デジカメ Watch

【新製品レビュー】ニコン「COOLPIX P50」

~28mmレンズ搭載の高コストパフォーマンスモデル
Reported by 飯塚直

 ニコン「COOLPIX P50」(以下P50)は、2007年8月30日に発表(10月26日発売)された製品で、同社の機能性を重視した「COOLPIX Pシリーズ」のひとつ。広角28~102mm相当(35mm判換算)、F2.8~5.6の光学3.6倍ズームニッコールレンズを搭載し、独自の画像処理コンセプト「EXPEED(エクスピード)」を採用した機種だ。電源は単3電池×2本、光学式ファインダーを備えている。実勢価格は2万円台前半。

 ちなみに、上位モデルとなるのは「COOLPIX P5100」(以下P5100)。COOLPIXシリーズの最上位モデルで、1/1.7型1,210万画素CCDを搭載。さらにアクセサリーシューを装備し、外部ストロボ「ニコンスピードライト」へ対応しているほか、ワイドコンバーターやテレコンバーターなどのコンバージョンレンズが,用意されている。CCDの違いもさることながら、この拡張性が下位モデルCOOLPIX P50との違いだろう。

 P5100との主な共通点は、独自の画像処理コンセプト「EXPEED」、顔検出機能「顔認識AF2.0」の搭載、ニコンのデジタル一眼レフカメラと表記を同じくする「仕上がり設定」の採用などがある。


しっかりしたグリップを装備

 ボディデザインは、同じPシリーズのP5100と幾分似通っている。大きく出っ張ったグリップ部にはすべりにくいゴム素材が採用されており、ホールド感は良好。片手操作でもモードダイヤルやシャッターボタンへのアクセスが容易だ。P5100より部材の安っぽさが気になるものの、実勢価格を考えると仕方がないところである。また、P5100と違ってボディ上部にアクセサリーシューがないので、かなりすっきりしている印象だ。

 ただし、上面右端にある電源ボタンが押しづらい。P5100と同じように、シャッターボタンとモードダイヤルの間にあると便利だったのにと思う。付け加えるなら、シーソー式のズームボタンではなく、COOLPIX P5100のようなズームレバーの方が筆者には好ましく思える。なおメニュー画面では、ズームボタンのT側がヘルプ表示ボタンとなる。


高感度モードやM、P、SCENEなどの切替はモードダイヤルで行なう。SETUPがモードダイヤルに組み込まれているのが特徴的 液晶モニターは2.4型(約11万5,000ドット)。5段階の輝度調節機能付きだ。また上部には、光学ファインダーを搭載する

ズームボタンのT側は、設定メニューでヘルプ表示ボタンとなる 設定画面などで「?」アイコンが表示されている場合、ズームボタンのT側を押すとヘルプが表示できる

Mモードでは、シャッター速度を8~1/1,000秒、絞りをF2.8と5.6から選択できる。絞りはNDフィルター選択方式なので、背景のボケ具合は変わらない ポートレート、スポーツ、夜景、クローズアップなど、15種類のシーンモードを用意

NIKKORレンズ+EXPEEDによる高画質

 COOLPIXシリーズならずデジタル一眼レフカメラを含む、ニコンにとっての今季の特徴とも言える画像処理コンセプト「EXPEED」の採用。「EXPEED」とは、同社が蓄積してきたデジタル画像の処理ノウハウやテクノロジーをはじめ、色作り、図作りの包括的な画像処理コンセプトの総称である。画像処理エンジンといったような特定部品を指すものではなく、あくまでもコンセプトという。コンパクトデジタルカメラ、デジタル一眼レフカメラといった種類の壁を越えて、ニコンが今後発売するデジタルカメラに採用されるそうだ。


28~102mm相当の光学3.6倍NIKKORレンズを搭載
 画質という面で忘れてはいけないのが、下位モデルでありながら、デジタル/フイルム一眼レフの交換レンズで培ってきた品質と技術力の証「NIKKORブランド」のレンズ採用しているということ。画作りや画像処理のコンセプトたる「EXPEED」、画質を大きく左右するレンズに「NIKKOR」。この2つの因子がCOOLPIX P50の高精細画像を生み出すワケだ。

 採用された撮像素子は、有効810万画素(1/2.5型原色CCD)。1,000万画素オーバーの機種が目立つ昨今だが、高画素化により受光面が小さくなることの弊害(ダイナミックレンジの低下など)の方が気になってくる。1/2.5型のCCDを搭載するコンパクトタイプであれば、このくらいが上限といってもよいのではないだろうか。

 もちろん高画素化を否定しているわけではなく、あくまでもハードとソフトのトータルバランスが重要。P50は1/2.5型のCCD採用する機種として納得できる画質であり、画作りは然ることながら、低感度でのピクセルの端整さには目を見張るものがある。解像感は上位機種をおびやかすほどだ。ただし28mm相当時の撮影では、四隅の減光こそ軽微だが、タル型の歪みが目立つ。被写体によっては歪みが顕著になるので覚悟した方が良いだろう。

 ISO感度は、ISO64から2000までの間で選択可能。高感度によるノイズをどこまで許容できるかは主観によるところが大きいが、晴れた屋外ではISO800、ちょっと暗い屋内ではISO400までが快適に使える印象だ。ISO1600になると一気にカラーノイズがはしり出す。最大ISO2000ともなると、撮影した画像は写真というより、一種の絵といった趣きになる。他機種もそうだが、こうしたISO1600以上の高感度域は「最終手段」や「メモ程度」といったレベルではなく、「こういうフィルター機能」と割り切った方が納得できるのかもしれない。


ISO感度は64~2000の間で設定可能。ISOオートはISO64~1000まで。COOLPIX P5100のように「ISO200まで」、「ISO400まで」といった細かい設定はできない ニコンのデジタルカメラではお馴染みのD-ライティング機能。白トビを防ぎつつ、暗い部分を明るく補正することが可能だ。デジタル一眼レフカメラの「アクティブD-ライティング」と異なり、撮影後に行なう

電子式手ブレ補正「e-VR」の効きは?

 手ブレ補正機能としては、電子式手ブレ補正の「e-VR」を採用する。補正精度はレンズ内補正やCCDシフト補正などの光学式に軍配が上がるものの、電子式はメカ部が必要ないことから小型化に向いているとされ、また一般的に消費電力が少ないというメリットがある。最近の採用例では、オリンパスの「μ1200」が思い浮かぶ。


電子式手ブレ補正の設定は、セットアップメニューから行なう 撮影時の電子式手ブレ補正はAUTOとOFFのみ


 実際の効果は「あったら便利」という程度だろうか。電子式手ブレ補正機能はセットアップメニューから「AUTO」と「OFF」の設定ができるが、仮にOFFにしていても、再生メニューで後から補正が可能だ。しかし、その効果を得るためにはいろいろと条件がある。たとえば、電子式手ブレ補正機能をAUTOにしていた場合、次の3つを満たして初めて機能する。

●撮影時にe-VRが動作する条件
  • ストロボモードが「発光禁止」または「スローシンクロ」のとき
  • シャッタースピードが低速のとき
  • 「連写」の設定が「単写」のとき


 ややこしいのは「シャッタースピードが低速のとき」という条件で、具体的な数値が記載されていない。試した感じだと、シャッタースピードが1/15秒以下のときに効果が得られるようである。

 撮影後の補正、つまり電子式手ブレ補正機能をOFFにしていた場合の条件はこうなる。

●撮影後にe-VRを適用できる条件
  • 手ブレ補正済みの画像(AUTO設定時)
  • 手ブレ補正できなかった画像(AUTO設定時)
  • マルチ連写で撮影した画像
  • デート写し込みした画像
  • 手ブレが大きい画像、および手ブレが小さすぎる画像
  • 低速シャッタースピードで撮影された画像


 まあこのように、いろいろと条件が発生する機能なのだ。常時補正を行なう光学式とは違い、過度な期待は禁物といえる。


左下の「eVR」アイコンに注目。e-VRが発動した画像は、再生時にこのアイコンが表示される
e-VRをオフにして撮影しても、再生メニューで適用できる。ただし条件があり、例えば上記の写真では適用不可能だ

「OK」が表示されると撮影後e-VRを適用できる

補正を実行すると、異なるファイル名で別保存できる


 電子式手ブレ補正の利点のひとつに消費電力が挙げられるが、本機の撮影可能枚数は、アルカリ電池で約140枚、リチウム電池で約580枚、同社のニッケル水素充電池「EN-MH1-B2」で約330枚となる。ちなみに光学式手ブレ補正機構を搭載したP5100は、約240枚の撮影が可能。P5100はリチウムイオン充電池を使うので厳密な比較にはならないが、ニッケル水素充電池でならかなり撮れる印象だ。

 ちなみに、メニュー画面で電池のタイプを設定することが可能だ。使用する電池の種類をあらかじめ設定することで、電池を効率よく利用できる。初期設定時では「アルカリ電池」になっており、同社製ニッケル水素充電池EN-MH1や、オキシライド乾電池を使う場合は「COOLPIX(NiMH)」に、リチウムイオン充電池を使う場合は「リチウム」に設定する。


電源には単3電池を2本利用する 電池設定を備える

 最近のデジタルカメラには当たり前のように搭載される「顔認識」機能。顔認識機能を初めて搭載したのはCOOLPIXシリーズだが、複数の顔を認識できなかった。最新モデルが搭載する「顔認識AF2.0」は、最大で12人までの顔を自動で認識でき、認識した顔と背景などのバランスをカメラが自動で調整する。複数人をまとめてとる集合写真などで効果を発揮する機能だろう。


AFエリア選択。「マニュアル」にすると、合焦位置を画面内の99カ所に設定可能

 有効にするには、AFエリア選択画面で「顔認識オート」に設定する必要がある。ちなみに、顔認識オート設定のまま人物がいないシーンで撮影を行なうと、「オート」設定と同じく、9つあるAFエリアから被写体を検知してフォーカスが合う。意識して顔にピントを合わせたくないのでなければ、顔認識オート以外のAFエリアにしておくと便利だろう。


まとめ

 本格的に使い始めるまでは、28mmからのズームレンズだけが特徴で、COOLPIX P5100との差が目立つ「廉価仕様」と思っていた。しかし使い込むうちに、住めば都というように慣れてくるもの。見た目も少々野暮ったいが、このカメラはむしろ、実勢価格が約2万5,000円なのに「こんなにキレイなの?」と画質面をほめたくなるカメラだ。

 見た目も大事だが、中身の方がもっと大事。28mm相当からのズームレンズや画質を重視するなら、十分以上にコストパフォーマンスがよいカメラと言える。


コダックのダイレクトプリント規格「イメージリンク」に対応したドックインサート「PV-16」が付属する ドックインサートを介して、コダックの「プリンタードックシリーズ3」などに装着すれば、ダイレクトプリントが可能になる

作例

  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 作例下の撮影データは、記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/35mm判換算の焦点距離を表します。
  • 強調のため一部の項目を1行目に抜粋した場合もあります。


●画角


広角端
3,264×2,448 / 1/36秒 / F2.8 / -0.7EV / ISO64 / WB:オート / 28mm
望遠端
3,264×2,448 / 1/15秒 / F5.6 / -0.7EV / ISO64 / WB:オート / 102mm

●歪曲収差


広角端
3,264×2,448 / 1/18秒 / F2.8 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 28mm
望遠端
3,264×2,448 / 1/5秒 / F5.6 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 102mm

●ISO感度


ISO64
3,264×2,448 / 1/77秒 / F3.8 / -0.3EV / WB:オート / 52mm
ISO100
3,264×2,448 / 1/116秒 / F3.8 / -0.3EV / WB:オート / 52mm

ISO200
3,264×2,448 / 1/228秒 / F3.8 / -0.3EV / WB:オート / 52mm
ISO400
3,264×2,448 / 1/444秒 / F3.8 / -0.3EV / WB:オート / 52mm

ISO800
3,264×2,448 / 1/224秒 / F7.6 / -0.3EV / WB:オート / 52mm
ISO1600
3,264×2,448 / 1/413秒 / F7.6 / -0.3EV / WB:オート / 52mm

ISO2000
3,264×2,448 / 1/500秒 / F7.6 / -0.3EV / WB:オート / 52mm

●e-VR(電子式手ブレ補正)


適用前
3,264×2,448 / 1/56秒 / F2.8 / -0.7EV / ISO64 / WB:オート / 28mm
適用後
3,264×2,448 / 1/56秒 / F2.8 / -0.7EV / ISO64 / WB:オート / 28mm

●一般作例


3,264×2,448 / 1/500秒 / F2.8 / +0.3EV / ISO64 / WB:オート / 28mm 3,264×2,448 / 1/444秒 / F2.8 / -0.3EV / ISO64 / WB:オート / 28mm


3,264×2,448 / 1/155秒 / F5.6 / -0.3EV / ISO64 / WB:オート / 102mm
3,264×2,448 / 1/83秒 / F5.6 / -0.3EV / ISO64 / WB:オート / 102mm


3,264×2,448 / 1/244秒 / F5.6 / -0.3EV / ISO64 / WB:オート / 102mm

3,264×2,448 / 1/112秒 / F2.8 / -1EV / ISO64 / WB:オート / 28mm


3,264×2,448 / 1/50秒 / F2.8 / -0.3EV / ISO64 / WB:オート / 28mm

3,264×2,448 / 1/266秒 / F2.8 / -0.3EV / ISO64 / WB:オート / 28mm


3,264×2,448 / 1/328秒 / F2.8 / -1.7EV / ISO64 / WB:オート / 28mm

3,264×2,448 / 1/234秒 / F2.8 / -0.3EV / ISO64 / WB:オート / 28mm


3,264×2,448 / 1/65秒 / F2.8 / -0.3EV / ISO64 / WB:オート / 28mm
3,264×2,448 / 1/24秒 / F2.8 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 28mm


URL
  ニコン
  http://www.nikon.co.jp/
  製品情報
  http://www.nikon-image.com/jpn/products/camera/compact/coolpix/p50/

関連記事
ニコン、フルマニュアルの最上位機「COOLPIX P5100」(2007/08/30)



飯塚直
(いいづか なお)パソコン誌&カメラ誌を中心に編集・執筆活動を行なうフリーランスエディター。DTP誌出身ということもあり、商業用途で使われる大判プリンタから家庭用のインクジェット複合機までの幅広いプリンタ群、スキャナ、デジタルカメラなどのイメージング機器を得意とする。

2008/01/17 15:58
デジカメ Watch ホームページ
・記事の情報は執筆時または掲載時のものであり、現状では異なる可能性があります。
・記事の内容につき、個別にご回答することはいたしかねます。
・記事、写真、図表などの著作権は著作者に帰属します。無断転用・転載は著作権法違反となります。必要な場合はこのページ自身にリンクをお張りください。業務関係でご利用の場合は別途お問い合わせください。

Copyright (c) 2008 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.