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【新製品レビュー】ニコン「COOLPIX S600」

~キビキビした動作の28mmレンズ搭載モデル
Reported by 飯塚直

 ニコンのコンパクトデジタルカメラ「COOLPIX」は、機能性を重視した「Pシリーズ」、コストパフォーマンスに優れた初心者向けの「Lシリーズ」、そして機能性とデザイン性を両立した「Sシリーズ」という3シリーズをラインナップしている。今回紹介するのは、Sシリーズの最新モデル「COOLPIX S600」(以下S600)。2008年3月14日に発売された製品だ。実勢価格は2万円台後半。

 COOLPIX Sシリーズといえばこれまでにも、起動時間約0.6秒を誇る「COOLPIX S500」(2007年3月発売)や、レリーズタイムラグ約0.005秒を実現した「COOLPIX S700」(2007年10月発売)など「高速レスポンス」を特徴とした製品を発売してきた。S600もこの流れを継承しており、世界最速(光学式手ブレ補正と28mm相当のズームレンズ搭載モデルにおいて)の起動時間約0.7秒を実現している。

 また、Sシリーズ初となる広角28~112mm相当(35mm判換算)、F2.7~5.8の光学4倍ズームニッコールレンズを搭載。レスポンスの良さはそのままに、待望の広角表現を可能にしたモデルなのである。


質感の高いステンレスボディを採用

 キビキビした動作性能とは別に、Sシリーズには特徴すべき点がある。それがデザイン性だ。S600は、質感と強度に優れているというステンレスボディを採用した。

 表面のヘアーライン加工や質感を活かすカラーコーティングなどは、もはやSシリーズの証といえるくらい定着している。ボディサイズは、88.5×22.5×53mm(幅×奥行き×高さ)。手にすっぽりと収まり、持ち運びに便利なサイズだ。ただし、携帯性と撮影のしやすさは、得てして相反するもの。デザイン性を重視してか、グリップ部がないS600は、決して持ちやすい部類のカメラではない。落下防止策として、ストラップは必須だろう。ただ、約130g(本体のみ)という適度な重さがあるため、ストラップを指に巻きつけてテンションをつくれば、片手でも十分にハンドリングできる。





 デザイン面で注目したいのは、背面に盛り上がっている「ロータリーマルチセレクター」と称されたダイヤルボタンだろう。十字キーの役割を持っているインタフェースなので、メニュー画面の操作などは上下左右を押してもよいし、クルクルとまわしてもよい。盛り上がり具合が少々不恰好に見えるのだが、操作性は良好だ。個人的にはもう少し盛り上がりを抑えてほしかった。

 背面に備えた液晶モニタは、2.7型(約23万画素)の高精細液晶パネルを採用している。撥水性に優れるという液晶モニター面には、光の反射を防ぐ反射防止コートが採用され、屋外での視認性も高かった。指紋がついてもサッと拭くと、跡が残りにくいのも地味ながら評価したいポイントだ。液晶モニターの明るさでいえば、ワンボタンで明るさの調整ができる「画面明るさブースト機能」も重宝する。


ホイール操作と十字キーを兼ねた「ロータリーマルチセレクター」

シャッターボタンの押し込みは浅いが、電源スイッチはやや深め

ステンレスボディの質感は良く、素直にカッコいいと思えるが、レンズバリア部の素材と色がミスマッチに感じる

バッテリーはCIPA規格で約190枚の撮影が可能


「広角28mm」、「顔認識」などトレンドはしっかりキープ

 今季、同社が発売したCOOLPIXは総じてシャープで、スッキリとした絵作りをしている。もともと地味な色使いという印象が強かったが、切れ味が増して落ち着いた色味になったのだろう。これは、Lシリーズ、Pシリーズ問わずである。

 S600で採用された撮像素子は、1/2.33型の有効1,000万画素。ISO3200でありながらノイズを抑えた高感度撮影への対応や、レンズシフト方式手ブレ補正機構(VR)の搭載など、1,000万画素オーバー&手ブレ対策という要所はシッカリと抑えている。また、顔認識は最大で5人までに対応し、レンズ前約3cmまで寄れるマクロ性能を有する。

 ISO3200に対応するメリットはわかるのだが、そこまで高感度にするとイメージ通りの写真にはならず、ノイズでギトギトになってしまう。使ってみた個人的な感覚だと、S600の実用範囲はISO800までだろうか。

 Sシリーズ初の28mm対応モデルということで、レンズ面の歪みが気になるところ。実際に撮影する分には目立たないが、マス目調の被写体を撮影すると歪曲収差が比較的目立ちやすい。残念なところだ。とはいえ、広角での撮影を重要視する人にとって、焦点距離28mm相当は何者にもかえがたい仕様といえる。ズーム比が4倍に拡張されたことで、望遠側も112mm相当までいける。一般的な撮影において、十分な画角のカバー率が期待できそうだ。

 S600には、新モードの「キッズ」を含め14種類のシーンモードが搭載されている。新しく加わった「キッズ」とは動体撮影モードであり、あらかじめ設定した被写体にAFエリアが追従するモードだ。ファミリー層を狙ったネーミングなのだろうが、最近では子どもと大人の顔を識別するカメラが他社から出ているため、誤解されるかも知れない。ちなみに「キッズ」以外のモードは「ポートレート」、「風景」、「スポーツ」、「夜景ポートレート」、「パーティー」、「海・雪」、「夕焼け」、「トワイライト」、「夜景」、「クローズアップ」、「ミュージアム」、「モノクロコピー」、「逆光」が用意されている。


COOLPIXシリーズ独特のモード選択画面は健在だ

撮影メニュー画面では、画質モードのほか、ホワイトバランスなど主要項目の設定が行なえる


撮影メニュー内のAFエリア選択で「顔認識オート」を選択可能

VRの設定はセットアップメニューにある。設定内容はONとOFFのみ


セピアやビビッドカラーなど、色味が変更できるピクチャーカラーも装備

シーンモードでは、キッズモードを含む14種類のモードを用意。ズームボタン右押しでヘルプメニューを開けば、最適なシーンが調べられる


再生モードではサムネイル表示が可能。2.7型の液晶モニターは、4×4コマ表示でもディテールがしっかりしていて見やすい


まとめ

 起動時間約0.7秒に偽りはなく、バッグから取り出してすぐに撮影できるストレスのなさには、スペック以上に満足感を覚える。レスポンスの良さは写欲にもつながり、質感の高いボディは所有する満足につながる。28mm相当の画角に対応したのもスナップ用途で大きな魅力といえる。撮影枚数はCIPA規格で約190コマとなっているが、ストロボを多用せずに撮っている分には、実感としてもう少し枚数をかせげそうだ。

 デジタルカメラを比較する際、とかく「光学ズーム倍率」、「画素数」、「重さ」、「サイズ」などの仕様を列挙しがち。そのせいもあり、機種によってはスペックシート上、面白味の少ない没個性的なカメラに見えるものもある。見た目で選ぶという買い方は否定できるものではないし、ブランドが及ぼす影響力も否定しない。けれども、ことカメラについては触ってみないとわからないことが多いのも事実だろう。S600の魅力は触ってこそわかるものだ。無骨だけど芯の通った職人気質。S600はそんなカメラに感じた。


 

●作例

  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 作例下の撮影データは、記録解像度(ピクセル)/露出モード/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/35mm判換算での焦点距離を表します。
  • 強調のため一部の項目を1行目に抜粋した場合もあります。


画角

広角端
3,648×2,736 / プログラムオート / 1/20秒 / F2.7 / -0.3EV / ISO200 / WB:電球 / 28mm
望遠端
3,648×2,736 / プログラムオート / 1/5秒 / F5.8 / -0.3EV / ISO200 / WB:電球 / 112mm

歪曲収差

広角端
3,648×2,736 / プログラムオート / 1/200秒 / F2.7 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 28mm
望遠端
3,648×2,736 / プログラムオート / 1/50秒 / F5.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 112mm

ISO感度

ISO100
3,648×2,736 / プログラムオート / 1/250秒 / F5.8 / +0.7EV / WB:オート / 112mm
ISO200
3,648×2,736 / プログラムオート / 1/500秒 / F5.8 / +0.7EV / WB:オート / 112mm

ISO400
3,648×2,736 / プログラムオート / 1/1,000秒 / F5.8 / +0.7EV / WB:オート / 112mm
ISO800
3,648×2,736 / プログラムオート / 1/500秒 / F11.6 / +0.7EV / WB:オート / 112mm

ISO1600
3,648×2,736 / プログラムオート / 1/1,000秒 / F11.6 / +0.7EV / WB:オート / 112mm
ISO3200
3,648×2,736 / プログラムオート / 1/1,600秒 / F11.6 / +0.7EV / WB:オート / 112mm

一般作例

3,648×2,736 / プログラムオート / 1/400秒 / F5.4 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 28mm

3,648×2,736 / プログラムオート / 1/320秒 / F5.4 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 28mm


3,648×2,736 / プログラムオート / 1/640秒 / F5.4 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 28mm

3,648×2,736 / プログラムオート / 1/640秒 / F5.4 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 28mm


3,648×2,736 / プログラムオート / 1/1,250秒 / F5.4 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 28mm

3,648×2,736 / プログラムオート / 1/160秒 / F2.7 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 28mm


2,736×3,648 / プログラムオート / 1/40秒 / F2.7 / -0.7EV / ISO100 / WB:オート / 28mm

3,648×2,736 / プログラムオート / 1/30秒 / F2.7 / -0.3EV / ISO100 / WB:電球 / 28mm


2,736×3,648 / プログラムオート / 1/10秒 / F2.7 / -0.7EV / ISO100 / WB:オート / 28mm

3,648×2,736 / プログラムオート / 1/25秒 / F2.7 / -0.7EV / ISO100 / WB:晴天 / 28mm



URL
  ニコン
  http://www.nikon.co.jp/
  製品情報
  http://www.nikon-image.com/jpn/products/camera/compact/coolpix/s600/

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飯塚直
(いいづか なお)パソコン誌&カメラ誌を中心に編集・執筆活動を行なうフリーランスエディター。DTP誌出身ということもあり、商業用途で使われる大判プリンタから家庭用のインクジェット複合機までの幅広いプリンタ群、スキャナ、デジタルカメラなどのイメージング機器を得意とする。

2008/04/16 00:05
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