体にいったんロックすると、撮影距離などが多少変わってもロックした被写体を追いつづけてくれる。使う前は小馬鹿にしていた機能なのだが、使ってみるとけっこう便利。マクロ撮影で実験してみたが、背景との位置関係や画面の縦横などを変えてもピントは合いつづけていたし、1枚撮って露出補正して、なんてときでも、ピントがほかの花に移ったりもしなかった。


4,416×3,312 / 1/400秒 / F2.8 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 28mm(35mm判換算) 4,416×3,312 / 1/400秒 / F2.8 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 28mm(35mm判換算)

4,416×3,312 / 1/400秒 / F2.8 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 28mm(35mm判換算)

追尾AFは、空を大きくフレーミングするようなときにも便利だったりする。ただし、ビルなどはロックしてくれないことも多かった
4,416×3,312 / 1/640秒 / F9 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 28mm(35mm判換算)
こういう地味で暗めの色味の被写体は、たいていロックしてくれない。が、そんなときは今までどおり、半押しフォーカスロックでやればいいだけ。うまくいかなかったときのフォローがしっかりしているのでストレスが少ない
4,416×3,312 / 1/100秒 / F5.6 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 100mm(35mm判換算)

走ってくる電車はある程度の大きさになってからでないとロックしてくれない。で、ロックできる距離になってから大急ぎでシャッターを切るわけだが、これがなかなかにせわしない。何度かチャレンジした中の1コマ。ちょっと後ピンだけど
4,416×3,312 / 1/200秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 100mm(35mm判換算)

暗部補正

 暗部補正はソニーのDレンジオプティマイザー、ニコンのアクティブD-ライティングなどに近い機能で、シャドー部のトーンを持ち上げて見た目に近い明るさに表現する。画像処理で無理をしている分、シャドー部のノイズ感は増えることになるが、うまく使えば白トビや黒ツブレが抑えられる。

 オンにすると感度が2/3段アップして、条件によっては露出値も変化する。が、白トビが増える印象はない。実写では、オフと弱の差がかなり大きく感じられ、弱から中、強とレベルを上げていくと、シャドー部が少しずつ明るくなっていくものの、オフと弱との違いのようなインパクトはない。なので、迷ったときはオフと弱の2パターン(もしくはオフと弱、強の3パターン)を撮っておくのがよさそうに思う。

 ただし、オンにしていても条件次第では効果がまったく出ない(機能が無効になってしまっている)ケースもあったりするので注意が必要だ。


暗部補正:オフ
4,416×3,312 / 1/6秒 / F5.6 / -0.7EV / ISO100 / WB:マニュアル / 100mm(35mm判換算)
暗部補正:弱
4,416×3,312 / 1/6秒 / F5.6 / -0.7EV / ISO160 / WB:マニュアル / 100mm(35mm判換算)

暗部補正:中
4,416×3,312 / 1/6秒 / F5.6 / -0.7EV / ISO160 / WB:マニュアル / 100mm(35mm判換算)
暗部補正:強
4,416×3,312 / 1/6秒 / F5.6 / -0.7EV / ISO160 / WB:マニュアル / 100mm(35mm判換算)

自由作例

広角端に比べると、望遠端はもう少し切れ味が欲しい感じ。と言って、悪いわけではない
4,416×3,312 / 1/160秒 / F18 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 100mm(35mm判換算)
うまくはまると立体感がきれいに出る。ピクセル等倍で見ると、窓枠や格子状の装飾の厚み、凹凸がよくわかってすごい
4,416×3,312 / 1/500秒 / F11 / -0.7EV / ISO100 / WB:オート / 45mm(35mm判換算)

花壇の花の上にセミの死骸を発見(向きだけちょっと変えた)。透きとおった羽や背中の産毛の表現がけっこうすごい
4,416×3,312 / 1/250秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 28mm(35mm判換算)
古びた板の質感なんかはけっこう好みだったりする。
4,416×3,312 / 1/200秒 / F2.8 / -0.7EV / ISO100 / WB:オート / 28mm(35mm判換算)

望遠端でめいっぱい寄って撮ったカット。通常時は50cmまで、マクロ時は30cmまでだが、追尾AFにしておくと、切り替えなしでマクロ域までカバーしてくれる。けっこうラクチン
4,416×3,312 / 1/40秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 100mm(35mm判換算)
取り壊され中につき、階段だけ。こんなのも新宿区内だったりする
4,416×3,312 / 1/250秒 / F4.2 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 62mm(35mm判換算)

じきに姿を消すはずの古いアパート。中を見てみたい
4,416×3,312 / 1/320秒 / F4.4 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 67mm(35mm判換算)
背伸びしてフェンスの上に手を伸ばしてやっとこさ撮った1枚。液晶モニターの視野角が広がってくれたおかげである
4,416×3,312 / 1/160秒 / F9 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 28mm(35mm判換算)


ちょっぴりブレてる気もしないではないが、1/6秒なら許せる範囲か。シャドーのトーンがもう少し粘ってくれるとかっこいいのだけれど
4,416×3,312 / 1/6秒 / F2.8 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 28mm(35mm判換算)
住友ビルの1階から見上げるとこんな感じ。けっこう目がくらみます
4,416×3,312 / 1/20秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 28mm(35mm判換算)

こちらは住友ビルの51階の窓から見たビルのてっぺん。28mm広角が活きるシーン
4,416×3,312 / 1/100秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 28mm(35mm判換算)
お盆中は都心でもヌケのいい青空が見られるのだが(その分くそ暑いけど)、この日は夕方から土砂降り。雨はやんだものの期待していたようには雲は消えてくれなかった
4,416×3,312 / 1/200秒 / F5.6 / -0.7EV / ISO100 / WB:オート / 100mm(35mm判換算)

画面のアスペクト比を通常の4:3から、3:2や16:9に変えられる。と言っても、画面の上下をカットするだけだけど。ソフトでやっているのかもしれないが、歪曲収差がきれいに補正されているのは気持ちいい
4,416×2,480 / 1/320秒 / F9 / -0.7EV / ISO100 / WB:オート / 28mm(35mm判換算)


URL
  パナソニック
  http://panasonic.co.jp/
  製品情報
  http://panasonic.jp/dc/fx150/

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北村智史
(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。最初に買ったデジタルカメラはキヤノンPowerShot S10。 ブログ:http://ketamura08.blog18.fc2.com/

2008/08/25 00:09
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